国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  朝から長い審議が続いておりますが、最後でございますので、よろしくお願いいたします。  まず、イスラエルとの防衛協力と武器輸出の問題について防衛大臣にお聞きいたします。  来日したイスラエルのネタニヤフ首相と十二日に安倍総理が会談をいたしました。両国の安全保障に関する初の首脳級対話と位置付けられて、防衛分野の交流の拡大を含む共同声明が出され、翌日には小野寺防衛大臣も会談をされております。  イスラエルは、二〇〇六年にはレバノンへ、二〇〇八年と一二年にはパレスチナのガザ地区への空爆を行っておりますし、この二〇〇六年のレバノン侵攻では、安保理が敵対行為の停止を求める決議を採択をしております。東エルサレムでの同国の入植活動については、昨年六月に日本の外務省自身が強い遺憾の意を表明をしておりまして、この入植活動は国際法違反だと断じているわけですね。  私は、こういう国と防衛協力の拡大ということを進めることは、国際紛争を助長し、また中東の和平に逆行するのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 小野寺五典君) 我が国にとりまして、イスラエルを含む中東地域の平和と安定は、エネルギーの安定的確保及びシーレーンの安全確保の観点から極めて重要だと考えておりますし、我が国としても、中東和平の問題にこれまで積極的に関与してきたと承知をしています。  防衛省としましては、中東地域の安全保障に影響力を有するイスラエルと友好な関係を構築することは中東地域の平和と安定を確保する上で重要であると考えており、先般の首脳会談において、防衛当局間の交流拡大で一致したところであります。また、私がネタニヤフ首相と会談した際には、サイバーセキュリティー分野について機会を捉えて意見交換を行っていきたい旨を述べ、先方からも同意を得ました。  防衛省としましては、中東諸国との間でバランスの取れた防衛交流を実施することとしており、イスラエルとの交流拡大が国際紛争を助長し、中東和平の妨げになるとは考えておりません。

○井上哲士君 私は、いわゆる両国間の友好を広げることを問題にしているのではないんですね。こういう様々な国際法違反の行為を行っている国と事実上不問に付すような形で防衛協力をするのがいかがなものなのかということであります。  F35の共同開発を進める、日本が参加をするに際して、この国際紛争を繰り返してきたイスラエルへの第三国輸出の可能性が大きな問題になりましたし、私もただしてまいりました。一方、新しい武器輸出三原則の運用指針では、輸出可能国に我が国との間で安全保障面での協力関係がある諸国とされております。この点、先日の質疑でただしますと、首脳会談や共同声明で防衛協力の推進や安全保障の対話が確認された国も当てはまると、こういう答弁でありました。  そうなりますと、今回のこういう防衛協力の拡大がイスラエルに対しての直接の武器輸出すら可能になるんじゃないかと、こう考えますが、どうでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 日・イスラエルの首脳会談では両国の防衛当局間の交流拡大で一致をいたしましたが、これは一般的な防衛交流を念頭に置いたものでありまして、具体的な防衛装備分野における交流、協力について両首脳が合意した事実はないというふうに承知をしています。  なお、一般論としてでありますが、防衛装備移転三原則におきましては、移転を禁止する場合を明確化するとともに、移転を認め得る場合であっても、移転先の適切性や安全保障上の懸念等を厳格審査し、さらには原則として国際約束により適正管理を確保することとしておりまして、これまで同様、防衛装備品の移転については厳正かつ慎重に判断されることとなると思います。

○井上哲士君 政府の判断ということになっているわけでありますが、しかし、こういう防衛協力の位置付けた共同声明というものがやはり可能性に道を開くことは否定できないことだと思うんですね。  私、先日の質疑でも、ゴールデンウイーク中の外遊でも各国との武器輸出のトップセールスが行われてきたということを問題にしましたけれども、今度は、来月パリで行われる国際武器の見本市に日本企業が参加をするということを認める方針を固めたという報道がございました。陸上自衛隊で使用する車両や地雷探知機など、防衛装備品の出展を防衛産業各社に認める方針を政府は固めたという報道でありますけれども、これは事実でしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 厳しい財政事情や海外企業の競争力の増大など、我が国の防衛生産、技術基盤を取り巻く環境が厳しさを増す中、防衛装備品の国際的な最新の技術動向について常に情報収集を行うことは非常に重要なことだと思っております。  防衛省としましては、民間企業の国際展示会への参加を許可や制限する立場にはありませんが、来月六月十六日から二十日の間、フランスのパリにおきまして、フランス陸上兵器工業会が主催します国際展示会ユーロサトリが開催されることを承知しております。  また、これは主催者の発表ということでありますが、日本からは三菱重工業、富士通、日本電気、東芝、日立、川崎重工業といった企業計十四社が参加する予定と承知をしております。

○井上哲士君 報道では一部企業は地対空ミサイルのパネル展示も検討しているとなっておりますが、これはどういう企業でしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 私ども、詳細については承知をしておりませんが、少なくとも、パネル展示というのは、このような装備があるということを実物ではなくてパネル等で展示をするということだというふうに理解をしております。

