国会質問

ホーム の中の 国会質問 の中の 2014年・186通常国会 の中の 外交防衛委員会

外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。日米重大犯罪防止協定、PCSC協定についてお聞きいたします。この協定の協議は日本からの要請で始めたものではないと承知しておりますけれども、どういう経過だったのか、まず外務大臣からお願いいたします。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 経緯ですが、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロ以降、テロ対策の一環として、テロリスト等の入国を水際で防止するための国際的な情報共有への関心が高まりました。こうした中、米国議会におきましては、二〇〇七年、相手国が米国とテロ対策等に係る情報共有のための協定を締結していることを査証免除の要件といたしました。こうした背景を踏まえ、米国は、我が国を含む米国の査証免除プログラム参加国、二〇一四年四月時点で三十七か国・一地域に上りますが、こうした国・地域に対しましてプログラムの安全性を強化するための新たな措置として、この協定の締結を提案してきたものであります。我が国としましては、この協定が日米間の査証免除制度を維持するという観点から重要であるということのみならず、テロといった重大犯罪から国民を守る観点からも有意義であると考え、この協定を署名することに至った次第でございます。

○井上哲士君 協議の途中の二〇一二年の十月に、日米間で意図表明文書に署名が行われております。協定や条約の締結に当たってこういう意図表明文書を締結するということがどの程度あるのか、また、今回こういうものを交わした理由は何だったんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 二〇一二年十月の意図表明文書についてですが、政府要人間の会談の機会などに作成する二国間の文書において国際約束の交渉開始や締結に向けた意図を表明する事例、こういった事例は過去に幾つも存在いたします。本年においても幾つか存在する次第です。PCSC協定については、二〇〇七年、米国議会がテロ対策等に係る情報共有のための協定の締結を査証免除の要件としたことを踏まえ、日米間で協議を行ってまいりました。その結果、日米間の査証免除制度の下で安全な国際渡航を一層容易にしつつ、テロ等の重大な犯罪に係る情報を交換する枠組みを設定する意義について認識を共有するに至った次第です。これを受けて日米両政府は、プライバシーの尊重を始めとする今後の取組の方向性を確認するため、御指摘の二〇一二年十月十二日に意図表明文書を作成した次第です。その内容につきましては、透明性を確保する観点から、同日、対外的にも公表した次第であります。

○井上哲士君 それを見ますと、米国政府が二〇一三年六月三十日までに協定をまとめる必要を強調したことを踏まえと、こうなっておりまして、アメリカ側が日にちを切って強く求めてきたことがこの意図表明文書からも分かるわけであります。アメリカが求めてきたのはPCSCだけではないんですね。三つの条件を示しております。一つは紛失及び盗難パスポート情報の共有、もう一つはテロ被疑者及びテロを起こすおそれのある者に関するリストの共有、そしてこのPCSCですが、残り二つについては日米間ではどのように取り決めたんでしょうか。

○政府参考人(外務省 領事局 局長 三好真理君) お答え申し上げます。委員御指摘のとおり、米国政府は、米国議会に対しまして、PCSC協定、さらにはテロ情報交換のための取決め、紛失・盗難旅券情報を共有するための枠組みによりまして米議会の要求している要件を満たすことができると証言していると承知いたしております。紛失・盗難旅券情報を共有するための枠組みにつきましては、我が国は、二〇〇四年のシーアイランドのG8サミットの結果を受けまして、二〇〇四年十一月から、国際刑事警察機構、ICPOに対して紛失・盗難旅券の旅券番号、発行年月日及び失効年月日を提供いたしております。一方、テロリスト情報の共有等のテロ対策協力の具体的な取組につきましては、それを明らかにすることにより公共の安全と秩序の維持に支障を来すおそれがあるということ、それから相手国との信頼関係を損なうおそれがあることから、恐縮ながらお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

○井上哲士君 いや、アメリカは三つの条件を示して、その一つとしてこのPCSCを結んだわけですね、それがなければビザ免除が継続できないという理由でありまして。相手国からの信頼関係と言うけれども、向こうが求めているわけでありますから、このリストの共有については、米国の要求どおりやったということがなければこのビザ免除が継続されないんじゃないんですか。明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人(三好真理君) アメリカ側との協議を通じまして、アメリカ側の要望を取り入れた形で協定を交渉してまいりました。

