国会質問

ホーム の中の 国会質問 の中の 2018年・196通常国会 の中の 本会議(TPP11協定と日米通商関係)

本会議(TPP11協定と日米通商関係)


○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。


   〔井上哲士君登壇、拍手〕


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 会派を代表して、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定について質問します。
 TPPは、多国籍企業の国境を越えた利益拡大のために、国の経済主権をないがしろにして、関税、非関税障壁を撤廃する協定であり、国内の産業への打撃と広範な国民の暮らしへの計り知れない影響が懸念されるものです。
 まず、外務大臣にお聞きします。
 一昨年秋の臨時国会での審議でも、多くの国民からも、重要項目を除外するとした国会決議に違反し、農業とその関連産業に及ぼす壊滅的な影響、ISDS条項による主権侵害、食の安全を始めとする国民の命と暮らし、健康を脅かすこと、国内産業の空洞化など、深刻な問題点を危惧する声が上がりました。
 ところが、安倍内閣は、この懸念にどれ一つとしてまともに応えることはなく、アメリカの離脱方針表明により発効の見込みもない下で、協定の国会承認の議決を強行する暴挙を行いました。
 政府は、今回のTPP11はTPPの一部の条項が凍結されたと言います。しかし、条文と譲許表などをそのまま組み込むものであり、国会審議で指摘されたTPP協定の抱える本質的な問題は全く変わっていないのではありませんか。
 私は、一昨年秋の本会議で安倍総理に対して、一旦離脱を決めた後、アメリカはどう対応するか、二国間のFTAを日本に求めてくるか、アメリカに更に有利になるように再交渉を求めてくることになるとただしました。この危惧がいよいよ現実になろうとしています。
 トランプ政権のロス商務長官は、五月一日、アメリカCNBCテレビとのインタビューで、TPPを欠陥協定だと述べ、トランプ大統領はTPP離脱によりアジアから離れたのではなく、欠陥のある協定から離脱したと述べました。
 政府は、米国の復帰を待つとし、TPP11の締結がそのために役立つかのように言います。しかし、トランプ大統領がTPP離脱を撤回してそのまま復帰する可能性がどこにあると考えているのですか。具体的な論拠を示していただきたい。
 米商務長官の発言を見れば、より米国の利益になる再交渉や新協定を求めるのは明らかではありませんか。
 TPP11は、日本が国際的に約束した市場開放や規制緩和の到達点であり、防波堤どころか、米国からはより大幅な譲歩を求める出発点となるのではないですか、お答えください。
 ライトハイザー米通商代表は、三月二十一日、米下院歳入委員会公聴会で証言に立ち、日本に対して、適切な時期に二国間FTAを結びたいとの要望を伝えたとし、日本はTPP11を締結させる過程にあるが、米国が日本とより緊密な経済関係を持つことが米国の利益であり日本の利益であると考えていることについて、日本は非常によく分かっていると発言しました。
 そして、TPP参加国への輸出拡大についてトランプ政権の方策を問われたのに対し、米国と二国間FTAを締結していない五か国に関して、群を抜いて最も重要なのが日本だ、日本と協定を結べば、本質的に問題は解決すると述べました。
 この発言は、トランプ政権にとって輸出拡大の最大の狙いが日本市場であることを示しているのではありませんか。認識を伺います。
 また、この発言のように、米国がFTA協議を求めてきた事実はありますか。今後、協議に応じるのですか。米国の更なる要求に道を開く協議は行うべきではありません。明確な答弁を求めます。
