国会質問議事録

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本会議(自民党提出参議院選挙制度に関する公選法改正案に対する反対討論)


○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。

   〔井上哲士君登壇、拍手〕

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 会派を代表して、自由民主党及び無所属クラブ提出の参議院選挙制度に関する公職選挙法改定案について、反対の討論を行います。
 冒頭、西日本豪雨災害で亡くなられた犠牲者の方々に心から哀悼の意をささげ、被災された皆さんにお見舞いを申し上げます。また、人命救助と被災者支援に奮闘される全ての皆さんに心から敬意を表するものであります。先ほど、全会一致での決議に基づき、政府に万全の対策を強く求めるものであります。
 極めて残念なのは、山本議運委員長が、その提案説明で自分の地元の県だけを挙げたことであります。
 この間の法案審議の中で、自民党からは地域の代表、地元の声という言葉が繰り返されました。もちろん、それは議員として大切なことであります。しかし同時に、私たちは、憲法四十三条に明記されているように、全国民の代表です。自民党の皆さんがそのことを忘れているのではないかと思わせる議運委員長の発言でありました。
 議運の場で適切な対応が求められることを強く求めるものであります。
 政府・与党にも申し上げたい。
 未曽有の災害の下で、九日、六野党の会派の党首がそろって総理に対し、行政府、立法府が一体となって取り組む体制を整え、関係大臣は災害対策に最優先で取り組むよう申し入れました。同日、参議院議長にも同様の申入れを行いました。
 そして、昨日、内閣委員会でのカジノ法案の質疑について、土砂災害対策に責任を持つ石井国交大臣がカジノ担当大臣として出席することになる、これは中止すべきだと野党は繰り返し求めました。ところが、与党はこれに耳を貸さず、委員会を強行しました。
 委員会で我が党議員が、これだけの大災害が起き、この瞬間も被害が拡大しているときに、災害よりも賭博の議論などあり得ないとただしました。これに対し国交大臣は、国会の意思に従っているという無責任な態度に終始しました。
 今もなお被害は拡大しています。ところが、今日の内閣委員会の理事懇でも、野党の中止要求にもかかわらず、明日、あさっての委員会が職権でセットされました。一体何を考えているのか。被災者よりも賭博の議論の方が大事だというのか。私は与党に問いたいと思います。
 全ての議員に心から呼びかけます。今、全会一致で、人命救助に全力を傾注し、国の総力を挙げた支援を求めた以上、国会としての責任を果たそうじゃありませんか。特に与党の皆さんに呼びかけたい。カジノ法案の質疑は臨時国会に先送りし、豪雨災害対策に全力を挙げようではありませんか。
 法案の討論に入ります。
 日本国憲法は、国民が主権者であり、日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動すると前文に明記しています。選挙制度は議会制民主主義の土台であり、どのような制度にするかは議会を構成する各党会派間で議論を重ね、合意を得る努力を尽くすことが不可欠です。それをせずに、多数党が数の力で自らに有利な選挙制度へ変えるならば、議会制民主主義は壊れてしまいます。だからこそ、選挙制度改革について、議長の呼びかけによる各派代表者懇談会で参議院改革協議会を設置し、選挙制度専門委員会で、有識者も招き、十七回にわたる議論が行われてきました。
 ところが、自民党は、この協議の中で、各党会派間で大きく意見が異なる憲法改定を前提とする案に固執し、合意形成に関する最大会派としての責任を全く果たそうとしませんでした。さらに、自民党は、専門委員会報告作成後、そこで一切提示のなかった案を突然改革協議会に提示しました。野党は、専門委員会で議論していない案だから更なる協議を求めましたけれども、自民党は、これに背を向けて法案を提出し、数の力でごり押しをしようとしております。議会制民主主義の破壊と言わなければなりません。
