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井上哲士ONLINE
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2005年4月5日(火)

法務委員会
「不動産登記法の一部改正」について


★午前の一般質疑

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 境界確定訴訟がいろんな点で使い勝手が悪いということが言われてまいりました。今回の筆界確定の制度がうまく運用されれば、大変国民の利便の向上になると思っております。

 そこでまず、筆界特定の制度、登記の問題についてお聞きをいたします。

 境界確定訴訟の場合に、訴訟は裁判所、登記事務は法務省と別々に行われていることから、連携が図られていないということの問題がしばしば指摘をされてまいりました。この新たな筆界特定の場合は、その結果がどういうふうに登記に反映をされていくんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 この筆界特定手続が行われました結果、登記簿に記録された地積が、これが誤りだったと、あるいはこの特定された筆界が登記所の備付地図と一致していないというようなことが分かったということになりますと、地積更正あるいは地図の訂正をするという必要が生ずるわけでございます。これは、現在のところは当然のことながら表示登記の一環でございますので、当事者からの申請、訂正申出等に基づいて行われるわけでございます。もちろん、この場合の手続においてもそのとおりでございます。

 ただ、この筆界特定の結果、結局、その土地の周辺の土地との関係が全体として一義的に決まってしまうということが登記所において明らかに分かるということになりますと、これは登記所は職権でも地図の訂正等ができることになるわけでございます。そういう面で、従前よりはスムーズな関係が維持できているというふうに考えております。

井上哲士君

 当事者からその手続がない場合、筆界は特定したけれども登記の手続がない場合というのはどういうふうになるんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 基本的には当事者の申請あるいは申出を待つということになるわけでございますけれども、それでも、そういうものがなくて、かつ、今申し上げましたように全体としてその土地の位置が一義的に決まる程度に明らかであると、つまり問題の、特定された筆界以外の筆界も全部明らかであるということになりますと、これは職権でも地図の訂正ができることになります。ですから、そういう扱いをすることも十分登記所としては考えているわけでございます。

井上哲士君

 その四辺が特定されていない、かつ当事者の申請がないという場合は、実際にはこれは筆界特定をされているということは、そうすると、登記簿上は全然分からないということなんですか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 登記手続の上では、この登記簿上に筆界特定がされたということは、その旨が明らかにされます。しかし、今申し上げましたのは地図の訂正等で、自動的に地図が訂正されるかというと、これは必ずしもそうではないということを申し上げているわけでございます。

井上哲士君

 そうすると、登記簿上にこういうふうに筆界特定がされたという中身も含めて書かれるということになるのか、何らかの書類添付をするようなことになるのか、そこはどうなんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 この筆界特定の特定書というものがどういう形でするかということは、まだ実務上は、法律上は何も決まっておりませんけれども、その番号と、特定書の番号と登記簿上の記載とがつながりが持てるような形で明らかになるということでございます。

井上哲士君

 そうすると、登記簿上に書かれた番号を見て、筆界特定がどういうふうにされたかということが、まあ言わばインデックス機能みたいな形で国民に分かるようになると、こういう理解でよろしいでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 そのとおりでございます。

井上哲士君

 この筆界を特定をした場合は、境界確定訴訟が提起をされても、この筆界が、判決が確定するまでは筆界が効力を有するということだと思うんですが、民事調停などの場合は訴訟が提起されますと決定などが無効になるということとの関係でいいますと、どうしてこの制度の場合は訴訟が提起をされても効力を有するという形になっているんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは、登記所としてのこの筆界特定の手続としてはもう最終的な結論が出ているわけでございますので、それはそういう意味では明らかに登記簿上もするという仕切りでございます。

 したがいまして、当然、逆に申し上げますと、この筆界特定の効力というのはあくまで証明力にすぎないということを十分に関係者の方々には御説明する、そういう周知徹底策というものを別に取らなきゃならないということは十分認識いたしております。

 従来から、裁判所における境界確定訴訟とのつながりがないという問題がございまして、私どももそこはいろいろと裁判所の方とも今後御連絡を取って様々な解決策を考えていかなきゃならないというふうに思いますが、境界確定訴訟の結果が登記簿上に一対一の関係で必ず反映されるということでないのはおっしゃるとおりでございまして、提起された後に、したがって、その提起された訴訟によってこの筆界特定手続の結果というのが覆ることは今度の新しい規定によっても明らかにされているところでございますけれども、それはそれでやむを得ないというふうには思います。従前と状況としては残念ながらそこは変わりがないというところでございます。

井上哲士君

 そうしますと、筆界特定がされて、それに当事者が異議があって訴訟が提起をされても、手続があれば登記は行われるということになります。

 そうしますと、見掛け上は紛争が解決をしたように見えるけれども、実は紛争は続いているということになるわけですね。それを知らずに、例えば第三者がその土地を不当な売買で取得をするというような可能性もあると思うんですが、例えば訴訟が提起をされた場合には登記への反映を保留をするとか、いろんな工夫はできるんじゃないかと思うんですけれども、その点どうでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 おっしゃるとおり、ここは運用の工夫である程度はカバーできるかなとも思っております。例えば、筆界の特定手続が終わりまして、先ほど申したように当事者からの申請あるいは職権でそのことを地図の訂正等に反映できる状況になりましても、現実に登記所の方で境界確定訴訟が提起されたということが分かれば、それは地図の訂正等はしばらく保留するというようなことも運用としてはあり得るわけでございます。それには、一つは裁判所から、裁判上の運用の問題ではございますけれども、しかし境界確定訴訟が提起された、あるいは判決が確定したということの御連絡をいただくのがベストということになるわけでございます。