○井上哲士君 武器禁輸政策の撤廃に際して、私も何度も繰り返し質問してまいりましたけれども、平和国家としての理念は変わらないんだということを繰り返し答弁をされましたけれども、空爆や国際違法の入植を繰り返してきた国へも武器輸出の道を開くし、こういう軍需産業の国際ビジネスと一体となった武器輸出の促進がされているということはまさに重大な問題だということを厳しく指摘をしたいと思います。  その上で、集団的自衛権の問題についてお聞きをいたします。  いわゆる安保法制懇は、第一次安倍内閣でもつくられました。その報告書は、福田内閣にやはり同じように解釈変更が必要とするものとして出されたわけであります。ところが、福田内閣は、総理自身が受け取らずに官房長官が受け取って、しかも政府としてその後の検討はされませんでした。  一方、再び安倍内閣ができますと、同じようなメンバーで法制懇が立ち上げられて、報告書が出し直されて、そして今度はこれを解釈改憲に踏み込もうという流れの中で検討が今進められております。  福田内閣のときは必要なかったけれども、安倍内閣になったら必要になったと、こういうことなんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 前回の報告書、二〇〇八年に提出されたわけですが、二〇〇八年と今日の安全保障環境を比べましても、我が国を取り巻く安全保障環境、ますます厳しくなっていると認識をしております。  北朝鮮もミサイル開発、核開発を続けているわけですが、移動式の発射台の登場等によって把握がますます難しくなっている、東シナ海においても毎日のように領海侵犯が続いている、南シナ海においては国と国が現にぶつかり合っている、こういった現状も発生していますし、また、宇宙、サイバー、こういった新しい脅威もより現実的なものになりつつあります。  こういった安全保障をめぐる環境の変化を受けて、政府として、国民の命、暮らしを守るために、あらゆる事態に切れ目のない対処をしなければいけない、法整備を行って隙のない備えをつくっていくことが必要である、そして抑止力を高めていかなければならない、こういった認識がより強まったというふうに認識をしております。  こういった中で、この度、安保法制懇の報告書を新たに受けたわけであります。是非、この報告書を基に、我が国としてどうあるべきなのか、真剣な議論をこれからしっかり行っていきたいと考えています。

○井上哲士君 前回の報告のときも安全保障環境が厳しいということは言っているわけですね。その上で、解釈変更を前回も言っているわけですよ。しかし、それを受け取った福田内閣は検討せずに、また安倍さんがなったら今度は一層厳しさを増したと、こういうことが出てくると。安倍さんが総理になると安全保障環境が厳しくなるということなんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 先ほど幾つか紹介させていただいた例、二〇〇八年の段階と比べて新しい様々な動きということで紹介をさせていただきました。この間においても、我が国をめぐる安全保障環境、より厳しくなっているということ、これは間違いないところでありますし、そして、多くの国において、自らの平和と繁栄を維持するためには一国のみではそれを維持することができない、こうした共通認識ができ上がりつつある、こうした国際社会における動きもあります。  こういったものも踏まえて、この報告書をどう活用し、そして我が国の方針を決めていくのか、政治に関わる者として真剣に議論しなければならないと考えます。

○井上哲士君 安倍総理は、二〇〇四年の段階の著書「この国を守る決意」で、我々の世代に新たな責任がある、それは日米安保条約を堂々たる双務性にしていくことだと、こういうふうに述べられております。  ですから、最近の安全保障環境の悪化ということは言われますけれども、まさにこの安倍総理の政治信条実現のため、集団的自衛権行使容認ありきということが私はこの間の経過ではないかと思いますが、改めていかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 日本とアメリカの関係、日米同盟につきましては、例えば、日米安全保障条約第五条におきまして、日本に対する武力攻撃に対しまして日米で共同して対処する、こういったものが定められています。また、六条におきましては、日本の安全、そして極東の平和、安全のために米国が我が国の施設・区域を使用する、こういったものを定めています。  こういった内容は、日米の義務、確かに同一ではありませんが、日米のバランスは取れているというのが日米安全保障条約に対する我が国政府の考え方であります。こういった評価を政府としましてはしているところであります。

○井上哲士君 そうです、バランス取れてきていると、少なくとも自民党政権はずっと言ってきたわけですね。それを堂々たる双務性にするのが我々の責任だと、こういう安倍さんの個人的信条に基づいて、とにかく集団的自衛権行使容認ありきということで私はこの間進められていると思うんですね。ですから、与党協議に政府から十五の事例が示されておりますけれども、そういう立場ですから、今日もずっと議論になっていますけれども、果たしてリアリティーがあるのかということになるわけであります。  北朝鮮を想定したと思われる、この米艦船による邦人避難の場合の護衛ということも、総理はわざわざパネルを掲げたわけでありますが、防衛大臣にお聞きしますが、こういうケースというのは実際、日米間で何らかの協議はされているんでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 総理が説明された資料というのは、あくまでも近隣、我が国の周辺でしょうか、特定の国のことを挙げたことではないと承知をしております。  日米間では様々いろんな問題について協議、検討を行ってきておりますが、現在、本年末までに日米ガイドラインの見直し作業を完成させるという昨年の2プラス2の合意がありますので、それに従って二国間で適切な役割分担についての議論を進めているということであります。他方、緊急事態への対応ぶりに係る日米間の議論の具体的な内容については、事柄の性質上お答えを差し控えさせていただきます。  いずれにしても、防衛省としては、一層厳しさを増す安全保障環境において、日米同盟の抑止力及び対処能力を強化すべく、鋭意取り組んでまいりたいと思っています。

