国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2018年・196通常国会 の中の 外交防衛委員会(幹部自衛官による国会議員への暴言問題、北朝鮮問題)

外交防衛委員会(幹部自衛官による国会議員への暴言問題、北朝鮮問題)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 条約、協定については後ほど討論で申し上げることとし、私からも、小西議員に対する統合幕僚監部所属の幹部自衛官の暴言問題について、まず質問いたします。
 五月八日の最終報告は、暴言を含む不適切な発言を行ったことを認めつつ、懲戒処分には至らない訓戒処分とされました。事態の重大性に鑑みますと、こういう軽い処分でいいのかという声が広く上がっております。報告書では、言うまでもなく、国会議員は国民の代表として国会による内閣に対する監督、自衛隊に対する文民統制の機能を担う立場にあるが、幹部自衛官はもとより自衛隊員がこのような暴言を含む不適切な発言を行うことは断じてあってはならないとしました。
 ところが、この文民統制に関して、再発防止策の項で、文民統制の趣旨に照らして問題があるとの指摘も踏まえつつと、あくまで指摘があるとしたのみで、暴言そのものは自衛隊法五十八条の品位を保つ義務に違反だとして訓戒処分としました。
 私は国会議員に対するこの幹部自衛官の暴言は明らかに文民統制の原則を否定するものだと思いますが、なぜこれが品位の問題にとどまったということになるんでしょうか。


○政府参考人(武田博史君) お答えいたします。
 今回の事案については自衛官が小西議員に対して暴言を含む不適切な発言を行ったものですが、これは、委員御指摘のように、自衛隊法第五十八条に定める品位を保つ義務、すなわち、「隊員は、常に品位を重んじ、いやしくも隊員としての信用を傷つけ、又は自衛隊の威信を損するような行為をしてはならない。」ことに明らかに違反したことから、適正な処分が行われたものでございます。
 今回の事案の処分を行うに当たり参考とした従来の事例について申し上げれば、直近の政治に関わる発言で品位を保つ義務違反に問われたものがあります。
 すなわち、平成二十二年二月に、自衛隊と米陸軍との日米共同訓練の開始式において、報道公開された場で日本側を代表して訓示した普通科連隊長、一等陸佐でございますが、同盟というものは外交や政治的な美辞麗句で維持されるものではなく、ましてや信頼してくれなどという言葉だけで維持されるものではないと発言しました。
 この事案について、防衛省としては、国会の意思に基づき行われる政治や外交を否定していると受け取られかねず、また、自衛隊の最高指揮官である鳩山内閣総理大臣の発言をやゆしている、からかう、ばかにする等の趣旨でございます、という誤解を招くものであったと評価し、自衛隊法第五十八条、品位を保つ義務に違反するものとして処分が行われたところでございます。また、このときには、この事案について文民統制との関わりにおいての言及はないところでございます。
 私どもとすれば、この事案について当時の北澤大臣の下での適正な処理が行われたものと考えております。私どもとしては、今回の事案についてはこうした従来の事例に基づき処分を行ったものでございます。


○井上哲士君 当時の処分がそれで良かったのかと、いろんな議論はあると思います。
 いずれにしても、今回の事案というのは、小西議員に直接自衛官が言ったという点で決定的な違いがあるんですね。それが品位の問題、何か個人的な、そして業務の外で行われたといいますけれども、言わば、例えばいろんなお酒の飲んだ場で品位を汚す行為をやった、そういうことと同列に並ばれるようなことで私は絶対にないと思うんですね。
 報告書の別紙の本人の供述では、小西議員に対して、総合的に政府、自衛隊が進めようとしている方向とは違う方向での対応が多いという全体的なイメージで捉えたとしております。これを受けて、衆議院の答弁では、議員に対する勝手なイメージで思わず暴言を含む不適切な発言を行ったと、これを踏まえた答弁がされているんですね。
 しかし、これ勝手なイメージだったかどうかというのは問題じゃないんですよ。政府、自衛隊とは違う方向で国会で様々な指摘も行うと、これも含めて国会による文民統制のはずなんですね。それは、そういう指摘は国民の声を背景にしたものなんですよ。それを敵視するということは、結局、政府に異を唱える者は非国民だとして弾圧やってきた、こういう歴史に重なるこそ多くの国民が危惧与えているんですね。
 政府は、文民統制というのは政府と同じ方向で対応する議員だけが担うものだと、こういう認識なんですか。


