国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  まず、海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」のいじめ自殺問題についてお聞きいたします。  三月二十五日に本委員会で取り上げましたけれども、東京高裁は四月の二十三日に、海自によるいじめの証拠隠しを認めた上で、自殺の予見性、そして上司が対策を講じなかった責任を認めて、一審の四百四十万円から大幅に増えた約七千三百万円の賠償を国などに命じる判決を下しました。  上告をせずに判決は確定したわけでありますが、防衛大臣が判決をどのように受け止められているのか、そして、当然遺族に対して謝罪が行われるべきかと考えますが、これはどうなっているのか、まずお聞きいたします。

○国務大臣(防衛大臣 小野寺五典君) 平成十六年十月に護衛艦「たちかぜ」の当時の乗員が尊い命を自ら絶つという痛ましい事案があったことについて、亡くなった方及び御家族に対して、改めて心からお悔やみを申し上げます。  四月二十三日の東京高裁判決では、当時の上官等は自殺を予見可能であったとして、暴行、恐喝等、自殺との相当因果関係を認めるとともに、平成十七年の情報公開請求に対し、当時の横須賀地方総監部監察官及び「たちかぜ」艦長の二人がアンケート原本等の文書を隠匿したとして判示をされました。  防衛省としましては、この判決を重く受け止めたところであります。私としましても、この判決を見、そして関係機関とも協議の上、上告を行うことはしないという判断をさせていただきました。防衛省・自衛隊として、二度と同じような問題を起こすことがないよう、しっかり再発防止に努めてまいりますとともに、御遺族への謝罪についても、今後、御遺族の意向を踏まえた上で、できる限り誠意ある対応をしてまいりたいと思っております。

○井上哲士君 高裁での焦点は、海自がいじめを把握していたことを示す艦内生活実態アンケートについて、情報公開請求に対して廃棄したと答えていたけれども、三等海佐の内部告発で存在が明らかになったということでありました。  海自も内部告発後には存在を認めましたけれども、行政文書を適切に管理する知識が不足し、情報公開業務の重要性に対する認識が不十分だったと、こういう内部調査報告書を発表して、あくまでこれはミスだということで隠蔽については否定をし、裁判でもそういう主張をいたしました。しかし、高裁判決は、明確に隠匿であり違法だと断じました。  私も先日の質疑で、これは隠蔽というのは担当者だけの問題ではなくて組織全体の問題だということも指摘をいたしました。マスコミも一斉に、「隠蔽体質が断罪された」、「いじめ・隠蔽体質を改善せよ」など、社説を掲げているわけであります。  一方、海自のこれまでの再発防止策はやはり知識、認識不足によるミスだという前提だったわけでありますが、こういう判決も受けて更に踏み込んだ対策が必要だと考えますけれども、大臣の認識と、そして具体的対応についてお聞きいたします。

○国務大臣(小野寺五典君) この事案を、発生時の状況について報告を受けた中で、その文書管理が適切ではなかったという報告は私は受けております。ただ、今回の判決の中で、裁判所はこれは隠蔽体質があったというようなそういう判断もされたということ、これは大変重いものだと思っております。  この判決を受けまして、私として、速やかな再発防止を徹底を更にするということが必要と考えまして、五月の八日でございますが、事務次官通達ということで新しい措置の内容を発出させていただきました。一つはコンプライアンスに関する意識の徹底をすること、不適切な部下の指導及び自殺事故の防止、そして情報公開関係業務及び行政文書の管理の適正な実施について全省的に一層の徹底を図るとともに、防衛監察本部による定期防衛監察等も通じて実施状況を確認することで、これは実務面、意識面の両面から徹底を図っていくということが重要だと思っております。  今回の事案は、この高裁判決を受けて、私どもとしてやはり真摯に反省すべき重要な問題だと思っております。今後とも、このようなことが起きないようにしっかり対応していきたいと思っています。

