国会質問議事録

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外交防衛委員会

shitsumon201111.jpg・引き続き田母神問題を取り上げる。第6航空団が懸賞論文へ集団応募をさせることが、政府見解を否定する意見の組織化を、事実上図っていると追及。


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部改正案には賛成であります。この法改正が一連の防衛省不祥事にもかかわっていることであります。

 今日は、引き続き、田母神氏の問題についてお聞きいたします。

 アパグループの懸賞論文に空自の第六航空団が集団応募するに当たり、幹部論文をわざわざこの懸賞と同じテーマにしたわけですが、実は五年間はこういう幹部論文そのものを課してなかったということを前回の質疑で認められました。この第六航空団のように、この懸賞論文と同じ課題の幹部論文を隊内に課したような部隊はほかにあったんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 これまでの調査によりまして、第六航空団においては、本年八月四日、航空幕僚監部教育課からの懸賞論文募集の紹介を踏まえて、本件論文と同じ真の近代史観を論題とした幹部論文を作成することを指示したことが明らかになっておりますけれども、これ以外にアパグループの懸賞論文と同じ真の近代史観を論題とした幹部論文を作成した部隊や基地については確認をされておりません。

井上哲士君

 第六航空団だけ非常に異例な対応をしているわけですね。

 この幹部論文を課したのが今言われましたように八月四日でありまして、八月末が締切りでしたから、一か月もないときに急遽決めているわけですね。空幕から紹介されたのが五月の二十日ですから、二か月半たってから、言わば締切り間際になって、しかも幹部論文を同じテーマにしながらこれをやらせたと、大量応募を促したということでありまして、大変私は不自然だと思うんですが、何らかのやはり外部からの働きかけがあったんではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 先生、もう一回、ちょっと質問繰り返していただけますか。

井上哲士君

 つまり、八月になっても応募がなかなか集まらないというようなことで、何とかしてくれとかいうことが、何らかのやはり外部からの働きかけが第六航空団にあったんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうかということです。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今のところ、逆に言うと、外部からというのがどういうあれなのかあれなんですが、私どもとすると、外部からのそういった圧力というのはなかったというふうに思っておるところであります。

井上哲士君

 では、なぜ八月まで言わば放置しておきながらこういう対応をしたのかが、私大変腑に落ちないわけですね。しかも、第六航空団からアパ側に対して、締切りに間に合いそうもないということで、締切り後の応募が認めてもらっているということを会見でも述べられております。つまり、第六航空団の関係者についていうと、特別な便宜を受けたわけですね、締切りだけれどもオーケーと。

 この懸賞論文を全国に紹介をした空幕のファクスには懸賞を受け取っても差し支えないというふうに書いてありますが、しかし、現職自衛官が民間主催の懸賞論文で懸賞を受け取っても問題のない要件としては、公平公正な審査ということが挙げられているわけですね。

 ここの応募者だけが締切りで特別な便宜を受けているということは、私は大変公平公正を欠いていると思うわけですが、やはりこの要件から外れているんじゃないかと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 このまとめた経緯に関しては前からお話をしているところでありますけれども、応募の締切りを過ぎて応募を受けるか否かについては、これもう当然主催者であるアパグループの判断でありまして、我々とすると、その是非についてコメントする立場にはないわけでありますが、それが公平公正かと言われると、我々の判断するところではない。アパグループの方の判断で受け取ったということなので、我々とすると、その点についてコメントするのは今の状態では我々の方がすることじゃないというふうに思っています。

井上哲士君

 しかし、懸賞を受け取っても問題のない要件として自衛隊の側が公平公正と言っているわけでありますから、それはやはり当然判断をすべきなんじゃないですか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 この懸賞金を受け取ることを、問題は、我々とすれば当然これ倫理法の第三条第二項に反するものでないというふうに思っておりますし、これが今先生のおっしゃった公平公正な審査ということが行われている懸賞論文であればこの倫理法には反しないということでありますので、そういった意味においては、公平公正な審査が行われているか、審査の方でありますので、受付というものとまたちょっと違うのかなというふうに思いますが、この審査が行われているかについては我々とすると判断するところではないということであります。

井上哲士君

 普通、締切りから遅れましたら審査の対象にもならないわけでありますから、これはやっぱり大変な公平公正を欠くことだと私は思います。

 全体として、この一民間団体の懸賞論文に対して小松基地が全国と比べて大変異例な対応を幾つかの点で取ったわけでありますが、この自身の対応については現時点で適切だったとお考えなんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今回は、航空幕僚監部教育課長が行為としてというか、それに気付いて、懸賞論文の存在に気付いて、そして、それをまた監部で取り上げてそれをファクスで流したということでございますから、これが適切な行為であったか否かについては今後検証していく必要があると考えておりますし、またいかなる規律違反に該当するかも含めて、これはもう当然検証の結果を踏まえて厳正に対処してまいりたいというふうに思っています。

井上哲士君

 今のは幕僚の課長の話ですか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 そうです。

井上哲士君

 要するに、第六航空団がこういう異例な対応をしたことについてはどう考えているのかという質問です。

防衛大臣(浜田靖一君)

 それは、当然、これに対して積極的に参加をしたということでありますので、我々は今それも含めて検証していきたいというふうに思っておるところであります。

井上哲士君

 防衛監察では、法令遵守の意識・態勢ということがこの第六航空団についての監察の言わば目的になっておりますが、そのこと、この異例の対応がこういう法令遵守にかかわる問題だという問題意識で行われているということでよろしいですか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 それは、今のこういった六空団の話というのは、確かに我々とすればいろいろな形で調査もしておりますので、今まだその検証段階でありますので、今のこの時点でコメントは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