○政府参考人(高橋憲一君) お答えいたします。
 まず、文民統制でございますが、民主主義国家における軍事に対する政治の優先、又は軍事力に対する民主主義的な政治統制を指すものと、民主主義国家においては確保されなければならない重要な原則として認識しております。
 特に、国民を代表する国会が、自衛官の定数、主要組織などを法律、予算の形で議決し、防衛出動などの承認を行うことが重要な機能だと考えてございます。それ以外にも、内閣による統制、防衛大臣が統制するような様々なレベルでの統制があると考えてございます。
 このうち、先ほど委員の御指摘にございますが、国会による文民統制について申し上げれば、国会での審議の場における国会議員による内閣に対する質問が、そのお立場いかんにかかわらず、憲法が採用している議院内閣制の下での国会による内閣監督の機能の表れであるとされており、したがって、国会での審議の場における国会議員による防衛省・自衛隊に関する質問は、国会による文民統制の表れであり、国民の代表する、国民の代表たる国会議員による防衛省・自衛隊に関する全ての質問はそれに含まれるというふうに考えております。


○井上哲士君 であれば、勝手なイメージ云々というような、私は答弁は非常に不適切だったと思うんですね。
 なぜ、多くの国民やマスコミが今回の問題に危惧を抱いているのかと。これ、個人の問題じゃないと、そして、偶発的に起きたものじゃないと、こう感じているからなんですね。
 先ほど、河野統幕長も文民統制に疑義があると発言をされたという話もありましたけれども、昨年五月三日に安倍総理が憲法九条に自衛隊を書き込むという改憲発言をやった際に、河野さん自身が記者会見で、一個人としつつ、自衛隊員として申し上げれば非常に有り難いと、こういう発言を行ったわけですね。これはもう憲法尊重擁護義務を反するという批判がありました。私もこの場で罷免を要求しましたけれども、当時の大臣はこれを擁護して、不問に付した。そして、その下で南スーダン、イラクの日報問題が起きて、実力組織が海外での活動の実態を国民にも国会にも隠していたと。そして、それを担っていた、この一番問題とされてきた統合幕僚監部の幹部自衛官が今回の暴言を吐いた。だから、一個人の問題じゃなくて氷山の一角じゃないかと、こういう多くの危惧の声があるわけですよ。
 あの明治大学の特任教授の纐纈厚さんはこう言っています。自衛隊組織が民主主義と共存していくために編み出された基本原則がこのような形で内部から食い破られていると、こういう指摘をしています。こういう指摘をされるような今日の文民統制の実態、そしてこれを生み出してきた、生じさせている安倍政権の責任について、大臣、しっかりお答えいただきたいと思います。


○国務大臣(小野寺五典君) まず、今河野統幕長の件についてお話がありましたが、御指摘の南スーダン日報問題については、防衛監察本部による特別防衛監察が行われ、日報に係る開示請求への対応について、情報公開法第五条違反につながる行為があったこと、適切に廃棄されて不存在とされていた日報が陸自内部に存在したことの取扱いに関する不適切な対応があったことを踏まえ、関係者を厳重に処分したというものであります。また、日報問題について、イラク日報問題についても現在調査中であり、調査結果に基づき厳正に対処してまいりたいと思います。
 河野統幕長の発言でありますが、これは記者の、記者からの質問を受けて、憲法という非常に高度な政治問題でありますので、統幕長という立場から申し上げるのは適当ではないと思いますと明確に述べた上で、個人的な見解として、一自衛官として申し上げるならば、自衛隊というものの根拠規定が憲法に明記されるということになれば非常に有り難いなとは思いますという、述べたものであり、政治的な目的を持って発言したものではないと。統幕長は事前に、憲法という非常に高度な政治問題でありますので、統幕長という立場から申し上げるのは適当ではないと思いますと明確に述べた上での発言ということになります。
 私どもとしては、今回の暴言を吐いた自衛官に関する対応につきましては、先ほど来説明させていただいているように、適正な処分を行い、今後ともこのようなことがないように再発防止にしっかり対応していくということだと思います。


