国会質問議事録

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法務委員会

shitsumon201111.jpg・家庭裁判所での少年審判で、国費により弁護士の援助を受けられるようにする全面的国選付添人制度の実現を求めました。


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、全面的国選付添人制度の実現を求めて質問をいたします。

 少年事件での少年審判は、刑事事件とは違いまして、家庭裁判所が少年に対して後見的な役割を果たすことが基本になっております。一方、少年法十条では、少年及び保護者による付添人の選任を認めておりますが、この理由はどういうことでしょうか。まず大臣、お願いします。

国務大臣(滝実君=法務大臣)

 基本的に少年の保護手続というのは、少年の健全な育成を目指すと、これには異論がないわけでございます。そのために、少年の言わば意思を尊重して適正な審判を行えるような付添人を付けると、これが少年法の基本的な物の考え方だろうと思っております。

井上哲士君

 適正な審判のためということがありましたが、ですから大半は弁護士付添人ということになっております。

 最高裁、来ていただいておりますが、この弁護士付添人の活動の内容や、その意義について、どのようにお考えでしょうか。

最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)

 お答えを申し上げます。

 少年審判は、職権主義的審問構造の下に、裁判官が非行事実を認定し、家庭裁判所調査官が非行の原因や少年の問題点等について行動科学の知見を生かして調査分析し、少年や保護者に対して、その結果明らかとなった問題点に応じた働きかけや環境調整を行い、その上で、最終的に裁判官がその少年にとって最もふさわしい処遇の選択を行うと、こういうことを目的とした手続でございます。

 そのような手続の中で、弁護士付添人は審判手続の協力者として、まず非行事実の認定に関しまして、少年の言い分を法律的に整理して裁判官に伝える活動を行っておりますし、また、家庭裁判所調査官の調査分析によって明らかになった少年や保護者の問題点に応じた働きかけや環境調整のうち、反社会的組織からの離脱であるとか被害者の被害回復に向けた直接的な活動など、これらを家庭裁判所調査官と連携しつつ、その専門的知識や経験を生かして行っていただいているというものでございます。

 このように、弁護士付添人は、少年審判におきまして裁判官や家庭裁判所調査官との役割分担の下、適正な手続の実現や少年の再非行の防止に向けまして、審判の協力者としての立場で活動を行っているものというふうに考えております。

井上哲士君

 今、この少年法についての意見交換会が行われておりますが、最高裁からの説明の中で、少年が自ら謝罪や被害弁償を行い、又は保護者が謝罪や被害弁償を行う姿を見ることによって、被害の実情を改めて認識して反省を深めることになるため、少年の更生、再非行防止にとっても大きな意義のある活動だというふうに言われております。ですから、少年にとっても、被害者にとっても、そして再非行防止という点で社会にとっても、非常に意義のある活動が私は弁護士付添人だと思うんですね。

 あるシンポジウムに家裁の調査官が来られて、こういう発言をされておりました。現代の家庭裁判所においては、調査官は裁判官を補佐するという役割にならざるを得ない。裁判官に対して対等の形でチェックを掛けたり、異議を唱えたりする役割は弁護士付添人に期待するしかないと。その上で、調査官と付添人は、共に少年の立ち直りを考える上で異なる立場から調査し意見を述べることでより良い結論が導かれるのであり、役割分担が重要なんだと、こういうふうに言われておりました。

 少年鑑別所に行って専門官の方から意見を聞いたことがあるんですが、自分たちは部分的にしかかかわることができないけれども、弁護士付添人というのは逮捕からそして処遇まで一貫してかかわることができると。そういう方がいることが非常に自分たちも有り難いし、重要だということを言われておりました。

 ところが、少年は自ら資力が乏しいし、家庭環境とか家庭の事情から、保護者がこの弁護士付添人の費用を出すことができないという場合がほとんどであります。ですから、付添人の選任はごく僅かでしたけれども、この間、日弁連が援助制度をつくったり、また国選付添人制度が創設をされるという中で急速に拡充をしてきたわけですね。

 こういう現行の国選付添人制度の導入と、その後の拡大の経緯についてまず御説明いただけるでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君=法務省刑事局長)

 私の方から御説明申し上げます。

 少年法は、平成十二年以降、三度にわたりまして大きな改正がございました。最初が十二年の改正でございますが、その改正前には国選付添人の制度は設けられておりませんでしたが、この改正におきまして、家庭裁判所が検察官が関与する決定をした事件、これは一定の重大な事件でございまして、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、あるいはそれ以外で死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪に当たる場合に限られておりますが、これにつきまして、少年に弁護士である付添人がいない場合に、少年に必要的に国選付添人を選任するという制度が導入されたわけでございます。