井上哲士君

 余りにも不自然なやり方が行われているわけでありますから、これはきちっと、繰り返しになりますけれどもやっていただきたいと思いますが。

 これは、航空幕僚監部が全国にファクスで紹介をしました。その後に応募が少なかったために空幕の人事部長が書簡の形で全国に督促をしているということがその後明らかになったわけですが、これも極めて異例だと思うんですけれども、最初のファクスは公文書なんですが、その後、今度は人事教育部長が書簡という形で送ったと。何でこんなやり方したんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 六月中旬に人事教育部長名で各司令官に対して周知の促進を依頼する旨の連絡をしたわけでありますが、これ、教育課長が五月に紹介ファクスを送信した後に応募状況を確認したところ余り応募者が多くなかったために、六月中旬に上司の人事教育部長から改めて紹介の書簡を送ったものと聞いておるところでございます。

 五月の教育課長によるファクス及び六月の人事教育部長による書簡は、いずれも公文書に当たるのではないかと我々は考えております。

井上哲士君

 この人事教育部長が送った書簡は資料でいただきました。最初のファクスは各部隊に紹介願いますとなっているんです。ところが、この手紙は、広く隊員にお知らせいただきたいという、個々の隊員まで知らせてほしいという踏み込んだ依頼をしております。そして、最初のファクスは歴史教育に役立つということがさらっと書いてありますが、この手紙は、歴史に埋もれた真実を基に国際情勢の推移を解き明かし、独自の近現代史観で日本の活性化に役立つ提言をまとめた論文を広く募るというものですという、このアパ側の立場を紹介して、だから出せということを言っているわけですね。

 私は、アパのこの応募要項を見ましても、特定の立場の提言を後押しをするということが読み取れるわけですね。これをわざわざ紹介をして督促をしたと。政府見解を否定するようなこの意見発表を組織的にやろうとしたんじゃないかということを思われても仕方がないと思うんですが、いかがでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 先ほどから申し上げておりますように、今回、人事教育部長のファクスではなく書簡というもの、これは逆に言えば、先ほどもお話ししたように、応募者が少なかったので、これを改めてより丁寧に書簡の形式で改めて紹介したというふうに思っているわけでありますが、それが組織的にそういった大きな、今先生の御指摘のあったような思いでやったのかどうかというのも含めて、今我々とすれば検証しているところでありますので、今の時点でそれに対してお答えすることはできませんので、御了解いただきたいと思います。

井上哲士君

 この人事教育部長の手紙は更にこう書いているんですよ。隊員応募の論文が最優秀賞として選ばれた場合は部内外への広報効果も絶大であろうと考えるところですと。

 まさに、この最優秀賞に選ばれたんですね。どういう絶大な広報効果があったとお考えでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 その意味では、今回余りにも、先生方から御指摘のあるように不適切だということも含めてあるわけでありますので、一般的にはその効果が現れたかどうかというのは、逆方向に効果が出たんではないかなというふうに思います。その意味では、我々、先生方の御指摘を受けながら我々の自衛隊としての在り方、そしてまた、その教育内容等々も含めて新たに注意喚起、そしてまた、我々としては、皆様方に誤解を与えないようにしっかりと対処せよということが我々としては効果があったことだと思っておりますので、そのことによって歴史教育等々に関してどうのこうの、逆に言うと皆さんが効果があったというふうに言われても、私の方はそれはなかったんではないかなと思っております。

井上哲士君

 つまり、教育的効果ということで始まったはずなのに、これは広報効果をねらっているということを言っているんですね。

 この人事教育部長は、実はこの手紙を出した後の八月から異動になりまして福岡にある空自の西部方面隊の司令となっておりますが、この同隊では、部隊での歴史教育の機運を高めるとして歴史研究発表会の開催を検討していたと。

 こういうような発表会がほかの部隊で行われたことはあるんでしょうか。

防衛大臣(浜田靖一君)

 今先生の御質問でありますけれども、我々とすると、今回のこの案件しか我々聞いておりませんので、他には今のところ、これは調べてみなきゃ分かりませんが、私の今の手元にはそういうことはございません。

井上哲士君

 報道では、こういうものは初めてのことだということでありますが、来年の三月に初めてこの歴史研究発表会が開かれる予定だったけれども、田母神氏の問題もあり、実施する予定はないとしつつ、歴史教育を取り入れることで日本人としての誇りや愛国心を醸成させ、より強固な使命感を確立するねらいだったというふうに言われているわけですね。ですから、まさに過去に贖罪意識があれば使命感を持って任務ができないという、結局田母神氏が言ってきたことと同じようなことが、この人事教育部長が部隊に行ってやろうとしているということがあるわけです。私、先日、いろんな地方の部隊でそういう影響が出ているんじゃないかということを申し上げましたけれども、こういう形でもまさにやられているわけですね。

 ですから、この田母神氏の持論と方針に沿った歴史教育というものの推進が図られているんじゃないか、それがまだずっとやられているんじゃないかと、このことはやはり厳しいまなざしできちっと見ていただきたいと思います。最後、その点を述べていただいて終わりたいと思います。

防衛大臣(浜田靖一君)

 先生御指摘の件、我々も、そういった意味では多くの先生方からも同じ思いで御心配を掛けておるわけでありますので、そうならないようにしっかりと対処してまいりたいというふうに思っておるところであります。

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