国会質問議事録

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決算委員会

高速増殖炉「もんじゅ」の問題を取り上げ、高木文科大臣、鈴木・日本原子力研究開発機構理事長に危険で採算性のめどもないもんじゅは中止せよとせまりました

 
井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 福島第一原発の大事故を通じて、原発行政の抜本的転換が求められております。私も高速増殖炉の「もんじゅ」の問題についてお聞きいたします。

 運転開始直後の九五年の十二月にナトリウム漏れの火災の発生という大事故を起こして、以来十四年五か月間、この「もんじゅ」は停止をしておりました。去年の五月に試運転を再開いたしましたけれども、その直後にトラブルが続出をする。そして、去年の八月には炉内の中継装置が落下するという事故で、再び今停止をしております。

 まず、原子力研究開発機構からも来ていただいておりますが、「もんじゅ」が運転を開始して以来、正常に運転できたというのは一体何日と何時間になるんでしょうか。

参考人(鈴木篤之君=日本原子力研究開発機構理事長)

 お答え申し上げます。

 先生が今おっしゃいました運転開始というのは、一九九四年の六月に臨界にしてからやるという、そういうことでございますと、私ども記録を見ますと、全部で原子炉をそういう意味で運転をしている時間は五千三百時間四十五分ということでございます。

 ただ、先生御承知のように、「もんじゅ」は今運転段階にはございません。建設段階でございます。したがって、「もんじゅ」はいろいろ運転して特性を取りながら、止めまして、その結果をまた調べてという繰り返しをするのが今の段階でございます。

 そういうことなので、是非そこは御理解いただけたら有り難いと思います。

井上哲士君

 運転繰り返していないんですよ。ほとんど止まっているんですよ。それはっきりさせていただきたいんですね。

 これまでの総投資額及び十四年間の運転停止中の維持管理費の総額は幾らになるでしょうか。

国務大臣(高木義明君=文部科学大臣)

 昭和五十五年、一九八〇年から平成二十三年度まで、二〇一一年、「もんじゅ」の総事業費については、これ午前中にもお答えいたしましたが、九千四百八十一億円であります。このうち、運転停止期間中の費用は二千六十三億円であります。

 以上でございます。

井上哲士君

 与党議員からの質疑もありましたけれども、停止中でも一日五千五百万円掛かっていると。今の総投資額からいいますと、一時間の運転当たり約一億七千万円ぐらいのお金が掛かっているということになると思うんですが、じゃ、一体どれだけの研究成果が得られたのかという問題であります。

 総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が二〇〇九年の十二月に文部科学大臣に対して「もんじゅ」にかかわって勧告をしております。その中で、一、停止期間中にどれだけの経費を投じたのか、二、停止期間中にどのような研究成果が得られたのか、三、停止により高速増殖炉サイクル研究開発にどのような影響を与えたのかを公表し、国民に説明するように求めておりますが、この二番目の停止期間中の研究成果、これはどういうことが公表されたんでしょうか。

国務大臣(高木義明君)

 「もんじゅ」については、今御指摘のとおり、平成二十一年の十二月に政策評価・独立行政法人の評価委員会によって、停止期間中に得られた研究成果等について国民に分かりやすい形で公表するよう、こういう指摘を受けております。

 これを踏まえて、原子力機構では、まず一つ、「もんじゅ」の安全性の一層の向上、二つ、地震に対する安全性の向上、三つ目、運転管理技術、保守管理技術の向上、こういったことについて、停止期間中に得られた成果について、まず一つに公表でありますが、福井県民に対した敦賀本部の報告会、これが一つ、それから二つ目には、専門家と地元市民、学生との交流を図りながらエネルギーに関する重要テーマを発信する国際エネルギーフォーラムを持っておる、三つ目には、一般の方々を対象とした説明会、もんじゅフォーラムを設けた、四つ目には、ホームページによる情報提供の場で分かりやすい説明に心掛けておると、このように私は聞いております。

 「もんじゅ」のような大型研究開発事業においては、これはもう多額な国費を投じるため、その使途や成果については国民に分かりやすく公表するということはもう当然でございまして、そういう意味で、私たちとしてはこの取組が更に行われるように原子力機構に対して指導をしてまいりたいと、このように思っております。

井上哲士君

 運転させていろんな知見を得るものでしょう。停止をしているその間に事故への対応とか安全設計に生かすということしか事実上言えないということに私は一番の問題があると思うんですね。

 そもそもナトリウム漏れの事件というのは設計ミスですよ。動かす前に解決すべき問題だったわけですね。しかも、復旧作業中に四回もトラブルによって運転再開は延期をされ、その結果、十四年五か月止まり、そのうち一日五千五百万ずっと掛かったと。これが成果だと言われても国民は納得しないわけであります。