 その後、平成十九年の法改正におきまして、観護措置がとられた一定の重大事件、これも先ほど検察官関与で申し上げた罪とそれに相当する触法行為でございますが、このような一定の重い罪について裁判所の裁量で国選付添人を付することができるという制度が導入されました。

 他方、その翌年の平成二十年の改正で、被害者等に少年審判の傍聴を許すか否かを決定するに当たりまして、少年に弁護士である付添人がいない場合、少年に必要的に国選付添人を選任するということで、被害者の傍聴を許す場合には国選付添人を付けるという制度が導入されたというふうに累次拡大されてきております。

井上哲士君

 累次拡大をされてきたわけでありますが、では、今どうなっているのかと。

 最高裁にお聞きしますが、直近の年間の国選付添人の選任の数及び少年審判を受ける少年全体、それから鑑別所収容の少年に対するこの国選付添人の選任の比率はどのようになっているでしょうか。

最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)

 平成二十三年度の一般保護事件の終局総人員のうち、国選付添人が選任された人員は三百七十八人でございます。この一般保護事件の終局総人員に対する国選付添人の選任の率は、総人員の方が四万八千八百八十六人ということでございますので、パーセンテージとしては約〇・八%、そのうち観護措置がとられた少年、それに対する国選付添人の選任の率は約三・七%ということになっております。

井上哲士君

 観護措置をとられても三・七%ということでありまして、依然として範囲が狭過ぎるし、選任がごく僅かということになっているわけですね。

 そして、二〇〇九年に被疑者国選弁護制度の対象事件が必要的な弁護事件に拡大をいたしました。ところが、国選付添人制度はそのままなわけですね。ですから、被疑者段階では国選弁護制度で弁護士の援助を受けられる少年の多くが、家裁に送致をされますとこの弁護士付添人を選任をできないと、いわゆる置き去りという状況になっております。弁護士会の援助制度を活用しても、鑑別所の収容少年の約四割には弁護士付添人が選任をされていないという事態なわけですね。成人の場合は刑事事件の被告人はほぼ一〇〇%弁護士が選任をされることになりますと、これは非常に大きな矛盾だというふうに各方面からの指摘をされております。

 日弁連が会員の特別会費による基金によって少年保護事件付添援助事業を法テラスに委託して行っておりますし、また、各地の弁護士会が少年の要望に応じて少年鑑別所にいる少年に一回は無料で面談に行くという当番付添人制度を実施をしております。これが相まってこの弁護士付添人の数は非常に増えております。特に二〇〇九年の被疑者国選弁護制度の拡大後に援助の数は急増しておりまして、二〇一〇年度では日弁連の援助制度の活用は七千八百六十七件、総額八億円ということになっているわけですね。

 それから、数が急増していること自体が非常にこの制度が重要だということを示していると思いますが、その意義、重要性を考えるならば、少年や保護者が資力がないことで選任できないという場合には、それを実質的に保障するという趣旨からも国費で選任できるようにするべきだと思います。そして、範囲は、やはり身柄を拘束されている少年というのは少年院送致等の重大な処分を受ける割合も高いわけですし、社会から隔絶されているわけですから、自ら学校とか職場に行って環境調整をすることもできないということを考えますと、身柄が拘束されている少年全てに国選付添人を選任するように拡充をするべきだと考えますけれども、この点、いかがでしょうか。大臣にお願いします。

国務大臣(滝実君)

 委員のお話を私も弁護士会を通じて承っているところでございます。

 この問題についてはいろんな角度から意見を聞く会を法務省としても経験しているわけでございますけれども、結局、加害少年の立場からすると、今委員の仰せのような格好で国選弁護士、弁護人を付けるということはそれなりの意味があると思います。ただ、その反面、被害少年の立場からすると、どうもそこのところが、加害少年の弁護人の立場からの言わば意見というのがかなりインパクトを裁判所が受けるんじゃないだろうかなと、こんなような反対事情の意見もこれあり、なかなかそこのところが、本当のところはどうなのかというところにこの問題には国としてなかなか踏み出せない問題があるだろうと思います。

