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2002 年 10 月 31 日

法務委員会
一般質問

  • 新仲裁法が国民の裁判を受ける権利の制限や労働者・消費者保護の後退にならないよう要求 ・難民調査官の増員と研修の強化など難民行政の改善を要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 大臣の所信では、「新しい社会にふさわしい、国民にとって身近で頼りがいのある司法制度を構築する」として、司法制度改革の問題を第一に挙げられました。その中で、今、検討会で検討が進められておりますが、特に仲裁法の問題についてお尋ねをいたします。

 この仲裁法の検討会での新しい仲裁法の検討状況と今後の法案化のめどについて、まずお尋ねいたします。

政府参考人(山崎潮君)

 私ども、仲裁の検討状況でございますが、本年二月以降検討会を開きまして、九回開催しております。夏ころには中間的な取りまとめを行いまして、意見募集をしてきたところでございます。現在、その結果を踏まえまして更に検討中でございますが、計画どおり、来年の通常国会には法案を提出したいと考えているところでございます。

井上哲士君

 この仲裁法は、元々、国際商取引の紛争を迅速に解決をするということが強調をされておりました。しかし、これ、国内の取引のすべての当事者が対象になるということで、中間取りまとめが出て以降、大変消費者、労働者から不安の声が上がっております。

 中間取りまとめに対するパブリックコメントの内容ですが、この対象となる仲裁の種類について、これについても随分意見が寄せられておりますが、中間取りまとめの言っている国外取引も国内取引も統一的に規律するという点について、どのような意見が寄せられているでしょうか。その内訳をお願いします。

政府参考人(山崎潮君)

 まず、前提として中間取りまとめでは、新しい仲裁法におきましては、外国仲裁、それから内国仲裁、それと民事仲裁、商事仲裁、これにつきましても全部統一的な規律をいたしまして、必要に応じて各仲裁の性質、内容等に関する特則を設けるという、そういう案を示しておりますけれども、これに対する回答として二百九十件ございましたけれども、こういう考え方に賛成する意見が三十四件ということでございます。

 一方、これに反対する意見、総数二百五十三件ございました。その反対の内訳でございますけれども、新しい仲裁法から国内取引を除くべきであるという意見が七十八件、それから消費者が当事者となる仲裁を除くべきであるとする意見が八十九件、労使間の紛争についての仲裁を除くべきであるという意見が八十件と、大体こういう状況でございます。

井上哲士君

 実に九割の方が反対意見を寄せられているわけであります。特に、消費者とか労働の紛争の現場にいらっしゃる方が大変懸念の声を上げていらっしゃるというのが特徴だと思います。

 この仲裁は、当事者双方の仲裁合意に基づいて仲裁人の仲裁で紛争を解決をするという制度ですが、これ、仲裁内容が、結果が不満だということで裁判をするということができますか。

政府参考人(山崎潮君)

 仲裁の元々の本質でございますけれども、仲裁人の判断に服することによって紛争を解決するということにあるわけでございまして、そういう関係から、現在の仲裁法におきましてもその仲裁判断の当否について不満があっても裁判で争うことはできないというふうに解釈されておりますし、新しい法律においてもそのような考え方を置く予定でございます。

井上哲士君

 仲裁機関ですが、例えば現在は半ば公的なものとして日弁連の仲裁、弁護士会の仲裁センターというものがありますけれども、業界団体などがこの仲裁団体を立ち上げるということは、これは可能なんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 これは現行法でも可能でございますし、新しい新法におきましても可能と考えております。

井上哲士君

 この仲裁というのはほとんど今まで使われておりませんでしたが、これが使い勝手が良いものになるということになりますと、例えば業界団体あるいはいわゆる悪徳業者などが自分に有利な仲裁人を集めて、消費者問題仲裁センターとか、中立的な機関を装った仲裁機関を作るということも可能にはなるわけですね。

 さらに、あらかじめ契約時に争いは仲裁で解決をすると合意をした場合、将来に紛争が起きたときに、やっぱり仲裁ではなくて裁判にしたいんだというふうに思い直して裁判に訴えるということは、これは可能ですか。

政府参考人(山崎潮君)

