国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。世界最大規模の武器の展示会ユーロサトリが十六日から始まりました。パリで行われておりますが、今回は、武器禁輸政策の撤廃を受けて日本パビリオンが出展されて、初めて十三社が参加をしております。政府としては、この武器輸出の新三原則について、防衛産業に対していつどういう場で説明をされたのか、そして、政府として企業にこのユーロサトリへの出展の要請をしているようですが、そういう説明の場で行ったのか個別に行ったのか、お答えください。

○政府参考人(防衛省審議官 吉田正一君) お答え申し上げます。防衛省におきましては、平素から防衛産業と必要な情報交換を行っておりますが、本年四月一日に閣議決定された防衛装備移転三原則につきましては、例えば、五月十二日に日本経団連が主催しましたセミナーにおいて、防衛省及び経済産業省から説明を行ったところでございます。具体的には、経済産業省から防衛装備移転三原則の背景と概要について説明するとともに、防衛省からは、防衛装備、技術協力に係る取組の現状等について説明をいたしました。この際、防衛省からユーロサトリを含む国際装備展示会について一般的な紹介を行ったところでございますが、防衛省としては、展示会への参加はあくまでも民間企業の判断であるものとして説明を行ったものでございます。

○井上哲士君 テレビでも、三菱重工の方が政府からの要請があったとはっきり述べられておりますし、いろんな多くの新聞や雑誌が複数の出展企業のコメントを載せておりますけれども、これも政府からの要請があったとはっきり言っているわけであります。それで、経済産業省、来ていただいておりますが、このユーロサトリへの出展に関して、外為法に基づく輸出許可申請はあったんでしょうか。

○政府参考人(経済産業省 貿易経済協力局 貿易管理部 部長 中山亨君) お答えいたします。外為法に基づく輸出許可申請の有無という御質問でございます。まず、海外の展示会への出展に当たっての外為法上の扱いでございますが、我が国企業が出展する際に、パネルでございますとかカタログでございますとか、こういったことの一般展示にとどまる場合には外為法上の輸出許可申請は不要という扱いになってございます。他方、防衛装備そのもののような貨物の輸出又は技術を見本品として展示するということであれば、これは輸出に当たりますので輸出許可申請が必要となります。経済産業省といたしましては、輸出許可申請があれば防衛装備移転三原則及びその運用指針に沿って厳格に審査するということでございますが、今回の個別の企業の個別の事案についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

○井上哲士君 個別企業、個別事案は言えないということでありますが、このユーロサトリについてそういう申請があったのかなかったのか、これはお答えいただけますか。

○政府参考人(中山亨君) ただいま申し上げましたように、それぞれの企業が今回のユーロサトリにどのような出展をしているかということから類推いたしまして、私どものところに輸出許可申請が必要だというものであれば申請があると考えられますし、必要がないということであれば申請されていないということでございます。

○井上哲士君 いや、もう既に始まっているわけですから。行われているんですよ、あったとすれば。その事実を聞いているんですから、答えてください。

○政府参考人(中山亨君) 申し訳ございません。今回展示されている内容を我々事前に全て把握はしておりませんが、現在、我々のところに輸出許可申請が必要だということで来ていることはございません。

○井上哲士君 すぐに答えていただきたいんですが。このユーロサトリには武田副大臣が参加をされておりますが、どういう目的で参加をされたのか。また、各国の防衛要人と会談をされておりますが、どこの国とどういう協議を行われたんでしょうか。

○副大臣(防衛副大臣 武田良太君) 諸外国の最新の防衛装備品を視察するほか、各国の要人との会談を果たしに行ったわけでありますけれども、フランス・ルドリアン国防大臣、そしてアルバニア及びブルガリアの国防大臣、モンゴル及びミャンマーの国防副大臣の各国の要人と二国間の防衛協力等について意見交換をしてまいりました。また、フランス国防省装備総局、DGAコレビヨン長官との間で、先月の日仏首脳会談における合意事項のフォローアップとして、今後の防衛装備・技術分野における協力について協議を行いました。どういった内容についてということにつきましては、相手国との関係上、お答えを差し控えたいと思いますけれども、装備・技術協力の推進について各国の要人と会談をしたわけであります。

○井上哲士君 防衛副大臣の出張に関わって防衛省から配付された資料を見ますと、このような国際展示会では防衛関連産業が出展する場合には、政府要人等が参加し、官民一体となった取組を国際的に行っているということで、日本も要人が行くことが必要だというふうに書かれていたわけでありまして、まさに、今、官民一体の取組ということが言われております。この武器輸出の問題で、私、本会議で総理をただしたことがありますが、その際、総理は、武器輸出によって経済成長を図るということは考えていませんと答えられました。ところが、副大臣は、このユーロサトリの会場でのテレビインタビューで、持っている国力を発揮できる環境を安倍内閣がつくったわけだから、それを生かしてどんどん成長していっていただきたいと、こういうふうにはっきり述べられておりましたけれども、総理の答弁とは食い違うんじゃないですか。パリに行ったから本音が出たということでしょうか。

