国会質問議事録

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決算委員会

菅総理らに原発「安全神話」で質問。老朽原発延命ともんじゅの再開、中止迫る

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 福島第一原発は、まさに最悪の事故になりました。初動における危機的事態にふさわしい政府の対応が決定的に遅れました。そして、政府は、まともな説明もないままに、避難指示、屋内退避、計画的退避、そして警戒区域など、周辺住民と自治体に多大な混乱と苦難を押し付けてきました。避難所の住民からは、安全と言ってきたじゃないか、どうしてくれるんだと、こういう怒りの声も上がっております。なぜこういう事態になったのかということを私は問いたいわけであります。

 まず、今回、地震と津波によって全ての電源が失われて、冷却水は確保できず、炉心損傷に至り、レベル7という事故になりました。シビアアクシデント、過酷事故と言われる重大な事故であります。アメリカのスリーマイル島原子炉事件、そして旧ソ連のチェルノブイリの事故、これを受けて国際原子力機関は、こうした重大な事故を想定した安全対策を全世界に求めております。

 安全委員会来ていただいておりますが、日本はこの全電源喪失などによって炉心損傷に至る重大事故についてどういう対策を取ってきたんでしょうか。

政府参考人(班目春樹君)

 原子力安全委員会では、平成四年にシビアアクシデントの対応として、「アクシデントマネージメントについて」という文書を発出したところでございます。その中で、シビアアクシデントが生じた場合の緩和策を事業者自身が整備し、それを確実に実行することを強く推奨してございます。

 それから、原子力安全委員会としましては、昨年、これから取り組むべき重要課題というのを少し整理してございまして、その中でこのシビアアクシデント対策というものについても徹底的に見直すということをまさに始めたところでございます。

 しかしながら、実際にはこのような大事故を防げなかったということに関しまして原子力安全委員会としては深く反省し、今後、指針類の改訂ですとかあるいは監督等に努めてまいりたいと思っている所存でございます。

井上哲士君

 これがそのアクシデントマネジメントの指針でありますが、これ、どういうふうに位置付けているのかと。今もありましたように、原子炉設置者において効果的なアクシデントマネジメントを自主的に整備することを奨励するということにすぎないわけですね。そして、その具体的な対策の内容いかんによって原子炉の設置又は運転を制約するような規制的措置が要求されるものではないと、ここまで言っているわけですね。

 これではもう電力会社に丸投げであって、国がこの重大事故に対する対策を放棄したものじゃないですか。経産大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(海江田万里君)

 今お話のありました原子力安全委員会からの指摘を受けまして、原子力安全・保安院では平成四年の七月に事業者に対してアクシデントマネジメントの対策を取るように指示をいたしました。そして、その結果、平成六年三月に各社からアクシデントマネジメントの検討報告書が提出をされました。しかし、その中身は、先ほど委員長からもお話がありましたけれども、主に電源喪失の対策として複数号機間の電源の融通を可能とするよう設備改善を行うということを、実はこのアクシデントマネジメントの中身として位置付けがあったわけでございます。

 ですから、これだけでは特に津波の対策などでは不十分でございまして、こうした事態をあらかじめ想定し、十分な対策をできなかったという、限界があったというふうに認識をしております。

井上哲士君

 確認しますが、今言われた各電力会社からの報告の中で、今回福島で起きているように、冷却水を確保するための電源機能を長時間にわたって失うと、こういう事態を想定されたものはあったんですか、なかったんですか。

国務大臣(海江田万里君)

 今もお話をいたしましたけれども、とにかく電源の複数化と申しますか、備えを十分にしろということでございます。

井上哲士君

 つまり、隣の原発などから引いたら確保できるということで、長時間失うということは想定していないんですね。そういう報告書を政府は了承してきたわけなんです。

 それもそのはずでありまして、原子力安全委員会が九〇年に作った原子炉の安全設計審査指針というのがあります。こう書かれておりまして、長時間にわたる外部電源の喪失は送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要がないと。わざわざ、考慮する必要がないと、この安全指針自身が言っているんですよ。これでは電力会社がそういうことを想定していないのは当たり前なわけでありまして、なぜ安全委員会は、長時間の電源喪失は考慮する必要はないと、こういう指針を作っているんですか。

政府参考人(班目春樹君)

 ただいま井上委員が御指摘になったとおり、指針はそのように書かれてございます。

 この指針の改訂は平成二年に行われております。したがって、平成四年に、むしろシビアアクシデント対策をしっかりやるようにという文書を提出したところでございます。

井上哲士君

 意味分からないですよね。大体、この指針は、津波については地震以外の想定される自然現象と、その他大勢にしかなっていないんですね。全く必要なものになっておりませんし、そもそも、安全設計をするときに地震の強さとか津波の大きさなど甘い想定をしては絶対なりません。同時に、どんな想定をしても想定外ということはあり得るという立場で重大事故に対する対策を取ることが必要なんですね。