 本来、議長は、こうした自民党のやり方を厳しくいさめ、会派間の合意形成にイニシアチブを発揮すべきであります。ところが、伊達議長は、改革協への差戻しなど会派間の協議を求める野党の声に背を向け、各派代表者懇談会も打ち切ってしまいました。議長の職責を放棄したものと言わざるを得ません。
 石井浩郎倫理選挙特別委員会の委員長の責任も重大です。会派間協議への差戻しを求める理事懇、理事会での野党の主張に一切耳を貸さず、自民党の提案のままに職権による委員会開催を繰り返しました。しかも、五法案を一括審議している最中に、議論の整理と称して特定の二法案のみを採決するという自民党の全く道理のない提案をそのまま進めようとし、採決対象となった維新の会からも厳しい批判の声が出されました。
 さらに、本日の委員会で自民党は、質疑を打ち切り、討論も省略する動議を強行し、反対討論を封じる中で採決する暴挙を行いました。国民の声を聞く耳を持たない姿をさらけ出したのであります。民主主義の土台となる選挙制度を議論する特別委員会の委員長としてとりわけ公正中立が求められるにもかかわらず、このような自民党の言うがままに職権立てを繰り返した石井君には、もはや委員長としての資格はありません。これら選挙制度改革に対し余りにも非民主的で強権的なやり方に厳しく抗議するものであります。
 以下、法案について反対の理由を述べます。
 反対の理由の第一は、参議院選挙制度改革に求められている抜本改革に全く値しないからであります。
 参議院選挙制度をめぐる二〇一四年十一月二十六日の最高裁判決は、都道府県単位で各選挙区定数を設定する現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法措置により、違憲状態にある一票の較差の是正を求めました。さらに、三年前の公選法改正では、附則に、二〇一九年参議院選挙に向け、選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るとしました。自民党の改正案は、合区も残して基本的制度を維持したままで、比例代表に自民党の都合による特定枠を盛り込んだというものであり、抜本改革には全く値しません。
 第二の理由は、比例代表選挙への特定枠の導入が、合区で立候補できない自民党の議員、候補者を救済する党利党略のものだからであります。
 大体、現行の非拘束名簿は、二〇〇〇年に自民党が提案して強引に導入したものです。にもかかわらず、自分たちの都合で拘束名簿を部分的に再度導入することは、御都合主義極まれりと言わなければなりません。
 希望する政党には比例名簿順位を付けることを可能にする案は、前回の選挙制度協議会で示された自民党案の中に合区とともに盛り込まれていました。当時、自民党委員は、同協議会で、この案について、選挙区で立候補できなくなる人を比例名簿の上位にすることを希望する政党に限って一部導入することを可とする考えを示したものであると、露骨にその狙いを述べております。
 その後、自民党の改正案について当時の伊達参議院自民党幹事長が自民党高知県連に説明に行ったときのことが高知新聞で報道されています。それによると、高知県連側は、合区が実施された場合、参議院比例代表の候補者の当選者を事前に決めておく拘束名簿式を導入して、確実に県代表を選出するように求めたと報道をされています。
 結局、比例に順位を付ける案には他の野党からの賛同はなく、当時、単独過半数を持たない自民党は法案に盛り込むことを断念しました。過半数を得た今回、特別枠として提案をしたというのが経過であります。これを見れば、合区で立候補できない自民党議員の候補の救済のための党利党略であることは余りにも明らかではありませんか。
 だからこそ、新聞各紙も、参議院の私物化に等しい、党の事情を優先、露骨なお手盛り、党利党略、裏口入学と報じ、国民からも批判の声が上がっております。断固反対であります。
 直近のJNNの世論調査では、自民党案への賛成は一五%にとどまり、反対が六九%。また、この法案の今の国会での成立についても、反対と答えた人が七〇%に上っています。
 主権者国民の理解が得られないまま、選挙制度が数の力により第一党の都合で変えられるならば、政治そのものへの信頼を失わせ、議会制民主主義の破壊につながります。
 改めて、採決はやめ、参議院改革協議会での会派間協議に差し戻すよう強く求めて、討論を終わります。(拍手)

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