○井上哲士君 意識面まで踏み込んだということでありますが、これ自身の実践とともに更に踏み込むことも必要かと思います。  海自は、アンケートの存在を内部告発した三等海佐について、告発のために内部文書のコピーを持ち出したのは不適切だとして処分に向けた調査を始めました。私は前回の質問で、処分などあってはならないとして調査の中止を求めたわけでありますが、答弁は、公益通報をしたことを理由にして公益通報者に対して不利益な取扱いを行うということはないというもので、やや曖昧な答弁だったと思います。  内部資料の持ち出しがあっても、それはもう公益通報と一体のものでありますから、処分はあり得ないと考えますが、三佐に対する処分に向けた調査というのは中止をされたということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 今御指摘がありましたこの公益通報をした三等海佐に対してですが、私からは、海幕長、海上幕僚長に対して、護衛艦「たちかぜ」訴訟の高裁判決が確定したことを受け、三佐の懲戒処分等については、公益通報者保護法の趣旨も踏まえ、適切に対処するように指示をしております。  いずれにしても、防衛省としましては、公益通報者保護法及び防衛省における公益通報の処理及び公益通報者の保護に関する訓令を踏まえ、公益通報したことを理由として公益通報者に対して不利益な取扱いを行うことはありません。

○井上哲士君 内部資料の持ち出しは、繰り返しになりますが、公益通報と一体のものでありますから、これは処分などは行われないということで確認をしたいと思います。  ただ、私はやっぱり処分を検討したこと自体がこの隠蔽体質の根深さを示していると思います。自衛隊での自殺問題というのはほかにも裁判も行われておりますし、泣き寝入りしている遺族もあるわけでありまして、対応を抜本的に見直すとともに、二度と起きないような踏み込んだ対応を改めて強く求めたいと思います。  次に、武器輸出の問題についてお聞きいたします。  先日の大型連休は安倍内閣が武器禁輸政策を転換してから最初のものでありました。総理、防衛大臣、外務大臣、外国訪問をされたわけでありますが、際立ったのは非常に各国との武器共同開発での協力を進めたということでありました。マスコミも、「装備品協力、各国に広げる 首相の欧州訪問」、日経、「武器 首相が売り込み 欧州輸出、成長戦略の一環に」、東京、武器共同開発へ着々 首相欧州歴訪」、京都、等々報道をいたしました。  具体的にお聞きしますけれども、まず、防衛大臣はオーストラリアに訪問をされて、船舶の流体力学分野に関する共同研究を進めることを確認というふうに発表されておりますが、この共同研究というのは、報道されているように、潜水艦の関連技術を含んだものということで確認してよろしいでしょうか。  また、防衛装備・技術協力の枠組みに関する協定を結ぶ交渉開始が合意されたとされておりますが、現在こういう協定を結んでいる国はどこか、そして交渉開始で合意済みの国はどこなのか、併せてお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(小野寺五典君) 日豪の首脳会談がありまして、その会談の結果、両首脳より進めるように指示を受けましたのが船舶の流体力学分野に関する共同研究ということであります。これは、船舶が海洋を航行する際に船舶の周りに生じる水の流れについて研究を行うものでありまして、具体的な研究の詳細については現在検討中ですが、研究内容は科学技術分野における基礎的なものであります。その結果の応用というのは、いかなる種類の船舶においても応用可能なものだと思っております。  また、装備・技術協力に関する枠組み協定ですが、米国とは一九八三年に対米武器技術供与取決めを締結をしております。また、英国とは日英間の防衛装備品等の共同開発に係る枠組みを昨年七月に締結をしております。また、本年四月にオーストラリアと、そして本年五月にはフランスと類似の装備・技術協力の枠組みの合意に向けて交渉を開始することを決定をしております。