 米通商代表部が二月に提出した年次報告書は、国家安全保障に資する通商政策を五つの柱の冒頭に掲げました。実際、トランプ政権は、三月、鉄鋼、アルミの輸入が米国の安全保障を切り崩しているとして一方的に関税を課し、さらに五月には、自動車の輸入関税引上げの検討に入りました。いずれもその対象には日本も含まれています。
 安倍総理は、大統領の就任以前から訪米するなど、幾度もトランプ氏と会談し、首脳間の信頼関係を築いてきたとされていました。その相手からいきなり制裁を言われる事態に、経済界のみならず、国民の多くが驚きました。こうした事態が生まれる関係を、果たして信頼関係と呼ぶのですか。
 安倍政権は、日米同盟の強化を推進してきました。にもかかわらず、米国の安全保障上の一方的な措置の検討対象となっている事実をどう認識しているのですか。日本の立場を説明して米国に理解を得たいとしてきましたが、現時点で制裁対象としないとの確約を得ることはできたのですか、お答えください。
 米通商代表は、さきに述べた公聴会において、一方的な制裁の根拠である通商法について、我々はWTOでの訴訟において我が国の通商法を積極的に擁護すると述べて、制裁の構えを崩していません。これこそが米国ファーストの立場そのものではないですか。その認識はありますか。
 WTOのルールと貿易制裁について日米で見解の違いがあるのか。以上、外務大臣、お答えください。
 四月に行われた日米首脳会談では、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することが合意されました。
 日米間の経済協議の枠組みとして日米経済対話が既に存在するにもかかわらず、なぜ新たな協議を行うこととしたのですか。米通商代表部の年次報告書に挙げられた項目も協議の対象になるのではないですか。協議の目的、対象を具体的に説明されたい。米国からすれば、二国間FTAを持ちかけるための協議体になるのではないですか。茂木大臣に答弁を求めます。
 さらに、首脳会談では、安倍総理の側から、厳しい安全保障環境に対応するため、今後とも、米国装備品を含め、高性能な装備品を導入することが我が国の防衛力強化のために重要であることを伝え、トランプ大統領がこれを歓迎したとされます。首脳会談で日本側から米国製武器の積極的な購入を表明したのは初めてではありませんか。
 安倍政権の下で、軍事費は過去最高を更新し続けていますが、中でも、米国からの武器購入の調達額は既に大きく膨れ上がっています。FMS調達額は十年前の約六倍の四千百二億円に達し、中央調達の額の年度別調達先ランキングでは、二〇一五年度以降連続してトップに立つのは、三菱重工でも川崎重工でもなく、米国政府となっています。
 トランプ政権は、軍事産業強化を推進しています。昨年の本会議で総理は、米国製武器の購入は米国の経済や雇用にも貢献すると述べました。なぜ米国の軍需産業の利益増大に力を入れるのですか。
 これらは地域での緊張を高め、周辺国との軍拡競争にもつながるものであり、憲法の平和原則にも反するものです。米国製武器の巨額の購入と軍事費増大は中止すべきです。防衛大臣の見解を求めます。
 政府は、TPP11は、保護主義を防止し、自由貿易を守る成長戦略の柱だと言います。しかし、多国籍企業の国境を越えた利益のためのルールの拡大は、一握りの大企業のもうけの一方で、各国で国民の貧困と格差を拡大するものです。
 今求められていることは、グローバル化の下で多国籍企業の利益優先により現に引き起こされている格差や不平等を解消し、各国の食料主権、経済主権を尊重した平等互恵の経済関係を発展する道に進むことではありませんか。
 外務大臣の見解を求めて、質問を終わります。(拍手)


   〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕

○国務大臣(河野太郎君) TPP協定の問題点についてのお尋ねがありました。
 TPP協定については、合計百三十時間以上に及ぶ国会審議や三百回以上に及ぶ説明会を通じ、その意義について説明するとともに、国民の皆様から寄せられる不安の声にも丁寧に答えてきました。
 その中でも説明してきたとおり、農産品については、関税撤廃の例外を確保するとともに、重要五品目を中心に、国家貿易制度の堅持やセーフガード等の有効な措置をしっかりと獲得しており、国益にかなう最善の交渉結果が得られたと考えております。加えて、総合的なTPP等関連政策大綱の実施など、引き続き万全の措置を講じていく考えです。こうした交渉結果は、国会決議の趣旨に沿っているものと考えております。
 ISDS条項を含むTPP協定の投資章の規定は、公共の福祉に係る正当な目的のために、必要かつ合理的な規制措置を差別的でない態様で講ずることを妨げるものではありません。また、我が国は、TPPを含む投資関連協定の締結に当たっては、必要な例外規定を置くことなどにより国内法との整合性をしっかり図っています。
 また、TPPでは、中小企業章を設けるなど、中小企業及び地方産業が国内にいながらのグローバルサプライチェーンへの参加を積極的に後押しする規定が導入されており、産業の空洞化を招くとの御指摘は当たらないと考えます。
 政府としては、こうした点を引き続き丁寧に説明していく考えです。
 米国のTPPへの復帰についてのお尋ねがありました。
 TPPは、日米がリードして、世界に二十一世紀型の経済秩序をつくり上げるという観点から、米国と共に十二か国で推進してきたものです。米国にとってTPPは、経済的、戦略的重要性を有しており、米国の経済や雇用にとってもプラスになるものと考えます。
 また、米国のTPP離脱以降、様々な機会に米国に対してTPPへの復帰を働きかけてきた結果、トランプ大統領も、より良い合意内容ができるのであればTPPに参加する可能性がある旨述べるに至っています。
 これらを踏まえて、米国に対しては、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであることを引き続き訴えてまいります。
 より米国の利益になる再交渉や新協定を求めるのではないか、また、TPP協定の内容が米国の要求の出発点になるのではないかとのお尋ねがありました。
 米国が二国間ディールに関心を有していると承知していますが、我が国としてはTPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場を踏まえ、引き続き議論に臨んでまいります。
 他国の通商政策についてコメントする立場にありませんが、いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはありません。
 ライトハイザー米国通商代表の発言及び二国間FTAについてのお尋ねがありました。
 ライトハイザー米国通商代表の発言の意味するところについてコメントする立場にはありません。
 米国から我が国に対しては、日米経済対話の議論の中で、二国間FTAに関する米側の考え方が示されています。他方、我が国としてはTPPが日米両国にとって最善と考えており、様々な機会を捉え米側に対して説明してきました。その立場を踏まえ、引き続き米国との議論に臨んでまいります。
 なお、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議は、日米FTA交渉と位置付けられるものではなく、その予備協議でもないことを明確にしておきます。
 日米首脳間の信頼関係、米国による鉄鋼、アルミニウムに関する措置及び自動車等に対する調査に関するお尋ねがありました。
 トランプ大統領就任以降、約三十回にも及ぶ日米首脳会談を通じて構築された安倍総理とトランプ大統領の強固な信頼関係の下、日米同盟はかつてないほど盤石です。
 鉄鋼、アルミニウムに関する広範な貿易制限措置は、世界市場を混乱させ、WTOルールに基づく多角的貿易体制にも悪影響を及ぼしかねないものであり、極めて遺憾です。
 我が国としては、この立場に立って、除外を獲得すべく、引き続き米国に粘り強く働きかけていきたいと思います。
 また、自動車及び自動車部品の輸入に関する調査については、具体的な措置が決定されたものでなく、現時点において予断を持ってコメントすることは差し控えます。
 米国の米国第一主義とWTOルールと貿易制裁に関する日米の認識についてお尋ねがありました。
 ライトハイザー米国通商代表の発言の意味するところについては、政府としてコメントする立場にありません。
 その上で申し上げれば、今般の米国の鉄鋼、アルミニウムに関する追加関税の賦課は、米国がWTO協定上約束している譲許税率を超える税率の関税を賦課するものであり、関税及び貿易に関する一般協定第二条との整合性に懸念がある措置と考えています。
 また、自動車及び自動車部品の輸入に関する調査については、具体的な措置が決定されたものでなく、現時点において予断を持ってコメントすることは差し控えます。
 TPPと多国籍企業についてのお尋ねがありました。
 自由貿易の利益を社会全体に及ぼすためには、大企業のみならず、中小企業、農業者、ひいては労働者や消費者にとって適切な経済的機会をつくり出すものにしなければなりません。
 自由で公正な貿易圏をつくるTPPは、知的財産保護、労働・環境規制、国有企業の競争条件の規律など幅広いルールを定め、頑張った人が報われる公正な競争環境を整えるもので、まさにこれを実現するものです。
 TPPを含め、グローバル化の中での自由貿易に対しては、多国籍企業のみを利するとの誤解がありますが、TPPの新しいルールによって大きな恩恵を受けるのは、これまで様々なリスクを懸念して海外展開に踏み切れなかった地方の中堅・中小企業や農業者です。よって、TPPが多国籍企業の利益を優先するものとは考えておりません。(拍手)


