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2002 年 12 月 5 日

法務委員会
会社更生法で参考人質疑

  • 更生計画前の営業譲渡での労働組合の協議の必要性について民事再生法下での実態と関連して参考人にただす。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は三人の先生方、本当に貴重な御意見をありがとうございます。

 まず、古川参考人にお尋ねをいたします。

 衆議院での参考人の労働組合代表の方の陳述を見ておりますと、現行の会社更生法は裁判所が管財人を選任し厳格に手続が行われるので大変安心感が持てる、こうした会社更生法が持っていた良さ、管財人の下で厳格な手続がなされ、労働者が安心感を持って企業の再建に邁進する、こういうものを捨て去るようなことがあってはならないと、こういうことが言われております。

 今回、旧経営陣も管財人に残る道も開かれたわけでありますが、こういうことなどで従来、会社更生法が持っていたような良さが失われるという懸念についてまずお尋ねをいたします。

参考人(古川景一君)

 御指摘のありましたその従来の安心感がどこから出てくるのかと申しますと、やはり裁判所が再建の見込みがあるというお墨付きを与えた点だと思うんです。手続を開始するのに、要件として、再建の見込みがなければ裁判所は手続開始の決定ができません。ですから、労働者の側も、裁判所がそういうふうにお墨付きを与えた以上はみんなで頑張ってこの企業を何とかしようという意欲が出てくるわけです。

 それに対して、今度の法案では、再建の見込みがあろうとなかろうと、むしろそれがなくても手続が開始できる。これは従来にあった安心感を著しく揺るがせるというふうに考えております。

井上哲士君

 いわゆる旧経営陣が残れるという、その点ではどうでしょうか。

参考人(古川景一君)

 旧経営陣の残れるかどうかということについては、それはケース・バイ・ケースなのではないかというふうに思っております。

井上哲士君

 次に、逢見参考人にお尋ねをいたします。

 先ほど、更生計画認可前の営業譲渡について労働組合との協議を義務付けるべきだと、こういうお話がございました。法制審の第四回の会議だったと思うんですが、資料などを見ておりますと、そういう意見がゼンセン同盟から出ているとした上で事務局の方が、営業譲渡というのは営業秘密の漏えいの防止等のために限られた範囲の者の中で話が進められ、しかも資産の劣化を防ぐため迅速に行う必要がある。したがって、労働組合との協議を管財人に義務付けるとすると、その迅速性を阻害することとなり、更生計画認可前の営業譲渡を認めた趣旨を忘却させることになる。かつ、労働組合が営業譲渡の必要性やその内容の相当性について有益な意見を持っていることも少なくないと考えられるが、その意見を反映する手段としては裁判所の意見聴取で行うことで十分だと。したがって、このゼンセン同盟の意見は採用しないと、こういうペーパーが出ておりまして、そういう議論になったわけでありまして、是非、この場で御反論があろうかと思いますので、御意見、いかがでしょうか。

参考人(逢見直人君)

 民事再生申立てのケースでも再生計画前の営業譲渡で直接かかわった件が私も幾つかございます。

 確かにスピードアップというのは分かりますから、我々もそういうことを前提にした上で、営業譲渡でいきたいという場合は、その営業譲渡先の企業がどのような企業であるか、そこの経営体がしっかりしているか、どれだけの雇用が引き継いでもらえるのかと。その場合に、行った場合の労働条件はどうなるのかということを精査して、その方が良いと判断した場合は、申立て企業にずっと残っているよりも新しい経営者の下で職場を引き継いでもらう、そういう判断はしておりまして、法務省の反論にあるように、やっぱり迅速化を阻害するような労働組合の存在というふうに考えるのは余りにも一方的過ぎるんではないかと思います。むしろ、従業員の理解と納得を得た上で新しい営業譲渡先で頑張る、そのためにはモラールをアップして、そこで、新しいところで頑張るという気持ちを持って働くことが重要なんであって、そこに不安を抱いたまま行くということがあってはいけないと思うわけです。

 そういう意味でも労働組合の立場は非常に大きなものがありまして、それが今回のように意見聴取にとどめるというのでは、なかなかモラールアップをしてその譲渡先へ進む、そういうためのルール作りに関与することにはならないというふうに私は思います。

井上哲士君

 引き続いて、古川参考人、逢見参考人にお尋ねをいたしますが、逢見参考人の陳述の中で、民事再生法の中で労働組合の関与が増えたことは評価をすると言われましたが、今回、この会社更生法の中にも同じような手続を取り込むことによってよしとするというのが法務省の立場でありますが、実際上、民事再生でのいろんなケースに立ち会われて、この意見聴取というのが果たして本当に全面的に機能しているんだろうかという疑問があるわけでありまして、現実のケースの上で実際には聞きおく程度になっているというお話がありましたけれども、具体例をそれぞれお持ちであれば、お二人からお願いをいたします。

参考人(古川景一君)