 それからもう一つは、今委員がおっしゃったように、現在、弁護士会が合計八億円から十億円に近い経費負担をしていらっしゃる。だから、それを国が当然肩代わりというか引き取るべきだと、こういう御議論でございますけれども、国の財政事情もなかなかそこのところが難しいところがあります。ただ、この問題は、財政事情が課題だからこれはしばらく弁護士会でやってくださいというわけにはまいりませんけれども、いろんな事情があってここのところは一歩踏み出せないというのが正直な現状でございます。

井上哲士君

 弁護士の方が月間四千二百円拠出してやっていらっしゃるんですね。先ほど弁護士人口の話なんかもありましたが、なかなか皆さん厳しい中やっていらっしゃるわけですよ。国の財政が厳しいからそこに依拠をするというのは、私はこの問題の重要性から考えるといかがかと思うんですね。

 この被害者のことのお話もあったんですが、現行の国選付添人制度の対象でない事件でも、家裁が弁護士付添人を必要と考えて弁護士会に対してこの援助制度を使って弁護士付添人を付けるというケースが増えているというふうに聞いておるんですが、こういうケースがあるのか、ある場合はどういう理由でそうなっているんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)

 その点につきましては、正確な統計は把握しておりません。数値はありませんけれども、援助付添人制度によって弁護士付添人が選任された事件の中には、家庭裁判所から選任依頼を行った事件が一定数あるというふうに認識しております。

 どういう場合であるかと申し上げますと、例えば、少年が非行事実を否認している事件であるとか、再非行防止のために反社会的な組織からの離脱が必要である事件などにおいて付添人が付いていないという場合には、先ほど述べたような観点から、弁護士付添人の活動に期待して依頼することがあるというふうに認識しております。

井上哲士君

 それ自体がこの制度の重要性を示していると思いますが、裁判所が付添人が必要だということで依頼をしているケースですら日弁連の援助制度に依拠しているというのは、私はいかがかと思うんですね。これなどはすぐにでも国の責任で付添人を付けるようにするべきだと考えますが、これはいかがでしょうか。

国務大臣(滝実君)

 この問題については、これまでもやっぱりスピード感を持って対応しなきゃならぬということは本委員会でも答弁を何度かお聞き取りいただいたと思います。

 したがって、今委員のおっしゃるように、家庭裁判所が弁護士会に依頼するというのもこれまた筋がやや不透明な感じもしますので、その辺のところも含めて検討を急がなければいけない、こういうふうには思います。

井上哲士君

 これはもう本当に、私は今おっしゃったように筋が通らないと思うんですね。

 ただ、それだけでいいのかということではありませんで、少なくともこの家裁送致後に置き去りにならないように、国選弁護制度と同一の必要的弁護事件まで対象を拡大することが必要だと思うんですね。

 さらに、それだけではやっぱり不十分だと思います。先ほど、裁判所が付添人を必要と認めて援助制度を活用するというケースについて、かなりの一定部分が虞犯だというふうに聞いているんですが、この虞犯の場合に家裁送致後に少年院送致とか児童自立支援施設送致等の施設送致処分になっているケースというのはどれぐらいの割合があるんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)

 平成二十三年の虞犯保護事件の終局総人員、これは三百七十八という数字が出ておりますが、そのうち児童自立支援施設や少年院への送致と、そういう施設収容処分となった人員の率は約三六%となっております。

井上哲士君

 私、手元にはこれ二〇一〇年の分しか持っていないんですが、恐喝や傷害よりもむしろ率が高いわけですね。ですから、つまり、事件の重大性ではなくて、やはり少年の状態によってこの付添人の必要性というのが出てくると思うんです。

 先ほど紹介したシンポジウムでの家裁調査官の発言では、事件の重大性ではなくて、累犯の窃盗の子とか、粗暴行為が収まらない子供の再犯を防止するために付添人の援助が必要だというふうに強調をされております。ですから、国選弁護制度と同じところにまで拡大をしても、この虞犯という場合は落ちてくるわけですから、やはり事件の重大性にかかわらず付添人が必要になってくるということだと思うんですが、この指摘については、ちょっと法務省、どのようにお考えですか。

政府参考人(稲田伸夫君)

 先ほどから大臣が申し上げておりますように、この少年法の付添人の関係につきましては、私どもでも弁護士会を始めとする各界の方から意見交換会で御意見をちょうだいしているところでございまして、その中で日弁連の出身の出席者の方からも今委員御指摘のような意見が示されたものというふうに認識しております。

 この問題につきましては、虞犯事件というものにつきましてどのように審判の在り方を考えるのかというような問題もあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、今申し上げました意見交換会などを通じましていろいろ多角的な御意見をちょうだいした上で検討していきたいというふうに考えております。