○井上哲士君 いかなるものにも応用可能ですから、報道されているように潜水艦にも関連をする技術を含んだものだということでありました。  そしてまた、この装備・技術協力の枠組みに関する交渉開始もフランスも含むということが今答弁があったわけでありますが、続く日本、イタリアの防衛大臣の会談では、防衛装備・技術に関して両国間でどのような分野での協力が可能か、引き続き意見交換を行うことで一致したと、こうなっておりますが、具体的にはどういう分野そしてどういう意見交換を今後行っていくんでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 五月七日に実施されました日本とイタリアの防衛大臣会合でありますが、これは、様々な日本の今の、例えばNSCができました、あるいは防衛大綱、あるいは防衛装備移転の原則、そういう日本の安全保障政策についての説明をしたということであります。その中で、先方のピノッティ国防大臣から新しい防衛装備について今後とも技術協力をしていきたいという先方からの申出がございました。ただ、現在イタリアとの間で装備・技術協力分野においての具体的な協力案件が出てきているわけではありませんが、今後とも、両国でどのような分野の協力が必要かということは、これは重要かと思っております。  なお、今自衛隊として次期主力戦闘機として考えておりますF35につきましては、イタリアも同じくヨーロッパの一つの生産拠点になるということでありますので、そういう面では防衛装備の中での意見交換はできる環境にあると思っておりました。

○井上哲士君 さらに、ちょっと遡りますが、四月にアメリカ国防長官との会談で、武器技術協力強化で一致をしたということの一環として、アメリカとの間で互恵的な装備品調達に関する覚書を結ぶ協議に入ったと言われておりますが、これは具体的にどういう中身になるんでしょうか。

○政府参考人(防衛省審議官 吉田正一君) 先生御指摘ございました互恵的防衛調達覚書と申しますのは、アメリカが、同盟国でございますとか友好国との間で相互に防衛装備品の調達を効率化すること等を促進するため、これまでに欧州主要国等二十三か国と作成している覚書でございます。このような覚書の作成により、例えば米国が安全保障の観点から講じている特殊金属規制、これは米国以外で製造した特殊金属が原材料として含まれている防衛装備品を米国国防省が購入することを禁止する規則でございますが、こういった適用を除外する、そういったことが可能となるというふうなことでございまして、また、米国及び相手国は調達手続の透明、公平性のための措置等を講ずることになると、こういったものを内容とする覚書でございます。

○井上哲士君 日本からの輸出をより促進をすることに働くものだと思います。  安倍総理は英国を訪問をしておりますが、英国とは既に化学防護服に関する共同研究が進められておりますが、これも更に拡大をするという方向だと報じられておりますが、これはどういうような分野を想定しているんでしょうか。

○政府参考人(吉田正一君) 五月一日の日英首脳会談後に発出されました日英共同声明におきましては、二〇一三年七月に署名された協定及び過去二年間のこれらの分野における両国の協力に基づいて、共同開発・生産のための様々な適切な防衛装備品プロジェクトを特定し続けていく旨が盛り込まれております。  このような方針に基づきまして、今後とも日英防衛当局の様々なレベルで意見交換を実施していきたいと考えてございますが、現時点で化学防護以外に英国との間で合意している具体的な協力案件はございません。

○井上哲士君 さらに、総理はフランスでは無人潜水機を中心に複数の分野での協力促進を申し合わせたとされておりますが、四月から既に武器共同開発の実務者協議の初会合が開催をされておりますけれども、これは、双方出席者はどういうレベルなのか、また、今後どういうテンポでこの実務者協議が行われるんでしょうか。

○政府参考人(吉田正一君) 先生御指摘にございましたように、本年一月に開催されました日仏外務・防衛関係閣僚会合で日仏間の防衛装備品協力に関する委員会を設置することで合意しておりまして、これを受けまして、第一回会合を四月九日に東京で開催したところでございますが、基本は双方の課長レベルで開催したところでございます。それで、今後のことでございますが、第二回を六月中旬にフランスで開催することと予定してございます。

○井上哲士君 このフランスでの協力促進にある無人潜水機について、ある報道では、日本としては中国が進出を図る東シナ海や西太平洋での運用を想定していると、こういうこともありましたけれども、こういうことでしょうか。

○政府参考人(吉田正一君) 先ほど申し上げました日仏首脳会談後の共同プレスリリースでは、防衛装備協力については、両国は、無人システムを始めとする幾つかの分野において協力する共通の関心を特定した旨の言及がなされてございまして、そういった分野について今後意見を深めていこうと、そういうことでございます。

