国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 本日の議題である承認案件五件のうち、カザフスタン、ウクライナ、ウルグアイとの投資協定は、日本の多国籍企業が海外で最大限利益を上げるための条件整備であり、カタールとの租税協定については日本の大企業優遇税制を国内外で更に拡大をするものだと、いずれも承認に反対であります。ルクセンブルクとの社保協定は必要な措置と認められますから賛成であります。
 その上で、今日は、安保関連法案によって可能としようとしております任務遂行型の武器使用、それから他国の軍隊と活動を共にする場合の交戦規定、ROEの問題についてお聞きいたします。
 これまで、自衛隊による武器の使用は自己保存型に限られてきました。今回のPKO法の改定では任務遂行型も可能としております。
 そこで、まずお聞きいたしますが、この自己保存型と任務遂行型についての武器使用について、それぞれ定義を明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 今回の法案における自己保存型の武器使用とは、例えば改正PKO法において、自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員若しくはその職務を行うに際して自らの管理の下に入った者の生命又は身体を防護するということをいい、これは言わば自己保存のための自然権的権利というべきものであることから、そのために必要な最小限の武器の使用は憲法第九条の禁じる武力の行使に当たらないとされております。
 一方で、今回の法案におけるいわゆる任務遂行型の武器使用というのは、例えば改正PKO法においては、いわゆる安全確保業務に従事する自衛官の武器使用権限として規定したものであり、同業務の遂行に必要な範囲で自己又は他人の生命、身体及び財産を保護するため、また当該業務の実施を妨害しようとする行為を排除するための武器使用でございます。この改正PKO法の任務遂行型の武器使用は派遣先国及び紛争当事者の受入れ同意の安定的維持を要件といたしておりまして、これも憲法第九条の禁ずる武力の行使に当たることはないということでございます。

○井上哲士君 政府の資料によりますと、この任務遂行型の武器使用について、言わば自己保存のための自然権的権利というべきものの枠を超えるものというふうに書かれて説明されておりますが、この枠を超えるとは、つまり任務遂行型の武器使用というのは自衛のための武器使用ではないと、こういうことでよろしいでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) その定義といたしまして、いわゆる安全保障、安全確保におきましては、防護を必要とする住民、被災民その他の者の生命、身体及び財産に対する危害の防止及び抑止その他の特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問、警護という部分でございます。そういう点におきまして、従来の自然権的権利とは違う部分があるということでございます。

○井上哲士君 もう一回確認しますが、そういう自然的権利というものの枠を超えるというふうに政府は説明しているわけでありますから、いわゆる自衛のための武器使用ではないと、こういう整理でよろしいですかということです。

○政府参考人(山本条太君) 法律に則したことでございますので、私の方から御説明を申し上げます。
 自己保存型の武器使用につきましては今大臣から御答弁を申し上げたとおりでございまして、また、従来から政府が、今回の安全確保業務に関わる武器使用につきましては自己保存型の武器使用を超えたものであると説明しているのは御指摘のとおりでございます。
 その意味でございますけれども、自己保存型の武器使用、先ほど大臣御答弁のとおりでございますが、自己又は自己と共に現場に所在する者等と、これを防護するための武器使用、そののりを越えているという意味におきまして自己保存型の武器使用を超えていると、このように観念をしております。