 そして、じゃ、相次ぐ事故が安全運転に生かされたのかと。運転再開直後にもナトリウム検出器の不具合が連続いたしました。さらに、運転員が言わば原子力のブレーキともいうべき制御棒の完全な挿入の仕方を知らなくて作業が中断するという驚くべきトラブルも起きたわけですね。しかも、そのトラブルについて地元自治体への通報が遅れました。ナトリウム漏れの事件のときにも通報の遅れとかビデオの改ざんが大問題になったにもかかわらず同じことが起き、そして昨年の中継装置落下についても、関係機関への通報は事件発生後一時間半だったということで批判の声が上がっておりますが、なぜこういうことが繰り返されるのか、いかがでしょうか。

参考人(鈴木篤之君)

 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘の点は、私も機構におりまして大変申し訳ないと思っております。やはり、もっとその事象が発生してから早くこれをしかるべき機関に連絡し、国民にお知らせするという、こういうことについて職員がもっと敏感に真剣に取り組んでもらわなきゃ困ると思っております。

 先生お尋ねのなぜかということでございますが、これは私、機構に参りましてからその都度いろんなトラブルが発生するたびに現場に参りまして、どうしてかを調べたり、みんなと一緒にその議論をしてまいりました。一つ言えますことは、やはり現場では、とにかく現場の安全、つまり原子炉事故だとか放射線の漏えいだとか、そういうことにつながらないようにすることをやはりどうしても最優先で考えておりまして、したがって、まず連絡する前に、このことが本当に大きなトラブルでないんだろうということを確認することに大変な労力を、労力といいますか、当然のことですが神経を使っております。

 ですから、例えばIVTMでありますが、これはそれを、今機構で定めておりますルールは三十分ルールと申しまして、トラブルが発生してからできるだけ早くお知らせすると、これを三十分と置いておりますが、三十分というのはどこからかといいますと、通報連絡責任者という者を常に置いておりまして、その責任者がその事実を知ってから三十分以内に報告するという、そういうルールを定めております。ところが、IVTMの場合は、現実にそのような事象が発生してから残念ながら責任者に連絡するのに一時間も掛かっておりました。大変申し訳なく思っております。

井上哲士君

 つまり、そういう対策をやっても、結局同じことを繰り返しているんですよ。これは隠蔽体質だと言われても仕方がないんですね。

 しかも、昨年の八月には燃料交換に使う重さ三・三トンもある炉内中継装置が原子炉内に落ちると、こういう事故を起こして、撤去できないまま再び停止をしております。なぜこういう事故が起きたのか、復旧の見通しはどうなっているんでしょうか。

参考人(鈴木篤之君)

 お答え申し上げます。

 なぜ起きたかでございますが、これは炉内中継装置という、先生おっしゃるように、三・三トンもある重量物なんですが、これをつかみに行くその装置の方がちょっと曲がっていたということでありまして、そのために十分つかみ切れない状態で引き上げようとして、それで途中で落下してしまったということでございます。

 そのような理由でございまして、その結果として炉内中継装置が一部変形いたしました。そのために、引き上げる通路が通過できないような状況でございますので、その妨げになっている周囲の構造物を一緒に取り外しまして、炉内中継装置を一度外に出します。出しましてから必要な修復、改造を行って元に戻したいと、こういうふうに考えております。

井上哲士君

 膨大な費用が掛かって、復旧工事には十七億五千万掛かると聞いておりますが、これで一年以上の、秋以降になると言われていますから、一年以上の停止なわけですね。これ、非常に復旧作業は困難極めたと聞いておりますが、なぜかというと、高速増殖炉は冷却に水を使う通常の軽水炉と違いまして、冷却材として液体ナトリウムを使っています。不透明なわけですね。しかも空気に触れると反応して燃えると。ですから、内部を直接見ることができないということで、この機械が、装置が曲がっているということが分からなくて、二十四回もクレーンのつり上げをやったけれども失敗をしたと、こういうことになっているわけですね。ですからそういう今おっしゃったような大工事になったわけですね。

 私、装置が衝撃で変形をしている以上、原子炉が傷ついている可能性がありますから、やはり目視による原子炉内の点検をするべきだと思いますけれども、やるんですか。

参考人(鈴木篤之君)

 その点につきましては、まず引き上げてみまして、炉内中継装置にどのような傷等が付いているのかということについて、これを慎重に見極めた上、判断したいと、このように考えております。

井上哲士君

 やるんですか、やらないんですか、もうちょっとはっきり言ってください。

参考人(鈴木篤之君)

 炉内中継装置について子細に検討して、そして炉心の構造物に影響が及んでいるかどうかについて評価したいと、こういうふうに思っております。

井上哲士君

 福島第一原発でも、目視ができないということで本当に困難を極めてきたわけですね。やはりこういう事故が起きた以上、私はちゃんと目視をするということをはっきり明言されるべきだと思うんです。結局、ナトリウムを抜きたくないということがあるわけですね。