○井上哲士君 今ずっと答弁していただきましたが、総理や防衛大臣の外遊やトップ会談を通じて、次々武器共同開発での各国との協力が広げられております。  自民党は、こうした政府間交渉の強化のための組織改編も求めておりまして、先日、自民党の国防部会が、武器の国際共同開発や輸出の拡大に向けて政府間交渉に乗り出すように求めて、防衛装備庁の早期設置を提言をしております。大臣は、しっかり受け止めて五月か六月に防衛省としての方針を出すと述べたと報道をされておりますが、元々防衛省は、昨年八月に発表した「防衛省改革の方向性」で、防衛装備庁の設置も視野に入れた改革を行うとしております。  この自民党の提言も受けて、防衛省としても、輸出や共同開発の促進も含んだ組織改編を検討をしているということでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 自民党の国防部会・防衛政策小委員会合同会議においては、本年二月より十回にわたって防衛生産・技術基盤に係る議論がなされ、本年四月二十一日に、我が国の防衛生産・技術基盤をいかにすべきかという提言、これを防衛省に対して手交されまして、私ども受領させていただきました。  同提言におきましては、防衛装備の海外移転推進、国際協力機能、技術管理機能、プロフェッショナルな人材を育成する機能、そして構想段階から研究開発、取得、維持整備段階に至る一貫したプロジェクト管理機能などを有する強固な組織を外局として防衛省に設置することを求めております。  防衛省においても、防衛省改革の一環として、防衛装備庁、仮称ではありますが、それの設置も視野に入れた装備取得関連部門の統合に向けた検討を行っているところでありますが、私どもとしては、特に防衛省改革としての観点でありますので、この防衛装備庁は、例えば防衛装備を新しく検討、導入する場合にプロジェクトマネジャーの制度を入れ、少しでもコストが安く、そしてまた、最終的に運用に十分に対応できるような、そういう一貫した防衛装備の充実ということを視野に入れた現在の防衛装備庁の設置、検討中ということであります。

○井上哲士君 輸出についてどう取り扱うかというのは今のではよく分かりませんでしたが、私は全体としていろんな分野で加速していると。  三月の予算委員会で質問した際に、防衛大臣は、防毒マスクとかブルドーザーとか、そういうのを自衛隊がいろんな支援で持っていったときに一々例外措置をしなくてもいいようにするためだと、こういうような趣旨の答弁もされまして、委員のお話を聞いているとまるで武器という話ですが現実的には防衛装備ということだと、こういうふうに答弁をされました。  しかし、まさに現実的には、武器そのものの共同開発や輸出へトップセールス、そして協定の整備、推進のための組織改編など、次々と加速をしているのが実態だと思うんですね。  武器禁輸政策撤廃して僅か一か月余りでありますが、この急テンポを見ておりますと、厳格な管理と盛んに言われますけれども、日本からの武器や技術が拡散をして国際紛争を助長するんじゃないかと、この懸念が広がるわけでありますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 現在の日英間で行っているのも防護服の開発ということになりますし、また、今各国で議論されているのは、むしろ、今新しい防衛装備については多国間での共同開発が主流になっているということでありますので、日本の防衛装備を積極的に海外にという、そういう印象を持たれたのであれば、それは今回私が各国と話した中の内容とは少し異なる内容ではないかと思っております。  防衛省としましては、今お話ししましたように、国際的な主流となっています国際共同開発・生産への適切な対応や諸外国との安全保障、防衛協力を一層強固にしていくために、装備技術の技術協力を行っていくということは、これは全体としての考え方であります。  他方、新たな防衛装備移転三原則においては、防衛装備の海外移転に係る手続や歯止めを今まで以上に明確化し、内外に対して透明性のあるルールを定めております。  御指摘の点も、移転された防衛装備が国際的な平和及び安全を妨げる用途に使用されることがないよう、目的外使用や第三国移転についても適正な管理を確保することとしております。  いずれにしても、今回の防衛装備の原則、新しい原則というのは私どもとしてやはり今の新しい防衛装備は多国間で共同開発するのが主流の中で、日本がその中で取り残されないということに関しても重要な検討をしていただいたことだと思っております。

○井上哲士君 改めて、武器輸出で栄えたり、国際紛争を助長するような国にはなってはならない、武器禁輸政策に立ち返るということを求めまして、質問を終わります。

 

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