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2002 年 12 月 5 日

法務委員会
会社更生法

  • 社内預金の保護が後退することの周知徹底や保全のための指導を要求。
  • テナント保証金の保護のために法整備を要求。
  • 新潟鉄工の例をあげ、更生計画前の営業譲渡が労働者の権利切り捨てになることを批判。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 昨日、私も、野党共同の名古屋刑務所の調査に参加をしてまいりました。現地に行きますと様々な新たな疑問もわいてきたわけでありますが、所長が新任だという理由でどうもなかなか基本的なことのお答えがないということがございました。先ほど、千葉委員の方から様々な資料要求がなされましたけれども、やはりこの問題の解決を図っていくという点で必要な資料ばかりでありますので、是非、私の方からも強く要望をしておきます。

 その上で、まず会社更生法の改正にかかわりまして、社内預金の問題についてお聞きをいたします。

 現在、これ実施している事業所数、労働者数、それから預金の総額はどういうふうになっているでしょうか。厚生労働省からお願いします。

政府参考人(青木豊君)

 社内預金制度の実施状況でございますが、平成十四年の三月三十一日現在で、実施事業場数は二万五千三百六事業場ということであります。預金総額は一兆五千八百五十八億円ということでございまして、預金者数は百六万人ということになっております。

井上哲士君

 かつてから比べますと減ったとはいえ、かなりの規模であります。預けている人にとっては本当に生活設計上欠かすことができない大切なものであります。これを今回、共益債権として請求できる範囲を狭めるというのが法改正であります。

 ちょっと通告した質問に入る前に、この範囲を狭める理由について、衆議院の答弁では、銀行等に預金する場合と本質に変わりがないと、こういう御答弁がありました。この点は法制審でも随分議論になったようでして、議事録などを見ておりますと、労働者側委員から、少しそれは実態と違うんじゃないかという発言があります。ボーナスの時期には社内でアンケートが回ってきて、まずどのぐらいするのかと目盛りがあって、課長が一〇〇と書くと補佐は八〇、一般の人は五、六〇と書かざるを得ないようなそういう状況もあって、やはり普通の預金とは少し違うんじゃないかという意見でありました。私は、この方が随分実態を踏まえた発言ではないかと思うんですが。

 銀行等の預金と変わらないというのはやはり現実の実態とは違うと思うんですが、その点、局長、いかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 銀行に預ける場合と変わらないと申し上げましたのは、その債権の法的性質が変わらないという趣旨でございまして、これは、労働者が預けた、いわゆる法律的に言えば貸金請求権になると、そういう意味で変わらないということを申し上げたわけでございます。

 ただ、やはり同じ会社の中で労働者が会社に預けるという、それは銀行に預ける場合とは異なるからこそ、今回の改正法案におきましても共益債権として保護する範囲を退職金並みの範囲、減縮はしますが、相当の範囲を共益債権として、最優先の債権として保護しているわけでございます。

井上哲士君

 こういう時期にこういう切下げ、事実上の権利の切下げをやるのはいかがかという御意見も法制審ではあったようであります。

 いずれにしましても、全額が共益債権として請求できないということになりますと、この預金の保全の在り方というのが大変重要になってくると思います。賃金の支払に関する法律の中で、この社内預金の保全の在り方が定められていると思いますが、それはどういうふうになっているでしょうか。

政府参考人(青木豊君)

 社内預金の保全措置につきましては、賃金の支払の確保等に関する法律によりまして、事業主は毎年三月三十一日における受入金額について同日以降一年間を通ずる貯蓄金の保全措置を講じなければならないというふうにされております。具体的には、金融機関と保証契約を締結すること、あるいは信託会社と信託契約を締結すること、あるいは質権又は抵当権を設定すること、あるいは預金保全委員会を設置し、併せて貯蓄金管理勘定その他適当な措置を設けること、これらのうちのいずれかの措置を取らなければならないというふうにされております。

井上哲士君

 今、四つの措置が言われました。四番目のこの預金保全委員会を設置をするというやり方が大体八割を超えているというふうにお聞きをしております。会社が倒産をしたという場合は、この四番目の措置を取っている場合は、先ほどのように共益債権としては一部しか請求できないということになるわけですが、それ以外の方法、例えば信託をして労働者を受益者としておくと、こういうふうにした場合にはこれは基本的に全部返ってくると、こういう理解でいいわけですね。