○井上哲士君 明確なお答えがないんですが、私は、結局これは自衛を超えてしまうということだと思うんですね。そうしますと、これまでの自衛隊による武器使用の説明を一変させるものでありますし、その性格も大きく変わっていくということを大変危惧をしておりますし、どういう歯止めが掛かっていくのかという問題であります。
 一方、この武器使用の拡大について、二〇一〇年の外務省調査月報に当時の在ケニア大使館の公使が書かれた国際平和活動に関する論文がありますが、大変重要な議論が紹介をされております。
 それによりますと、国連PKOの武器使用も、元々は自己と同僚を守ることだったけれども、程なくしてPKO要員を武装解除させようとする試みに対抗するための武器使用の必要性が認められ、その後、駐留ポストや自動車や装備を強奪や攻撃から守るため、また国連PKOのその他の部隊を支援するため、さらには国連の文民部門の要員を守るために武器を使用することにまで拡大をしたと、こうしております。
 また、一九七三年のエジプト・イスラエル間の停戦監視団PKOの派遣の際に、任務遂行を実力で妨害する試みに対する抵抗を自衛概念の中に含めたとして、これは国連PKOの自衛概念の発展において大きな変革であり、それ以後全ての国連のPKOにおいて、この任務防衛のための武器使用が自衛の範囲に含まれることになったとこの論文では指摘しておりますが、今回の法改定による任務遂行型の武器使用とは、ここで述べられています国連PKOの任務防衛のための武器使用の概念とは重なるものということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、外務省調査月報につきましては、これは調査研究の一端を執務参考に供する執筆者個人の見解ですので、外務省の公式見解ではありませんのでコメントする立場にありませんが、今の御質問にお答えするとしたならば、国連PKOでは、御指摘のようにセルフディフェンスと任務防衛、この二つの場合に武器使用は原則として認めるとしています。国連PKOではセルフディフェンスと任務防衛という二つの種類を定めているわけですが、一方、今回のこのPKO法改定案においては、先ほど防衛大臣からも説明がありました、自己保存型と任務遂行型の武器使用を認めるということにしています。そして、そのうちの任務遂行型の武器使用については、憲法が禁ずる武力の行使に該当することがないよう、国家又は国家に準ずる組織が敵対するものとして登場しないことを前提として認めたものであり、この点におきまして、国連PKOで一般に認められる任務防衛のための武器使用権限とは異なるものであると認識をしています。

○井上哲士君 異なるものだという御答弁でありましたけれども、今回のしかし法律で拡大をしていっているということはもう明確なわけですね。私は、任務を守るためとして武器使用を拡大すれば何が起きるかということを、国連のPKOで実際に起きたことを踏まえてきちっと検証することが必要だと思います。
 この論文では、シエラレオネの国連PKO派遣の際に当時の事務総長が、武装勢力に対する先制攻撃が自衛の名において許されるという立場を示したこと、それから二〇〇二年五月現在の国連ROEのマスターリストにおいて、敵対行為のみならず敵対的意図に対して致死的火力を用いることが可能であるとされていることも紹介をされておりますが、今回の法案による任務遂行型の武器使用ではこの二つについては可能になるということなんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) 先ほど申し上げたように、国連PKOにおいては、セルフディフェンスと任務防衛、二つのケースを認めているわけですが、この類型とは別途に、我が国は自己保存型と任務遂行型、この二つの武器使用を認めるということにしています。
 そして、特にこの任務遂行型は、いわゆる安全確保業務に従事する自衛官の武器使用権限として規定したものであって、同業務の遂行に必要な範囲で自己又は他人の生命、身体又は財産を防護するため、また当該業務の実施を妨害しようとする行為を排除するためのものであるとしています。
 このような任務遂行型の武器使用は厳格な警察比例の原則に基づいて行われ、この危害許容要件ですが、この危害許容要件は、すなわち相手を傷つけることが許されるのは正当防衛又は緊急避難の場合に限られる、このようにもされております。このように極めて限定的な形でこの任務遂行型の武器使用を認める、このようにしている次第であります。

○井上哲士君 私は、この国連の事態は、任務を守るための武器使用というものと平和強制との境界が曖昧になって、平和維持活動が平和執行活動に転化しかねない懸念があるということを論文でも書いております。現実に自衛隊が活動範囲を広げて、そして現実に出ていったときにどういうことが起きていくのか、これちゃんと見なくちゃいけないと思うんですね。
 今度の法案で国連非統括型の活動にも参加できるようになって、新たな活動も含めて可能とします。そうしますと、過去の事例を踏まえますと、ISAFのように、同じミッションや作戦に他国の軍も参加していると。その際には交戦規定がどう調整されるのかという問題があります。
 他国軍との交戦規定との整合性はどのように捉えるのか。ISAFのように、同じミッションで米軍など他国軍も参加している場合に、自衛隊の安全確保活動に用いる交戦規定は他国軍の影響を受けるんじゃないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 今、国連非統括型の活動等において武器使用基準を他国と調整することになるのではないかとお尋ねでございますけれども、自衛隊が武器使用を行える範囲というのは法律で明定されておりますので、いずれにせよ、この範囲内でしかできないことになります。
 したがいまして、我々は、武器使用を、武器使用基準につきまして他国に倣って法律を超えるということはできませんので、いずれにせよ、法律の範囲内で行います。したがいまして、法律を超えるということはあり得ないと考えております。

