国会質問議事録

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憲法審査会

shitsumon201111.jpg・憲法審査会の自由討議で二院制の意義について意見を表明


井上哲士君

 私もかつて憲法調査会に所属しておりました。当時はカーボンコピー論、参議院は衆議院と同じことをやっていると、こういう批判だったわけでありますが、いわゆる衆参のねじれの下で、今度は参議院が衆議院と違う結論を出して強過ぎると、こういう逆方向からの批判があるように思います。

 論議よりも政局を優先するようなことはあってはなりませんし、国民の批判には真摯に対応することが必要ですが、一方、時の政府の提案をとにかく効率よく速やかに成立させたらそれでいいんだと、それが国会の役割だと、こういう角度からの議論にはくみすることはできません。国政の主人公は国民であり、その多様な民意をどのように反映をさせるのか、そもそも憲法とは国民が権力を縛ることにあると、このことを土台にした議論が必要だと思っております。

 国会は国権の最高機関でありますし、議院内閣制は立法と行政の抑制と均衡、協働を求めております。仮に一院制である場合に、一院を構成する多数政党がそのまま内閣を組織をしますと、それに対する国会のチェック機能は事実上失われてしまいます。三権分立の下で唯一の立法機関であり強大な行政権力を監視すべき重大な任務を持った国会が、衆参それぞれ、共に多様な民意を反映をしながらその役割を発揮をする、そのことが必要ですし、第二院の役割は非常に重要だと思います。

 さらに、異なった時期と異なった選挙制度で選挙される議員を持つ衆参両院で、同じ議案を二度審議することを通じて、国民の意思をより正確に、より積極的に反映をすることができますし、参議院が、解散がなく、より長期的な展望を持った審議が可能であり、一院だけの審議による不十分さや欠陥を補い、誤りがあれば正すことができるのは言われてきたとおりであります。

 実際、衆議院の審議を通じて初めて国民が問題を知って、その後、世論が喚起をされ、その声が参議院段階の審議で反映をされ、異なった議決をした場合もありますし、修正をされたこともあります。結果は同じ議決であっても、議論を通じて法案の問題点をより深めて、議事録は、法律を執行する場合の重要な指針となるものでありますし、政令や省令にも影響を与え、附帯決議により運用や今後の立法政策上の課題を示すということの役割も果たしてまいりました。

 加えて強調しておきたいのは、東日本大震災のような大災害の際にも、二院制でこそ国民主権の立場で対応できるという問題です。現行憲法は、いわゆる国家緊急権を盛り込んでおりません。行政当局にとっては非常に緊急権は重宝だけれども、国民の意思をある期間有力に無視をする制度であって、民主政治の根本原則を尊重するかの分かれ目だという当時の議論があったからであります。

 憲法は、大災害によって衆議院選挙ができずに衆議院の任期が切れた場合でも、参議院での緊急集会によって国会が機能できるように定めております。仮に衆参同時選挙ができなくなった場合であっても、非改選の参議院の半分があって緊急集会は可能でありまして、大災害など緊急事態の下でも、国民の権利を停止をして政府に集中させるのではなくて、国民の代表である国会の下で国民の意思に基づいて対応することがこの二院制の下で可能になっているということは、非常にこの間の重要な教訓だと思います。

 これは、この二院制は主権者国民の民意を正確に反映する選挙制度によって正当に選挙された議会が存在することが前提になっております。参議院にも抜本是正が求められておりますが、特に衆議院での小選挙区制度が民意を大きくゆがめるものとなっております。

 昨年の総選挙で、自民党は、有権者比では小選挙区で二四%、比例では一五%の得票でしたけれども、六割の議席を獲得するという結果になりました。民意と懸け離れた巨大与党が誕生し、その下でのねじれと言われる問題があるわけで、私は、むしろ正すべきは国民世論とのねじれを生むこういう選挙制度だと思いますし、また、数を頼りにしたような強引な国会運営であるとか国会の外で三党合意などを決めて国会に押し付けるようなやり方ではないこと、徹底審議を通じて多様な民意を国会審議に反映をさせる、少数会派にもより配慮した国会運営なども含めて、運用の面で多くの改善すべき問題があると思っております。

 以上です。

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