政府参考人(房村精一君)

 はい。御指摘のように、会社と信託銀行の間で契約をいたしまして受益者を労働者とすると、こういう契約をいたしますと、信託財産の所有権が信託銀行に移りまして、会社が会社更生手続に入りましても労働者は信託財産からその社内預金相当額の返還を受けられると、こういうことになります。

井上哲士君

 ですから、今回、法改正によりまして労働者の権利が随分変わるわけでありますから、こういう保全の方法等についても様々な検討がされるべきことだと思うんですね。

 で、労働者にとって現状より不利になるという点については周知徹底をしていくという旨の答弁が一昨日もありましたけれども、だれがだれに対して、どのような方法でこの問題を周知徹底するということになっているでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 法務省といたしまして、今回の法改正の内容を国民一般に広く知ってもらうというために、パンフレットあるいは説明会、その他いろいろな方法を取りたいと思っております。特に、この社内預金の関係につきましては、使用者である会社、それから使用人である労働者、その双方にもその変更内容を十分知っていただく必要があろうかと思いますので、経済団体であるとか労働団体等にも協力を求めて、できる限り多くの方にこの内容を正確に理解していただくという努力をしたいと思っております。

井上哲士君

 主要な所管は厚生労働省ということになるかと思うんですが、それについては法務省としてどういうふうな分担といいましょうか、どういうふうにやっていくかというのは相談をされているんでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 これは従来から関係する省庁には必要な協力を求め、また私どもから協力をするということで行っておりますので、今回の改正内容につきましても十分、厚生労働省と協議をして、協力をして周知をしていきたいと考えております。

井上哲士君

 厚生労働省にもお聞きをいたします。

 直接的には所管をされているということもあります。それから、先ほど保全の方法についてもお聞きをしたわけですが、これも法制審の議事録などを見ておりますと、大規模な企業ではこの預金の管理も非常にきちんと分別管理がされていて取戻し権的更生で余り問題が生じていないけれども、中小零細なところではいろんなことがあるというようなことも含めて言われております。信託等をしているところも大企業が多いやに聞いておるわけですが、こういう制度が変わるということに伴いまして、例えば中小零細のところなどにも社内預金についてはこういう信託にするであるとか、そういうようなことも含めて、指導をしていくことも含め周知徹底をしていくことが必要かと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

政府参考人(青木豊君)

 厚生労働省といたしましても、今回のこの法改正に伴います会社更生手続における社内預金の取扱いというものを十分労働者自身が理解をして、その負うべきリスクを納得した上で預入が続けられるというようなことを周知していきたいというふうに思っております。そういうことで、法務省とも協力をしてまいりたいというふうに思っております。

井上哲士君

 保全の方法についてそういう信託などを例えば中小零細などにも進めていくという、その点ではどうでしょうか。

政府参考人(青木豊君)

 先ほど申し上げました四つの保全方式につきましては、そのいずれかを事業主の方は措置を講じていただければいいということにいたしております。それぞれいろいろな機能を有しておりますし、そういう意味で内容をよく労働者の方々にも、あるいはその事業主、中小事業主も含めましての方々にその内容をよく周知していただくように、理解していただくように周知をしていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 現実は、先ほども少し紹介しましたように、会社の中では半ば強制的な雰囲気ということもあったりするわけでありまして、結果として労働者にいろんなやっぱり被害が来ないという方向で周知徹底をお願いをしたいと思います。

 続いて、いわゆるテナント保証金の問題についてお尋ねをいたします。

 長崎屋とかマイカルの倒産に伴いましてテナント保証金の問題というのが大変浮上しております。マイカルでいいますと店舗数が四千七百テナントがあります。そのうち四百六十九が閉鎖ということになりますが、一店舗当たり数百万、一千万以上の保証金を払っている、保証金、敷金を払っているところもありまして、四千七百店舗全部でいいますと総額は四百億になると言われております。預けてあるだけだから返ってくるんだと思っておりますと、倒産でこれが凍結をされる、最終的にはほとんど返ってこないと。特に、閉鎖をされる店舗でいいますと一方的に追い出される。別の場所で新たな店を開こうと思っても保証金は返ってこないので資金がなくてできないと、にっちもさっちもいかないという非常に深刻な事態が今、全国で広がっております。

