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悪質交通事故に厳罰化 ――夫妻の声が政治動かした

 当選後初めての本格的国会も 12 月 7 日で終わりました。10 月 25 日の初質問から約 40 日間で 9 回の質問に立ち、その準備で目の回るような日々でした。

 その中で印象に残っているのが、悪質交通事故を厳罰化した刑法改正です。改正のきっかけは、2 年前に東名高速で、トラックに追突されて幼い子ども 2 人が亡くなった事件です。運転手は飲酒運転の常習者で、その日もサービスエリアで酒を飲み、足元もふらつく状態で運転していたのです。ところが、これまではどんな悪質な事故も、「業務上過失」とされ、最高刑は懲役 5 年。この事件の判決は懲役 4 年でした。

 「こんな悪質な運転をして、どうして『過失』なのか。殺人と同じじゃないか」―― 2 人の子どもを亡くした夫妻が、厳罰化を求めて署名運動を始めたのが 1 年前。署名用紙はインターネットなどを通じて全国に広がり、短期間で政治を動かしました。

 参院の法務委員会に参考人として出席した夫人は、「基本法である刑法を変えるなんて、10 年はかかるだろうと思っていたが 1 年で実現した。みんなが声を上げれば政治を変えられると実感した」と声を震わせながら語られました。私は、質疑の中で、その言葉を今後の議員活動の礎にしたい、とのべました。

 法案が成立したのは奇しくも 2 人の子どもの命日。その瞬間、本会議の傍聴席には拍手を送る夫妻の姿がありました。(「しんぶん赤旗」北陸版 2001/12/19)


「死刑廃止を推進する議員連盟」の一員として韓国を訪問

 超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」の一員として 9 日から 11 日まで、韓国を訪問しました。国会議員の過半数の賛同をえて死刑廃止法案を提出した韓国の運動と交流すること、その激励の意味もこめてソウル市内で開かれた「第二回死刑廃止アジアフォーラム」に参加することが目的でした。

 訪韓直前に金大中氏が民主党の党首を辞任するなど、韓国の政局は大激動のさなかでした。にもかかわらず、国会議員との懇談会には、法案発議者である鄭大哲氏を始め死刑廃止運動の中心である与野党の 6 人の有力議員が参加され、夕食をともにしながら深夜まで語り合いました。その中で、韓国における死刑廃止を求める市民運動は、宗教界、特にキリスト教がその中心を担ってきたこと、そして、金大中氏が大統領に当選したことが、運動の転換点となったことが語られました。なにしろ金大中氏自身が、「光州事件」の際に、「内乱の背後人物」として死刑囚とされた政治家ですから、その大統領就任で死刑廃止運動はさらに広がり、国民世論の 43 %が死刑廃止に賛成するように変化しています。

 アジアフォーラムには日本から約 60 人が参加。韓国をはじめ 7 カ国の代表から、各国の運動を紹介しながら、「死刑は法の名を借りたもう 1 つの殺人」「死刑が犯罪抑止に効果があるという証拠はない」などの発言があり、各国政府に死刑廃止を求める宣言を採択しました。

 訪韓を通じて肌身で感じたのは、死刑廃止運動の広がりの背景に民主主義と人権を回復するための長い戦いがあったことです。そのことは、ソウル市内にある西大門刑務所歴史館を訪問して痛感しました。1908 年に新築された同刑務所は、98 年に歴史館として開館。かつて日本の植民地支配からの独立運動に参加した人々の弾圧と拷問・処刑の場として使われ、その後、民主化運動の弾圧の場ともなり、金大中大統領も収監されていたこともあります。懇談した民主党の有力国会議員も民主化運動の中で弾圧され、同所で拷問されたことを語ってくれました。

