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法務委員会

shitsumon201111.jpg・東電OL殺人事件の再審開始と冤罪防止・真相究明にふさわしい証拠開示を求めた


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 東電女子社員の殺害事件について、東京高裁は今日の午前中にゴビンダ元被告への再審開始決定に対する検察側の異議を却下いたしまして、再審開始決定が維持されることになりました。非常に異例の早期の結論になったことに、私は裁判所の意思は非常に明らかだと思います。特別抗告をすることなく速やかに再審を開始するべきだということをまず申し上げておきたいと思います。

 この事件では、元被告の血液型と異なるO型の付着物が被害者の女性の胸から検出をされたという、捜査段階の血液型鑑定結果は再審請求審で初めて明らかにされました。さらに、被害者の体内に残っていた体液の鑑定の結果、元被告でない人物のDNA型が検出をされ、これが有罪判決の根拠が崩れたということになったわけであります。もし公判のときにこれらの証拠が出されているならば、有罪判決には至らなかったということを東京高裁は結論付けたわけですね。

 この再審審理の中で、それまで検察が隠してきた重要な証拠が開示をされたというのは、布川事件もそうでしたし、福井の女子中学生の殺害事件でもそうだったわけであります。私は、こういう一連の事件を見たときに、これまでも繰り返し求めてまいりましたけれども、検察官の手持ち証拠の全面的な開示、少なくとも証拠の標目については開示をすると、このことの必要性がますます明らかになっていると思いますけれども、まず、大臣の所見をお聞きしたいと思います。

国務大臣(滝実君=法務大臣)

 平成十六年の刑訴法の改正で証拠開示についても新しい方向が出されたわけでございます。そこでは段階的に開示をしていくと、こういうような趣旨だったろうと思います。

 したがって、現在と昔の話とは多少ずれるところがあるだろうと思いますけれども、そういう意味では、新しい刑訴法の考え方に従って弁護側と検察側とがこの証拠開示をめぐって訴訟を進展させる、そんなことが今求められているのかなというような感じをいたします。

井上哲士君

 新しい刑訴法の下で拡大をされてきたと、こういうことが言われるわけですが、それでもまだ足りないということは繰り返し出されております。

 少なくとも検察官手持ち証拠のリスト、標目を明らかにしろということを質問いたしますと、プライバシーの侵害の弊害等問題がある、必要性、合理性について検討する必要があるということもこの間答弁をされてきたんですね。

 当局に聞きますけれども、今年の六月に行われた裁判員制度に関する検討会で、日弁連の代表の報告の中でも、公判前整理手続で存在をしないと検察が言っていた証拠が実は存在をするということが後になって分かったというケースが幾つもあるということが報告をされております。こういう捜査機関の手持ち証拠の一覧表が作られて、かつそれが被告人側にも交付されるようになれば、こういう証拠の存否をめぐる混乱回避、防げるんじゃないかということも言われているわけでありますが、こういう点から見ても私は十分に必要性、合理性があると考えますけれども、その点、いかがでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君=法務省刑事局長)

 ただいまのお尋ねは、検察官の手持ちの全証拠のリストの開示という制度を導入したらどうかということだろうと思います。

 この点につきましては、平成十六年の法の改正の立案過程におきましても、このようなリストを被告人側に開示する制度について検討がなされたところではございますが、供述調書、鑑定書、証拠物といった証拠の標目だけが記載された一覧表を開示してもそれだけでは意味がない、他方で、証拠の内容、要旨まで記載した一覧表を開示するものとすると、手持ち証拠を全て開示するのに等しく適当ではないと考えられること、さらには、手持ちの全証拠について一覧表させること、特に今申し上げた証拠の内容、要旨まで記載した一覧表させることは捜査機関の過重な負担になるものとして現実的ではないというような主張が、などの問題点があって相当でないと考えられ、被告人側の訴訟準備が十分なされ得ることも踏まえつつ採用されなかったものというふうに承知しているところでございます。