○井上哲士君 一自衛官と言えば統幕長としての記者会見の場で言っても不問に付したと。ですから、一自衛官と言えばこうやって許容されるようなことを私は起こしたことが今回の問題にもつながっていると思うんです。そういうことに対する国民の危惧があるということを厳しく指摘をしておきたいと思います。
 その上で、河野外務大臣に朝鮮半島の今起きている非核化と平和への激動についてお聞きをいたします。
 歴史的な南北首脳会談で板門店宣言を出されまして、朝鮮半島の非核化と、そしてこの朝鮮戦争の終戦、平和協定ということが盛り込まれましたし、日中韓の首脳会談でもこの宣言を支持することが明確にされました。この歴史的チャンスを米朝首脳会談を成功させてしっかり生かすと、そのために今日本がどういう戦略をお持ちであるのかということが問われていると思います。
 私たちは、北朝鮮の核兵器、ミサイル開発に断固反対する立場を取ってまいりました。同時に、経済制裁の強化と一体にしながら対話による平和的解決を図ることが唯一の道と主張してまいりました。その立場から、四月六日には六か国協議関係国に要請文を出し、九日には総理とも党首会談でこれをお渡しをいたしました。
 その中心は、この非核化ということと、平和体制の構築を一体的、段階的に進めることが必要だということであります。一体的に進めるという問題でありますが、北朝鮮がいかなる理由でも核開発をすることは許されません。同時に、非核化を実現するためには、もう核兵器がなくても大丈夫だと、体制は維持できると北朝鮮の側に実感させることなしにこれは具体的には進まないことだと思うんですね。
 具体的には、南北、米朝、日朝の緊張緩和、関係改善、国交正常化などを進めることが必要と考えますが、この非核化と平和体制の構築を一体的に進めると、このことの必要性についてのまず大臣の見解を求めたいと思います。


○国務大臣(河野太郎君) 北朝鮮は累次にわたる安保理決議に違反をし、核開発を進め、ミサイルの開発を進めてまいりました。国際的な核不拡散体制を維持するためにも、この北朝鮮の核兵器を含む大量破壊兵器、そして弾道ミサイルを完全かつ不可逆的に、そして検証可能な放棄をさせるというのが国際社会としてまず一番大切なことだというふうに思っております。
 そのために、国際社会はこれまで一致して累次にわたる安保理決議を採択することによって北朝鮮に対して経済制裁を行い、北朝鮮に対して最大限の圧力を掛けてきた、その結果として北朝鮮が非核化に向けて歩み始めたところだというふうに思っております。
 先般の南北首脳会談の中で北朝鮮が自らの非核化の意思を文書にしたというのは大きな一歩だと思います。次の米朝首脳会談で北朝鮮がこの大量破壊兵器、そして弾道ミサイルのCVIDに向けてきちんとコミットすることができるか、国際社会として圧力を維持しながらしっかりと見守ってまいりたいというふうに思っております。


○井上哲士君 しっかり見守っていくというお話がありましたが、この平和体制の構築という問題について一体で進めるということについての答弁はなかったわけですね。結局、圧力一辺倒という態度、対話否定という態度を取ってまいりました。これでは、私は現実にこの非核化ということが進んでいく上でも困難をもたらすと思うんですね。
 米朝枠組み合意のときのアメリカ側の担当者だったペリー元国防長官が四月十一日に都内で講演をしておりますけれども、過去の成功と失敗から四つの教訓があると。その第一が、なぜ北朝鮮が核開発をするのかを理解することだと。我々が抑止力と呼ぶように、北朝鮮も自らの安全の保証を得ようとしている、ここを念頭に置くことが必要だと、こういうふうに述べております。これ教訓にするべきだと思うんですね。
 そして同時に、もう一つは、行動対行動、この段階的措置とあります。これは六か国協議の共同声明に盛られております。
 非核化と平和体制の構築が目標として合意されても、一足飛びに実現をすることはなかなか困難です、関係国の間には不信感があると。そうであれば、段階的措置によって相互不信を解消して信頼醸成を図りながら解決することが必要だと思うんですね。政府もこの行動対行動ということは繰り返し答弁をしてこられましたけれども、この原則に従って粘り強く交渉するということが必要と感じますが、その点いかがでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 北朝鮮が大量破壊兵器並びに弾道ミサイルを完全かつ不可逆的、そして検証可能な放棄をする、そこにしっかりと目指して国際社会が一致して圧力を維持していくということが重要でございます。
 これは、恐らく国際社会全ての国が今これに合意をし、着実に安保理決議による制裁を実行するということで国際社会がこれをやっているわけでございますので、北朝鮮が対話に応じるだけで制裁が解除される、あるいは支援といった対価が得られるといったことがないということは北朝鮮も理解をしているんだろうというふうに思っております。
 北朝鮮が政策を転換し、CVIDを実行するまでしっかりと国際社会は一致団結し、お互い連結しながら進んでまいりたいというふうに思います。


○井上哲士君 我々も、意思を表明しただけではなくて、具体的な行動を取るまでは国際社会が行っている経済制裁は継続するべきだと考えています。
 じゃ、具体的にどういう行動があれば、そういう例えば経済制裁の解除が始まるのかと、これはどうお考えでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) それは今後の交渉の手のうちに当たりますので、お答えは差し控えたいと思います。