○井上哲士君 本来、海外の邦人保護というのは日本政府の役目なわけですね。先日、元内閣官房副長官補の柳澤さんの講演では、あのような事態というのは、パネルのような事態というのはリアリティーもないけれども、仮にああいうことになったら、まさに政府の危機管理の重大なミスというか、そういうことを表すものにほかならないという指摘もされておりました。  朝鮮半島有事の際の邦人輸送ということについては、政府としては何らかの検討をこの間されてきたんでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 先ほどもお話をしましたが、これは政府全体のお話を私がする立場ではありませんが、少なくても防衛当局としましては、様々な緊急時における対応については、日々対応能力が向上できるよう努力をしているところであります。

○井上哲士君 一九九三年に統合幕僚会議がまとめたK半島事態対処計画というのが、二〇〇三年にその中身が明らかになって様々報道もされました。北朝鮮が最初に核不拡散条約脱退を表明したのを受けて、陸上、海上、航空の三自衛隊を束ねる制服組のトップ、防衛庁の統合幕僚会議がひそかにまとめ上げたものだと、こういうふうに言われておりまして、その中身を基にした報道や、そして本も出されております。  これに関わった幹部の一人は、計画策定から十年が経過したけれども、北朝鮮の戦力は当時と変わらず計画は今でも有効と考えていますと断言をし、文書は金庫にしまわれているということでありますけれども、大臣は御覧になっているでしょうか。

○国務大臣(小野寺五典君) 御指摘のものは、一九九三年に統合幕僚会議がまとめたとされている朝鮮半島における事態対処計画ということでしょうか。これは、朝鮮半島有事における自衛隊の対応については自衛隊の運用に関わるものでありますので、事柄の性質上お答えは差し控えさせていただきますが、御指摘の点につきましては、一九九三年から九四年当時、北朝鮮の核開発疑惑が問題となり、関係省庁がそれぞれ所掌事務の範囲で取るべき対応について検討したというふうに承知をしております。  当時の防衛庁としても、我が国の平和と安定を守るという任務遂行の観点から種々の検討を行っておりますが、それらはあくまでも部内の研究であり、当時の防衛庁が正式な計画をまとめたという事実はないと承知をしております。

○井上哲士君 報道ですと、この計画は、情勢が緊迫した時点で在韓邦人三万人のうち二万人が自力で避難をし、残る一万人も米軍に頼らず自衛隊で輸送可能としておりまして、この中では、ソウル、仁川、釜山に振り分けて、輸送艦や政府専用機、輸送機で運び出すと、こういう計画になっておりまして、その中では、芦屋基地から離陸したC1輸送機が米軍家族百二十人を乗せて福岡空港に着いた。むしろ米軍家族の輸送を日本の自衛隊が米軍の要請で行うということまで中に盛り込まれているわけですね。  私は、先ほど来、日米間のいろんな協議はしているのかとお聞きしましたけれども、こういう様々なことが行われていたとするならば、そういうことと無関係に、あのパネルにあるような日本の邦人がアメリカの艦船によって輸送され、それを日本が守るというような、こういうことが突然出てくるというのが本当に解せないわけですね。  結局、やっぱりこの間、今日も朝から指摘ありましたように、とにかく行使容認ありきでこういうケースを出してきたんではないかと。こういう形で日本の進路に関わるような憲法解釈を変えるような検討をするのは私は間違いだと思いますが、改めていかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 総理の挙げられた例について御指摘がありました。  これは、昨日も答弁の中で申し上げさせていただきましたが、二〇一一年のリビア情勢の悪化の際に、在留邦人が米軍が手配したチャーター船あるいはスペイン軍が派遣した輸送機、こういったもので避難している、こういったかつての記録があります。また、邦人の事例ではありませんが、一九九一年のフィリピンの火山噴火に際して米軍の揚陸艦が民間人を含む避難民を輸送した、こういった記録も残っています。  御指摘の点、これは全くあり得ない話ではないと我々認識をしております。あらゆる事態について対応するべくしっかりと議論をしておかなければいけない、こういったことから一つの例として挙げたということでありまして、こうした例示、決して不適切ではないと考えます。

○井上哲士君 それぐらいの構えで原発に対応していただきたいと思っておりますが。  現実に憲法の解釈まで変えようとしているときに、こんなのもあるかもしれない、あるかもしれないという話ではなくて、ちゃんとした例示もなしにやるようなことはあってはならないし、そもそも戦争する国への道は許されないということを申し上げまして、質問を終わります。

 

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