○副大臣(武田良太君) 日本の誇るべき技術力というものを発揮する環境が広がるということについては、産業を育成する上でこれはいいことではないかという意味で私は発言をいたしました。

○井上哲士君 これはダイヤモンドという雑誌でありますが、こういうことに関連してユーロサトリも含めて報道し、世界の国防関係者が日本の最新兵器に熱視線と、こういう報道をしております。テレビでもユーロサトリの状況があったわけでありますけれども、まさに日本の技術をそうした様々な兵器産業などが注目をしているということがあったわけでありまして、まさに武器輸出によって経済成長を図るという方向ではないかと。今日、防衛生産・技術基盤戦略が決定をされるという朝の報道がございました。四月の三日に防衛省が自民党の会議に提出した原案では、防衛産業に対する財政投融資を活用した支援策というのも挙げられておりましたけれども、発表された戦略にはこの財政投融資の問題はどのように盛り込まれたんでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 小野寺五典君) 御指摘ありました防衛生産・技術基盤戦略、これについては、今日午後に会議をする予定にしております。今御指摘の内容については、自民党国防部会・防衛政策検討小委員会合同会議におきまして説明した資料においては、防衛生産・技術基盤の維持強化のために行う関係省庁との連携した支援策の案の一つとして、財政投融資などを活用した支援策の検討を進めていくということにしております。現在、防衛生産・技術基盤戦略、これはまだ最終決定をしておりませんが、その中で、その詳細についてお答えすることができませんが、同様の趣旨の内容を記述する方向で考えております。また、財政投融資については、長期低利の資金供給による政策的必要性の高い分野への支援を行うものであり、防衛生産・技術基盤の維持強化に用いることはその趣旨に合致し得るものと考えております。

○井上哲士君 財政投融資についての、これは財務省のホームページで説明を見ますと、資源配分の調整機能と経済の安定化機能を果たすものとして、中小企業金融や教育、福祉、医療などの分野に活用されてきたと、こういう説明でありまして、それが私は、防衛産業に活用するのが趣旨と合っているというのはおよそ考えられないと思います。そういうことの活用を検討すること自体が私は大変大きな問題だと思いますが、今のユーロサトリのこともそうでありますし、この新しい戦略、まさに官民一体による武器ビジネスが新しい三原則の下で急速に展開をされている。  五月の世論調査でも、武器輸出の関係については、反対が六二%、賛成は二七%で圧倒的に反対の声なんですね。こういう声と全く逆の方向に今急ピッチで進んでいるということを、これは極めて重大だということを指摘をしておきたいと思います。次に、集団的自衛権の問題でありますが、先ほど来、閣議決定の案文としての新三要件のことが、指摘がありました。我が国に武力攻撃が発生したということに加えて、他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあることというものであります。これ自体が極めて曖昧で地理的限定のないものでありますが、現に急迫不正の事態が発生していなくても、おそれのある場合に武力攻撃が可能だということになるわけですね。法制局に来ていただいておりますが、これまでの三要件では、事態が生じていない、おそれの段階では武力行使は憲法上認められておりませんけれども、なぜそういうことなんでしょうか。

○政府特別補佐人(内閣法制局長官 横畠裕介君) まず、国連憲章第五十一条は、国連加盟国に対して武力攻撃が発生したことを個別的又は集団的自衛権行使の要件として明らかにしております。それを踏まえて、いわゆる憲法九条の下での自衛権発動の三要件のうち第一要件におきましては、まさに個別的自衛権に対応するものとして、我が国に対する武力攻撃が発生したことを要件としているものと理解しております。

○井上哲士君 じゃ、武力攻撃の発生の時点とはどこなのかという議論も過去国会で行われておりますが、一九七〇年の衆議院予算委員会での高辻長官の答弁で、武力攻撃の発生の時点とは、まず武力行使のおそれがあると推量される時期ではない、そういう場合に攻撃することを通例先制攻撃というと思いますが、まずそうではないと、こういう答弁がありますが、こういうことでよろしいでしょうか。

○政府特別補佐人(横畠裕介君) 政府は繰り返し、武力攻撃が発生した時点について、我が国に対する武力攻撃のおそれがあるだけでは足りないが、攻撃による現実の被害の発生までは要するものではなく、武力攻撃が始まったとき、すなわち相手方が武力攻撃に着手したときという意味であるという説明をしております。

○井上哲士君 おそれがあるだけでは駄目なんだと。そして、先ほど紹介しましたように、そういう場合に攻撃することを先制攻撃だと、こういうふうにはっきり法制局長官が答弁されているわけですね。そこで、外務大臣にお聞きいたしますが、個別的自衛権の行使の場合はおそれで武力行使をすれば先制攻撃とされる、だから憲法上使えないと。ところが、なぜ集団的自衛権ではおそれの段階で行使をできるということになるのか。相手からは先制攻撃とみなされるんじゃありませんか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 一般論として、国際法上、集団的自衛権を行使するに当たっては、武力行使を受けた国の要請又は同意が必要であるとされています。よって、集団的自衛権を行使する前提として他国に対する武力行使の発生、これがなければなりません。ですから、集団的自衛権の行使の前提として他国に対する武力攻撃の発生が存在するわけでありますから、これをもって先制攻撃ということには当たらないと考えます。

