国会質問

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本会議(APEC会議出席等に関する報告に対する質問)


○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。
   〔井上哲士君登壇、拍手〕
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 会派を代表して、安倍総理のAPEC会議出席等に関する報告に対して質問します。
 この間のAPEC首脳会合、トランプ米次期大統領との会談、そして一連の首脳会談などの総理の外交は、多国籍企業の横暴による格差と貧困の拡大、環境破壊等から国民の命と暮らしを守る闘いが各国で広がり、アメリカでもそうした世論と闘いを背景に、TPPからの離脱を公約にしたトランプ氏が次期大統領に当選するという情勢の下で行われました。
 まず、総理の認識を聞きます。
 総理は、十四日のTPP特別委員会で我が党議員の質問に対し、一部の企業に利益が集中した結果、一部の人が豊かになってあとはみんな貧乏になっているじゃないかという不満があるのは事実と認めつつ、それは各国の再配分機能がどうなのかという問題だと答弁しました。しかし、単なる不満や再配分機能の問題という話ではありません。
 自由貿易の名の下に進められたこの間の一連の国際条約そのものが国境を越えた多国籍企業のもうけを最大化するためのものになっており、その下で農業や食の安全、環境、雇用が脅かされ、ISDSで主権が侵害されるという事態が生まれているという認識はありますか。
 各国での批判の世論の高まりを受け、APECの首脳宣言には、経済的不平等や格差の拡大、環境の悪化などを挙げて、将来の不確実性を高めている、グローバリゼーションや関連した統合プロセスにはますます疑問の目が投げかけられていると盛り込まれました。一方で、あらゆる形の保護主義に抵抗すると述べ、保護主義か自由貿易かという議論にとどまっています。
 今求められているのは、そうした旧来型の議論ではなく、グローバル化の下で多国籍企業の利益優先により現に引き起こされている格差や不平等の解消のために、国際社会で何をなすべきか話し合い、実行することではありませんか。総理の答弁を求めます。
 安倍総理は、十七日にトランプ米次期大統領と会談しました。現職の大統領がいる中で、日本の総理大臣と次期大統領が会談した前例はないのではありませんか。なぜ、このような異例の会談をセットしたのですか。
 総理は、会談後の会見で、共に信頼関係を築いていくことができる、そう確信の持てる会談だったと述べ、その後のアルゼンチンでの記者会見では、TPPはアメリカ抜きでは意味がないとまで述べました。ところが、その直後に、トランプ氏が来年一月二十日の就任当日にTPPからの離脱を行うと正式に表明しました。
 これを、安倍総理のはしごが外された、完全にメンツを潰されたと評した報道もあります。にもかかわらず、総理が信頼関係を築けると確信をした根拠は一体何なんですか。TPPや安保条約について何を話し、トランプ氏はどう応じたのか、国民に明らかにすべきです。
 総理がアメリカ抜きでは意味がないとしてきたTPPからの離脱をトランプ氏が正式表明し、協定が発効しないことが確実になりました。にもかかわらず、日本が批准をすることにこそ意味がないのではありませんか。
 一旦離脱を決めた後、アメリカはどう対応するでしょうか。二国間のFTAを日本に求めてくるか、アメリカに更に有利になるように再交渉を求めてくることになるでしょう。総理があくまでもTPPに固執し、アメリカをTPP枠につなぎ止めようとするならば、二国間FTAにしてもTPPの再交渉にしても、日本自ら、アメリカに有利で、より日本に不利な不平等条約をアメリカに求めることになるのではありませんか。
 行政府による外国との条約締結の承認の是非を判断するのは、憲法上、国会の役割です。条約の中には、日本が九七年に国会承認をして締結したものの、アメリカ上院が九九年に批准案を否決して、結果として未発効のままとなっている包括的核実験禁止条約、CTBTのようなものもまれにあります。
 しかし、審議の段階において既に発効の見込みがないことが明らかな条約について、国会が承認を求められることは異常なことです。TPPにしがみつきたいという総理の思惑のために、国会に発効の見込みのないものの承認を押し付けるというのですか。TPP強行のための会期延長はやめ、廃案にすべきです。答弁を求めます。
 日ロ首脳会談について聞きます。
 ロシアのプーチン大統領は、二十日、ペルーでの記者会見で、前日に行われた日ロ首脳会談の中で、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島での共同経済活動について協議したと明らかにしました。一方、総理の記者会見では、北方四島の将来の発展についてウイン・ウインの形で進めていくことが何よりも重要な視点だと確信していると述べられただけです。共同経済活動についてどのような協議が行われたのか、なぜ安倍総理の会見では触れなかったのか、明らかにしていただきたい。
 この共同経済活動が日ロの領土の確定を曖昧にしたままのものならば、領土問題の真の解決に逆行する無原則な取引であり、重大な禍根を残すものとなります。
 日ロ領土問題の根本は、旧ソ連のスターリンが、領土不拡大という連合国が繰り返し宣言した第二次世界大戦の戦後処理の原則を踏みにじり、一九四五年のヤルタ協定で対日参戦の条件として千島の引渡しを決め、それに拘束をされて一九五一年のサンフランシスコ平和条約で日本政府が千島列島の放棄を宣言したことにあります。
 日ソ間の国交を回復した日ソ共同宣言から六十年にわたり日ロ領土問題が解決しないのは、この戦後処理の不公正を是正するのではなく、北千島を最初から領土要求の対象とせず、国後、択捉についても千島列島にあらず、だから返還せよという、歴史的事実にも国際法的にも通用しない主張だったからではありませんか。
