国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2012年・181臨時国会 の中の 政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

shitsumon201111.jpg・①参院選挙区4増4減する法案。最高裁が1票格差を2倍未満と求めたのに4. 746倍にとどまると批判。民意反映に適す比例代表中心の制度に抜本改正を要求。


委員長(轟木利治君)

 公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 発議者一川保夫君から趣旨説明を聴取いたします。一川保夫君。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、法案に入る前に今日の委員会の運営について申し上げたいんですが、一体どういう法案がどういう形で来るのか来ないかも分からないままに委員会が設定をされました。そして、結果としては、こういう異例の時間に質疑が行われております。あしたの朝の本会議に間に合わせるんだという話でありましたけれども、聞きますと、明日は本会議は二本立てになって、午後四時過ぎにもう一回行われると。それは、幾つかの委員会で、衆議院、参議院で一気に法案を通してしまうという前代未聞のことが行われる結果、そういうことになっております。

 私は、とにかく三党で決めれば何でもやるというやり方、もう三党談合というよりも翼賛に近いと思います。こういう形で国会運営が行われ、本委員会も行われることについて、まず抗議をしたいと思います。

 その上で、法案でありますが、前国会でも質疑をいたしました。その際、我が党は、この法案は投票価値の平等という憲法上の要請にこたえていないということで反対をし、次期選挙から抜本改正の下でやるべきだということも主張をいたしました。その後、今もありましたけれども、平成二十二年の参議院選挙について、違憲状態という踏み込んだ最高裁の判決がありました。あの平成十九年選挙に対する判決は、なお大きな不平等が存する状態ということにとどまったわけですから、大変重大な、踏み込んだ判決だったわけであります。私は、この判決は、この間の選挙制度の協議会や国会での議論をよく読んだ上で、かみ合わせた議論を憲法の角度から判決がしているというのは非常に重大だと思うんですね。

 そこで、幾つか述べられている点について提案者の見解をお聞きしたいわけですが、一つは、参議院には独自性がある、いろんな特殊性があるので一定の較差は許容されているという議論が幾つかございました。これに対して、この判決、多数意見は、二院制を憲法が採用しているについて、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させるということはあるんだということを述べた上で、しかし今、衆参の選挙制度が比較的同質的になっている、それから、衆議院では選挙区間の人口較差を二倍未満にするということになっている、さらには、急速に変化する社会情勢の下で、議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割はこれまでに増して大きくなっているということを挙げて、憲法上の要請、そしてこうした参議院の役割に照らした場合に、衆議院と比べて、つまり二倍以内でやっている衆議院と比べて参議院の投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難いと、こう言っております。

 まず、この点についての提案者の見解をお聞きしたいと思います。

委員以外の議員(一川保夫君=法案提出者)

 先生今御指摘のように、昭和五十八年の最高裁の判決というのがございました。このときは、参議院の選挙制度についてもある程度そういう裁量の幅があるというような趣旨の中で、都道府県別の代表のその意義というものについてもある程度触れられていたような気がいたします。

 今回の判決は、確かに先生おっしゃったように相当厳しいものがあるというふうに我々も認識をいたしております。ですから、この辺りをこれから選挙制度にどういうふうに反映していくかというのは重要な課題であろうというふうに我々も問題意識は持っております。

 ただ、その一方で、憲法四十三条の全国民を代表する選挙された議員によって云々というような表現がありますけれども、我々のこの一票の較差という議論は、先ほどちょっと触れましたように、裏では非常に地域間の較差が助長しているのが今日の状況です。

 こういう中にあって、本当に人口の単純比例的な考え方のみでこの選挙制度を考えていけばいいのかどうかというところは、やはり立法府としてもっと議論してもよろしいんではないかなというふうに我々は思っておりますし、これから抜本改革の中ではそういうことも含めて議論をしながら最終的な改革案を取りまとめた方がいいんではないかなと。それはもちろん、今の一票の較差の問題というのは一番重要な課題であることは間違いありませんけれども、参議院の在り方、そういったことも含めてしっかりと議論をする必要があるんではないかなというふうに私は思っております。

井上哲士君

 私は、衆議院は二倍以内でやっているのに参議院はそれ以上が許容されるという議論は、それがよいという理由は見出し難いと最高裁判決が言っていることについての答弁を求めたんですが、まあよろしいです。

 今の答弁もありますし、先ほどの世耕提案者のもあったんですが、少なくともこの判決は、投票価値の平等を唯一の基準にするべきだなんてちっとも言っていないんですよ。

 よく読んでいただきたいんですが、例えばこの多数意見は、憲法は、投票価値の平等を要求していると解されると。しかしながら、その裁量については国会に委ねるとした上で、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであると、これは認めているんです。そして、参議院が当初の段階からこの都道府県を選挙区単位にしてきたことについては、これは、制定当時においてこれは合理的なものであったということは言っているんですよ。しかし、その後、人口のいろんな集中の中で、これだけの大きな拡大になった場合にこれを放置することは、もはや憲法上は許されないと。ですから、そういうことを認めた上で最高裁は言っております。しかも、その上で、今やもう都道府県単位の選挙制度に固執していたらこの著しい不平等状態を解消できないと、だからここに踏み込むべきだということを順序立てて改めてこの判決は言っているわけです。そのことについてはどうお考えでしょうか。

