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2002 年 12 月 10 日

法務委員会
名古屋刑務所問題での集中審議

  • 名古屋刑務所の刑務官による集団暴行事件で、最初の事件後、本省が現地調査すらしていなかったことを明らかにし対応の遅れを批判。
  • 国連で禁止している「枷(かせ)」にあたるとして革手錠の廃止を要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私も、この問題で四日の野党による名古屋刑務所の調査に参加をしてまいりました。二日付けで着任したばかりの所長さんなど幹部職員でありまして、まだ来たばかりで分からない、特別調査チームで調査中、この連発でありまして、全体としてこの真相を本当に解明していこう、こういう態度にほど遠い印象を私は持ちました。

 今、この問題を機会にして、こうした一連の矯正施設の実態を明らかにして過去の問題をただす、国際水準に合わせた矯正施設にすることが求められていると思います。

 そこで、まず大臣にお聞きをいたします。

 この重大な事件が保護房で二回続いたわけであります。だれでも思うのは、なぜ五月の死亡事件の後に適切な調査、対応がされなかったのかと、もしそうであればこの九月の事件は避けられたのではないかと、こういう疑問であります。

 五月の事件については大臣にまで報告がされていたのか、そして法務省としてはどういう対応をしたのか、まず御答弁お願いします。

国務大臣(森山眞弓君)

 お尋ねの事件につきましては、発生当日の本年五月二十七日、名古屋刑務所長から矯正局に報告がなされまして、その数日後、矯正局から概要について私も報告を受けております。

 当時の本省の対応につきましては、事件発生当日、名古屋刑務所長から名古屋地方検察庁に通報したことを踏まえまして、矯正局から名古屋刑務所長に対し事実関係を調査して報告するよう指示した上、名古屋地方検察庁の捜査結果をも踏まえて必要に応じて所要の措置を講じることとしたものでございます。

井上哲士君

 報告を求めたということでありますが、果たして本庁としてしかるべき対応がされたのか、私は大変疑問なんです。

 今朝の議論でも、名古屋刑務所における革手錠の使用状況がとりわけ他の施設と比べて非常に多いということも明らかにされておりますが、この名古屋における使用状況の異常さというのが明らかになったのはいつの時点でしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 名古屋刑務所における革手錠の使用件数が本年に入って著しく急増しているわけでございますけれども、この事実が明らかになりましたのは、本年九月の致傷事件が発生した後、当局におきまして新たに調査を行った結果であります。

 なお、敷衍いたしますと、その直前の監査等でございますけれども、平成十三年十一月に本省が巡閲を行っております。その際は、平成十二年の十月から十三年九月までの一年間を対象年度といたしまして革手錠の使用件数等を見ているわけでございますけれども、その結果は特に注目すべき異常さというものは見当たらなかったと、こういうことでございます。

井上哲士君

 なぜ五月の事件が起きた後にこの問題が明らかにならなかったのかと、これが疑問なわけですね。

 現地でも確かめましたけれども、革手錠を使用しますと必ず記録が残るわけです。この三年間の保護房での収容者の死亡事案は報告されたように五件でありますが、そのうち二件が名古屋、しかもこの五件のうち保護房に収容して革手錠を使用していたというのは二人だけで、いずれも名古屋なわけですね。ですから、明らかに異常な事態が起きているというふうに認識をするのが当然だと思うんです。

 そうなれば、現地に行って、どういうふうに革手錠が使用されていたのかと、その届けの書類などを直接調べるというのが当然だと思うんですが、そういう現地の調査というのは法務省としてやられたんでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 当時、本省自身が現地に赴いて調査をしたという報告は聞いておりません。

 当時の状況についてでありますが、お尋ねの事件につきまして名古屋地方検察庁に通報いたしました結果、同地検において捜査が開始されていたという認識であり、その捜査結果を待って所要の措置を講ずる予定にしていたというように聞いております。

井上哲士君

 私は、本当に事態の重大さから見ますと、要するに報告を待っていたということでありますから、余りにも対応が甘いと言わざるを得ないと思うんですね。

 保護房における死亡という事件が起きた、そのことに対する認識がどうだったんだろうかと。やはり、こういう事態が起きているということは、何らかの問題が起きているというシグナルとして特別の対応を取るべきだったと思うんです。