○井上哲士君 アメリカからの要望はまさにリストの共有なわけでありますが、それをなぜやったこと自身も明らかにできないのかと。実際にやっているんだと思うんですね。昨年の秘密保護法の質疑の際に、警視庁の公安部が作成した国際テロ対策に関するデータを我が党議員が取り上げました。二〇一〇年にネット上に流出して大問題に国会でもなりました。都内在住の四万人のイスラム諸国出身者を狙い撃ちにして調査をしたデータで、およそ千人の個人情報と約六百三十の団体情報が流出したわけですね。この中では、モスクを監視をしたり、それからイランの大使館のレセプションにまで公安警察が潜入して報告をしていたという資料まであるわけであります。このときの答弁で、古屋国家公安委員長は、公共の安全と秩序の維持のために必要な情報を収集し分析していると答弁いたしました。それから岸田大臣は、政府としての対応は国家公安委員長の説明のとおりだと、こういうふうに答弁をされました。この流出文書の中には、氏名、生年月日から日本への出入国歴、それから旅券の番号まで含めた洗いざらいの個人データを作った調書があり、それがしかも英文で流出をしております。これは明らかにそういうリスト交換のものではないかと思われますが、こういうテロを起こす可能性がある者として、イスラム諸国出身者のリストの共有というのが既に行われているということではないんですか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(岸田文雄君) テロリストの情報共有など、テロ対策協力の具体的な取組については様々な取組が行われております。ただ、詳細については、相手国との関係等もあります、信頼関係等も鑑みて控えさせていただくというのが我が国政府の対応であります。

○井上哲士君 しかし、やっているのは日本政府でありまして、この流出した情報の中には、イラン大使館の大使以下八十人もの大使館員の銀行口座情報、出入金も含めて詳細に記録をされているわけですね。こういう重大なプライバシー侵害と一体として、この三条件の一つとして締結が迫られたのがこの協定ではないかと。  アメリカとPCSC協定を結んだ他国で、人権侵害などへの懸念、そういう訴えというのは起こっていないんでしょうか。

○政府参考人(外務省 北米局 局長 冨田浩司君) お答えをいたします。PCSC協定の締結に際して、プライバシーあるいは人権の保護というものが重要な課題であることは委員の御指摘のとおりでございます。米国と第三国との間のPCSC協定につきましても、様々な検討や議論が行われたというふうに承知はしております。しかしながら、各国とも、プライバシー、人権等をめぐる法制度は様々でございまして、結果として、締結された協定の内容も一様ではございませんので、各国の議論の一々についてコメントすることは控えさせていただきたいと思います。

○井上哲士君 ドイツの市民が欧州人権裁判所に対してこの協定への不服申立てを提訴しております。申立人は、ネオファシストに反対する抗議行動に参加した後にドイツの警察から指紋とDNAを採取、登録されたと、これが、米国に渡航した際に様々な、飛行禁止リストへの記載であるとか監視対象に置かれるなど、そういう結果を招くのではないかということで、これはプライバシーに対する基本的権利を侵害するものと主張して、欧州人権裁判所に提訴をしているという例があるわけであります。日本の指紋制度をこのヨーロッパと比べますと、プライバシー保護は更に遅れております。その下で指紋の自動照会によって個人情報を制度の異なる外国との間で共有するということは、プライバシー保護の観点から重大な問題があると思います。警察庁にお伺いしますが、特定の者を識別しないで行われる第一次照会の場合は、被疑者指紋の全て、保管されたものの全て、千四十万人分が対象になりますが、このうち起訴猶予以外の理由による不起訴処分者、それから無罪判決確定者は何人分になるでしょうか。

○政府参考人(警察庁 審議官 荻野徹君) お答え申し上げます。警察庁が保有をしております指紋のうち、指紋の画像と犯罪経歴を一体的に記録をしているものについてのお答えということになりますが、起訴猶予以外の理由による不起訴を受けた者、それから無罪判決確定者でございますが、一定の推計を交えた数字ということになるわけでございますが、それぞれ約十一万人と約一千人でございます。