井上哲士君

 先ほど被害者のお話があったんですが、一部には国選付添人が拡大したらバランスが取れなくなって事実認定ができなくなるので検察官の関与も拡充すべきだというような意見もあるわけですが、しかし、元々検察関与が認められる対象事件を重大事件に限定したのは、たとえ非行事実が争われたとしても、社会的に見て一定の重大事件にのみ検察官が関与するのが適当だというふうに考えたからのはずなんですね。さらに、その後、検察官の関与事件以外でも一定の重大事件については裁量的に国選付添人が付くということになりました。つまり、検察官関与と弁護士付添人というのはそもそも一体のものではないはずなんですね。

 最高裁に聞きますが、この検察官関与事件というのは今、年間何件あるんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)

 平成二十三年の一般保護事件の終局総人員のうち、検察官関与決定のあった人員は十九でございます。

井上哲士君

 昨年、先ほどの答弁でいいますと、同じ年の国選付添人の選任事件が三百七十八だったと思うんですね。つまり、国選付添人が付いていても、そのほとんどは検察官関与の決定はされていないということなんですね。

 国選付添人の範囲を拡大したらバランスが崩れて事実認定に問題が生じるということになりますと、今も相当バランスが崩れているということになるかと思うんですが、検察官関与のない国選付添人選任事件が増えているということで、バランスが崩れて事実認定に問題が起きているというような事態があるんでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君)

 家庭裁判所の審判の在り方につきまして私どもからコメントするのはいかがかと存じますが、ただ、今御指摘のありました、その国選付添人を付した場合には検察官関与の範囲を拡大すべきではないかという御意見は、先ほど申し上げました改正少年法等に関する意見交換会におきまして被害者団体の方などから御意見が出ているというふうに承知しているところでございまして、この点につきましてもいろいろと御意見のあろうところだと思いますので、慎重に検討してまいりたいと考えております。

最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)

 弁護士付添人が選任されている一方で検察官の関与がないという事件におきまして、これまでのところ、事件の関係者等から審理のバランスを欠いているといった批判があったというふうには承知いたしておりません。

井上哲士君

 日弁連の援助制度で弁護士付添人がもう年間七千件以上あるわけですが、こういう事件においても、同じようにそのバランスが崩れて問題が生じているということがないという認識でよろしいでしょうか。

最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)

 そこら辺りについての声は聞こえてきていないと、関係者からの声は聞こえてきていないというところでございます。

井上哲士君

 ですから、国選付添人を拡充するならば検察官関与を拡充すべきであるということについて、私は、そもそも少年法の構造上も、現実に今起こっている審判の状況からいっても、およそ立法事実はないんだろうと思うんですね。ただ、先ほど言われましたように、意見交換会で被害者の会の方から、少年によりたくさんの弁護士が付くようになると被害者が忘れられる存在になって不信感を持つ審判になる等々声が出ております。これは非常に私は十分に受け止める必要があると思うんですね。

 同じ意見交換会でも、いわゆる被害者援助についてのこともありました。日弁連は、被害者法律援助制度についても、今、法テラスに依拠してやっているわけですけれども、これ自体もむしろ国の費用でやるように拡充をするべきだということを言われております。今の制度でいいますと、どうしても一回目については相談者の持ち出しになるということになっておりまして、私は被害者の皆さんのそういう意見を聞くとするならば、こういう被害者の援助制度を必要ならば拡充をしていくと、こういうことが大事だと思うんですけれども、この点、大臣のお考えはいかがでしょうか。

国務大臣(滝実君)

 今、委員と最高裁の意見の交換あるいは法務省の刑事局長との意見の交換を拝聴いたしておりますと、やはりこれは意見交換会においてもう少し実態をきちんと整理した上で判断をすべき問題かなと、こういう感じがいたします。現実に、家庭裁判所が日弁連に依頼をしている実態、どういうような中身かというのは当事者はもちろんよく承知の上だと思いますけれども、将来的には、まだまだそこのところはきちんと徹底をしていない感じがありますので、そんなことも踏まえながら検討をしてまいりたいと思います。

井上哲士君

 最初に最高裁からの御紹介ありましたように、弁護士付添人の活動というのは、少年自身にとっても、そして被害者にとっても、それから社会にとっても非常に有益な活動をしているわけでありまして、そういうことをよく関係者にも御理解を広げながら、国民的にも理解も広げながら、急いで是非この制度の実現をお願いしたいと思います。

 以上、終わります。

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