7 棟の獄舎や死刑場が保存されており、当時の独房の中にも入れました。真冬には零下 15 度にもなる暗くて狭い部屋で、多くの人々が獄死したのです。拷問室が再現された地下監房では、今にも人々の悲鳴が聞こえてきそうでした。こうした弾圧に抗して独立と民主化が実現し、それとともに死刑廃止運動が広がっているのです。

 訪韓に先立ち開かれた議員連盟の総会では、新会長に自民党の亀井静香氏を選出。同氏は就任にあたり、「国家権力が犯罪者の命を絶つということは近代国家においてやるべきではない」とのべたうえで、元警察幹部としての経験から、「今の司法制度においては冤罪は避けることができない」と挨拶されました。この総会での講演で鄭大哲国会議員は、「死刑の廃止は、その国家の民主化に比例する」とのべられました。この言葉をかみしめた 2 泊 3 日の訪韓となりました。(「しんぶん赤旗」北陸版 2001/11)


法務委員会で初質問

 参院選挙からほぼ 3 ヶ月目の 10 月 25 日。やっと初質問の機会が巡ってきました。

 私の所属は法務委員会。法案審議ではなく、一般質問ですから法務行政に関わる何でもただせます。20 分の質問ですから、2 テーマ位。秘書さんと 一緒に、何をテーマにするか、頭をひねりました。まず決めたのは選択的夫婦別姓の問題。初めて、賛成が反対を上回る世論調査の結果がでるなど、条件は前進しています。よし、早期実現を大臣に迫ろう。

 さて、もう 1 つを何にするか。今の暮らしや雇用に密着した質問ができないか、と悩んでいた時、「改正商法施行による会社分割が 90 件」という夕刊の見出しが目に入りました。「これだ」。関係者に聞くと、滋賀の IBM の工場で会社分割が強引にやられ、労働者の不満が広がっているとのこと。早速、労働組合の方に話しを聞き、大急ぎで準備しました。

 質問では、分割計画の作成までに義務付けられている労働者との事前協議が、わずか 2 日しかやられていないことなどを示し、会社分割で労働者に不利益が出ないようにという法の趣旨に沿った運用を強く迫りました。傍聴にきてくださった労組の皆さんにも喜んでいただき、議席の重みを改めて実感できました。

 初質問の出来具合を振り返る間もなく、先週に 2 回目の質問。今週は火、木の 2 回も質問があり、金曜からは死刑廃止議員連盟としての韓国視察。フル回転の毎日です。(「しんぶん赤旗」北陸版 2001/11/8)


宗教者の理性の声

 アメリカによるアフガンへの報復攻撃が始まりました。小学 1 年生の娘は、テレビに映る爆撃の画面に「お父さん、何があったん」とおびえています。テロは許されない。だからといって、罪もない人々の命を奪うことも許されません。「やられたら、やり返せ」「無法には無法で」――子どもたちにこう教えて 21 世紀の未来があるでしょうか。

 この問題で、京都に本山をおく有力な宗派が次々と声明をだしています。浄土宗の声明は「怨みに報いるに怨みをもってしたならば、ついに怨みのやむことがない」という釈迦の言葉を引用し、「報復は新たな悲しみ、憎しみを生み出すのみ」としています。

私は、真宗大谷派、浄土真宗本願寺派のそれぞれの本山である東西両本願寺を訪問しました。浄土真宗本願寺派では武野以徳宗務総長と懇談。「法の下に裁きを受けるよう、武力攻撃によらない外交交渉で問題解決をはかることに最大限の努力を」とした総長声明と日本共産党の立場が共通することをのべ、政治と宗教のそれぞれの立場から声をあげましょうとお話しました。理性と人間愛の深さを感じた懇談でした。

 それに比べて、報復戦争への協力と自衛隊派兵しか頭にない小泉首相の危うさ。

 いまこそ、世界に誇れる憲法九条を生かし、国連中心の制裁と法の裁きによる解決を声を大にして世界に働きかける時です。広げよう理性の声。輝け憲法。(「しんぶん赤旗」北陸版 2001/10/8)

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