国会質問議事録

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決算委員会

  • shitsumon201111.jpg法務局事務の民間化問題。受託企業の年金ごまかしなど指摘。

 


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 この議題の予備費には年金記録確認に関する予備費支出が盛り込まれております。それに関連して、法務局の登記簿等の証明書発行事務の民間競争入札についてお聞きいたします。

 不動産や商業・法人の登記は、国民の財産や権利を守り、経済を支える非常に重要な制度でありまして、四十年間にわたり、この発行事務は非営利団体である民事法務協会の皆さんが担ってこられました。この事務が二〇〇八年から市場化テストによる民間競争入札の対象になりました。特に、二〇〇八年から入札の基準がサービス内容よりも低価格が有利なものに変えられました。これを機に、全く経験のない人材派遣会社が一気に落札をするということになりました。その中にATGカンパニー株式会社及びそのグループ企業であるアイエーカンパニー合資会社というのがあります。この三年間で両社が四十一局二百二十九庁のこの事務を落札をしております。

 私は、昨年の臨時国会で、この会社の法人登記上の本店の住所に本店が実在してないじゃないかということを示しまして、虚偽の登記をしているんではないかと、こういう問題をただしました。まず、その後の調査でどういうふうに判明し、どのように対処をしておられるのか、お答えいただきたいと思います。

国務大臣(江田五月君)

 法務大臣としての最初の答弁をこの参議院で行わせていただき、大変光栄に思っております。

 今の井上委員の御指摘の点は、昨年十一月でしたかね、法務委員会で指摘をされていることで、当時の仙谷大臣、そういうことがあればこれはゆゆしきことであって、調査をして適正にするということをお答えをしたところでございますが、その後調査をいたしました。

 御指摘の両社から報告を求めましたら、両社とも委託契約締結時における登記簿上の本店の所在地と本店としての機能を行っている場所が違うと、所在地ではそういう機能がなかったということが判明をいたしました。

 そこで、両社に対して速やかに本店としての機能を有する場所に本店を移転するようにと、こういう口頭あるいは書面で指導をいたしまして、現在は本店の機能を有する場所に、これは所定の手続、つまり株式会社なら株主総会あるいは取締役会、そういうものの議を経て、あるいは合資会社なら社員総会の議を経て手続をしているという段階だと承知しております。

井上哲士君

 これ、重大なんですね。私、指摘したのは、単に機能がなかっただけじゃなくて、その住所にそもそも事務所自身がなかったということであります。登記で虚偽の申請をする行為は刑法第百五十七条の違反に当たるわけでありまして、この法人登記の虚偽の申請をしている企業がその法人登記の事務を受託をしていると。これは法人登記制度に対する国民の信頼を私は本当に根底から崩すものだと、こういう指摘をしたわけであります。

 そして同時に、これだけじゃないと。この両社が受託の条件である必要な人員体制や研修の実施を守っていなくて、繰り返し改善指示を受けていることや、また残業代の未払等で労働組合側から不当労働行為の救済命令申立書も出されているということも指摘をいたしました。

 先ほどの仙谷前大臣の答弁は、いわく付きの業者が参入してくることがもしあり得るとすれば、これはゆゆしき事態なので、徹底した調査をしてこの受託関係を適正化すると答弁をされたわけでありますが、本店登記以外のこうした問題も含めて、どのような調査と対処をされたんでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 両社の設立の登記ですね、これは、設立といいますか、設立と移転と両方あるんですが、平成十七年とか、あるいは平成十四年とかでございまして、その当時にこれが虚偽の登記であったかどうかというのはちょっと把握ができておりません。しかし、委託契約をした当時は、これはそこに本店というものが、機能がなかっただけではなくて、確かに事務所もなかったということが分かりましたので、早速是正をさせたということでございます。

 なお、この両社が事務の遂行において非常に非能率であるとか、あるいはお客に迷惑を掛けているということがあると、これはやはりいわく付きと言われても仕方がないことになるんですが、これは法務省の、あるいは法務局の方で調べる限りではありますが、待ち時間の点においても、あるいはいろんなお客との苦情などがあるかどうかの点においても、そういうことはありません。待ち時間も長くなく、またお客の満足度も一定のところへ来ているので、そういう意味ではしっかりした仕事はしていただいておるというふうに認識をしております。