 戦後処理の原則であった領土不拡大という国際的な道理に立ち戻って是正することこそが求められています。総理の答弁を求めます。
 APEC参加国であるベトナムへの原発輸出について聞きます。
 ベトナム国会は、二十二日、同国南部での原子力発電所の建設計画を白紙撤回するという政府決定を承認しました。この計画は、日本やロシアが支援して原発を建設し、二〇二八年にも稼働するというものでした。計画の中止は、福島第一原発事故で安全性に対する懸念が強まり住民の反対が大きくなったこと、安全対策の強化などで事業費が倍近くに膨らみ、財政難の下で巨大公共事業の見直しが迫られたとされています。
 事故原因の究明も終わらず、今なお多くの人々が避難を強いられている福島第一原発事故がもたらした惨害を見れば、ベトナムの国民から反対の声が上がるのは当然のことです。にもかかわらず、総理は、日本の原発を世界一安全な基準だとして、国内原発の再稼働とともに海外への原発輸出を推進しています。国内の再稼働反対の世論が多数であるのみならず、海外でも日本の原発が現地の住民に拒絶されたことを重く受け止めるべきではありませんか。
 原発輸出の推進政策は中止をすべきです。そのことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上議員にお答えをいたします。
 自由貿易を進める国際条約についてお尋ねがありました。
 自由貿易を進める国際条約としてはWTOや経済連携協定などが挙げられますが、これらは国境を越えた企業活動を促進したことはあっても、多国籍企業の利益を最大化するためのものになっているとの認識はありません。
 国際的な貿易や投資が行われる中で、農業や食の安全、環境、雇用を守るのは各国の政策の役割です。ISDS条項は、我が国が正当な目的のために必要かつ合理的な規制等を行うことを妨げるものではなく、これによって国の主権が侵害されることはありません。
 APECの首脳宣言とグローバル化への対応についてお尋ねがありました。
 自由貿易の利益を社会全体に及ぼすためには、大企業のみならず、中小企業、ひいては労働者や消費者にとって適切な経済的機会をつくり出すものにしなければなりません。自由で公正な貿易圏をつくるTPPは、まさにこれを実現するものです。単に関税を下げて貿易をより自由にするだけでなく、知的財産保護、労働・環境規制、国有企業の競争条件の規律など幅広いルールを定め、頑張った人が報われる公正な競争環境を整えます。
 このようなTPPの新しいルールによって大きな恩恵を受けるのは、これまで様々なリスクを懸念して海外展開に踏み切れなかった地方の中堅・中小企業や農業者です。TPPが多国籍企業の利益を優先するものとは考えていません。その上で、各国政府が、国内において多くの人たちが自由貿易のもたらすチャンスをつかみ利益を得ることができる、そういう仕組みをつくっていくことが大切だと考えています。
 トランプ米国次期大統領との会談及びTPPについてお尋ねがありました。
 私としては、なるべく早くトランプ次期大統領にお目にかかり、自由や民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国同士の同盟である日米同盟は揺るがないということを確認する必要があると考えていました。
 トランプ次期大統領は、現職の大統領がいる中で、次期大統領があたかも大統領のように振る舞うことは米国の国益にとってマイナスであるというしっかりした認識を持ち、現職の大統領に対する敬意をしっかりと示されていました。信頼できる指導者である、そう確信の持てる会談でありました。
 今回の会談は非公式なものであり、先方から、大統領が二人いるかのような印象を与えるべきではないとの強い要望があったことから、具体的なやり取りは差し控えますが、様々な課題について、私の基本的な考え方はしっかり申し上げ、温かい雰囲気の中、大変充実した意見交換ができたと考えています。
 米国が政権移行期にあり、また世界的に保護主義の懸念が高まり世界に動揺が広がる今こそ、ぶれてはなりません。日本は一貫して志の高い自由貿易を目指すという国家意思を明確にすべきであります。日本がいち早くTPPを承認することにより、自由で公正な経済圏を世界につくり上げることを目指すという日本の固い決意を世界にしっかりと発信していきたいと思います。その上で、TPPの意義を米国に粘り強く訴え続けていきたいと思います。
 日ロ首脳会談と北方領土問題についてお尋ねがありました。
 プーチン大統領の発言に関しては、現在進めている交渉の中身に関わり得ることから、事柄の性質上、言及できませんが、北方領土に対する従来の政府の立場に何ら変更はありません。
 サンフランシスコ平和条約は、領土の確定や賠償問題の解決を含め、我が国の戦後処理の法的な基礎です。我が国は、サンフランシスコ平和条約第二条(c)により千島列島に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しており、この条項を一方的に破棄して千島列島等の返還を求めることはなし得ません。
 北方領土問題については、十二月に予定する山口県での日ロ首脳会談で、高齢化されている元島民の皆様のお気持ちをしっかり胸に刻んで、静かな雰囲気の中で率直に議論し、平和条約締結交渉を前進させる考えであります。
 ベトナムの原発計画と原発輸出についてお尋ねがありました。
 ベトナムの原発建設計画については、同国内の経済事情を背景に中止することが決定されたと承知しております。
 すべからく、原子力に関わる国際協力については、核不拡散の枠組みを堅持しつつ、世界で最も厳しいレベルの安全性を追求する我が国として、安全神話に陥ってはいけないという福島の教訓を国際社会と共有し、相手国と安全最優先で取り組んでいきます。

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