 一般論として申し上げますと、紛争発生後に裁判を選択するということはできないと考えられております。

井上哲士君

 ですから、あらかじめ仲裁合意をしておりますと、その後、消費契約で紛争が発生をしたり、また労働者がいろんな不当な差別や権利侵害とか解雇を受けたときに裁判を受けるということができなくなるわけですね。これは、憲法三十二条で「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」、こう規定をしておるわけですが、この裁判を受ける権利を奪うものではないか、そのおそれがあるんではないか、この点どうでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この点につきましても、一般論として申し上げますと、仲裁契約におきまして紛争を裁判によらず仲裁で解決するということを自らが合意をしているわけでございますので、そういうような合意をしている以上、裁判を受ける権利を侵害するということにはならないと考えられているところでございます。

井上哲士君

 自らが合意をするという合意の合理性というのは、そういうやっぱり国際商事取引のように当事者同士が対等な立場で自由な意思によって合意するということが前提になると思うんですね。ところが、事業者と消費者、雇用者と労働者など、情報力、力関係が全く大きな差があるという場合には、合意をしたとはいえ、これはやっぱり弱い立場の人から裁判をする権利を奪うことに結果としてなる、こういう不安の声が上がっているわけです。

 先日、朝日新聞に、社団法人全国消費生活相談員協会理事長の藤井教子さんという方が投稿をされておりました。全国の消費者生活センターで年間八十万件を超す苦情相談の助言をされているわけですから、大変現場を踏まえた私は重みのある提言だと思うんです。この中でこういうふうに言われていますね。「消費者が日常行う取引では、事業者側が用意した契約書が使われ、消費者は細かな契約内容について個別に交渉できない。」、「私たちが日々接している相談では、訪問販売やキャッチセールスなどで強引に契約を押しつけられ、その内容すらよくわかっていない事例が後を絶たない。」と。その現状の下で、「契約書に仲裁合意条項が盛り込まれていても気付かないのが普通だし、別に仲裁合意の書面が用意されても、その法的意味の重大さを理解できる客はほとんどいないだろう。」と、こういう投稿であります。

 私は、大変これは重要な指摘だと思うんです。契約時によく分からないままに合意をしたけれども、例えば指定された仲裁機関が業界団体が作ったような仲裁機関だったとか、消費者にとって非常に遠い場所での仲裁地が指定をされているとか、一方的に消費者が不都合な不利な仲裁が押し付けられるというおそれがありますが、それでも裁判はできないということになります。

 それから、労働者の場合どうかといいますと、入社時に就業規則などに仲裁合意というのが書いてあったと。そうなりますと、将来、いろんな差別があったりリストラ、解雇を受けても、仲裁が出されますと裁判に訴えられなくなりますし、労働組合がそれはけしからぬということで団交をしましても、それでも仲裁合意だということでそれさえもできないということになりますと、これはやはり五千三百万人いる労働者からの訴える権利が、これは結果として奪われることになると私は思うんです。借地借家契約とかフランチャイズの契約でも同じようなおそれがあるわけです。

 検討会では、この新仲裁法について、国連総会でも承認をされた国際的なモデル法に準拠をしたものとして議論をされていますけれども、ちょっと確認になりますが、国内事情に応じてこういう消費者や労働者などについては特別の規定を作っていくと、これは可能なわけですね。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま御指摘のようないろいろ懸念が表明されているということを、私どもも承知をしているところでございます。

 ただいまお尋ねの点でございますが、そのようないろいろ懸念を解消するために、この新仲裁法制定に当たりまして何らかの法的な手当てをすること、こういうことの是非、あるいはその具体的な手当ての内容につきましては現在検討中でございます。端的に申し上げれば、理論的には可能であるということになります。

井上哲士君

 これはほとんどなじみのない制度でありますから、大半の国民にとっては全く新しい制度が作られるという認識が私は大事だと思うんですね。

 元々の法律は明治の法律ですけれども、当時は契約ということが国民生活に及ぼす影響というのは今と格段に違いますし、その消費者保護とか労働者保護とかということの必要性も格段に違うわけですから、やっぱりこれは悪用されたり、いろんな保護が後退することのないような手当てが今の社会情勢に合わせて事前に必要だと思うんです。