○井上哲士君 これ以外に保護処分を受けた少年の指紋というものもあるわけで、私は重大だと思うんですね。国家公安委員会が指掌紋取扱規則というのを定めておりますが、指紋情報を抹消、廃棄をする場合に関して、被疑者指紋については、指紋を採取された被疑者が死亡したとき、それから指紋情報等を保管する必要がなくなったときとされております。先ほどのようなものが残っているということは、保管する必要があるという判断をされているということだと思うんですが、どういう必要があるんでしょうか。

○政府参考人(荻野徹君) お答えを申し上げます。指紋の制度ということになりますが、都道府県警察は、被疑者の同一性を特定するということを目的といたしまして、刑事訴訟法の規定に基づきまして指紋を採取し、及びこれを保管してございます。起訴猶予以外の理由により不起訴となったり無罪判決が確定したというだけで直ちに指紋の採取自体が違法となるというものではございません。そういうことから、刑事訴訟法の規定に基づき、これらの被疑者から採取した指紋を引き続き警察が保管し、利用することには法的な問題はなく、これらの者を含めて、被疑者から採取した指紋を犯罪の捜査の必要により引き続き保管をしているというものでございます。

○井上哲士君 採取が法的に問題がないことと保管を続けることは別だと思うんですね。今の答弁でいいますと、例えば無罪になった人の指紋情報を他の犯罪の捜査にも利用すると、そういうことなんでしょうか。

○政府参考人(荻野徹君) 警察では、繰り返しになりますけれども、刑事訴訟法の規定に基づきまして指紋を採取しているわけでございます。刑事訴訟法の規定でこのような指紋の採取といったものが規定されておりますのは、人物を特定をするためということでございます。そして、被疑者の特定ということは犯罪捜査上非常に重要な事柄でございまして、こういった事柄のために、現在、刑事訴訟法に基づいて採取したものを保管をし、利用しているということでございます。

○井上哲士君 被疑者の指紋を採取しても、その後無罪判決などを得れば被疑者でないわけですから、本人特定をする必要はないわけですね。にもかかわらず、結局他の犯罪に利用されていると。これ、指紋は重要な個人情報なわけで、それが不起訴処分とか無罪判決を受けても一生涯保管をされて蓄積をされると。自分の知らないところで利用されて、極めて重大な私はプライバシー侵害だと思います。警察庁の個人情報開示請求等事務取扱要綱では個人情報の利用停止請求の手続が定められておりますけれども、この手続を使って、例えば無罪判決を受けた人が自分の指紋情報については削除、抹消してくれと求めることはできるんでしょうか。

○政府参考人(荻野徹君) お答えを申し上げます。ただいまお尋ね、御指摘ございました取扱要綱でございますが、これは行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づきまして保有個人情報の開示請求等を処理をすると、そういったことにつきましての必要な手続等を定めているものでございます。お尋ねの被疑者指紋でございますが、行政機関個人情報保護法第四十五条第一項の規定によりまして、こういった情報につきましては、開示請求や利用停止請求をすることのできる対象から除外をされているといったことでございます。したがいまして、この取扱要綱の適用はございません。

○井上哲士君 そうしますと、無罪判決を受けた人が、捜査の過程で採取された自分の指紋がいつまでも捜査当局に保管をされて、自分の知らないところで利用されるのは我慢ならぬ、削除してくれと、こういう場合の行政手続はないということなんでしょうか。

○政府参考人(荻野徹君) 御指摘のような手続は、基本的には行政機関個人情報保護法の規律するところでございまして、行政機関個人情報保護法につきましては、繰り返しになりますが、第四十五条で刑事事件等の処分に係る情報につきましては適用しないということになっておりまして、現在は、そういうことで、そういったことについての手続は存在しないということであろうと思います。