 この問題に関して経済産業省で研究会を立ち上げて議論をされているかと思いますが、この問題の中心点といいましょうか、どういう観点からこの研究会が立ち上げられているのか、まずその点についてお願いをいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

 お答え申し上げます。

 委員御指摘のいわゆるテナント保証金でございますけれども、テナントの方々が多額かつ長期間の保証金を支払うという商慣行なんでございますけれども、そもそもそういうことでテナントの負担が重い、したがってそのテナントの方々の財務体質の悪化の要因になるということがあるわけですし、また昨今の経済情勢でいいますと流通業の破綻リスクが高くなっているという状況下では、ディベロッパーである流通業が破綻した場合に、今も御指摘のとおり保証金が返還されないというような事態につながるというような点がございまして、改善の余地があるのではないかと、そういう認識を持っておるわけでございます。

 そういう認識から、御指摘がありましたとおり、本年七月から今後のテナント保証金の在り方につきまして研究会を設置いたしまして、御審議をいただいておるところでございまして、今まで四回御議論をいただいておりますけれども、できれば契約期間が長い、中途解約の手続が存在しない、そういった問題について一定の取りまとめがいただければというふうに考えておるところでございます。

井上哲士君

 経済情勢の大きな変化の中で生まれた新たな問題かと思います。午前中の参考人質疑の中でも、なかなかこの点については通説というものがなくて新しい問題だということを組合の代表の方も言われておりました。そういう点では、現行制度がこうだということに単に当てはめるだけでないいろんな研究が要るかと思うんです。

 この研究会では、解決方向としてはどの辺が議論になっていて、中間的なまとめなどはいつごろをめどに出されようとしているんでしょうか。

政府参考人(小川秀樹君)

 研究会といたしましては、今後のテナント保証金の在り方ということで、一つの方向性といたしましては業界のモデル契約を作成いたしまして、契約内容が非常に不明確であるという点も一つの問題でございますので、例えば中途で解約する場合の規定とか解約条件、また契約期間が非常に長いというのをもうちょっと短い契約期間になるようにならないかとか、低い保証金額にならないかとか、また法律的な性格付けとしても、通常の金銭貸借ということになっておるわけですけれども、敷金的な性格を持つ保証金ではないかとか、そういった辺りをモデル契約として明確化できないかというようなのが一つの方向性として議論されておるというふうに認識しております。

井上哲士君

 できれば年明けにも中間報告をというふうにお聞きしておりますが、そういうことでありますね。

 今もありましたように、法的な性格付けも含めたいろんな議論がされているわけですので、これ年明けにもまとまるということでありますから、是非、法務省としても様々な法整備等の検討も要るかと思うんですけれども、その点、大臣から御所見をお願いいたします。

国務大臣(森山眞弓君)

 御指摘のテナント保証金の保護の方策につきましては、現在、今お話がありましたように、経済産業省において、いろいろな問題点の分析と実務の在り方などを含む広い観点から検討が行われているわけでございます。

 そこで、経済産業省における検討の結果や保証金の慣行の推移を踏まえまして、法務省としてもどのような法的問題があるかを検討してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 経済産業省、ありがとうございました。

 次に、営業譲渡の、いわゆる計画外の営業譲渡の問題でお尋ねをいたします。

 今回、更生計画外のこれが導入されるわけですが、これは現行法ではできないということでこういう改正が行われると、こういう理解でいいんでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 現行の会社更生法では更生計画の任意的記載事項に営業譲渡が含まれておりますので、更生計画によって営業譲渡ができることは明らかでございます。

 ただ逆に、では更生計画によらない営業譲渡ができるかという点につきましては、法律上何らの規定も存在しないために見解が分かれているところでございます。

 これを否定する見解といたしましては、まず明文に記載がないということと、営業譲渡が非常に重要な行為であって債権者等の多数意思によって成立する更生計画によらなければならないはずだと、こういう考え方でございます。

