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井上哲士ONLINE
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2004年10月26日(火)

法務委員会
「下級裁判所の設立及び管轄区域法の一部改正案」(質疑終局まで)

  • 小額訴訟や公正証書を悪用した架空請求による悪徳商法について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、新潟中越地震、度重なる台風被害の被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

 私も二十三日に豊岡の台風被害に調査に行っておりまして、その帰りに地震を聞きまして、翌日、小千谷と長岡に調査に入ってまいりましたけれども、大変な被害でありまして、政府を挙げて救援と復興に力を尽くしていただきたいと思います。

 さて、司法制度改革の重要な眼目が使いやすい司法の実現にあると思います。この法案は市町村の合併に伴うものですが、従来どおり身近な裁判所を管轄地域にするなどの配慮もされております。

 一方で、使いやすい制度などありますと、これを悪用する例もあると。これに対する対応というものも必要となっております。最近は、巧妙化するおれおれ詐欺とか電子メールや手紙を使った架空請求事件というものが大変発生をしているわけでありますが、その中で、簡易裁判所の少額訴訟を悪用する例というのが幾つか発生をしております。

 つまり、架空請求の事業者が利用料の支払を求める少額訴訟を簡易裁判所に起こします。これに基づいて口頭弁論期日の呼出し及び答弁書督促状が送られるわけですけれども、期日までに出頭しませんと自動的に敗訴するために支払義務が発生をすると。今、身に覚えのない架空請求が来ても無視をしなさいということが消費センターなどで言っておりますから、これを逆手に取った大変悪質な手口なわけですね。こういうものの実態をどのように把握をされているでしょうか。

国務大臣(南野知惠子君)

 本当は存在していない債務をあるかのごとく装って請求するいわゆる架空請求は、国民の財産、それや生活を害する悪質な行為であります。特に、頼るところのないお年寄りなどには効果的な手だてを考える必要があると思います。

井上哲士君

 現実に今既に幾つかのところで起きておるわけですね。無視、その請求書は無視しろということがかなり言われているわけでありますから、今後こういうものを、制度を悪用する例というのは増える可能性もあると思うんですね。相談窓口の充実とか周知徹底とか、私は先手先手で対応する必要があると思うんですけれども、もう少し具体的な答弁をいただきたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 現在、総合法律支援法に基づいて日本司法支援センターの設立、それを準備しているところでございますけれども、このセンターでは弁護士会の相談窓口などと連携又は協力しつつ裁判などの紛争解決制度に関する情報の提供などをすることとしております。

 このようなセンターの業務は、御指摘の少額訴訟や督促手続を利用した架空の請求事案などの対立にも役立つものと考えております。

井上哲士君

 悪質業者はいろんな知恵を回してやってきますので、先手先手の対策を是非お願いをしたいと思います。

 その同じような話でもう一つあるんですが、今、商工ローン会社などが保証人の知らないうちに公正証書を作って強制執行をされるという事例が起きております。

 例えば、商工ファンドなどは保証契約がカーボンコピーになっておりまして、保証契約に署名すると委任状への署名もされてしまうと。社員が印鑑を借りてこの委任状に判こを押して、保証人や債務者の意思の反映をしない、この執行文言付きの公正証書が作られてしまうと。これに対して、双方代理で無効という公正証書無効訴訟であるとか、公正証書の内容が違法だということでの国賠訴訟も幾つか起きているわけであります。

 最近、日弁連の消費者問題の対策委員会が会員に対するアンケートを取っておりますが、こういう本人の知らないうちに作られた公正証書という事例が過去五年間で百十一件報告をされております。貸金業者が債務者から知らないうちに委任状を取って、同じ貸金業者の社員が二人で公正証書を作っていると。こういう実態をどのようにお考えでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 公正証書は、国民の権利義務関係を明確にするということで非常に大きな役割を果たしていると思っております。

 これを作成する場合の、代理人によって作成する場合、その代理権限につきましては、印鑑証明書等に基づきまして厳格に証明をさせておりますし、また、代理人の依頼に基づいて公正証書を作成した場合には、公証人規則で、公証人の方からその本人に対して作成後三日以内に、三日で通知をするということになっております。このような仕組みで、本人が知らない間に作成されるということを防ぐような仕組みを一応、法律、規則で定めております。

 また、ただいま御指摘の、例えば委任状がカーボン紙を利用して知らない間に作成されてしまうと、こういう御指摘を受けて、公証人会の方におきましても、現在はそのカーボン紙の使用による委任状作成を廃止するようにということで対策を取っているという具合に聞いております。

 また、そのほか、委任状の見やすいところに赤字でこの公正証書により強制執行を受けることになる旨を特別に記載したり、あるいは強制執行認諾付きの公正証書を作成することのみの委任状を別途作成させたりというような対策も公証人会で取っていると聞いておりますので、私どもとしても、法の趣旨が厳格に守られて、本人の知らない間に、あるいは誤解に基づいてその公正証書作成依頼がないように今後も公証人会を適切に指導していきたいと、こう思っております。

井上哲士君

 幾つか訴訟の中で、債権者である被告が原告に和解金を支払うと、こういう勝利和解も多数に上っておりますし、その中で、国側が適切な公正証書を作成するための指導監督を行う旨の和解をしている例もあります。

 今、幾つかお話がありましたけれども、こういう和解に基づいてそうした指導監督が行われているのか、また和解以降、更に強められているのか、その点いかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 多数の公正証書作成案件の中には、時に適切を欠く処理がされていたこともございます。そういうものが事件になったときに、国として今後適切な公正証書の作成をするように指導監督をするという条項を入れた例も御指摘のようにございます。

 私どもとしては、そういったことを踏まえまして、先ほども申し上げましたが、例えば公証人規則に基づく通知、これを励行するようにというようなことは私どもから日本公証人連合会にも申入れをしておりますし、また各地の法務局が公証人の役場を検閲する際にもその点を厳重にチェックをして指導していると。そういう意味で、指導監督に十分力を入れているところでございます。

井上哲士君

 是非強めていただきたいんですが、今、年間二十万件程度がこういう中身での公正証書が作られておりますが、代理によるものが相当になりますから、こういう本人が知らないうちに作るという、制度の悪用といいましょうか、ということもまた起ころうと思います。

 公証人制度の母国と言われるドイツでは、消費者保護のために様々な改正が行われております。ドイツとかなり制度が違うということは承知はしておるわけですけれども、しかし、例えば原則本人出頭を求めるとか厳格な本人意思の確認とか丁寧な教示義務など、更に踏み込んだ対策も必要かと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(房村精一君)

 御指摘のように、ドイツの公証制度と日本とではかなり全体の仕組みが違っているということもありますが、私どもとしても、もちろんドイツでのそういった運用の実情については関心を持って見ておりますし、参考になるものは参考にしたいと、こう思っております。

 ただ、日本の実情におきまして、例えば本人について出頭を義務付けるというようなことにいたしますと、これはなかなか御本人にとっても負担になるということもございます。そこは慎重に判断しなければならないのではと。そのために、私どもとしては、本人が知らない間に作られてしまうということを可及的に防ぐために、出頭は義務付けておりませんが、権限の証明を印鑑証明というような非常に信頼できる制度の上に作っているということと、先ほど申し上げた事後の通知と、これによって可能な限り防げるのではないかと、こう思っておりますので、この運用に十分注意をしていきたいと、こう思っています。

井上哲士君

 時間ですので、終わります。


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