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2010年11月25日(木)

法務委員会

  • 法務局の登記「乙号事務」の民間競争入札について、国民の権利に関わる重要な公共サービスが低価格重視の入札制度のもと自らの商業登記で虚偽記載の疑いがあり、受託業務でも問題を繰り返している企業が受託していると追及。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 仙谷大臣、真摯かつ簡潔な答弁でよろしくお願いいたします。

 裁判官、検察官の給与については、私どもは、幹部と一般の格差が非常に大きいということは是正をするべきだということを考えております。しかし、今回の問題でいいますと、本来、公務員の労働基本権を制約する代替措置としての人勧が連続してマイナスを出していると、こういうことに基づいて行われていく、国民生活の低下を招くと、こういうことで賛成ができません。

 そのことをまず申し上げておいて、法務局の登記乙号事務についてお聞きをいたします。

 個人の財産にかかわる不動産の登記、それから取引にかかわる商業法人登記は、国民の財産を守り経済を支える非常に重要な制度であり、本来国が責任を持つ制度だと考えます。一九六〇年代の高度経済成長期に非常に業務量が増えましたけれども、公務員を増やすことができないという中で一部を民間に委託し、その業務を非営利団体である民事法務協会が四十年にわたりやってきたという経過があるわけですね。

 これを今市場化テストにより民間競争入札が本格的に実施をされておりますが、この重要な公共サービスであるこの事務を民間競争入札にした、その理由は一体どういうことなんでしょうか。

大臣政務官(黒岩宇洋君)

 端的に申し上げますと、この登記簿等の公開に関する事務は、登記の審査事務とは異なりまして、相当な必要な専門知識を有する者であれば国家公務員でなくとも担当が可能であるという、こういう考え方に基づくものであると、そう承知をしております。

井上哲士君

 それを競争入札にした理由です。

大臣政務官(黒岩宇洋君)

 市場化テストを踏まえて、ある程度効率よく、そして質を高めながらもある程度廉価に事務を担当してもらえるということを趣旨として競争入札にしたと、そう承知をしております。

井上哲士君

 法律上は、民間事業者の創意と工夫を適切に反映させ、より良質かつ低廉な公共サービスの実現を図ると、こうなっているわけですね。

 実際どうなのかと。例えばATGカンパニー株式会社というのがあります。これは、この事務を二〇〇八年度には十局四十四庁、二〇〇九年度には三局九庁落札をしております。この会社のグループ企業であるアイエーカンパニー合資会社は、〇九年度に十局四十五庁落札をしております。

 この二社は、これ以外にも実は落札したものの、入札価格が低過ぎるということで低入札価格調査を求められておりますけれども、その結果が一体どうなって、またそれを受け入札の実施要項はどういうふうに変更されているんでしょうか。

政府参考人(原優君)

 お答え申し上げます。

 個別の事業者に対する低入札価格調査の結果につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、平成二十一年度入札におきましては十三の局で低入札価格調査が実施されております。

 そして、その調査結果に踏まえまして、平成二十二年度の入札実施要項におきましては、低入札価格調査に協力しなかった事業者を入札から排除することができることとしております。具体的には、この低入札価格調査に協力しなかった事業者については当該事実があった日から二年間入札資格を認めないと、こういうことにしております。

井上哲士君

 この二つの会社は、入札価格が低過ぎると、これで適切にできるのかということで調査を求められたが、それを拒否をして落札を取り消されたと、こういうことになっているわけですね。

 では、それ以外には幾つか受注をしているわけですが、それがどうなっているのかと。

 この乙号事務を受託するに当たって必要な人員体制や研修の実施などが条件となっておりますが、それが守られない場合は改善指示がされることになっておりますが、これまでのこの事務の受託事業者の数、それから改善指示を出した事業者数とその回数の合計、そのうちこの両社に出された改善指示の回数は幾らになっているでしょうか。

政府参考人(原優君)

 本事業の受託事業者の数は全部で十四事業者でございます。それから、改善指示を受けた事業者の総数は七事業者、改善指示をした回数の合計は三十七回でございます。

 恐縮でございますが、個別の事業者についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 事前にいただいた資料でいいますと、この二社に出された改善指示は二十七回ということになっておりますけれども、これで間違いないですか。