井上哲士君

 あの当時から全く同じ答弁の繰り返しなわけでありますが。

 そういう中で、今私は、この間のそういう実践の中で、検察官が当初は存在しないと言っていたものが出てくるというようなことが現に起きていると、だからこそこういうことを新たにもう一回検討すべきだということを申し上げているわけであります。

 これまで冤罪をなくすために、取調べの全過程の可視化や検察官の手持ち証拠の全面開示、さらには証拠の標目を開示することなどを求めてまいりましたけれども、今日は特にこの再審事件における証拠開示の問題に絞ってお聞きしたいと思います。

 我が国裁判制度は三審制度を取っているというのが先ほども議論にありましたが、更にその上で再審というものがあるわけですね。この再審制度の目的というものは一体何か、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

国務大臣(滝実君)

 これは白鳥判決でもその基準というか考え方が示されているわけでございますけれども、事実認定の不当を是正する、こういうことでございますから、再審というのは、まさに今回はそういう趣旨で再審が決定された、こういうふうに受け止めております。

井上哲士君

 つまり、冤罪からの救済であり、真相の解明ということがこの再審制度の目的なわけであります。

 では、その再審制度がその目的を果たすために一体何が検察に求められているのかと。

 福井女子中学生の殺害事件の再審開始決定の際にも私質問をいたしまして、再審請求において検察官手持ち証拠の全面開示ということを求めました。当時の平岡大臣は、法令にのっとって適切に証拠の開示が行われるということも、検察の基本規程の中で法令の遵守ということを明記させていただいておりますので、その趣旨にのっとって適切に対応するということを私としては期待をしております、こういう答弁でした。

 再審請求事件に関する答弁で当時の大臣がこの検察官基本規程を挙げられたということは、当然ながらこの再審事件に対応する場合もこういう検察官基本規程が適用されるんだと、こういう理解でよろしいわけですね。

政府参考人(稲田伸夫君)

 「検察の理念」を作成しましたときの考え方といたしまして、具体的な捜査、公判における行為規範を定めるものではなく、職務の指針となる心構えとして定められたものでありますが、ここに示されたその精神及び基本姿勢につきましては、再審における検察官の活動も含め、検察官の職務遂行全般において指針とされるべきものというふうに考えております。

井上哲士君

 再審も含めるというお話でありました。

 この規程の中には、被疑者、被告人等の主張に耳を傾け、積極、消極を問わず十分な証拠の収集、把握に努め、冷静かつ多面的にその評価を行うと、こういうふうにも述べているわけであります。

 平岡大臣は先ほど紹介した答弁で、法令の趣旨にのっとった適切な対応を期待しているというふうに述べられました。再審請求手続においては、我が国には証拠開示に関する規定がありません。それから、証拠調べ手続に関する規定もない。専ら裁判所の訴訟指揮に委ねられてきたわけですね。

 その下で、今の再審請求においては、先ほど言われましたような新しい刑訴法に基づく証拠開示すら保障されていないというのが現実なわけであります。刑訴法の改正で公判前整理手続と、それにおける証拠開示制度が導入をされました。これ、まだまだ不十分だと、全面開示しろ、標目を掲示しろと、こういう声も関係者から多いわけでありますが、少なくとも一定程度開示が広がったというのは、これは事実だと思うんですね。

 まず、確認しておきたいのは、この刑訴法改正というのは裁判員制度の導入に伴って裁判手続の迅速化、効率化ということが一つの目的でありました。ただ、それだけではないと思うんですね。やはり、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにするという刑訴法の第一条に定められた目的に資するものだと、こういうことを確認してもいいでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君)

 平成十六年の刑事訴訟法の改正によりまして、公判前整理手続が創設され、証拠開示の拡充が行われたわけでございますが、その趣旨は、争いのある事件につきまして、あらかじめ事件の争点及び証拠を十分に整理し、明確な審理計画を立てた上で、裁判所の的確な訴訟指揮の下、争点中心の充実した審理を集中的、連日的に行うことができるようにすることなどにより、刑事裁判の充実、迅速化を図るというものでございます。