○井上哲士君 まさにそういうことなんですね。ですから、裁判で無罪になって、自分の指紋はもう消してくれと言っても、それをやるような手続は何もないということであって、一生涯保管をされ続けるわけですね。イギリスでは、指紋が原則無期限で保管されることになっておりましたけれども、二〇〇八年に欧州人権条約第八条プライバシー保護違反の判決が出たことを受けて、二〇一二年に自由保護法が成立をして、この指紋の記録について、軽犯罪では不起訴処分や無罪判決があった場合は記録を破棄すると、重大犯罪でも、有罪判決を受けなかった場合は保管期間は三年以内にするということをしております。  ヨーロッパ各国でも様々なそういう流れがあるわけでありますが、こういうプライバシー保護という世界の流れから見れば、日本の指紋取扱いの抜本的な私は改善が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(荻野徹君) 指紋の取扱いその他刑事手続につきまして、いろいろな国でいろいろな考え方があると。御指摘のとおり、一部に、無罪又は不起訴になった者の指紋情報の保管について法律で特に保管期間を定めるといったような国があるということもございますが、一方、そうでないような国もあるということであろうというふうに承知をしております。そういう意味からいいまして、そういった一事をもっていずれの国の指紋情報の保管管理の在り方がどうだというような評価をすることは、直ちにそういった評価を行うことは難しいのではないかと思われます。いずれにしましても、現行刑事訴訟法の下で現在の指紋制度は一つの定着した制度として運用されているということでございます。

○井上哲士君 定着された制度と言われました。内閣委員会では、古屋国家公安委員長は、我が国の指紋制度は百年、明治時代に導入されて以来の歴史と実務の積み重ねで成り立っていると、こういうふうに言われました。私は、驚くべき時代錯誤だと思うんですね。被疑者の人権など認めていなかった時代のやり方が、今の憲法の下で、しかも個人情報保護法などが作られた時代にそのままでいいとお考えなのかと。私は、とんでもない遅れた人権感覚だと思うんですね。こういう指紋の制度のままで他国とこれを自動照会をするということで果たして人権が守れるのかということを厳しく問いまして、時間ですので、質問を終わります。

日米重大犯罪防止対処協定承認に対する反対討論

○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日米重大犯罪防止対処協定の承認に反対の立場から討論を行います。
 本協定は、米国政府から同国に渡航する日本人に対するビザ免除を継続する条件として締結を迫られたものですが、日米間においては、既に、共助の迅速化のために外交ルートによらず捜査当局同士で共助を行えるよう刑事共助条約が結ばれております。その下で指紋に関する照会実績が大変少ない事実を踏まえれば、現状において指紋照会のための新たな措置をとる必要があるとは全く認められません。
 本協定による協力の内容は共助条約の範囲を大幅に超えるものです。そもそも、指紋の自動照会は、国民の個人情報について制度の異なる外国との間で事実上の情報共有を行うものであり、プライバシー保護の観点で重大な問題があると言わざるを得ません。捜査共助は、事案ごとにその捜査の具体的な必要に即して個別に判断され、その際にもしかるべき手続を経て行われるべきです。
 協定による協力は重大な犯罪が対象だとされておりますが、その犯罪類型は附属書にあるとおり極めて広く、かつ、それらの未遂、共謀、幇助、教唆、予備まで含まれています。自動照会により日本から米国に提供される指紋の範囲には、個人が特定されていない指紋の照会の場合には、無罪確定者、嫌疑なし又は不十分による不起訴、保護処分を受けた少年の指紋まで含まれます。
 米国が自動照会を行うには、重大な犯罪を実行するか又は実行したかについて調査をする理由があることが要件とされていますが、自動照会の性質上、日本はその要件の当否をチェックすることができません。また、二次照会によって得られた人定、犯罪歴の情報は、同意を得れば出入国管理や公共の安全に対する重大な脅威の防止など目的外にも利用できることとされていることから、情報の利用について濫用の懸念は全く排除できません。
 本協定には、法曹界からも、本年四月十八日付けの日弁連意見書に見られるように、協定への懸念が具体的に示されるとともに、このまま承認すべきでないという意見が出されていることも重く受け止めるべきだと考えます。
 以上申し述べ、反対討論を終わります。

 

ページ最上部へ戻る