国会質問議事録

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本会議(歳費三法案に対する反対討論)


○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。
   

〔井上哲士君登壇、拍手〕

○井上哲士君 日本共産党を代表して、まず自民、公明、無所属クラブ提出の法案について反対の討論を行います。
 本法案のそもそもの出発点は、昨年、自公などの賛成で強行された参議院選挙制度の改悪であります。
 参議院選挙制度については、議長の呼びかけによる各派代表者懇談会で参議院改革協議会を設置し、選挙制度専門委員会で有識者も招き、十七回にわたる議論が行われてきました。
 ところが、自民党は、この協議の中で各党会派間で大きく意見が異なる憲法改定を前提とする案を示すのみで、合意形成に関する最大会派としての責任を全く果たそうとしませんでした。さらに、自民党は、専門委員会報告作成後、それまで一切提示のなかった案を突然改革協議会に提示しました。野党は、引き続く会派間協議を求めましたが、自民党はこれに背を向けて法案を提出し、倫理選挙特別委員会の職権開催を繰り返した上、野党の反対の中、審議を打ち切り、委員会討論も封じるなどして強行的採決を行ったのであります。
 参議院選挙制度をめぐって何が求められているのか。
 二〇一四年の最高裁判決は、都道府県単位で各選挙区定数を設定する現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法措置により、違憲状態にある一票の較差の是正を求めました。抜本的改革こそ求められてきたのであります。
 しかし、強行された法案は、合区も残し、基本的制度を維持したままで、比例代表選挙に特定枠を盛り込んだものであり、求められる抜本改革には全く値しません。特定枠の導入は、合区で立候補できない自民党の議員・候補者を救済するための党利党略にほかなりません。
 大体、現行の非拘束名簿は、二〇〇〇年に自民党が提案して強引に導入したものです。当時、自民党の提案者は、国民の多元的な意思を政治に反映するために現行の拘束名簿式を非拘束名簿式に改め、候補者の顔の見える、国民が当選者を決定する選挙とすることを決断したと述べました。
 ところが、今回の、政党が当選者を決める特定枠の導入の理由についても、全国的基盤を有しない有権者の方も当選しやすくなる、多様な民意を国政に反映させるとしています。同じ多様な民意の反映を理由にして拘束名簿を廃止しておきながら、今度は逆に特定枠を導入する。まさに、支離滅裂、御都合主義極まれりと言わなければなりません。
 自民党は、特定枠について、国政上有為と言い得る人材の当選の機会を高めるとも言いました。しかし、実際の自民党の特定枠の擁立状況を見れば、合区対象県で選挙区候補にならない県からの擁立となっており、我々が指摘したとおり、救済のためであることは明白であります。
 このように、やり方も内容も党利党略、新聞各紙も当時、参議院の私物化に等しい、党の事情を優先、露骨なお手盛り、裏口入学と厳しく批判しました。強行直後の世論調査ではいずれも国民の厳しい声が示され、毎日では、改正公選法を評価しない六七%、評価する一八%という結果でした。
 いまだに全く解消されていないこうした国民の強い批判をかわすために、定数増による経費分として、参議院議員の歳費を月七万七千円、三年間削減するというのが当初の案でありました。これにより、衆参の議員の歳費が異なり、三権の長である衆参議長の歳費にも差ができることになります。それに対し、国民の代表である国会議員は平等の地位を有するにもかかわらず、衆参で歳費が異なるのは憲法違反だなどの批判が広がる中で撤回を余儀なくされ、自主返納とする案を提出し直したものであります。
 しかし、出発点が党利党略の参議院選挙制度改悪だという問題は何ら解消をされておりません。五月二十四日付けの毎日は、社説で、昨年の公選法改正は自民党の自己都合というほかないとした上で、いざ選挙が近づくと批判が怖くなり、歳費返納で何とかごまかそうとしているわけだと書きました。
 本法案は、党利党略の特定枠のための定数増に対する批判をかわすために歳費を扱うものであり、徹頭徹尾、党利党略と言わざるを得ません。到底許されるものではありません。
 歳費の問題を議論するには、国会議員とは何か、歳費とは何かという根本問題から、衆議院を含め、各党会派の参加の下で丁寧に行う必要があります。国会議員は国民の代表であり、その選び方はいかに国民の民意を正確に反映するかが問われなければなりません。
 憲法四十四条は、国会議員の資格を、財産や収入等で差別してはならないと明記しております。憲法四十九条は、「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。」と定めています。これは、労働者など、資力のない国民が国民の代表として活動することを保障したものであります。
 また、国会法三十五条は、「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける。」としています。その趣旨について、委員会審議では事務総長から、最高機関の構成員としての権威と機能を十分に発揮するためとの議論があったと答弁があり、憲法学者も、明治憲法下の議員の地位、待遇が官吏に及ばなかったことを改め、その地位、待遇を最高機関にふさわしいものとするためとして定められたと述べております。
 こうした憲法や国会法の規定を踏まえ、歳費については、議員が国民の代表として活動するにふさわしい額とは何かという視点で、手当などを含めた議員の処遇全体を視野に入れて議論をすべきであります。
 維新の会提出法案、立憲民主党提出法案はいずれも、こうした歳費に関する根本的議論を、衆議院も含め各党会派参加で丁寧に行うことのないままに提出されたものであり、賛成できません。
 また、維新案は、一般公務員の最高額より低い歳費とし、国会法三十五条の規定にかかわらずとしておりますけれども、その根拠は十分に示されておりません。
 国会の経費や議員の処遇について言うならば、特権的な役員手当の廃止や文書通信交通滞在費の見直しが必要であり、何よりも、総額は年間約三百二十億円の政党助成金の廃止にこそ踏み出すべきであり、これらを含めた十分な議論が必要であります。
 以上述べて、三法案に対する反対討論といたします。(拍手)

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