 今ありましたように、消費者保護についての特例を設けることが検討されているようですが、中間取りまとめにも出されております。その後の、現代でのこの消費者保護についての特例の検討の内容についていかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいまの御指摘の消費者保護の点でございますけれども、この点につきましては、九月二十四日の検討会におきまして、消費者団体の関係者、それから消費者契約法に関する学者等のヒアリングと集中の審議を、検討を行いました。また、十月二十二日の検討会におきましては、これまでの議論の状況を踏まえまして更に検討が行われております。

 現在、それでどのような方向に行くということはまだ決まっておりませんけれども、かなり幾つかの論点に絞られながら検討しているところでございます。もう間もなく検討の結果を出していくという状況でございます。

井上哲士君

 三案ぐらいの論点が出されているかと思うんですが、それちょっと御説明願えますか。

政府参考人(山崎潮君)

 現在出されている案でございますけれども、例えば消費者と事業者との仲裁契約の方式等について特則を設けるということでございまして、これは、一般の契約書とは別途の書面によって仲裁の契約をすると、こうすればいいではないかという考え方が一つでございます。それから、事業者と消費者の間では将来の争いに関する仲裁契約はその効力を有しないということでございまして、将来のものは駄目、現在起こっているものについて仲裁契約を結ぶ、これはいいと、こういう考え方でございます。それともう一つは、消費者の側から解除をすることができるという考え方。この三つが今大きくまとめられつつある意見でございます。

井上哲士君

 一方、中間取りまとめでも労働者問題というのは一切議論をされていないわけですね。これだけたくさん労働者からも不安の声が上がっているわけでありますが、元々この検討会には労働の関係者は参加をしていないわけで、消費者で行ったように、直接関係者の意見を聞く場を持って労働者への特例の問題も検討することが必要だと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま御指摘の点につきましては、十一月七日の検討会においてまず議論をしたいというふうに考えております。また、十一月二十八日の検討会におきまして、労働紛争の関係者といたしまして、労働法学者、それから労働団体及び使用者団体の関係者、労使双方の弁護士の参加も得まして検討を加えていく予定でございます。

井上哲士君

 消費者は物を買うわけですが、労働者の場合は自らの労働力を売る、それでないと生きていけないわけですね。ですから、なかなか労働契約というのは対等に結ぶことは困難でして、雇用される際に、就業規則に争いは仲裁で解決すると、こういう項目があるからといって拒否するというのは非常に困難です。特に今、失業率は非常に悪化をしておりまして、男性の場合は五・八%、史上最悪と。そういうときに、仕事を棒に振るような覚悟で就業規則に意見を述べれるか、これはまず無理という状況ですね。

 ですから、日弁連などの意見書では、事前の仲裁合意が事実上強制される結果となるおそれはむしろ消費者契約以上に大きいんだと、こういう指摘をされております。

 労働者が使用者に対して弱い立場にあるからこそいろんな労働法制もできてきたわけですが、契約という点でいいますと、労働者の方が消費者以上に弱い立場にもなるという点は今後十分に考慮をされるべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま御指摘のような意見があることを私どもも承知しているところでございます。事務局といたしまして、この労働契約に関する仲裁の問題も含めまして、ただいまのような御意見、いろいろあることを頭に入れながら検討を進めてまいりたいと思います。

井上哲士君

 この新しい仲裁法の下でいろんな消費契約とか労働契約で仲裁合意が悪用されるということになりますと、仲裁制度そのもの、ひいては ADR 全体に対する信頼性が失われるということにもなると思うんです。司法制度改革ではこの ADR の拡充ということも目指しているわけでありますし、また労働裁判の検討会では労働裁判の改革による権利救済を討議していると、こういう流れの中でありますから、やはりこの新仲裁法によってこれまでの消費者保護とか労働者保護の水準というものが決して後退するようなことが絶対あってはならないと、こういう懸念がないような立法化ということが必要かと思います。

