国会質問

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法務委員会

2011112302_01_1.jpg・「公務中」米軍属の裁判権問題 2回目


 
 
井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 前回の質問で、公務中を理由に日本で不起訴になったアメリカの軍属がアメリカ最高裁の判決によってアメリカの軍法会議にかけられないと、誰からも裁かれないということを指摘をいたしました。

 その際、この公務中の軍属犯罪のアメリカにおける処罰の状況について明らかにするように求めて、法務大臣は検討を約束をされました。まずこれを明らかにしていただきたいと思います。

法務大臣(平岡秀夫君)

 検察当局におきましては、軍属による公務中犯罪のうち日本国民に対して犯されたものに関して、米軍当局に懲戒処分の結果を照会して回答を得ているところでございます。

 その回答結果によりますれば、平成十八年九月から平成二十二年までの間に第一次裁判権なしを理由に不起訴処分とした六十二件については、米軍当局から懲戒処分が行われたと回答を受けたものが合計で三十五件、処分なしと回答を受けたものが合計二十七件であると承知しております。

井上哲士君

 お手元に法務省の資料を配付いたしましたけれども、軍法会議にかけられた者はゼロ、そして六十二人中二十七人は懲戒処分も受けていない、四四%が何の処分も受けていないわけですね。驚くべき実態であります。

 私、大臣にちょっと受け止めを聞きたいんですが、この問題は各紙が報道いたしました。特に沖縄の新聞は、命軽視だと、米軍犯罪野放し、逃げ得だ、こういう見出しで県民の激しい怒りの声の広がりを報道をしておりますが、大臣はこの怒りの声をどう受け止められるでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 沖縄県民のみならず、基地を抱えた地域の住民の皆さんの声は真摯に受け止めていかなければいけないというふうに思いますけれども、ただ、米軍属のこの犯罪に対する処分については米軍当局が米国の法令にのっとって行った処分にかかわる事柄でありまして、私が法務大臣としてお答えする立場にないということで御理解賜りたいと思います。

井上哲士君

 理解できません。

 提出された資料は、二〇〇六年九月以降の数字であります。注一にありますように、この月からアメリカに照会をし始めたという理由でありますけれども、なぜ二〇〇六年の九月から照会をするようになったんでしょうか。

法務省刑事局長(稲田伸夫君)

 お尋ねの報告につきましては、まず、検察当局において米軍当局による懲戒処分の結果を適切に把握するために、軍属による公務中犯罪で日本国民に対して犯されたものに係る事件のうち、平成十八年九月以降に第一次裁判権なしを理由に不起訴処分としたものについて、不起訴処分の都度米軍当局に照会し、回答を得ているというものでございます。

 お尋ねの中で、なぜこの時期からかというようなこともございましたが、これにつきましては、このころから米軍当局においてこの軍属による公務中犯罪について公務証明書を発給して、ということは、すなわち第一次裁判権を行使するという意向が示されたことを踏まえまして、このような対応をするようになったと承知しておるところでございます。

井上哲士君

 そうしますと、確認しますと、複数の報道によりますと、平時に軍属を軍法会議にかけるのは憲法違反だという一九六〇年のアメリカ最高裁判決を受けて、米軍は軍属犯罪についての公務証明書を発行しないと、こういう運用を続けていたけれども、この平時に軍属が起こした犯罪についてアメリカ国内で裁くことができるといういわゆる法律、軍事域管轄法、MEJAとも呼ばれていますが、これが二〇〇〇年に制定をされていた、それを受けて〇六年から公務証明書が発行されるようになったと、こういう報道をされておりますが、こういうような運用がされてきたということで確認してよろしいですか。

法務省刑事局長(稲田伸夫君)

 まず、私の立場からお答えを申し上げる限りで申しますと、私どもに残っております資料で確認する限りでは、平成十六年以降しか資料が残っておりませんので、その後、平成十八年八月までの間に、検察当局が軍属による犯罪について公務中であるとして第一次裁判権なしを理由に不起訴処分にした事案は承知していない、すなわちなかったと思われるということでございます。

 なお、米軍当局におかれてその公務証明書をどういうふうに扱うかということでございますが、これは、その被疑者が所属する部隊の指揮官が犯罪が発生した地の検事正に対して提出されるものというふうにされているところでありまして、これを発給するか否かは米軍当局が判断する事柄でございますので、お答えすることは困難でございます。

井上哲士君

 それでは、この一九六〇年から今資料で出ています二〇〇六年の八月まで、軍属に対するアメリカからの公務証明書の発行状況を資料として提出いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

法務省刑事局長(稲田伸夫君)

 先ほど申し上げましたとおりでございますが、私どもの資料により確認できるのは平成十六年以降でございまして、その後、平成十八年八月までの間においては、このように、公務中であるとして第一次裁判権なしを理由に不起訴処分にした事案がないということから、この間につきましては公務証明書が発給されていないというふうに考えられますが、それ以前につきましてはお答えをすることは困難であるというふうに考えております。