 過去十年間の保護房における死亡数、死亡の数をこの間、野党として要求しているわけでありますが、三年分しか保存されていないということでいまだに出てまいりません。ですから、保護房で死亡したという、こういう事案が全く普通の一般的な数と同じように処理をされていると。この保護房での死亡ということの問題の重さへの認識は私は甚だ低いと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 このたび、九月の致傷事件が発生いたしまして、矯正当局といたしましては、その前の五月のこの致死事件と併せてこれを公表いたしましたし、当然、九月の致傷事件についても検察に通報しているわけでございますけれども、これはあくまで行政上の通報であって、例えば犯罪の嫌疑があると私どもが認識していれば当然これは刑事告発の格好になっているわけでございますので、まずその点を御理解賜りたいと思うわけでございます。

 そうすると、この種行刑施設の中におきまして変死や変死の疑いのある状況がある場合はもとより、私の承知している限りは、ほとんどすべての場合において一応、検察庁に対して通報しているわけでございます。検察庁はその通報内容あるいはその他に基づいて以下、捜査に入られる場合もあろうかと思いますけれども、要するに従前のこの種事案の取扱いの矯正側の対応といたしましては、とにかく変死であろうが何であろうが、発生した場合はまず検察庁の方に通報する、その後、検察庁の方にしかるべく捜査するなりなんなりの御判断をゆだねると、こういう形で運用してきたのが実情ではないかと、かように理解している次第でございます。

井上哲士君

 刑事上の問題があれば検察がやるのは当然でありますが、要するにこういう事故が起きているというところには行政上の問題がある、そういう問題として直ちに対処すべきではないのかということを言っているわけなんです。ですから、今回の九月の問題も大変甘いと私は思うんですね。

 今朝の、午前中の審議の中で、保護房の収容と革手錠の併用という問題が御答弁がありました。今年の九月末まででいうと、府中が二百六十八件中七件、大阪が三百七件中二十八件、一割に満たないと、名古屋だけ百九十九件中百四十八件だったと、こういう御答弁だったんですね。

 実に名古屋は四分の三、保護房と革手錠が併用されているわけです。ですから、この数を見た瞬間に、名古屋では収容した人に必要のないような、言わば拷問的、懲らしめ的に革手錠が使われていたというのは素人が見てもすぐ分かるわけですね。

 ところが、十一月の二十日の時点での衆議院の委員会でも、局長の御答弁は、今回の革手錠の使用の理由が暴行等のおそれがあったと報告を受けているという答弁だったんですね。しかし、この数を見れば、暴行等のおそれがなくても名古屋で使っていたんじゃないかと当然思ってしかるべきだと思うんですが、そのまま言わば追認する形で御報告がされて、二十七日の委員会では訂正をされたわけですが、やはり九月の事件後の調査、対応も大変私は甘いと思うんですが、その点の認識、いかがでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 当事者でございますので、甘いとか甘くないとかと私の方から申し上げるのもいかがかと思いますけれども、いずれにいたしましても九月の致傷事件が発生した段階で私どもは調査に入りまして、今、委員御指摘の名古屋における十四年に入ってからの急増状況、保護房に、被収容者に対する革手錠の併用数の多さというものを知りまして、正直言いまして非常に驚いたわけでございます。今朝ほどからいろいろ御答弁申し上げておりますように、私どもとしては、十一年に通達も発出しておりますし、毎年その前の一年間をおおむね基準監査等の対象期間として見てきておりまして、先ほど申しましたように、十三年の十月の時点ではさほど異常を実は感じていなかったわけです。

 今回入りまして、何だと。十三年の十月以降どうしてこんなに数が増えているのかなというのが実は私どもの衝撃的な印象でございまして、それ以降私どもは、本省におきまして当然、調査も開始いたしましたし、大臣にも逐一御報告をいたしました。その結果、大臣から非常に管理体制をも含めて徹底的に調べろと、こういう厳命をいただきましたので、官房審議官を長といたしまして特別の調査チームを編成して、私どもも現地に参りますし、当然のことながら、私どもの下に地方支分部局として名古屋矯正管区が監督官庁として名古屋刑務所の上にございますので、この名古屋矯正管区、もちろん名古屋刑務所自体と、こういったところで、正直申し上げて現在まで可能な限りの捜査をおおむね休日返上で継続してきたと、こういう状況にございます。

井上哲士君

 平成十三年にやったということでありますが、これも午前中の答弁にありましたように、平成十三年の十二月の死亡事件にも今問題になっている元副看守長の前田がかかわっていたということも明らかになっているわけでありまして、その時点からの調査などが一体どうだったのかということが今問われているんだと思うんです。

