国会質問議事録

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拉致問題特別委員会(沖縄元海兵隊員女性死体遺棄事件)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 日中外相会談の中での北朝鮮問題等、通告をしてございますが、最初に、沖縄県で発生をした、またも発生した許し難い事件について聞かなければなりません。
 うるま市で行方不明になっていた二十歳の女性が、どうか無事であってほしいという思いもむなしく、遺体で発見されるという最悪の事態となりました。元米海兵隊員で、現在は米軍属の男性が昨日、遺体遺棄容疑で逮捕されております。
 今日の昼のNHKのニュースを見ておりますと、男は首を絞めたほか、ナイフで刺したと供述していると報道しておりました。女性がどれだけ苦しんで、絶望する中で命を奪われたのか、御家族の思いはいかばかりかと思いますと、本当に心からの憤りを感じざるを得ないし、心からのお悔やみを申し上げたいと思います。
 まず、警察庁、来ていただいておりますが、事件の概要について明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人( 警察庁官房審議官 刑事局・犯罪収益対策担当 露木康浩君) お尋ねの事件でございますけれども、沖縄県国頭郡恩納村の雑木林に死体を遺棄したとして、昨日、沖縄県警察が三十二歳の米軍属の男を死体遺棄の容疑で逮捕いたしたものでございます。遺棄をされた死体につきましては、本年四月二十九日に沖縄県警察が行方不明届を受理していたうるま市居住の当時二十歳の女性であると確認をされたと報告を受けております。
 現在、沖縄県警察におきまして、事案の全容解明に向けて鋭意捜査を進めているところでございます。

○井上哲士君 アメリカからは公務中だと、こういう主張はなされているんでしょうか。

○政府参考人(露木康浩君) そのような報告は受けておりません。

○井上哲士君 地位協定上は、公務中とされますと身柄の引渡しも求められまして、日本で裁判で裁かれなくなる可能性もあるわけですね。
 外務大臣にお聞きしますが、私、非常に残念なのは、昨日今日の報道を見ておりますと、安倍内閣の閣僚とかそして与党幹部、タイミングが悪いとかオバマ歓迎ムードに水を差すとか、こういう言葉がいろんなメディアで流れているんですね。日米関係とか辺野古基地建設とか選挙にとってタイミングが悪いと、こういう程度に考えられているのかという問題なんですよ。
 政府としてはこの事件、どう認識をされて、どういう対応をされているのか、いかがでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、今回の事件は、将来ある女性に対する米軍属の卑劣な行為による残忍極まりない、決して許すことができない凶悪な事件であると認識をしております。これはいかなる状況においても絶対に許されない、こういった事件であると考えております。
 こうした認識の下に、米国に対しましては、米国の大使を外務省に招致をし、日本政府として強く抗議を行った次第であります。そして、抗議を行うとともに、まずは、今事件は捜査中であります。この捜査に全面的に協力することを求め、そして米軍人、米軍属の綱紀粛正、そして実効性のある、我々が納得できる再発防止策をしっかり示すことを求めました。米側からは全面的な協力が表明された次第であります。
 是非、こうした許すことができない事件に対して、まずは米国側からしっかりとした誠意ある対応を引き出すべくしっかり求めていかなければならないと思いますし、我が国政府としましても、こうした事件が再発することがないように、こうした対応について米側とともに取り組んでいかなければならない、このように考えます。

○井上哲士君 戦後七十一年、一体何度沖縄の皆さんはこの綱紀粛正、再発防止という言葉を聞いたのかということなんですね。
 米占領下の一九五五年に由美子ちゃん事件というのがありました。米兵が乱暴して、幼稚園児です、由美子ちゃんを米兵が乱暴して、そして基地のごみ捨場に捨てていたと、こういう事件でありました。復帰後、一九七二年から二〇一五年までで、米関係者による沖縄の刑法犯罪は五千八百九十六件、凶悪犯罪は五百七十四件。そのたびに綱紀粛正、再発防止ということが言われてきた。もう県民は聞き飽きたという気持ちなんですね。つい二か月前にも那覇市内のホテルで米兵による女性暴行事件が起きました。
 ちょうど翁長知事はアメリカに行っておられまして、ゆうべ帰ってこられましたけれども、基地あるがゆえの事件が起きてしまった、憤りもさることながら、今日までのいきさつを考えると言葉が出てこないと。これ、県民の共通の声だと思います。
 今朝の地元紙、沖縄タイムスは、事件事故のたびに日米両政府に抗議し、大会を開き、綱紀粛正と再発防止を求めてきたが、これまでのようなやり方ではもう駄目だ、もはや再発防止要請で済ますレベルではないと、こう書きました。
 再発防止要請を繰り返していきながら事件が繰り返されてきたと、このことについてはどう認識をされているんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、こうした事件に対する対応については、日本政府として米国政府にその時点時点において最大限の誠意ある対応をしっかりと求めていかなければならないと思います。
 そして加えて、沖縄においては戦後七十年以上たった今に至っても大きな負担が存在する、大きな負担を負っていただいております。こういった状況を我が国政府として容認するものではありません。沖縄の負担軽減について政府は大きな責任を担っていると考えます。是非、沖縄の県民の皆さんの心に寄り添いながら、しっかりと沖縄の負担軽減に向けて全力を尽くしていかなければならない、このように考えます。