 これに対しまして、計画によらない営業譲渡を認める考え方といたしましては、裁判所の許可によって行うことができる会社財産の処分、この財産の中には一体としての営業も含まれると、こういうことで、裁判所の許可によって計画外においても営業譲渡をすることができると、こういう考え方がございます。

 今回の改正に当たりましては、こういう見解が対立しているということを踏まえまして、解釈上の対立を明文で解決するということでこの計画外の営業譲渡を認めたわけでございます。

井上哲士君

 新潟鉄工などを見ますと、財産処分ということで、実際そういう営業譲渡が行われているということを承知をしているわけですが、今回それをできるということで明文化をしたということは、それなりの目的があったということかと思うんですが、民事再生法などでも活用されているようでありますが、今朝の参考人質疑などでは、要するにもうかる部分だけを切り売りするものだと、こういう指摘もあったわけですが、目的としてはそういうことだと考えてよろしいわけでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 営業譲渡というのは、企業が倒産した場合の企業再建の方法としては広く取られているところでございまして、譲渡先において事業の再建を図りながら、倒産した企業の債権者等に対する弁済率を向上させると、こういうことが期待されるわけでございます。

 ただ逆に、必要性や相当性を欠く営業譲渡がされますと、結果的に事業が継続されず、また債権者等の利益も害されるということにもなりかねません。そういうことから、原則として営業譲渡については更生計画において更生債権者等の多数の意思に従って決めると、こういうことにしているわけでございます。

 ただ、営業というのは、会社更生の申立てのような言わば事実上の倒産ということが社会に広がりますと急速にその内容が劣化していく、お客が逃げてしまう、あるいは中で働いている人の中でも言わば非常に優秀な人が先を争って逃げてしまうと、こういうようなことが起こるという指摘がされております。そういうことから、営業譲渡については、時間を掛けると譲渡すべき営業そのものが非常に劣化してしまって、事業の再建ができなくなる場合があると、こういう指摘を受けていたわけでございます。

 そういうことから、今回、やはり早期に営業譲渡を行う必要があるだろうということから計画外の営業譲渡を認めたわけでございますが、先ほど申し上げたように、営業譲渡が、ある意味で事業の更生の骨格を決めてしまうというような重要なものでありますから、これを裁判所の許可にかからしめる、かつ裁判所は、その許可をする場合には、知り得ている更生債権者、更生担保権者、それから更生会社の使用人の過半数で組織する労働組合等の意見を聴取しなければならないと、こういう手続的な定めをした上で営業譲渡を認めるということにしたものでございます。

井上哲士君

 民事再生法で営業譲渡に労組の意見聴取ということで入れて歯止めを掛けたと言われたわけですが、現実には、例えば衆議院でも我が党は質問しておりますが、日立精機などの場合は事実上すべてを営業譲渡したわけですけれども、労働者が全員解雇されて、再雇用されたのは半分、希望者でいっても三分の二。で、裁判所は労働組合に意見聴取をして、その翌日にこれを許可をしておりまして、実際上は形式的なものにしかなっておりません。ですから、歯止めになっていないというのが実態でありまして、いろんな形での労働者の権利の引下げが行われている。

 今回予定されています大規模会社で営業譲渡が使われた例になりますと、いわゆる財産処分としてやっている新潟鉄工の例でありますが、ここもこの一月に更生計画案が出ておりますが、三年後をめどに会社清算、全員解雇ということでありますが、それに先立って様々な営業譲渡が行われております。中核の原動機部門は石川島播磨、その他の部分は十二社、計十三社に営業譲渡ということになっておりますが、この一番中核と言われる石川島播磨に丸ごと引き継がれる原動機部門でいいますと、仕事量は今はもう倒産時まで回復をいたしまして、今後倍加するんじゃないかというぐらい非常に好調なわけですね。しかし、この部分でも労働者が千二百のところが千に減らされるだろうということが言われておりまして、ですから営業譲渡に伴って非常に好調で一層発展すると思われる部分であってもこういう首切りが行われる、非常に深刻な事態かと思うんですね。

 こういう今の現状、実態については大臣はどのようにお考えでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 御指摘の具体的な事例については余り詳しく存じませんものですからコメントを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論といたしましては、会社更生手続中に行われた営業譲渡の際に一部の労働者の雇用関係が譲受け会社に承継されないこともあるというふうに承知しております。そして、営業譲渡の際に雇用関係が継承されるか否かの問題は、会社更生手続に限らない営業譲渡の一般的な問題であると認識しております。