委員以外の議員(世耕弘成君=法案提出者)

 私も判決はかなりつぶさに読ませていただいております。そういう意味では、一定の国会の裁量権は認められているというふうに思います。

 ただ一方で、これは少し個人的な考え、感想になりますが、判決の中で都道府県を単位としているやり方がもう改めるべきだとまで書かれていますが、必ずしもそうではないと思いますね、較差を是正するという意味においても。これは本当に頭の体操ですけれども、例えば比例をなくしてしまってその人数を選挙区に配分したら、もっと較差を抑えることはできるわけですね。ですから、ここまで都道府県をいきなり否定をするというところまでは私はいきなり行くべきではないんではないかと思っています。

 もう一つは、我々はやっぱり反省すべきは、今まで井上議員がおっしゃったように数合わせで調整をずっとやってきました。最高裁は判決という形で意思を表明されたわけですから、我々も是非、立法という形で意思をきっちり表明すべきだと思います。参議院というのはこういう院なんだ、こういう特徴を持っているんだ、そしてそれを実現するために選挙制度はこういうふうにしているんだと。そんな中で、例えば地域代表とか職能代表というのを明確に法律の中でうたっていくというのも一つの立法府としての姿勢ではないかと思っていまして、我が党は平成二十八年度の抜本改革に向けてそういう考え方も表明をしていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 この判決の中では、全国選出議員ということがやっぱり参議院の独自性ということで認識をした上で、先ほど言ったようなことが書かれているわけでありますが、やはり憲法上の価値というのは投票価値の平等だということが大前提なんですね。その上で、もはや裁量権を越えていると、こういう判断をしていることを私は重く受け止めなくてはならないということを強調しておきたいと思います。

 その上で、我々議論をしてきた西岡前議長の試案というのは、つまり総定数、全国比例定数は維持をして、現行の都道府県別選挙をブロックごとにするというこの案というのは、今回の最高裁判決の考えにかなった一つの案だと私たちは思っております。結局、協議会での議論では民主、自民両党とも都道府県単位の選挙制度というものに固執をされましたので、最初からそういうことでしたから、ずっと平行線になったということでありました。

 私は、改めてこの案、こういう考え方についても、西岡試案で示された、これについても今後しっかり改めて議論をすべきだと考えておりますが、その点はいかがでしょうか。

委員以外の議員(一川保夫君)

 西岡案というものについては、我々もこの協議会の場でいろいろと話題になっておったのは事実でございますし、私たちがこれからの抜本改革を目指すという中では、特定の案にこだわっているというような表現はしておりません。

 そういう面では、この西岡案も一つの案としてこれからの検討対象の中に入れて議論をするということは一向に差し支えないというふうに思っておりますし、予見を持たないで幅広くいろんな考え方をお互いに交換しながらより良いものを探っていくということになろうというふうに思っております。

井上哲士君

 先ほども少し附則のことが議論になっておりましたけど、参議院議長が国会運営のことで各会派と個別会談をされた際に、この最高裁判決を受けて、今回の法案、成立をした上で通常国会においてこの附則により踏み込んだ抜本改正の方向を書き加えるというようなことも考えられるのではないかと、必要ではないかと、こういう認識を示されましたけれども、これについて、それぞれ提案者から御見解を伺いたいと思います。

委員以外の議員(一川保夫君)

 私自身は平田議長から直接今のようなお話は聞いておりませんけれども、ただ、十月十七日の最高裁の判決は大変重要であり、重いものがあるということについては意見交換をさせていただきました。

 ですから、今議長の下にあるその検討会並びに選挙制度協議会の下で引き続きしっかりと議論をしてほしいと。ですから、私たちもそういう判決の趣旨をしっかりととらまえて、そういう面では議長のいろんな御期待に沿えるような、そういう真摯な議論をしっかりと重ねていくと。そういう中で、二十八年の通常選挙に間に合うように、しっかりとした抜本改革をつくり上げるということが大きな課題ではないかというふうに思っております。

委員以外の議員(世耕弘成君)

 やはり附則にある一定の方向性を盛り込めなかったということは、これは井上議員も参加をされていましたから、あの各党協議会がそこまで議論が収れんをしていなかったということだというふうに思います。

 ただ、我々としては思いを込めて、附則で二十八年選挙までに結論を得るということを明確にいたしました。もうこれがきっちり踏み込んだということだと思います。我々は、二十八年選挙に向けて抜本改革を絶対にやらなければいけないという法律になっているというふうに思っております。

井上哲士君

 我々は、この改正案では違憲判決も出かねないという警告をしてまいりました。今回の判決はもうぎりぎり寸止めで違憲状態という判決だったわけでありますけれども、憲法の立場からの司法のこうした言わば警告というんでしょうか、ということに対して私は本当に真摯に正面から受け止めた抜本改正をするべきだと、そのことを改めて強く申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

ページ最上部へ戻る