○井上哲士君 今、本当に大きな動きが国際社会の中で、やっぱり非核化と平和の構築、これを一体にしながら段階的にやるということが進められているんですね。
 七、八に二度目の中朝の首脳会談が行われました。その際に、習近平主席が金正恩氏に対して、米朝首脳会談で非核化について包括的に妥結すべきだと、そして米国と合意し、非核化の具体的な進展があれば、中国が北朝鮮を支援する大義名分ができると、こう答えたと報道されております。その後に米中の首脳電話会談があって、中国が言わば後ろ盾の役割を果たすと、こういう趣旨のことも言われたと報道されています。
 この直後に、九日に金正恩氏が平壌でポンペオ米国務長官と会談をした。ここで朝鮮の方からは、トランプ大統領からメッセージで新たな対案が示されたと、こういう報道もされ、この日三人が拘束を解放されております。
 そして、同じ九日に、日中韓の首脳会談と併せて行われた中韓の首脳会談では、これ青瓦台の発表によりますと、北朝鮮に対して一方的に要求するのではなくて、北朝鮮が完全な非核化を実行する場合、体制保証と経済開発支援などの明るい未来を保証する上で、米国を含む国際社会が積極的に関与すべきだということで意見を共にしたと、こう言っております。
 そして、この後、十一日にポンペオ氏が韓国外務大臣との会談の後の記者会見で、もし北朝鮮が早期の非核化に向け大胆な行動を取るならば、米国は北朝鮮が韓国に匹敵するような繁栄を達成するために北朝鮮と協力する用意があると、こういう踏み込んだ発言をしております。
 ですから、今、国際社会、国際社会と言われますけれども、いわゆる圧力一辺倒ではなくて、これらの国々はそれぞれ金正恩氏と直接の会談をして、お互いに真意を確かめて、様々な提案をして、それを各国が連携をしてこういう方向に進んでいるわけですね。日本が対話を否定したままで、とにかく圧力一辺倒で、今行われているようなこういう平和構築と非核化、一体にしつつ段階的に進めていくと、こういう全くらち外に行われていると。
 私、このままいけば全体の進行の足を引っ張るだけの役割しか日本は果たせなくなると思います。今これを大きく変えるべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) どう考えたらそういう結論になるのか、私には全く理解ができません。国際社会が一致して圧力を掛けなければ圧力は逃げてしまうわけですから、国際社会が一致して北朝鮮に対して圧力を維持しているからこそ今の状況が生まれているということをまずしっかりと御理解をいただきたいと思います。
 そして、これは前ティラソン国務長官の時代から四つのノーということを申し上げているわけで、北朝鮮が非核化をしたときに体制変更は求めないというのは国際社会が常々言ってきたことでありますし、経済支援がその後あるということを言ってきているわけでございます。
 韓国並みの経済繁栄があるかもしれませんけれども、当然、この北朝鮮の体制が変わるのか、あるいは経済繁栄をこの体制を維持したままでやるのか、それによって経済の進展のスピードも当然変わってくるわけでございます。韓国並みに人の往来もする、ネットも開放する、外の状況がよく分かるという中で金体制が維持できるのかどうか。金体制を維持しようとするならば、それなりに外とのやり取りも制限しなければなかなか今の体制を維持することはできないのかもしれません。そういうことを考えれば、どの程度のスピードで経済に発展をさせることができるかというのは、これは今の段階でなかなか分からない。
 アメリカとしてそこまでやる用意がありますよと言ったところで、北朝鮮が、そうですかと言ってそれを全部受け入れることができるとは限らないわけでございますから、ここは、国際社会としてはそこまでやる用意がありますよと、しかし、それは北朝鮮としてどこまで受け入れられるんですかと。その前に大量破壊兵器と弾道ミサイルのCVIDというのをきちんとやらなければ、制裁はありませんよ、経済支援はありませんよということは、これは国際社会が一致してやっていることでありまして、国連の加盟国のほぼ全てが今この状況を維持していく、そこで一致をしているわけでございます。そこのところをよく御理解いただきたいと思います。


○井上哲士君 時間ですので終わりますが、私は、口約束だけで経済制裁をやめろなんて一言も言っておりません。ちゃんとそれを理解していただきたいんですよ。
 ティラーソン氏が確かに言いました。しかし、幾ら口で体制を保証すると約束をしても、それを信用しなかったんですよ、北朝鮮は。だから、それを得心といくような、そういう対話を国際社会が非核化と一体してやるということが現実に進める上で大事だと、これが必要だと言っているのでありまして、そこをちゃんと理解をして進めていただきたい。
 以上、終わります。

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