 その上で聞きますが、この三年間、刑務所内での死亡者数というのは全国でどういうふうになっていますか。

政府参考人(中井憲治君)

 行刑施設内における死亡者数でございますが、平成十一年が百六十五人、平成十二年が百八十八人、平成十三年が百九十五人と、かように報告を聞いております。

井上哲士君

 このうち、先ほどありましたけれども、検察に通報して検視を依頼をしたというものの数、その理由、それはいかがでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 具体的に統計上の数字を取っておりませんので、詳細はちょっと申し上げかねるわけでありますが、今お話しした数字のほとんどすべてにつきまして検察庁に通報しているという具合に承知しております。もとより、これは法令上定めがあるわけでございますけれども、変死又は変死の疑いがある場合には、これはもちろん検察庁に通報、これをいたしますし、これに該当しない場合でありましても、行刑施設やこれを監督するところの矯正管区、当然これは検察の捜査とは別個に、先ほど委員御指摘のありましたように行政的な見地からその内容について調査いたすわけです。ヒアリングを行ったり、報告を求めたりということになろうかと思いますけれども、それの過程でいわゆる、どういう表現を申したら適当でしょうか、いわゆる事件性と申しましょうか、そういった事件性というのが疑われるような場合は必ずこれは検察庁に通報しているものと承知しております。

 また、いわゆる死亡案件以外の場合でも、検察庁にはよく通報しておりますわけでございまして、例えば未決の被収容者がけがなどをしたというふうなことになりますと、これ公判等に影響を及ぼすことがございますので、そのような懸念もありますので、そういった場合には死亡案件でなくても検察庁に通報するという形でやっておる次第でございます。

井上哲士君

 ほとんどすべてということでありましたが、やはり数がきちっと出ないというのは、死亡事件に対する対応がどうもおかしいんじゃないかなと私は思うんですね。

 この間の行刑施設における刑務官による被収容者に対する暴行等を理由にする処分の件数、これは過去三年間でどういうふうになっているでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 行刑施設におきまして平成十一年から同十三年までに発生した被収容者に対する暴行事案、これに係る懲戒件数は二十件であるという具合に報告を受けております。

井上哲士君

 そのうち、立件された事件の数とその内容はどういうふうになっているでしょうか。刑事局からお願いします。

政府参考人(樋渡利秋君)

 刑務官によります被収容者に対する暴行事案につきまして網羅的に把握しているわけではございませんが、把握している範囲で申し上げますと、三重刑務所刑務官が、平成十一年八月から同十二年三月に掛けまして受刑者七名に対し九回にわたり足げにしたり殴打するなどの暴行を加えた事案につきまして、津地方検察庁におきまして、同十二年九月十八日同刑務官を特別公務員暴行陵虐罪により公判請求した事例があるものと承知しております。

井上哲士君

 これは平成十二年に津地方裁判所において判決が出まして確定をしております。ですから、今ありましたように、九回にわたり受刑者七名に暴行ということでありまして、大臣が、過去に例がない事態が発生をし痛恨の極みと会見でも述べられておりますが、やはり常態化していたんじゃないかという声が、いろんな指摘がされております。今朝の新聞報道でも、昨日、福井の刑務所で懲罰は違法だという受刑者に暴行したことに対して国に賠償命令が出る地裁の判決も出ておりますし、この間の報道でも、岡山、神戸、高松等々で告訴なり救済の申立てがされているという状況があります。こういう一連のことを見ますと、九九年の通達の趣旨から大きく外れた実態が全国の刑務所でもまだあるんではないかと思いますし、先ほどもありましたように、名古屋の場合も虚偽の報告がされていたという事態であります。

 ですから、矯正局の特別調査チーム任せにするのではなくて、やはり私は大臣の直接の指揮で全国の刑務所を改めて調査をするべきではないかと、こう思うわけでありますが、この点での大臣の御見解をお願いをいたします。

国務大臣(森山眞弓君)

 御指摘の矯正局の特別調査チームによる調査につきましては、検察当局による捜査が行われておりますのと、そして人権擁護局における調査もやっております。私の指示の下、それらと並行いたしまして、官房審議官を長といたしまして、名古屋刑務所だけではなく全国行刑施設における革手錠使用案件について、使用要件、使用方法、さらには施設長による指揮監督等が適切になされていたかなど、行刑の専門的な見地から調査しているものでございます。