 ですから、やはり、冷却材にナトリウムを使う、水や空気に反応します、コンクリートに触れるとその中の水とも爆発的な反応をする、これを使っているという、非常に扱いが極めて厄介なものだという根本的な問題が改めて私浮き彫りになったと思うんですね。

 高速増殖炉というのは、こういうナトリウムを冷却材に使うという問題もありますし、強い毒性と放射線を持つプルトニウムを燃料とするという問題もある。それがあったからこそ、非常に危険性もある、技術的困難もある、そして経済的な採算が取れる見込みがないということで欧米各国はこれから撤退をしているわけですね。なぜ、にもかかわらず日本はこの計画にしがみついてきたのか、一体どういう展望があるのか。もう撤退すべきじゃないですか。

国務大臣(高木義明君)

 現在、この高速炉に関する研究開発については、日本そしてフランス、ロシアといった従来から研究開発を行っておる国に加えて、近年では中国、インドといった国も強力に開発に取り組んでおります。この技術的優位をめぐって今国際的な激しい競争が行われておると、こういう状況と承知をしております。

 それらの国において、現時点は増殖を目的にはしておりませんが、高速炉の技術は柔軟性があって、一度高速炉技術を持てば運転条件を適切に設定するなどの方法によって増殖技術として活用できるものであると、その意味においては高速炉開発も高速増殖炉開発も大きな差はないと、こういう認識でございます。また、世界的に各国がそういう意味では高速増殖炉技術から撤退しているとは言えない、このような考え方であります。

 私たちの国は、もう言うまでもなくエネルギー資源に乏しい我が国でありますから、今の原子力政策大綱、これにおいて、高速増殖炉サイクル技術は長期的なエネルギー安定供給に貢献できる可能性を有するということから、その実用化に向けて研究開発を着実に推進すべきと、こういううたわれ方をしております。

 ただ一方、「もんじゅ」などの今後の高速増殖炉に係る政策を含む我が国の原子力政策の在り方については、福島原子力発電所の原因についての徹底的な検証、調査、こういったこと、あるいは国民的な各界各層の御意見、こういったもの、さらには我が国のエネルギー政策の見直し等を踏まえて検討することとしております。

井上哲士君

 フランスや米国、今もおっしゃいましたように、増殖ではなくて核廃棄物を燃やして減量する手段なんですね。撤退してはいないと言われましたけれども、例えばイギリスのサッチャーさんは、ウランの枯渇に備えた保険としては掛金が高過ぎると、こういうふうに言って、採算性もないということで撤退しているんですよ。そこをやっぱりはっきり見る必要があります。国内でも原発を推進してきた方からも様々な批判の声が上がっています。

 東京電力で原子力本部長、副社長を務めた豊田正敏さんが昨年の十一月、ある新聞でこう述べているんですね。高速増殖炉は建設費が高く付く上に、燃料の成形加工費や再処理費も割高であり、今世紀中に軽水炉並みの経済性が得られる見通しは暗いと。建設費も高く付く、燃料も再処理費も割高だと、採算の見込みがないと言っているんですね。そして、ナトリウムが漏れた場合、コンクリートと激しく化学反応し、また制御棒の不動作が起きれば暴走事故となって燃料が粉々に飛び散る可能性があり、安全性、社会的受容性に欠ける、社会的に受け入れられないと、こういうことまでやっぱり原発を推進をしてきた人も言っているということは、本当に私は重要な意見だと思います。

 しかも、地震の問題がありました。あの周辺には活断層があるということを再三指摘されてきたのに認めてこなかったわけですが、あの中越沖地震で柏崎刈羽原発が想定外の揺れをするということで改めて調査をして、そしてあの地域に、「もんじゅ」の場合、二百メーターのところに十五キロもある活断層があるということが明らかになったわけですね。世界でもこんなところにある原発というのはありません。今回の福島原発で想定外という言葉はもう使えないという状況なわけでありますから、この地震災害ということが起きたときに、ナトリウム漏れがもし配管破裂などで起きたら本当に大事故になるわけですね。

 そういう点でいっても、これは根本的な見直しをする。先ほど白紙からエネルギー基本計画見直すというお話もありましたけれども、やはりこれはまず中止をして、核燃料サイクル自体を中止をするべきじゃないですか。改めていかがでしょうか。

国務大臣(高木義明君)

 御意見もしっかりお受けをしますけれども、先ほど申し上げましたとおり、我が国の原子力政策の在り方、そしてまたエネルギー政策の見直しも含めて検討していかなきゃならぬと思います。

井上哲士君

 交付金の問題も聞きたかったんですが、時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

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