○井上哲士君 ISAFの活動では、武器使用の在り方が議論を呼びました。背景には、多国籍軍の活動によって無辜の市民が命が奪われたという中で、ISAFの司令官は武器使用に関する戦術指令を度々変更しているんですね。
 例えば、二〇一一年三月のアメリカ議会の調査局の報告書を見ますと、〇九年の七月、マクリスタル米陸軍大将がISAF司令官に就任直後には、戦術指令を変えて、致命的な武器使用については慎重な制限の必要をよりはっきりと強調をしております。ところが、この派遣元の国で兵員の安全が議論になると逆の動きが広がっていくわけですね。例えば、二〇一〇年八月の司令官は、下級の司令官が武力行使に関してますます厳格な制限を課す傾向にあることに歯止めを掛けるという狙いを持って戦術指令を改定をしているということになっているわけですね。ですから、こういう形になる。
 実際、ISAFに参加したドイツの軍の部隊のROEが抑制的だったということが当時ISAFの内部の摩擦をもたらしたということは再三報じられているわけですね。現実に新しい任務を持って、そして非統括型で参加したときに、こういう問題がやはり起きるんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) まあ一般論として申し上げれば、国連のPKO、ミッションごとに国連のROE、これが示されて、そのROEの下で、参画する各国は国内法の範囲で武器使用の基準、これを整理することになるものと承知しておりますが、我が国の場合は、この国連の示したROEの範囲の中で、このPKO法に定める武器使用権限に基づいて実施する業務を遂行するために必要な武器使用の基準を整理をすることとなります。
 したがいまして、国連のPKOにおきまして、我が国が自衛隊の武器使用の基準を作成する際に、他国のROEとの関係で調整を行うことは一般的に考えられませんが、国連の示されたこの基準などは参考にしつつ、法令の範囲内で実施をするということでございます。

○井上哲士君 ドイツのISAFのときの例を見ましても、私はこれは避けられないと思います。こういう点はさらに私はしっかり議論もし明らかにしなくちゃいけないと思いますが、まだまだその点でいいますと、この安保関連法制、たくさんの問題点が山積みでありますけれども、一部には何か採決のようなことも出ておりますが、さらに議論をしっかりしていくことが必要だということを最後強調しまして、質問を終わります。(発言する者あり)臨時国会でやりましょう。どうも、終わります。

・反対討論

○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日本とカザフスタン、ウクライナ、ウルグアイとの三つの投資協定及び日本とカタールとの租税協定に対する反対討論を行います。
 三つの投資協定は、安倍政権が経済政策の柱とするいわゆる成長戦略に基づき、日本の多国籍企業が海外で最大限の利益を上げるための投資を促進するための協定であります。日本の経済界は、国内にあっては法人税の減税や労働法制の改悪を要望し、国外においては日本の多国籍企業が多額の収益を上げられる条件整備を政府に対して求めております。三つの投資協定は、こうした経済界からの強い要望を受けたものにほかなりません。
 租税協定は、日本の大企業とその海外子会社がカタール国内の外資優遇税制のメリットを十二分に受けつつ、投資に対する源泉地国課税の軽減によって税制優遇措置を二重三重に享受することを可能とするものです。このように、本租税協定は、国際課税分野における日本の大企業優遇税制を国内外で更に拡大強化するものであり、容認できません。
 以上が、三つの投資協定及び租税協定に反対する理由であります。
 以上です。

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