   〔国務大臣茂木敏充君登壇、拍手〕

○国務大臣(茂木敏充君) 井上議員にお答えをいたします。
 自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議についてお尋ねがありました。
 四月の日米首脳会談で合意した自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、いわゆるFFRでありますが、これは、日米双方の利益となるように日米間の貿易や投資を更に拡大させ、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域を実現することを目的に行われるものであります。
 一方、日米経済対話につきましては三点、一つは、貿易及び投資のルールと課題に関する共通戦略、二つ目に経済及び構造政策分野での協力、三つ目に分野別の協力、こういった三つの柱について議論をしておりまして、FFRよりも広範囲のテーマを対象といたしております。
 FFRにつきましては、私とライトハイザー通商代表との間で協議を行いますが、これを麻生副総理とペンス副大統領の下で行われている日米経済対話に報告すると、こういった枠組みといたしております。
 次に、協議の対象について、米通商代表部の年次報告書の項目が含まれるのかとのお尋ねがありましたが、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、まさにこれから始まるところでありまして、具体的な議論の対象については日米双方で今後調整していく、このように考えております。
 次に、協議の目的、対象についてでありますが、四月の日米首脳会談で合意したFFRは、日米双方の利益となるように日米間の貿易や投資を更に拡大させ、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域を実現するための方策について議論するものであります。そして、この協議を通じて、日米両国が日米経済関係及びアジア太平洋地域の発展にいかに協力すべきか、建設的な議論を行っていきたいと考えております。
 FFRの基本的な目的、そして大枠での議論の方向はこのような形でありますが、まさに協議、これからでありまして、具体的な議論の対象は今後米側と調整をしてまいります。
 最後に、二国間FTAについてもお尋ねがございました。
 我々として、二国間FTAは念頭に置いておりません。この点につきましては、日米首脳会談でも米側に強調をしたところであります。本協議は日米FTA交渉と位置付けられるものではなく、その予備交渉でもありません。日米二国間の協議イコール二国間の協定というわけではなくて、双方の利益となるような様々な成果が考えられると思っております。
 いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはございません。(拍手)


   〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕

○国務大臣(菅義偉君) 米国製装備品の購入についてお尋ねがありました。
 四月の日米首脳会談における安倍総理の発言は、我が国の防衛力を強化する上で高性能の装備品の導入が重要であるという我が国の従来からの考え方を述べたものであります。米国製装備品の積極的な購入を表明したとの御指摘は当たりません。
 昨年の本会議における安倍総理の答弁は、安全保障と経済の問題は別物であることを前提とした上で、我が国における米国製装備品の購入が、結果として米国の経済や雇用にも貢献するとの見方もあることを述べたものであります。政府として、米国の利益のため米国製装備品の購入に力を入れるという事実はありません。
 国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の重大な責務であります。そのための防衛力確保は憲法の平和主義に反するものではありません。今後とも、中期防衛力整備計画に基づき、米国製を含め、我が国の防衛に不可欠な装備品を計画的に取得する必要があると考えています。

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