○井上哲士君 これ、負担軽減なんていう一般的な問題じゃないんですね。
 具体的に聞きますが、事件が続く温床になっているのが、米軍の特権を定めた日米地位協定だと思います。これまで、凶悪事件を起こしても身柄が日本に引き渡されない、公務として日本の裁判で裁かれないなど、様々な屈辱的な思いを沖縄の県民の皆さんは味わってきました。こういう日本での米兵の犯罪を犯罪と思わない、日本で犯罪を犯しても守ってもらえると、こういうことが米兵犯罪の相次ぐ私は温床になってきたと思うんですね。
 この改定を一貫して県も県民も求めてきましたけれども、結局、運用改善を言うだけで一度も改定がされておりません。このことの責任はどうお考えでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、今回の事件においては、容疑者の身柄は沖縄県警、日本側にあると承知をしております。その中で、政府としては、まずは米国側に捜査に対して全面的な協力をしっかり求めなければなりませんし、そして、米軍人、米軍属の綱紀粛正と我々にとって納得のできる実効性のある再発防止策をしっかりと示してもらう、このことをまずは求めることが重要であると考えます。

○井上哲士君 盛んに納得できる再発防止策と繰り返されますが、これまでアメリカが行ってきた再発防止策については日本は納得していなかった、だからこういうことになっているんだと、こういう認識ですか。

○国務大臣(岸田文雄君) 過去に様々な不幸な事件がありました。その時点時点において日本政府、米国政府、最善の対応をするべく努力をいたしました。
 今回の事件においても、先ほど申し上げた要求を日本国政府として行ったわけでありますが、米国政府に誠意のある対応をしっかり求めていきたいと考えます。

○井上哲士君 最善の対応を本当に求めてきたのかと思いますよ。
 しかし、最善の対応をやったと言うならば、それやったって事件が起きているんですよ。だとすれば、もう基地の縮小、撤去しか私たちはないと、共産党は一貫してそのことを求めてまいりました。今やこれは県民の声になっております。
 今朝の琉球新報の社説は、米国は米兵らが凶悪事件を起こすたびに再発防止に努めるとする、だが守られた試しがないことは今回の事件が証明する、基地ある限り犠牲者が出るおそれは否定できない、基地撤去こそが最も有効な再発防止策である、日米両政府はそのことを深く認識し行動に移すべきだと、こう書きました。
 この声をどう受け止められますか。

○国務大臣(岸田文雄君) 先ほども申し上げましたが、戦後七十一年目を迎えました。その中にあって、沖縄において大きな基地負担をお願いしているということについて、政府は大きな責任を感じ、負担軽減に努めなければならないと思います。
 今御指摘のあった地元の方々の思い、声もしっかり受け止めながら、政府として負担軽減に全力を尽くしていきたいと考えます。

○井上哲士君 今朝の琉球新報の社説はさらに、日米両政府はこういう事件のたびに日米安保に基づき日本の安全を守るためだとする、県民の命を奪っておいて日本の安全などあったものではないと、ここまで言っております。この声をしっかり受け止めるべきだということを重ねて申し上げておきます。
 時間がなくなりましたので、日中外相会談と北朝鮮問題で一問お聞きしておきますが、私どもこの問題、特に核問題の解決には、しっかり六か国協議の場に北朝鮮を出してくる、そういう対話による解決が必要だということも申し上げてまいりました。
 今回の日中外相会談でこの核問題というのはどういうふうに話し合われたのか、日中間でどういう点が一致をしたのか、そしてまた、中国は今回踏み込んだ国連決議にも賛成もしたわけですが、中国としては北朝鮮にどういう対応を取っているのか、これまでの変化、どういうふうに感じていらっしゃるのか、この点をお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、今回、四月の三十日に行われました日中外相会談ですが、その際に、中国の王毅外交部長との間においては、北朝鮮問題、日本と中国で協力すべき共通課題、三つの課題のうちの一つとして取り上げ、突っ込んだ意見交換を行いました。
 会談において、北朝鮮により繰り返される挑発行動に対し深刻な懸念が双方から表明されたわけでありますが、率直な意見交換の結果として、この安保理決議の厳格な履行を含め、日中間で緊密に連携していく、こういったことで一致をいたしました。
 そして、中国の対北朝鮮政策の変化ですが、こうした変化ですとか評価について我が国として公の場で何か申し上げるような立場にはないと思いますが、少なくとも、安保理決議二二七〇号が中国を含む全会一致で採択されたこと、このことは高く評価しております。そして、中国においては、真摯かつ全面的な決議を執行する、こういった旨が表明されておりますし、四月の五日に、中国商務部及び税関総署が同決議を履行するための措置の一環として、北朝鮮との鉱産物等の輸出入禁止に関する公示を公布するという具体的な行動を取った、こういったことも承知をしております。
 先ほど申し上げました日中外相会談における一致した緊密な連携、これに基づいてしっかりと安保理決議等の実効性確保に努めていきたいと考えます。

○井上哲士君 中国を含む六か国協議参加国の緊密な連携の中で、この問題解決のための外交的努力を一層強めるということを強く求めまして、質問を終わります。

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