国会質問議事録

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本会議 

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私は、会派を代表して、防衛省設置法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。
 本法案は、防衛省・自衛隊の装備取得関連部門を集約、統合し、防衛省の外局として防衛装備庁を新設するものです。
 安倍政権の下で、今年度の防衛予算は過去最高の額となりました。さらに、歴代の内閣が維持するとしてきた武器輸出三原則等を撤廃して、武器輸出を原則禁止から推進へと百八十度転換する防衛装備移転三原則を決定し、武器の輸出を推進する道に公然と踏み出しました。
 その上で、防衛省は、軍需産業の育成強化を図る防衛生産・技術基盤戦略を策定し、日米新ガイドラインには日米間の防衛装備・技術協力が盛り込まれ、安全保障及び防衛協力の基盤として発展、強化させると強調されました。
 その下で、この間、米国へのPAC2ミサイル部品の輸出、F35戦闘機の製造への参画、英国との新たな空対空ミサイルの実現可能性に係る共同研究の開始、オーストラリアの次期潜水艦共同開発、生産国選定手続への参加など、武器の輸出、国際共同開発への参画が加速しています。本法案で新設される防衛装備庁は、軍需産業の要求に応えて、官民がまさに一体となってこれらを一層推進するものであります。
 防衛装備庁は、今年度から防衛省が発足させた競争的資金、安全保障技術研究推進制度を進めることになります。今後、広く大学や研究機関から技術提案を募り、防衛装備に適用可能な基礎研究に資金を提供するとしています。
 憲法九条の精神は、戦後の学問研究の分野にも生かされてきました。一九四九年に創設された日本学術会議は第一回総会で、軍事研究に積極的に協力したことへの反省を込めた決議を上げて出発いたしました。一九五〇年、六七年の総会でも、戦争目的のための科学研究を行わない声明を出しています。
 今、国立大学では、一般運営費交付金が削減をされ、経常研究費不足に悩む状況です。その下で、防衛省の資金であっても背に腹は代えられないと応募してくれば、それを突破口に徐々に軍事研究に大学を取り込むことを狙ったものであり、決して認められません。
 衆参での参考人質疑を通じて、このような組織づくりが急速な軍事化を招き、軍産複合体を生み、軍需産業による国の政策への介入をもたらすことの危険性について、日本や米国の歴史に照らして杞憂ではないとする厳しい警告がありました。大変重い指摘であります。
 このような組織改編を行うことが憲法九条の平和主義を真っ向から踏みにじることであることは明白です。強く中止を求めます。
 さらに、本法案による官房長、局長と幕僚長との関係規定の見直しは、防衛省内で文官を自衛官よりも上位に置いてきたいわゆる文官統制を廃止して、両者を同等に位置付けることにより、自衛官による大臣補佐をより迅速に行うことを可能とするものです。
 政府は、一九九〇年代以降、自衛隊を海外に派遣し、米国に対する支援活動を積み重ねてきました。本法案の自衛官による大臣への補佐の迅速化は、内局の運用企画局を廃止し、自衛隊の運用を統合幕僚監部に一元化することと相まって、米軍との共同軍事作戦を直接担う自衛隊の意向をより迅速かつ直接的に反映させる仕組みをつくることで、アメリカの戦争に直ちに協力できる機構をつくるものです。
 世界のどこでも、いつでも、アメリカが起こす戦争に自衛隊が支援、参加するための日米新ガイドラインや安保関連法制と一体の体制づくりであり、断じて容認できません。
 審議の中で、二〇〇六年に航空自衛隊が作成した航空自衛隊のドクトリン等に関する調査研究が問題になりました。この文書は、これまでは政治が決定する任務や役割を受けて対応するといった受動的姿勢であったが、今後は、場合によっては、現在の任務、役割、法的な枠組みを超えて空自が主体的に議論し、将来の憲法改正、集団的自衛権の解釈変更に対応する上で航空防衛力の運用に関わる基本的な考えを開発し、明確にすることが必要であるとしています。
 その上で、この文書は、これからは国家意思決定者に対して、統合幕僚長を通じての軍事的専門家としての助言を積極的に行うと述べています。本法案の自衛官による補佐の迅速化は、このような検討すら行っている自衛官の発言力をより強化するものであり、シビリアンコントロールをも危うくするものであります。
 憲法も現行法の枠組みも無視をした検討が組織的かつ周到に行われている恐るべき実態を示すものであり、断じて容認できません。徹底解明を求めるものであります。
 また、本法案は、航空自衛隊那覇基地のF15戦闘機部隊を二個飛行隊化し、第九航空団を新設するとしていますが、こうした軍事対応の強化は、日中関係の緊張を高めるものであり、容認できません。日中双方がこうした軍事対応の強化を厳に戒め、冷静な話合いによる問題解決の立場に徹するべきであります。
 そもそも、防衛省の組織改編は、二〇一三年の防衛省改革の方向性に基づくとされるものであり、その前提には、二〇〇八年の防衛省改革会議報告書にもあったように、防衛調達をめぐる事務次官の供応、収賄など数々の不祥事が発生し、国民の厳しい批判の中でその再発防止が課題とされたことがありました。
 その後も、航空自衛隊による官製談合事件、軍需企業による防衛装備品の水増し請求事件、陸上自衛隊の多用途ヘリコプター開発の企業選定に係る事件が続発しています。なぜそうなるのか。審議を通じて明らかになったのは、昨年、防衛調達上位十社に対する防衛省・自衛隊からの天下りは六十四人に上り、不祥事で天下りを中止したその年の翌年には一気に増えるなど、事実上、天下り枠が固定している実態です。
 防衛省・自衛隊と軍需産業の天下りを通じた癒着構造が問題の本質であり、ここにこそメスを入れるべきです。にもかかわらず、防衛省は、調達をめぐる不祥事の抜本的な改革については別検討などと除外して、本法案を提出いたしました。本来なすべきことは一切骨抜きにした上で、ひたすら憲法九条の平和主義を踏みにじる施策のための組織改編に血道を上げることは、国民を欺くものであり、到底認められるものではありません。
 防衛調達上位十社から自民党に対する企業献金は、野党時代の二〇一二年の八千百十万円から、与党復帰後の二〇一三年には一億五千七十万円と、ほぼ倍加していることも明らかになりました。安倍政権は、財界の要求に応え、武器輸出推進への転換や防衛予算の増額など次々と進めており、企業献金の倍加は、国民にはその見返りにしか見えないものです。このようなていたらくでは、天下り受入れの見返りに発注する官製談合を行う防衛省・自衛隊の体質を正すことなどできないことを厳しく指摘するものであります。
 以上、本法案は断固廃案にすべきことを主張し、反対討論を終わります。(拍手)

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