井上哲士君

 前回の答弁で、この公務中軍属について、日本に第一次裁判権なしとして不起訴という取扱いになっている理由について、大臣は、いろんな経緯もありとしつつ、具体的には先ほど紹介しましたアメリカにおいても平時における軍属の起こした犯罪について国内法で裁くという法律も制定されているということだけ答弁をされました。

 では、これまで日本で公務中を理由に不起訴となった米軍属のうち、このアメリカの軍事域外管轄法が適用された例はあるんでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 米国政府が軍属による日本国内における公務中犯罪について、MEJA法、すなわち軍事域外管轄権法を適用した事例があるとは承知をしておりません。

井上哲士君

 ですから、それを理由にしながら、実際にはアメリカは国内法では裁いていないんですね。何でそういうことになっているのかと。

 このアメリカの軍事域外管轄法は重大な弱点を持っております。例えば、二〇〇六年に発表された論文でアメリカの陸軍大学のケバン・ヤコブソン大佐というのが書いておりますが、外国で起きた事件をアメリカ国内で裁こうとしても、外国から証人を呼ぶことは極めて困難で身動きが取れなくなる可能性があるということを書いているんですね。その下で、アメリカの検察官が訴追を判断するときに、外国での軍属の事件よりも責任を持っている国内法の事件の解決に限られた資源を充てるだろうということをこの大佐が述べております。

 要するに、外国での軍属の犯罪というのは、そういう困難がある中で実際にはほとんど訴追をされていない、その結果、日本のおける軍属の犯罪は軍法会議でもアメリカの国内法でも裁かれずに、そして四割以上が処分すら行われていないと、こういう実態になっているんですね。

 政府のように公務中軍属について第一次裁判権がアメリカにあるという立場に立ったとしても、地位協定の十七条三項(c)には放棄の要請というのがあるんですね。こう書いています。第一次の権利を持つ当局は、他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合において、その他方の国の当局から要請があったときは、その要請に好意的考慮を払わなくてはならないと、こう規定をしております。

 外務省に来ていただいておりますけれども、この規定に基づいて、裁判権が現に行使をされていない米軍属の公務中犯罪について日本がアメリカに放棄要請をした例はあるでしょうか。

外務省北米局長(伊原純一君)

 今先生御指摘の十七条三の規定に従って、日米当局のいずれも裁判権を行使する第一次の権利の放棄を要請したことはこれまでございません。

井上哲士君

 実際には日本側が、公務証明書が出れば全部放棄をしているということになっております。そして、こういう事態になっている。アメリカが第一次裁判権があると主張して、実際には裁判権、何の行使もされていない、できない状況なのにもかかわらず、日本は何のそれに対して放棄要請もしていないと。現に国民の安全まで脅かされているんですよ。命軽視だという声が沖縄から上がっているんですね。何もしていなかったということですよ。

 私、司法を預かる法務当局の大臣に聞きますけれども、やはりこういう問題について、現に何の裁かれていないということに対して、日本が私はこれは放棄要請をするべきだったと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 先ほどの、地位協定の十七条三項の(c)に基づいて相手国に対し第一次裁判権の放棄を求める場合には、要請国が相手国による権利の放棄が特に重要であると認めることが必要とされているというふうに承知しております。その判断に当たっては個別の事件ごとに適切に判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難でありますけれども、諸般の事情を総合考慮して、相手国が第一次裁判権を有するという原則の例外とすべき事情の有無を判断する必要があると考えておるところでございます。

井上哲士君

 相手は行使していないんですよ。その結果、四割を超える人が何の処分もされていないんですよ。それに対して何も物を言わなくて、どうしてそれで国民の安全が守れるのかという問題なんですね。

 外務省にお聞きしますが、一九六〇年にアメリカの最高裁判決が出て、それから四十年もたってからこの軍事域管轄法が制定をされ、そして二〇〇五年に国防総省が施行細則を決めているわけでありますが、なぜこの時期にこの法律が作られたと承知をされているでしょうか。

外務省北米局長(伊原純一君)

 今先生御指摘のとおり、この軍事域外管轄権法というのは二〇〇〇年に成立したアメリカの連邦法でございますけれども、この法律によって、平時において米国外において連邦刑事法上一年以上の刑に該当する犯罪を犯した軍属等の文民を米国に移送してアメリカの連邦裁判所で刑事裁判にかけることが米国内法上可能となったということだと承知しておりますが、これアメリカの法律でございますので、その立法趣旨、どうして二〇〇〇年に成立したのか等について、私どもとして御説明する立場にはございません。

井上哲士君

 アメリカの法律とは言いますけれども、日本国内で日本人が犠牲になっている事件についてもこれ適用できるとなっているんですよ。だから、日本国民の安全と主権にかかわる問題なんですね。それでどうして守れるんですか。何もしていないということですよ。