井上哲士君

 我々が聞いたところでは、様々な苦情もお聞きをしております。問題は、ただ、そういうことがよければ何があってもいいのかという問題なんです。

 手元に、この業務を落札をした会社の契約社員として関東の法務局で働いている女性の給与明細とねんきん定期便のコピーを配付しております。

 平成二十二年の四月から勤務を始めておりますが、ねんきん定期便を見ましても、この月の厚生年金は未加入になっております。さらに、給与明細を見ていただきたいんですが、七月の給料は二十四万二千百七十円です。ところが、ねんきん定期便では、このATGカンパニーが届け出た標準報酬月額は最低の等級の九万八千円になっているんですね。厚生年金保険料は七千六百九十四円しか納付していないと。これ、食い違っているんです。この消された年金で問題になった標準報酬月額を実際より低くしてごまかすということ、これと同じようなことがやられている可能性があるわけですね。

 厚労省に聞きますけれども、こういう虚偽の届出は何に違反して、どういう罰則があるのか、また給与月額を届け出る保険制度はほかに何があるでしょうか。

政府参考人(石井信芳君)

 お答え申し上げます。

 まず、厚生年金保険法におきましては、事業主に対しまして被保険者の資格取得や報酬月額等に関する届出、これを義務付けてございます。年金事務所におきましては、この届出が適正に行われているのかを確認するために、計画的に事業所調査を行いますとともに、事実に反する届出が行われているとの情報提供があった場合には個別にその事業所を調査しております。

 一般論として申し上げますれば、年金事務所では、こうした調査の中で報酬月額について事実に反する届出が行われているということが判明いたしました場合には、事業主の方に対して適正な届出を行うよう指導いたしますとともに、本来の保険料額との差額分の金額につきましては時効が成立していない過去二年分を徴収すると、こういう取扱いをしてございます。

 また、罰則についてのお尋ねがございました。厚生年金保険法におきましては、事業主が被保険者の報酬月額等に関して届出を行わない場合、あるいは虚偽の届出を行いました場合には、六か月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するという規定が置かれてございます。

 それから、事業主が給与を基準として保険料を徴収している他の制度についてのお尋ねでございますが、厚生労働省で所管している制度の中で厚生年金と同様に標準報酬月額に一定の率を乗じて保険料額や拠出金額を算出しておりますものは、健康保険、船員保険、介護保険、児童手当拠出金がございます。

井上哲士君

 実は、この女性だけじゃないんです。和歌山でやはり同じように、このATGカンパニーの契約社員で実際、給与額は十六万円なのに標準報酬月額が九万八千円になっているという、同じケースを私は報告を受けました。全国で同じようなことをやっている可能性もあるし、ほかの制度に連動さしている可能性もあるんですね。ですから、この法の支配をやるべき法務省のその業務の現場で法律違反が行われていると。

 私は、こういうことが放置をされれば、まさにこの登記制度の根幹にもかかわることでありますし、むしろ法務省が違法行為を奨励しているようなものになると、こういうふうに思うんですね。ですから、これはきちっと厚労省とも連携して徹底した調査も行うし、事実が発覚すれば委託解除も含めた厳正な対処を取るべきだと、こう思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(江田五月君)

 これは一般競争入札で行われておりまして、入札の際に必要書類として入札参加者から健康保険料及び厚生年金保険料の未納がないことを証する書面、これは年金事務所が発行する保険料納入告知額及び領収済額通知書の写しの提出を求めておりまして、その限りで法務省としては審査をしているんですね。

 しかし、それが実際と違うということが起きた場合にどうするかというお尋ねですが、法務省としてはそこはなかなか調査が困難ですが、いずれにしても、御指摘、これはもう法の支配を徹底する法務省への応援と受け止めまして、しっかり対処していきたい。

 ただ、公共サービス改革法では契約の解除をする場合が法定されていまして、そこにぴたっと当てはまるかどうかというのは、これはまたなかなか難しい判断がございまして、いずれにしても間違いのないように正していきたいと思っております。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、厳正な対処をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

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