 営業譲渡がされた場合に雇用関係や労働条件が法的にどのような影響を受けるかはいろいろ見解が分かれるところでございますが、いずれの見解に立ちましても、営業譲渡に伴い承継される雇用関係の対象から合理的な理由もなく特定の労働者を排除するということは原則として許されないということは申すまでもございません。

井上哲士君

 問題は、今は中核的事業でもこういう事態だということを申し上げましたが、計画外で譲渡される部分は非常にもっと大変でありまして、新潟鉄工の場合、もう営業と設計図と工具だけが売り払われる、人は付いていかないと、こういうふうな部分もあると聞いております。ここでも労働条件などの提示がないまま面接日や移行日がどんどん進んでいるということが、全員で組織している労働組合があるにもかかわらず、起こっているということも問題になっているわけです。

 民事再生法における労働者からの意見聴取というのが非常に形式的になっているということは先ほども指摘をいたしましたし、今朝の参考人質疑の中でも、例えば山田というところで、全員解雇で、そして債権者に一〇〇%返すと、これが通ってしまったが、まともな意見聴取はないと、こういうことも言われておりました。

 実態としてはこういう形で進められているわけですから、やはり労働組合が事実上関与できないで進むというようなことが果たして今回のこの更生法の改正によって歯止めが掛かるのかどうか大変疑問なんですけれども、この点いかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 営業譲渡に際しまして裁判所に労働組合からの意見聴取を義務付けましたのは、やはり営業譲渡等、営業譲渡に限りませんが、会社更生を成功させるためには労働者あるいは労働組合の協力が不可欠だ、また企業の内部の事情に明るい労働組合がいろいろな情報を持っていると、こういうことから営業譲渡の計画外での許可を決するに当たっては労働組合等からの意見を聴取すべきであるとしたものでございますので、裁判所におかれてはその趣旨を十分踏まえて、労働組合からの意見聴取を行い、それを尊重しつつ許可の決定を行っていただけるものと、こう考えております。

井上哲士君

 先ほど紹介した山田紡績の場合も、結局、裁判所に対しても直接の意見を送っているけれども、結局行われてしまったということでありますし、日立精機の場合もさっきも言ったような状況のわけであります。ですから、今日の午前中の参考人にもありましたけれども、要するに聞きおくということではなくて、やはり協議ということを義務付けるということによって、言わば管財人の善意に頼るんではなくて、制度として確立をしてほしいんだと。私は、これは非常に真っ当な思いだと思うんですね。

 これも法制審の議論などを見ておりますと、要するに労組との協議を管財人に義務付けると迅速性が害される、こういうことで言われているわけでありますが、迅速性の名の下に労働者の権利が置き去りにされるということはあってはならないと思うんですね。

 改めて協議を義務付けにすべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 管財人に労働組合との協議を義務付けるかどうかという点につきましては、営業の譲渡ということになりますと、やはり秘密の保持というような観点からどうしても限定された範囲の者で交渉を行うということが必要になる場合もございますし、また、先ほど申し上げたように、営業の劣化が非常に速いということから迅速性も要求されるということになります。

 一方、逆に、営業譲渡が適切な時期に行われずに企業の再建が難しくなりますと、これは労働者にとっても結局は雇用の場が確保できないということにもなりますので、やはり管財人に適時適切に営業譲渡等を行っていただくということのためには協議を一律に義務付けるということは適当ではないだろうと、こう考えております。

 ただ、具体的な事案に当たって組合等との協議あるいは意見交換等を活用して円滑な営業譲渡を目指すということは実務上されているようでございますので、そこはそういう実務の工夫を期待したいという具合に考えております。

委員長(魚住裕一郎君)

 井上君、時間ですから。

井上哲士君

 はい。

 実務上されていないからこそ労働組合からもそういう意見が出ているわけでありますから、今日の厳しい経済状態の下では、やはりこういう迅速の名の下で労働者の権利が切り下げられるようなことがあってはならないということを指摘をして、質問を終わります。


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