 今後、更に徹底した捜査、調査を尽くしまして、それを踏まえた上、将来の再発防止に向けた抜本的対策の検討、立案に向けて法務省全体として取り組んでいきたいと考えております。

井上哲士君

 報告を求めるだけのような調査ではなくて、現地まで行ってきちっとやっぱり書類を見て、現場を見ての対応を是非強く求めておきたいと思います。

 さて、革手錠の使用について新しい通達が出されているわけでありますが、録画可能な設備においてはこの使用開始時等に録音をする、録画をするということでありますが、全国の保護房のうち固定したビデオカメラが設置されているのはどれだけの割合になるんでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 現在、すべての保護房に固定的と申しますか、ビデオ録画可能な監視用カメラが整備されている状況にはございません。相当数のところで整備されていることはあるわけですけれども、全体に整備されているかというお問い掛けに対しては、残念ながら現時点でそのような状況になっておりません。

 さはさりながら、私どもの指針、通達では、それをも踏まえまして、そういった監視用カメラが整備されていないというような場合には、例えば代替措置として写真撮影をしなさいというようなことで取りあえずの緊急措置の内容として現在、通達を発出しているところであります。

 もとより、これはあくまで前回の九月致傷事件の起訴を受けた緊急的な措置ということでございまして、抜本的な対策ということは、これら緊急措置の内容が果たしてそのとおりでいいのかどうか、内容を変えるとしたらどうすればいいのか、そういったことを含めて更にもう一度、私どもの特別調査チーム等を中心に検討いたしまして、更により良い方法があればそういった方向に改めていきたいと、かように考えております。

井上哲士君

 ビデオと写真では随分違うわけなので、例えば相当数に固定が設置されているということになりますと、携帯用のビデオなどで一〇〇%カバーをするというふうに早急にすべきだと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 もとより、携帯用ビデオが別途ある施設でいわゆる固定的なカメラがないような場合には、携帯的なビデオ機器を使用することとしております。

井上哲士君

 これはそう大きな費用が掛かることではありませんので、直ちに実施をしていただきたいと思います。

 先ほども革手錠のことがありました。私もこの間の委員会後にしてみる機会があったわけですが、非常に非人間的なものでありますし、締めること自体、それ自体が拷問的な思いがするものであります。国連からも批判をされているものでありまして、これは廃止をすべきだと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 監獄法令もそうでございますけれども、私どもの革手錠についても非常に歴史が長うございまして、昭和四年に仕様と申しますか、製式、製造の数式の式と書くわけでありますが、製式が定められておりまして、これまで七十年以上使われてきたという実績あるものでございます。

 委員の御意見も含めまして、この革手錠使用を継続すべきかどうかについて様々な御意見があることは承知しておりますし、私どもも今回の事件の重大性ということは十分認識しておりますので、それらの御意見については十分耳を傾けていきたいと、かように考えております。

 さはさりながら、問題は、金属手錠しか現行法の手錠といいますか、戒具で主たるものとしては残らなくなるわけでございまして、じゃ、その金属手錠と、あとは捕縄という縄のようなものがございますけれども、いわゆる手錠としては金属手錠だけで、じゃ、すべて賄えるのかといったようなことも、これは実は、現在の特別調査チームで今回の事件の発生も踏まえて再度、全国的な調査を実は実施しているところであります。その結果、もう現在取りまとめているところでございますけれども、言わば現場の感覚と申しますか、現場の声を聞きますと、やはり非常に限られた局面ではあると思うんですが、革手錠のような戒具が、これが必要なんだという意見もこれも多くあるというのは、これは事実でございます。

 矯正当局といたしましても、そういった現場の声も踏まえまして、また委員の御指摘のような御意見をも拝聴しながらいろいろ考えていかなきゃならない。取りあえずは、先日来申しましたように、新たな通達を発出いたしまして、現在、緊急的な措置として、再発防止策として運用している次第なわけでございます。

 今後のことでございますけれども、先ほど来大臣からも御答弁がありましたように、私どもは抜本的な再発防止策というのを実は考えるべきであろうという認識でおります。現在、矯正局の特別調査チーム等を中心に革手錠の製式、それを改正することの要否を含めまして、実は事務的に検討作業を継続している、こういう状況でございますので、御理解いただければと思います。