 ところが、今、この九〇年の指針の後に九二年にアクシデントマネジメント対策を出したと言われましたけれども、そのアクシデントマネジメントの九二年の決定自身が全く逆の考え方なんですね。こう書いているんですよ。我が国の原子炉施設の安全性は、現行の安全規制の下に、設計、建設、運転の各段階において、多重防護の思想に基づき厳格な安全確保対策を行うことによって十分確保されていると、これらの諸対策によってシビアアクシデントは工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さいものとなっていると、こういうふうに書いているんですね。

 ですから、九〇年の指針で不十分だっただけじゃなくて、むしろこの九二年のアクシデントマネジメント対策で改めて安全神話を宣言しているんですよ。こういうことが事態をつくってきたわけで、ですから、世界各国はチェルノブイリなどの事件を受けて重大事故対策を強めているのに、日本は、現実に起こることは考えられないといって、むしろ国の規制対象から外して電力会社に丸投げしたんですよ。ですから、今回の事故が起きても、この間の東電社長、予算委員会に来られましたけれども、国の範囲内でやってきましたと、こういう発言になるわけですね。

 総理、やはりこういう安全神話の下で重大な事故に対する構えも備えもなかったということが私は今日の深刻な事態をつくり出したと思っておりますけれども、総理、いかがお考えでしょうか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 現時点はまだ原発事故が収束しておりませんので、まずは何をおいても収束の努力をすることが当然必要だと考えております。

 その上で、今御指摘にもありましたように、じゃなぜこれだけの重大事故の発生を防げなかったのか、これまでの考え方が十分だったのか、これもまた徹底的な検証をしなければならない段階がそう遠くない時期に来ると思っております。

 私も、当初、事故の発生、そして全ての電源が落ちたと、さらには、電源車を持っていけば大丈夫だという指摘もありましたけれども、電源車が着いてもなかなか電源がつながらない等の経緯を見ていて、やはり、想定外という言い方はこれだけの重大な問題ではあってはならない、今後考えるときには、そういうこと、まさに想定外というようなことがないようにあらゆることを想定して対応していかなければならないと、こう考えております。

井上哲士君

 想定外ということがこの間何度も言われたわけですが、我が党は、この地震や津波が起きて、電源が全て失われて炉心の冷却ができなくなると、こういう事態が起こることはこの間国会でも指摘をしてまいりましたし、東電にも申入れをしてきました。やはりこれに耳を貸さなかった東京電力、そして歴代自民党政府のこの責任は大きいんですよ。同時に、やはりこの安全神話を受け継いだ民主党政権の責任もこれは当然問われなくてはなりません。

 しかし、この間の対応を見ておりますと、本当にこの安全神話に対する真剣な反省があるんだろうかということを感じるわけですね。例えば、説明責任一つ取っても、東電は放射能の放出状況などの基礎的なデータもまだ全ては出していないんです。政府が求めてもまだ出していないデータがあるんですね。そして、政府からのいろんな説明、原発の現状とか今後の見通しについても、とてもこれは納得できる説明でないと、関係自治体からも住民からも出ているわけですよ。ですから、これまでずっと原発というのは安全だ安全だと、大丈夫だと、こういう説明、広報しかずっとしてこなかった。私は、この枠から今の対応が、まだまだ姿勢が変わっていないと思うんです。

 先ほど収束が大事だと言われました。本当にそうです。収束に対して本当に全体の英知を結集する点でも、私はきちっと情報を出していくということが必要なんだと思うんですが、それがなされていないわけで、やはりこういう安全神話への根本的な反省があって、そしてしっかり情報を国民の前に明らかにしていく、このことで私は今の危機対応もできると思いますけれども、改めて総理、その情報という点でいかがでしょうか。

国務大臣(海江田万里君)

 お答えをいたします。

 一つだけ御理解をいただきたいのは、まず地震が起きて、津波が来て、そして電源を喪失しましたから、一時期のこのパラメーターと申しますか、資料がないことは事実でございます。全部が全部そろっているという状況ではございません。しかし、やはり手元にある資料は全部出すようにということで、私は、資料の保存ですね、これをまず命じました。

 そして、せんだって衆議院の経済産業委員会で御党の吉井委員から御指示がございましたから、私は昨日文書にしまして、なかなか出てまいりませんので、文書にしまして東京電力にはっきりとその資料を全部出すようにということを命じましたので、間もなくそれが上がってくると思います。そうしましたら、委員会を通じて皆様方にしっかりとお示しを申し上げます。

井上哲士君

 きちっと示していただきたいんですが、事ここに至るまでまだ東電が資料を、データを全部出していないということ自体は極めて重大なんですね。

 総理、お聞きしますが、民主党政権は単に安全神話を受け継いだだけじゃなくて、自公政権以上に原発推進という政策でありました。その柱が、昨年のエネルギー基本計画で決めた二〇三〇年までに十四基の原発を新増設するというものであります。