政府参考人(原優君)

 個別の事業者につきましてここで改善指示があったかどうかということをお答えしますと、これは当該企業の競争上の地位その他について悪影響があると考えますので、その点についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 いや、税金でやっている事業でしょう。そこを受託したところが問題を起こして改善指示を出した。何で言えないんですか、おかしいじゃないですか。

政府参考人(原優君)

 情報公開法におきましても、企業に関する情報でありまして、公開することによりましてその企業の競争上の地位に悪影響を及ぼすと考えられるものにつきましては不開示情報とされておりますので、この場でこの点についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 だって問題を起こしているわけでしょう。契約と違うことになっているということに対して改善指示を出している。それが悪いことをやっているんだったら不利益になっても当たり前じゃないですか。なぜそれを国民の前に出せないかと。おかしいですよ。

 事前にいただいた資料では両社で二十七回ということになっているんです。そうしますと、この二つの会社で改善指示の四分の三を占めているんですね。繰り返し改善指示を受けております。これは悪質だと言わざるを得ません。

 このATGカンパニーというのは、今残業代の未払や労働条件の一方的不利益変更等をめぐって労使間で紛争が起きておりまして、この十五日には労働組合側から都労委に不当労働行為の救済命令申立書も出されております。この経過で重大なことが明らかになったんですが、このATGカンパニーの法人登記によると、本店は渋谷区の元代々木町になっておりますが、関係者がその住所を訪ねても存在を確認できませんでした。同じ住所にあったマンションの管理人に尋ねましても、その会社も社長も知らないと、こういう返事だったわけでありますが、この事実については把握をされておられるでしょうか。

政府参考人(原優君)

 現時点におきまして、先ほど十四の受託事業者がいるということを申し上げましたが、今委員御指摘のように、登記簿上の本店所在地に事務所を有していない者がいるということは承知しておりませんし、それから登記簿上の代表者の住所に当該代表者の住所がないということも承知しておりませんけれども、本事業が適切に行われることを確保するために必要な調査をしていきたいと思っております。

井上哲士君

 でたらめ言っちゃ駄目ですよ。労働組合が言っているでしょう、ちゃんと交渉のときに。私、事前に紙もらっていますよ。ここに、紙。

 昨年度末、法務局の職員がATGカンパニー株式会社の登記上本店にされている場所に出向いたところ、同所に建物が建っていることは現認できたが、同社を表示する看板等は確認することができなかったと、紙で出しているじゃないですか。うそを言っちゃ駄目ですよ。もう一回答えてください。

政府参考人(原優君)

 まだ十分な調査ができておりませんが、御指摘の会社につきましては、東京局の方で本店所在地に行って看板が出ていないということは確認したということでございます。ただ、この本店所在地あての書留郵便は返送されていないということで、今後この実態について書面により報告を求めて調査をしてまいりたいと思っております。

井上哲士君

 初めからちゃんと答弁してください。

 郵送がちゃんと届いていると言っていますけれども、これは労働組合の側が配達証明便に転送不要と書いて送ったら、あて所に尋ね当たりませんということで戻ってくるんです。つまり、郵便局の転送手続をしているから届くだけであって、現場にはあて所に尋ね当たりませんと郵便局も言っているんです。

 実際にはこういう、行っても場所がないと。これはやっぱり登記上と本社の場所とが、ないんじゃないですか。いかがですか。

政府参考人(原優君)

 委員の御指摘を踏まえて調査をしてまいりたいと思っております。

井上哲士君

 これはもう大分前から言っているんです。実際は世田谷区の北沢にある東京支社で業務を行っているようでありますが、この本社の所在地も社長の所在地も実在しない、登記と違うということになりますと、商業登記についての虚偽記載ということになるんですね。

 これ一般論で聞きますけれども、商業登記で虚偽の内容を申請したら、法律上はどういう問題になりますか。

政府参考人(原優君)

 一般論としてお答えしますと、株式会社の登記におきまして虚偽の申請をするという行為は、刑法第百五十七条の電磁的公正証書原本不実記録罪に当たります。

井上哲士君

 代表者が同法で禁錮以上の刑に処されたらどうなりますか。

政府参考人(原優君)