 この法律の背景にはアメリカの海外軍事活動の変化があります。イラクやアフガニスタンで警備や軍事活動を民間軍事会社に請け負わせるようになりました。その会社の雇われている人が地元のトラブルを起こして、殺人事件とか、それから様々な人権侵害も起きました。刑務所内でも起きました。しかし、彼らの身分は軍属なんですね。国際的な批判があったけれども軍法会議でも裁かれない、これではおかしいということで、国際的な批判の中、あった。ところが、アメリカの攻撃によってそれらの国は統治機構が破壊されておりますから、司法制度がまともに機能していないと、そういう国の裁判を受けさせるのはいけないということをアメリカ側は考えたわけですよ。だから、言わば例外的にそういう国家での軍属の犯罪をアメリカ国内法で処罰できるようにするということでできた法律なんですね。

 ですから、そういう法律を、いろいろ問題はあっても日本のようにきちっと司法制度が機能している国に対して適用することがそもそも間違いなんです。しかし、アメリカ軍はなるべく自分の関係者を他国の法律で裁かれたくないので、言わば立法趣旨から外れているにもかかわらず、この法律を理由に軍事公務証明書を出すようにしてきたということが行われたんですよ。

 私は、この法律を理由にアメリカ側が公務証明書を出してきた時点で、これはおかしいと、そんな法律が日本に適用されるのはおかしいということをきちっと言って、これを唯々諾々と受け取るべきでなかったと思います。これは前政権時代からの対応でありますけれども、こういう対応間違っていたと、法務大臣は思われませんか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 今委員が言われたように、前政権時代から起こっている事象でございまして、その時々にどういう判断がなされたのかということについては私もつまびらかにしないところでございますけれども、ただ、委員が言われている問題意識というのは今回の事件を契機といたしましてもいろいろと検討をすべき点があるという問題意識に立って、現在鋭意協議をさせていただいているということでございます。

井上哲士君

 アメリカ側と協議しているということですか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 これ自身は、法務省の立場として見ればアメリカと直接ということよりむしろ外務省とやっておりますけれども、外務省の方では多分、多分というよりは、当然のことながら協定にかかわる問題でありますから、アメリカ側ともやっているというふうに承知しております。

井上哲士君

 先ほど紹介したアメリカ陸軍のケバン大佐の論文では、恐らく最も重要なのは軍事域外管轄法が一般に接受国が自らの裁判権を行使しない決定をした場合のみ有効であるという事実だと、こういうふうに言っているんですね。つまり、日本が第一次裁判権を放棄するということをするからアメリカがこの法律を適用する余地が生まれるんですよ。しかし、先ほど言っていますように、その結果軍法会議にもアメリカ国内法にも裁かれないと、こういうことが起きているわけですね。

 そもそも、法の一般原則からいっても、裁判というのは属地主義で行われるものなんですから、仮にアメリカが公務証明書を出してきてもアメリカの軍法会議にも国内法にもかけられないわけですから、裁判権はこれはきちっと日本が行使すると、こういうことを言えばいいわけでありまして、国民の安全と主権を守る立場からそういうふうにするべきだと、日本が裁判権を行使するとするべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 これ自身は、先ほど来から申し上げているように、いろんな経緯があってこういう状況になってきているということでございまして、できる限り日本国民の皆さんも納得がいけるような、そういう解決策を外務省とも一緒になって今協議をさせていただいているということでございます。

井上哲士君

 国民が納得できる解決策というのは、軍属の公務中犯罪については日本が裁判権をきちっと行使すると、そういう毅然たる態度を取るべきだと思いますが、現行状況でもそれはできると思います。

 同時に、やはり地位協定の改善ということも必要になってくるわけですね。地位協定の十七条に関しては、公的行事で飲酒した上での自動車運転による通勤が公務として扱われるという日米合同委員会の合意の見直しも全く進んでいない状況がありますが、今朝の報道では、来日中のシャーマン・アメリカ国務次官が、この問題は二国間で協議しており、解決策が見付かりつつあることを喜ばしく思うと、こういうふうに述べられておりますが、この飲酒の問題、そして今言いました公務中軍属の裁判権の問題について抜本的是正をするべきだと思いますが、外務省、いかがでしょうか。

外務省北米局長(伊原純一君)

 今先生御指摘の、公の催事で飲酒した上での自動車運転による通勤が公務として取り扱われ得る余地を残しております以前からございます日米合同委員会の合意につきましては、これは玄葉外務大臣からも早期に見直すよう強い指示を受けておりまして、今、日米間で協議を加速化させているところでございます。

 それからもう一方の、軍属の裁判権に関する問題については、今大臣からも御指摘がありましたように、現在日米間で協議をしているところでございまして、現時点でまだ御報告できる段階ではございませんけれども、できるだけ早期に結論が出せるよう、これも私ども事務方として政治レベルからの指示も受けておりますので、今鋭意努力をしているというところでございます。

井上哲士君

 報道では、この公務中軍属の犯罪について一定の条件の下で日本側が裁判権を行使できるようにアメリカ側と合意し、近く合同委員会で確認されると、こういう報道もありました。事実であれば、国民の声が動かしたものといえると思います。しかし、アメリカ側に第一次裁判権を認めた上で例外的に日本が裁くという、こういう曖昧なことにするべきではないと。

 この問題については、軍属については日本側に裁判権があるんだということを明確にするような取扱い、改定をするべきだと、このことを強く申し上げまして、質問を終わります。

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