井上哲士君

 やはり、国際的な水準、この声に堪え得る検討をお願いをしたいと思うんです。

 国連規約人権委員会は、九八年に日本の刑務所での処遇に対して六項目に及ぶ勧告をしております。その後に、二〇〇〇年十一月に矯正保護審議会の長文の答申、「二十一世紀における矯正運営及び更生保護の在り方について」というのが出ております。私、読みましたけれども、この中に項目として人権保障とか人権教育とか、刑務官への、こういう概念がもう全く出てこないのは大変残念であり、奇異に思ったわけであります。

 国際的にいろんな批判がされている中の一つに、例えばいわゆる出役のたびの検身というのがあるわけですね。素っ裸になって両手のひらの裏と足の裏を見せて大口を開けて舌を見せるという、いわゆるかんかん踊りというふうに言われているものでありますが、これも余りにも屈辱的な人間の尊厳を傷付けるものだという批判も強いわけです。

 こういうものも含めて見直すべきだと思うんですが、この点いかがでしょうか。

政府参考人(中井憲治君)

 二点のお尋ねと伺ってよろしいでしょうか。

 まず、最初にお尋ねに係る答申についてでございますけれども、これは矯正保護審議会と申しますのは法務大臣の諮問機関でございまして、その諮問機関が提言された内容につきまして矯正当局としてコメントするというのは、これはいかがと、こう思われるわけでございますけれども、私の認識といたしましては、確かに人権保障あるいは人権教育といった項目立てというものはございませんけれども、被収容者の人権に関する事項を基本的な法律に明確に定めておくことは矯正に対する信頼をかち取るための条件であると明示する等々、記載内容その自体を読ませていただきますと、人権保障を実現していくと、あるいは人権教育を充実していくということを前提にされているものと私どもは受け止めている次第でございまして、認識の遅れがあるという具合には私どもは受け止めていないところでございます。

 第二点の検身関係についてでございますけれども、お尋ねのような御意見があることは十分承知しているわけでございますけれども、刑務所等の行刑施設、これは私どものいわゆる保安事故と申す内容をいろいろごらんいただければお分かりになると思いますけれども、要するに不正な物品やあるいは逃走のための用具といったものを持ち出したりあるいは持ち込みを防止するというようなことがございます。

 例えば、先般、これも国会の場で非常におしかりを受けたわけでありますけれども、例えば部屋の中にあった金属を利用してそれをとがらせて、それを使って捕縄を切って逃げるというような事案も実は発生しているような状況でございまして、こういった逃走用具等の持ち出しや持ち込みを防止するために、被収容者が施設に収容されたときはもちろんでございますけれども、出廷や護送なんかのために施設から出入りする場合、あるいはそういったいろいろな原材料と申しますか、そういう物がいろいろ置いてあるところの工場へ行く、それから工場から居房へ帰るというときに、これはやはり着衣させた状態でございまして実際に触ってみて検査をやりますし、あるいは必要に応じては被収容者に着衣を脱がせて身体やあるいは衣類等の検査を実施する必要がこれはあることも、これまた御理解いただけるところではないかと思うわけであります。

 問題はその手段、方法でありまして、私どもといたしましては、それが被収容者の羞恥心と申しますか、こういった人権尊重という観点から不必要に他人の目に触れないような場所で行うとか、そういった配慮を行っているところでございます。

 若干答弁が長くなって恐縮でありますけれども、これは実は保安の問題なので是非とも御理解賜りたいわけでありますけれども、例えば我々がやっておりますいわゆる検身でございますけれども、これによりまして、覚せい剤等を施設内、施設収容時に持ち込もうとした例を発見したこともございます。また、工場と居房との間の往復の際にいろいろな不正な物品を持ち出そうとするのも発見したこともございますし、正直申し上げまして、このような事案は後を絶たないのが現状でございます。

 施設の規律の維持、安全確保といった観点のためには、やはりどうしても着衣を脱がせた上での身体及び着衣それ自体の徹底した検査というのは必要な場合があると私どもは考えておりますし、現場もそのような声でございます。何とぞ御理解いただきたいと思います。

委員長(魚住裕一郎君)

 時間が来ていますが。

井上哲士君

 国際的な人権水準に堪え得る改善をお願いをしたいと思います。過剰収容とか刑務官の労働条件の改善とか我々も必要と思っていますけれども、そのためにも国民的な信頼の置ける矯正行政への抜本改善を求めて、質問を終わります。


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