 その点、ちょっと繰り返しになりますが、いかがでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 新しい仲裁法の制定に当たりましては、ただいまいろいろ御指摘をいただきました点、こういうものを踏まえまして遺漏のないように検討を進めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 今後、検討会の議論を経まして立法化となります。繰り返しになりますが、是非、大臣にも御所見をお願いしたいんですが、国民の裁判を受ける権利を守る、そして消費者保護や労働者保護を後退させないという点での御所見を大臣からお願いをいたします。

国務大臣(森山眞弓君)

 今、るるお話がございましたような問題点があって、懸念が表明されているということを私も承知しております。

 新仲裁法の制定に当たりましては、御指摘の点も踏まえまして、国民にとって使いやすい、そして権利保護の実現に資するような仲裁制度を構築できますように、今後も検討を進めてまいりたいと思います。

井上哲士君

 是非、よろしくお願いをいたします。

 次に、先ほど来の議論もありますが、難民問題についてお尋ねをいたします。

 難民行政の改善についての検討が進んでいるわけでありますが、中間的な報告が出ることを待つことなく、現に行われている運用についていろんな国際的な批判もあるわけでありますから、これは直ちに改善を図っていく必要があるかと思います。

 特に、この間、難民申請中又は争っている中で、収容されていますアフガニスタンやトルコの国籍の方々の収容所での自殺とか自殺未遂ということがかなり報道をされております。この一年間、難民申請や異議申立て中の収容者のそういう事件について、どれだけになっているのか、またなぜこんな増えているのか、それについていかがでしょうか。

政府参考人(増田暢也君)

 お尋ねの自損行為の件数についての統計は取っておりませんので正確な数字を申し上げることはできませんが、現在、当局が把握している昨年十月以降本年九月末までの一年間における自損行為の件数は、東日本入国管理センターが二十五件、西日本入国管理センターが九件となっております。

 その原因についてもお尋ねを受けましたが、委員御指摘のとおり、被収容者の自損行為の発生がこのように見られておりますが、その理由について必ずしも定かではございません。収容自体に不満を持って示威行為として自損行為を行ったとか、あるいは仮放免を求めての示威行為として自損行為を行ったなどの理由ではないかと考えております。

 入国管理センターにおきましては、日ごろから被収容者の動静を把握しつつ、事故防止の監視体制を取りますとともに、臨床心理士によるカウンセリングを行うなど、心のケアにも努めているところでございます。また、被収容者が自損行為を行った場合には、直ちに医師に連絡して必要な医療措置を講ずるなど、適切に対処しているところでございまして、今後とも、被収容者に対する的確な動静把握を行い、心情の安定に配慮しながら、自損行為の未然防止に努めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 昨年の九・一一テロ以降、アフガン国籍の難民申請者を一斉に収容するなどが行われまして、これまでの流れに逆行があったと私は思うんですね。

 西日本や東日本の入管センターも見てまいりましたけれども、日本に庇護を求めにやってきたのになぜ犯罪者のように収容されるのかと。しかも、いつまで収容されるか分からないということで大変いろんなストレスが収容者の難民申請者の方にたまっているという、ここに私、問題があると思うんです。

 その中で、西日本の収容センターに収容されていたアフガン人のアブドゥル・アジズさんについて、九月二十日に広島高裁が、一審に続きまして、被告は難民に該当するという判決を下しております。検察が控訴しませんでしたので判決は確定をしたわけですが、その後もかなり長い間収容が続いておりました。一時はハンガーストライキで抗議もされたわけですが、やっと一昨日、仮放免がされたということをお聞きをしております。国会審議を前に仮放免をしたのかなとも私は思ったんですが。

 入管が不認定にした申請者を、刑事裁判とはいえ控訴審でも難民と明確にした、この判決は初めてだと思うんですが、この判決自体はどのように当局は受け止めていらっしゃるんでしょうか。

政府参考人(増田暢也君)

 個別の刑事裁判の判決に対しましては法務当局としてコメントすることは差し控えますが、一般論として申し上げますれば、刑事判決において難民の該当性があると判断されましても、その効果は当該刑事事件における刑の免除の関係に限定され、その判決が出入国管理及び難民認定法第六十一条の二に定める法務大臣の認定に代わるものではございませんし、また行政庁等、他の国の機関を拘束するものではないと理解しております。