 そういう意味から、刑事訴訟法第一条の目的に沿うものというふうに承知しているところでございます。

井上哲士君

 かみ砕くとどういうことなのかということなんですが、布川事件や東電の女子社員殺害事件の再審決定にかかわった元東京高裁判事の門野博さんが判事時代に書かれた論文がありますけれども、こう書かれています。

 公判前整理手続における証拠開示制度は、単に裁判手続の効率化のみを目的としただけのものではなく、検察側と被告人、弁護人側との証拠収集能力について決定的な格差があることを前提として、デュープロセスの観点から、そのような両当事者間の証拠収集における格差を是正し、裁判の公正を図り、冤罪を防止することを目的としていると考えられると、こう言われておりますが、こういう裁判の公正を図り冤罪を防止することという目的が当然ながら含まれていると、こういう認識でよろしいでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君)

 先ほど大臣からも御答弁がございましたように、再審制度自体は不当な事実認定から被告人であった者を救済するということにあろうかというふうに思います。

 その意味におきまして、再審請求審の考え方もその点に基づいて行われるべきものと思いますが、他方で、通常審と再審請求審を比べますと、通常審とは違いまして、再審請求審は、既に当事者主義的な訴訟構造の下で検察と被告人側とが攻撃、防御を繰り広げて、かつ立証責任を負う検察官により合理的な疑いを超える証明がなされたという手続が終わって、一旦その有罪の判決が下されたという前提の下に行われているわけでございまして、そういう点で再審請求審と通常審というのはやはり異なるものがあると言わざるを得ないところがあるというふうに考えております。

井上哲士君

 それは次にお聞きすることの答弁だと思うんですが、私、今聞いたのは、平成十六年の刑訴法改正の目的の中に、裁判の公正を図り冤罪を防止することということが当然含まれますねということを確認をしたわけであります。

政府参考人(稲田伸夫君)

 十六年の改正の目的というのは、先ほども申し上げましたように、充実した審理の下、集中的、連日的に審理を行うことにより、刑事裁判の充実、迅速化を図るということが第一義的にありまして、それが結局のところ刑事訴訟法第一条の目的に沿うというふうに承知をしておるところでございます。

 その意味において、先ほど委員の御指摘の点について違うというふうに申し上げるつもりはございませんが、第一の目的というのは先ほどから申し上げているところにあろうかと。その結果として、刑事裁判が適正に行われるということにあろうかというふうに思っているところでございます。

井上哲士君

 違うということではないということでございました。

 そうであるならば、冤罪の救済と真相解明という再審制度の目的、検察官の持つ役割、そして裁判の公正を図り冤罪防止をするという改正刑訴法の趣旨、こういうことに鑑みれば、当時、現在の公判前整理手続による証拠開示が行われていれば開示されていた証拠については速やかに開示されるべきではないかという質問なんですが、それに対する答弁は先ほどありました。

 そこで、答弁の中で、つまり検察側、弁護側が防御と攻撃を尽くした、そして有罪が確定したものだというお話があったんですね。しかし、先ほど引用した門野さんのお話にありますように、検察側と被告人、弁護人側との証拠収集能力については決定的な格差があるんですよ。法改正前はもっとひどかったわけですね。今もオリンピックやっていますけれども、攻撃と防御をやるときに同じ条件でやってこそいけるわけで、片方側に大きなハンディがある、これはしかも人権問題でありまして、その結果、十何年というような身体拘束を受けたということになっているわけですね。

 私は、そういう片方に大きな不利があるというような条件で、攻撃、防御を尽くした、手続を尽くしたなどととても言えないと思うんです。だからこそ、それを是正した今の、一定是正をした新しい刑訴法に基づいて証拠を開示して真相解明を行うというのは当然だと思うんですけれども、改めていかがでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君)