 当該会社の代表者がこの罪によりまして禁錮以上の刑に処せられた場合には、本件の委託契約は解除することができるということになっております。

井上哲士君

 これはいろんな公共サービスの受託全般にかかわることだと思うんですが、この登記についていいますと、ちょっと違う問題があると思うんですね。

 この民間入札の皆さんが作っている実施要項を見ますと、「商業法人登記は、権利義務の主体となる会社・法人を創設し、その組織と業務内容を明らかにして、経済秩序を維持するものである。」と、こういう意義が書かれております。

 その商業登記の事務を受託した会社が、自らが虚偽の登記をしていると。こんなことを許していたら商業登記に対する信頼を土台から揺るがしますし、本来のこの法律上で入札の目的は、より良質な公共サービスといっているんですね。どこがより良質な公共サービスになるのかと。

 私は、これは、こういうところが受けているということは、本当に登記への信頼を土台から揺るがすと思いますが、事実を調査して厳正な対処を行っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(仙谷由人君)

 私どもは、公共サービス改革ということで、市場化テストを取り込むなどして公共サービス関係を改革を進めようとしてきているわけでありますが、そういうある種の改革を実施するときに一番重要なことは、事後的なチェックがなされないと、事前規制から事後チェックへということがしっかりとなされないと、今、井上議員がおっしゃったような非常にいわく付きの業者が参入してくるというふうなことがもしあり得るとすれば、これはゆゆしき事態でございますので、徹底した調査をしてこの受託関係を適正化すると、そのことを推進してまいりたいと思っております。

井上哲士君

 まさにゆゆしき事態になっているわけですね。

 何でこんなことになっているのかと。より良質な公共サービスという目的よりも低価格を重視するような、そういう法務省の姿勢に私は問題があると思います。入札自身が、中身、より良いサービスをするということよりも、価格が低いところの方が有利になるような仕組みになっているんじゃないかと。この大幅な改善をする必要があります。

 元々は、提案書のいわゆる基礎点三百点に対して加点というのがあるんですね、いろんな提案をして。これが三百点あったのを、これ百五十点に途中から下げてしまいました。ですから、非常に低価格のところが有利になるような入札制度になっているんですね。これをまず改善をするべきだと思いますけれども、この点いかがでしょうか。

政府参考人(原優君)

 公共サービス改革法に基づく市場化テストにおきましては、委員も御指摘していただきましたように、公共サービスの質の維持向上という観点とそれから経費の削減という観点、この二つを実現するために価格に加えてサービスの質を評価する総合評価落札方式を採用しております。

 現在の入札実施要項はこの二つの理念を考慮して基礎点も加点も定めておりますので、その評価方法自体は妥当ではないかというふうに考えておりますけれども、今後も適正かつ確実な公共サービスの提供ができるように、かつ民間事業者の創意工夫が生かされて質の高い行政サービスが実現できるように積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

委員長(浜田昌良君)

 井上君、時間が来ております。

井上哲士君

 はい。時間です。終わりますが、入札方法を変えてからこういう業者が入ってきているという事実があるわけでありますから、私は抜本的な見直しをするべきだということを強く求めまして、質問を終わります。

委員長(浜田昌良君)

 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。

 これより両案について討論に入ります。

 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

井上哲士君

 私は、日本共産党を代表して、裁判官の報酬並びに検察官の俸給等に関する法律案の両案に対する反対の討論を行います。

 本案は、人事院勧告に基づき公務員の賃金を引き下げることに準じて裁判官、検察官の報酬、俸給を減ずることを内容としていますが、人事院勧告は公務員の労働基本権を制約する代償措置として設けられているものであり、マイナス勧告を繰り返すなどは目的を逸脱し、受け入れられるものではありません。

 また、公務員の低賃金化は民間労働者の低賃金化を招き、景気の悪循環をもたらし、国民生活の不安定化を招くことになります。

 さらに、憲法並びに裁判所法にあるとおり、裁判官の報酬については、在任中、これを減額することができないものであります。法的行為であれ行政の行為であれ、直接に裁判官の俸給を減額することを禁ずるものとして解するのが通説であり、裁判官の独立性を侵しかねないものであります。

 以上により、両法案の反対討論といたします。


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