 なお、難民の認定につきましては、今後とも、人道的な観点を踏まえまして、適正な運用に努めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 そういう受け止めだから長期の収容が続いたと思うんですね。法の建前だけをかざすのでは私は駄目だと思うんです。今回の判決というのは、今の現行の認定制度とかその運用に対してやっぱり厳しい警鐘が司法の側からなされたと、こう受け止めていただいて、やっぱり運用を見直して、正すべきことは正すということをやるということが私は今必要だと思うんです。

 この間、六十日ルールの撤廃とか第三者機関、認定機関のことなども前国会でお尋ねしましたが、今回は難民調査官についてお聞きするんです。

 一九九五年、平成七年と現在では、難民申請の数、それから難民調査官の人数とその中の専任の方の人数はどうなっていますか。

政府参考人(増田暢也君)

 難民認定申請者数について申し上げます。平成七年は五十二人、平成十三年は三百五十三人でございます。また、平成七年当時の難民調査官は三十六人で、そのうち難民認定事務専従者は二人でございましたが、平成十四年十月一日現在の難民調査官は四十四人、そのうち難民認定事務専従者は八人となっております。

井上哲士君

 申請者は七倍になっているわけですが、調査官は微増、専任の方は増えたとはいえ、たったの八人という状況なわけですね。こういう状況ですから非常に調査にも時間が掛かって、結果としての長期収容にもなっております。

 それから、申請者の方というのは言わば着のみ着のまま来られる方もいらっしゃって、非常に証拠を出すということも難しい場合がありますし、いろんな精神的なトラウマもあるということですから、調査官の役割は非常に大事なんです。その国の政治・社会情勢や人権状況をよくつかむということが必要なわけなんですね。

 先ほどの、私、裁判での例えば広島入管が出した意見書も読ましていただきましたけれども、アフガニスタンではパシュトゥン、タジク、ハザラ、ウズベクというのは四大民族が抗争しているんであって、別にハザラ人が迫害されているわけじゃない、特別に、こういう認識なんですよ、読みますとね。しかし、ハザラ人への迫害というのは言わば国際的な常識でもあるわけでありますし、地裁も高裁もそのことを認めております。

 ある弁護士の方にお聞きをしたんですが、アフガン人の異議申立てのときのインタビューに同席をすると、調査官がマザリシャリフの虐殺というのを知らなかったと。アフガンの人権状況について検討する上でこれを知らないというのは致命的なわけでありますけれども、どうしてこんなことで難民認定ができるかと思ったというお話を聞いたんです。

 今回のやっぱり判決が警鐘を鳴らしたという点で、全体としてのいろんな見直しが必要でありますけれども、専任の難民調査官の大幅増員、研修の強化など図るべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(増田暢也君)

 難民調査官は入国審査官の中で専門的な知識を必要とする難民認定事務を行うのにふさわしい知識や経験等の資質を備えた者が法務大臣によって指定されているものではございますが、刻々と変化する国際情勢や申請者の出身国の国内情勢を的確に把握し、また多様化する難民認定事案に適正に対処するためには、たゆまぬ研さんが必要となっております。

 そこで、これまでも、定期的に難民調査官に対しましては必要な研修を実施するなど、専門性の高い難民調査官の養成に取り組んでまいりましたが、今後もその専門知識等の更なる涵養に努めてまいりたいと考えております。

 また、より一層、迅速かつ適正な難民認定手続を行うためには、十分な難民調査の体制が必要であることは委員御指摘のとおりでございますので、今後とも人的体制の強化に努めていきたいと考えております。

委員長(魚住裕一郎君)

 時間ですが。

井上哲士君

 今、答弁がございましたけれども、今の問題も含めまして、難民行政の抜本的な改善という点での大臣の御決意を最後お聞きして、質問を終わります。

国務大臣(森山眞弓君)

 先ほど来お話が出ております難民問題に関する専門部会での検討結果に基づきまして、近く出入国管理政策懇談会から報告をいただくという予定になっておりますので、その報告をも踏まえ、難民に対する人権保障、国際的な動向、我が国としての受入れの在り方など様々な観点から検討いたしまして、新しい難民認定制度の構築に努めてまいりたいと考えております。


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