 再審請求審における証拠開示と、その十六年改正による証拠開示の在り方というのをどういうふうにリンケージさせるのかというところがちょっとなかなか分かりにくいところもあるようにも思いますし、現実に、その十六年改正後のやり方についてはそれを検察側としても十分頭に入れた上で対応しているものとは思いますが、それはそれぞれの事件の中でどういう証拠構造の下で確定裁判が行われたかということがやはり基本にあるわけでございまして、それを踏まえて、検察当局としては、再審開始事由が存在するかどうかを判断するために必要と認められるか否か、あるいはその請求人側から開示を求める特定の証拠につき必要性と関連性が十分に主張されたか否か、あるいはその関係者の人権、名誉の保護と今後の捜査、公判に対する影響などを勘案しつつ対応しているものというふうに承知しているところでございます。

井上哲士君

 先ほど紹介した門野氏はこうも述べられているんですね。再審事件についても、もしその事件において、公判審理の段階で、今回の新法による公判前整理手続等が行われていたとすれば開示されたであろう証拠については証拠開示がなされてしかるべきであろうと、こういうふうに言われました。その後、この考えはこの東電女子社員殺害事件の再審請求審を担当した二人の判事にも引き継がれて、今回の決定になっているわけですね。

 ところが、実際にはどうかと。あの福井の女子中学生の殺人事件では、弁護団が未開示証拠の開示を求めましたけれども、検察が当初拒否をして、名古屋高裁が異例の二度勧告をしてやっと重要な証拠が開示されたわけですね。この東電女子社員殺害事件については、二〇〇五年の再審請求の後、弁護団がこの鑑定可能な物証全ての開示を求めましたけれども、検察がこれを拒否をいたしました。その後、体液が保管されているのを検察側が明らかにしたのは、再審請求の弁護士が証拠開示を求めたもう三年八か月後だったんですね。しかし、さらにその後に遅れて、元被告の血液型と異なる付着物が検出されたという捜査段階の血液型鑑定結果の存在が明らかになったと。

 いずれも、これがもっともっと早い段階で出てくれば、こんなに長い間元被告を拘束する必要もなかったわけでありまして、東電OL事件では、高裁が新たな資料を対象にしてDNA型鑑定を行わなかったら命令を出すぞと、こういうことまで言ったのでやっと検察が応じたということが複数の報道でされているわけです。

 私が言いたいのは、こういう姿勢をもう変えるべきだと。やはり再審請求において、少なくとも今の新しい刑訴法の下では開示されるべきものについては、こういう高裁の強い、裁判所の強いあれがなくても進んで明らかにするということが、本来の再審制度の在り方からいっても検察の在り方からいっても必要ではないかと、こう思うわけでありますが、改めてどうでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君)

 個別の事件における対応の問題になりますと、これは私どもの方からお答えするのはどうかとは思いますけれども、先ほども申し上げましたけれども、やはり確定審がある再審請求審、確定審の存在を前提とする再審請求審であるということがまず前提にあって、その中で再審開始事由が存在するかどうか、その主張の内容等を踏まえた上で、その存否に必要だと認められるかどうかというような点について勘案しつつ、また、開示を求めるその証拠がどの程度の関連性を有しているかというような点に関する請求人の方の主張等に鑑みながら対応していくということになるんだろうと思います。

井上哲士君

 二〇一一年六月の法務委員会で当時の江田大臣が、布川事件で見る限り、当時は様々な公訴側に不利な証拠が開示されないというようなことがあったということがうかがわれますと、こういうふうに言われております。そういう被告側に不利な裁判が行われた下で確定をしているものなんですね。それを私はやっぱりきちっと見直すのが再審の役割だと思います。

 一旦有罪判決が確定したものは成果とみなして、新しい証拠があっても覆したくないと、こういう姿勢は、検察基本規程の中にあるような、「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。」と、こういうことにも私は反すると思います。

 根本的な転換を求めるべきだと思いますが、最後、大臣の見解をお聞きして、終わりたいと思います。

国務大臣(滝実君)

 具体的なことに立ち入るわけにいきませんけれども、資料の鑑定技術そのものも恐らく変わってきている。そんな中で、新しいものがどれだけ生かされるかということもこの問題にはあるんだろうと思います。しかし、中身は、不当な事実認定というものをどう是正するかというのが再審のそもそもの趣旨でしょうから、検察当局はそういった趣旨を体して裁判に臨むというふうに信じております。

井上哲士君

 終わります。

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