○井上哲士君 他国に発生していても、我が国には発生していないんですよ。ですから、我が国がそれに対して武力行使をすれば、相手からは、当然、これは先制攻撃を受けたとされるわけですね。そもそも、総理は、憲法九条の下で個別的自衛権の行使は限定されてきた、集団的自衛権行使を容認する場合でもその限定の範囲内だと繰り返し答弁されてきたわけですね。ところが、個別的自衛権の行使ではできないおそれの段階で集団的自衛権は行使をできると、こういうことになりますと、これまでの限定の範囲を超えることになる。そもそも九条の範囲内での集団的自衛権なんてあり得ないということを私は示していると思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) そもそも、国際法上、集団的自衛権と個別的自衛権の違い、これは、他国に対する武力行使があるか自国に対する武力行使があるか、この違いがまず歴然として存在します。加えて、武力行使を受けた国からの要請又は同意、これが必要とされる、このようにされています。これが集団的自衛権と個別的自衛権の定義の違いでありますので、これを前提として議論をしております。よって、ですから、そういったことを前提に議論をしているわけでありますので、御指摘のような御質問は、先制攻撃に当たるかどうかという御質問につきましては、集団的自衛権に当たって先制攻撃に当たるということはそもそも考えられないと認識をいたします。

○井上哲士君 いや、憲法上の問題を言っているんですね。憲法上、今の個別自衛権の限定の範囲内でしか集団的自衛権も使えないんだと言いながら、はるかにそれを超えるような状況になる、それは定義言われましたけれども、本質上そうなるわけですよ。そんなものをなぜ従来の見解を覆してできることになるのか。従来できなかった集団的自衛権を行使をする上で、こういう個々の判断の条件も緩めますと、まさに無限定の行使になるということを私は明らかにしていると思うんですね。もう一つ、ホルムズ海峡の機雷掃海の問題でありますが、先日、武力行使の一環として行われた機雷の掃海は武力行使に当たるということを総理も認められましたし、法制局長官もそう答弁をされました。そうであれば、武力行使を目的に戦闘行為に参加することはないという総理のそれまでの答弁と矛盾するじゃないかと申し上げますと、総理は、機雷掃海は敵を撃破するための空爆などと違う受動的、限定的な行為であって、一般に武力行使は禁止されているという従来の答弁の一般の中に入るかどうか検討していると、こういう答弁でありました。まず、法制局長官にお聞きしますが、憲法上、武力行使について、受動的、限定的な行為など、その性格によって禁止されるものとされないものと、こういう区別があるんでしょうか。

○政府特別補佐人(横畠裕介君) 厳密な意味で法的な区分であるかどうかは別といたしまして、御指摘の受動的、限定的という表現そのものではございませんけれども、これまでも、憲法第九条の下で保有が許される実力に関して、例えば長距離戦略爆撃機といった、その性能上相手国の領土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器の使用は許されないと説明したものがございます。これは、憲法第九条の下で許されるのは自衛のための必要最小限度の実力であるという考え方に基づくものであると理解しております。

○井上哲士君 自衛のためかどうかじゃなくて、この場合は、受動的、限定的な行為と言っているんですね。そういうものは許されるというようなことが、区分があるんでしょうか。

○政府特別補佐人(横畠裕介君) それは、憲法第九条の下でいかなる武力の行使が許されるかという議論としてなされるべき事柄かもしれませんけれども、その受動的、限定的ということで具体的に何を指し示すのか、それいかんによるものであろうかと思いますが、武力の行使そのものに法的な区分があるかどうかという点は別論であろうかと思います。

○井上哲士君 最後に外務大臣にお聞きしますけれども、国連憲章の中で、禁止されている一般の武力行使と、受動的、限定的な場合など類型によって許される武力行使という区別があるんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、国連憲章上、武力の行使について、受動的あるいは限定的といった類型は存在いたしません。総理は、海洋国家である我が国にとって船舶の航行の安全確保、これは極めて重要である、そして、その上で機雷の掃海、これが大変重要であるという問題意識を提起されました。六月九日の参議院決算委員会におきまして、安倍総理自身も、機雷の掃海は武力の行使に当たり得る活動である、これは明確に答弁をされています。その上で、こうした活動は、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘、すなわち敵を撃破するために大規模な空爆や攻撃を加えたり敵地に攻め入るような行為とは性質を異にするものである、こういった答弁をされたと承知をしております。  国連憲章上は御指摘のような類型は存在いたしませんが、総理の問題意識につきましては今申し上げたようなものであると我々は認識をしております。

○井上哲士君 総理の問題意識というのがまさに国連憲章上も通用しない議論だということを指摘をいたしまして、質問を終わります。

 

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