 総理は我が党の志位委員長との会談で、この新増設については白紙も含めて見直しをすると、こういうふうに言われました。この点を確認をしたいことと、同時に、やはりこのエネルギー基本計画全体もこれは白紙からの検討をすると、こういう立場でよろしいでしょうか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 今回の原発事故の重大性というものを考え、また今後原子力政策、さらには広くエネルギー政策全体に与える影響というものも考え、またこの原因というものもこれから徹底的な検証をしなければいけないということも当然あるわけでありまして、そういう点では、これまで決めてきたエネルギー基本計画について、やはりもう一度そういった徹底した検証を行う中からどうすべきかということをある意味白紙の立場で考える必要があると、そのように思っております。

井上哲士君

 白紙の立場に戻すということで言いますと、私は、民主党政権が踏み込んだ問題について一つ一つ検証し、そして停止をすべきだと思うんですね。一つは、老朽原発の延命です。

 これ、総理、お聞きしますけど、各電力会社は当初、原発の寿命というのは大体三十年から四十年ぐらいを想定をしておりました。老朽原発というのは、振動などによる金属疲労もありますし、それから冷却水や蒸気などによる侵食や腐食が起こるということで、その安全性というものが指摘をされてまいりました。同時に、技術的にも古くて、耐震性も科学的評価が十分でないというふうに指摘をされてきたわけですね。

 今回事故を起こした福島第一原発の一号機というのは、この三月でちょうど営業開始から四十年だったんです。その四十年の直前の二月に政府は更に十年間営業運転を行うことを認可をしたわけですね。その延長認可の直後に今回の事故が起きたんですよ。これ、本当に重大だと思うんですね。日本には三十年以上運転をしている原発が十九基あります。敦賀一号機と美浜一号機はもう四十年を超えております。

 総理、白紙という点でいうならば、こういう老朽原発の運転の延長、これも中止をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(海江田万里君)

 御指摘の高齢化の、老朽と申しますか、原子力発電機につきましては、まずやっぱり三十年のところで一回しっかりと点検をいたします。そして、先ほどの東京電力の福島第一発電所の炉につきましては、三十年目が終わって、今度はその十年後の四十年目の検査が終わったところでございます。

 もちろん、私どもは、この三十年そして四十年、そういった節目ごとにしっかりと、そのときの求められた基準に、定められた基準に従いましてしっかりとした点検をやっているということは事実でございます。

井上哲士君

 ドイツはこの福島の事故を受けて老朽原発の稼働延期計画を凍結しました。そして、七〇年代に造られた原発八基の稼働を一時停止をして、今総点検をやっていますよ。ドイツはそうかもしれないけれども日本はやらないと、大丈夫だというんなら、結局、安全神話にとらわれている、全く変わりないんですね。これは是非きちっと総点検の上、私は停止をしていただきたいし、もう一つ、高速増殖炉の問題、お聞きをいたします。

 高速増殖炉は安全性や経済性の面で世界的にはもう撤退をしていっております。ところが、この民主党政権になりまして、十四年間ナトリウム事故を起こして停止をしていた福井県の「もんじゅ」の運転を再開しました。これ、本格運転を目指して計上をされている予算は二百十六億円ですね。一日六千万円ですよ。私は、白紙というんであれば、民主党政権の下で踏み出したこの「もんじゅ」の運転再開は中止をして、こういう危険な計画も中止をすべきだと思いますが、総理、白紙と言われたんですから、ひとつ総理の口から答弁をお願いしたいと思います。

内閣総理大臣(菅直人君)

 まず、白紙というふうに申し上げたのは、今あるものをやめるという意味ではなくて、検討するときに、これまでの計画がこうなっているからそのまま行くという、そういうことについてはもう一度白紙から検証しようということであります。

 そういう意味で、今、既存の原子力発電所あるいは高速増殖炉の課題について、長期的な意味ではいろんなことは検討する必要があると思いますが、今すぐそれらを停止するということには、そこまでは考えていないということであります。

井上哲士君

 民主党政権になって、十四年間も停止していたものを踏み出したんですよ。私は、それは元に戻すべきだと思います。

 ドイツは、国内にある十七基の原発の早期廃止を国と各州が合意いたしまして、二〇二〇年ごろをめどに原発からの完全撤退という方針の下で、再生可能エネルギーへの転換などの政策についてこの六月にも法案を出すというふうに言われております。既にドイツは発電量の一六%を自然エネルギーに転換をしているわけですが、それを更に進めるものなんですね。

 私は、やはりドイツのように、きちっと期限を決めてこの原発依存から自然エネルギーへの転換を進めるべきだと思いますが、最後、総理に御決意をお伺いしたいと思います。

内閣総理大臣(菅直人君)

 私も、我が国のこの自然エネルギーの取組は、技術的には高いものがありますけれども、残念ながら量的にはまだまだ不十分だと思っておりまして、もっと積極的に取組を強めるべきだと思っております。と同時に、やはりエネルギー全体の短期、中期、長期の見通しを持って計画を進めていかなければなりませんので、例えば今言われたような新たな原子力の計画を従来と変える場合には、じゃその間をどういうエネルギーで対応するのか、あるいは省エネ等で対応できるのならばそういう計画も併せてきちっと検討し、必要なときには決めていきたいと、こう思っております。

井上哲士君

 終わります。

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