 私が関与している例でいいますと、山田紡績という事件がございますが、それでいいますと、やはりもう裁判所は全く聞きおくだけでございます。しかも、民事再生を申立てする前からもう工場完全閉鎖を決めて、全員解雇を決めていて、言わば再生目的ではなく清算目的の事案であります。それで、そのような場合に果たして本当に民事──しかも、債権者には一〇〇%配当する、一般債権者。一〇〇%配当ですから必ず債権者は同意するわけです。そうすると、正に工場閉鎖のために使うというケースです。

 そういうような、だれも反対するわけがなく、民事再生法が通ってしまうわけですね。そのときに労働者だけが取り残され、意見聞きおくだけで済まされるというケースがございます。

参考人(逢見直人君)

 今、古川参考人から申し上げた山田紡もいわゆるゼンセン同盟の加盟のところでありまして、ここは全員解雇を一方的に通知してきたと。そのことに対して、私たちは裁判所に対しても意見書を文書で出しました。それから、債権者集会の場でも、再生計画案の採否をする前にそこで意見を述べて、このような再生計画では我々は認められない、反対であると意見を表明しましたけれども、しかし、債権者にとっては幾ら返ってくるかが関心事項であって、労働者は気の毒だ気の毒だと思うけれども、債権者にしてみれば幾ら返ってくるかで、一〇〇%返ってくるなら反対する理由がないということで、結局その再生計画案が認可されてしまったわけですね。結局、それはただ単に聞きおかれただけであって、何にも影響力を行使することができなかったということで、ほかにも幾つかの例がございますけれども、もちろんプロセスに関与して再生計画案に至るまでに労働組合も十分協議したケースもあります。

 そういう場合には、聞きおくだけではなくて、ちゃんとそのプロセスに関与できたケースもあるわけですけれども、そうではなくて、結論だけ押し付けられて、反対してもそのことは何にも結果に影響を与えなかったということもあります。特に、中小の場合はそういうケースが間々ございます。

井上哲士君

 今のに関して逢見参考人にお聞きしますが、そういうケースによって差ができますのは、結局、管財人の善意といいますか、それにほぼかかわっているということとお聞きしてよろしいでしょうか。

参考人(逢見直人君)

 はい。実務的には、会社更生法の場合、管財人といろんな形で協議をしていかないと、ゴーイングコンサーンとしての企業を回していくためには従業員が協力していかないと回っていかないわけですから、当然そういう協議の場はあるんです。しかし、それは法律に定められていることではなくて、あくまでも管財人の善意で、この企業を再建しようという熱意に燃えた管財人と、その管財人が信頼できるというふうに考えた従業員との関係でありまして、これはルールではないわけですね。

 そういう意味で、今後、会社更生法改正案が再生の見込みのないところにも広がっていくということを考えると、管財人の善意だけに期待する今のような法案で果たしていいのか、いろんな問題が生ずるのではないかということが懸念されます。

参考人(宗田親彦君)

 参考人から。

委員長(魚住裕一郎君)

 質疑者から指名いたします。

井上哲士君

 次に、宗田参考人にお尋ねをいたします。

 先ほどの陳述の中で、勝ち組の論理だけでは駄目だと、バランスが必要なんだということを言われました。それで、会社の再生ではなくて事業の再生だと言われるわけですが、旧経営陣は退陣をするけれども、そして、会社の名前や事業形態は変わっても働く皆さんなどがきちっと残っていけるというのが事業の再生とイメージをするところなんですが、どうも今回の法案でいいますと、旧経営陣は残る道が開かれる。そして、計画前の事業譲渡、営業譲渡などができまして、その下で実際にいろんな首切りなどが現に行われてきていることを見ますと、むしろ非常にバランスが崩れていくんじゃないか、今よりも悪くなるんじゃないか、そのバランスがと私は思うんですが、その点、御意見いかがでしょうか。

参考人(宗田親彦君)

 その点は私も同感なんです。

 実体法の改正が進んでいますが、そこでの倒産者の相手方の利益をどんどん強くして、倒産した者は負け組だから市場から撤退してそれでよろしいという論理がどうも強いのではないか。私は、管財人の背後には一般債権者もいるし、当の企業には企業の担い手である従業員もいるから、そこを十分に考えなければ駄目だ、そのバランスがどうしても必要なんだと。勝ち組だけで、それでは倒産企業というのはこの社会から要らないのかというような風潮がなしとしないと思う。

 ただしかし、この会社更生法でいけば、スポンサーの利益のために事業をペリッシュ、枯らせないために早くするんだというところから一定の早い営業譲渡その他があるかと思いますけれども、改正法で、先ほど失礼ながら手を挙げてしまいましたのは、従業員も労働債権者という優先債権者ですから、優先債権者であれば今度の改正法によって情報公開が大いに果たされますので、どうぞそれらを入手されて、それを基として協議に臨むべきだし、もう一つ、債権者委員会というのが法制度上できますから、その債権者委員会に労働債権者として委員会に加わられて、そこで御発言なさったり、私どもも現実には先ほど申しましたように何十年も前から法制にはなくても各種の担保権者の会同、それらの委員会というのを作って協議を重ねて運用しているというのが実情でございましたから、それがようやく法制化され、労働債権者の債権者としての情報公開、債権者委員会に加わること、これらによって随分情報も御意見もアップすることができるのではないかというふうに考えてございます。

井上哲士君

 終わります。


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