 そこには裁判との問題で様々、一義的にそういうことを決めることについての問題点もあろうかとは思いますが、しかし、当事者の方の御利便を考慮するならばそういうことが望ましいというように、今後、次第に意識されていくだろうというふうにも見込んでもおります。したがいまして、裁判所ともこの点は十分に御協議を申し上げたいというふうに思っております。

井上哲士君

 この制度を利用する上でやはり費用の問題というのがあるわけですね。

 去年、当委員会で派遣で愛知に行きましたときに、愛知県の土地家屋調査士会の代表からいろんなお話聞いたんですが、境界紛争の当事者として相手が県とか国とか市町村という場合があると。ところが、この愛知のお話でいいますと、そういう事件があっても相手の自治体の方が予算がないから応じられないと、こういうケースもあるというお話を聞くんですね。

 やはり、今回のこの手続というのがある意味では本来国の責任で行うべき問題だということも、衆議院でもいろんな御答弁でもあるわけですが、少なくとも一方の当事者が国や地方自治体の場合には必ず共同申請になると、そして負担を軽減すると、国民の。こういうことは是非徹底をしていただきたいと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは実際はなかなか難しい問題でございます。どんな場合にでも、このような場合に官側にも特定手続を取るような申請をするということになりますと、普通に民と民との間では申立人、申請者側に費用が課せられるということに対して、その境目の相手方が官であればその費用の負担は応分にということになるというのも必ずしも納得できる制度設計かどうか、それは大いに議論のあるところではないかというふうに思われます。

 また、私どもとしては、当然その相手が官であるからといって、その境界に接しられておられる当事者の方がいつもいつも濫用的に申立てをされるとは思いませんけれども、しかし濫用的に申立てをされることもまた考えておかなきゃならないので、その場合に官が必ずそれに応じなきゃならないというのもいかがかと思うわけでございます。

 そういう意味で、この問題について必ず官の側も申立てをしていただかなきゃならないという運用をするのは適当ではないと思っておりますけれども、しかし、現実には官の側、官民の境界というものについてはいろんな経緯が起こって、相当官の側にその境界線を明らかにすべき立場におありになるケースもないわけではございませんので、事案によっては筆界特定登記官においてそういう相手方の方、特に相手方の管理をしておられる官の側にそういう申立てをするように促す場合もないわけではないというふうにも思っております。

井上哲士君

 大変歯切れの悪い御答弁なんですが、去年お聞きしたのは、実際には必要な場合であっても、自治体の方が予算処置がしてないからということで断る場合もあるというお話なんですね。ですから、こういう制度をよくやはり地方自治体にも徹底もそうですし、特にやはり国が当事者の場合はやはり基本的にこの共同申請になるということで、本来国が決めるべき公的な性格を持ったものですから、そういう運用を是非徹底をしていただきたいと思います。

 最後にもう一つ、費用の点でいいますと、どれだけ費用が掛かるのかよく分からないという不安があると思うんですね。この手続の場合、どの範囲まで例えば測量するかということも調査委員の方が決めるということになりますから、申請人から見ますと、どれぐらいの費用が一体掛かるんだろうかというのが見えにくいというのがあると思いますが、その辺、使いやすくする上でどういう運用上の工夫をされているのか、お願いします。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは境界確定訴訟においてもかねてから指摘されているわけでございますけれども、一体どのぐらいの費用について当事者が負担しなきゃならないかということが必ずしも明らかでないと。そのことが紛争の解決を妨げているという面もないわけではございません。

 私ども、今の段階で一義的にこういうケースが多くて、こういうケースがどのぐらい負担が現にあるかということを明らかにするだけの準備がないわけでございますけれども、しかし、この制度がスタートいたしましてある程度実績ができましたら、これを相当パターン化してお示しできるという工夫はしたいと思っております。

 また、現にこの手続がスタートした個別のケースにおいても、できるだけ早くその当事者の方に一体どのぐらいの御負担があるか、これは非常に重要な問題でございますので、当事者の方にとっては、そのことを明らかにできるような運用を登記官の方あるいは調査委員とも協力して、そういうような運用になるように努力をしたいというふうに考えております。

★午後の参考人質疑

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。

 まず、西本参考人にお伺いをいたします。

 昨年の一月に当委員会で派遣で会長御出身の愛知に寄せていただきまして、愛知の会長さんから大変細かい資料もいただきまして、大変今回の審議に私は役に立っておるんですが。その際に、当日の陳述の中で、会として、いわゆる今、不動産登記法においても境界の規定というのが何もないという中で、法律の条文に明文の規定をするべきだということで運動したいということも言われておりまして、今回、この筆界という形で定義がされたわけですね。そのことについてのまず御感想が一つと。

 同時に、今回の筆界の定義を見ますと、二つの点を結ぶ直線ということになっておるんですね。これ、法務省に聞きますと、技術上そういうことしかできないんだというようなことを言われておったんですが、衆議院の参考人質疑のときの西本参考人のお話を見ますと、今、大変技術としてはソフトが発展をしていて、カーブ計算などが十分にできるようになっている、三点を通るカーブなどもすぐ求めるようなソフトがあるんだと、こういうふうな技術が非常に発展しているというお話なんですね。そうしますと、実際の境界はいろんなカーブもあるわけですから、むしろそれに合わせた筆界という考え方もあるんじゃないかと思うんですが、この点、この定義の問題についてどうお考えか、まず、よろしくお願いします。

参考人(西本孔昭君)

 筆界という用語が明確にされましたことは大変感謝しております。二十年近く前に筆界鑑定・管理委員会というのを、内部的な話で大変恐縮ですが、つくりましたときにも、筆界というのは大変国民の皆さんに理解してもらうように説明しにくいんだという一部の会員がおりましたが、いや、これは分筆であるとか合筆であるとかという、筆という字を使っている以上は明確にすべきだということをずっと念頭に置いてやってきました。その関係で、筆界ということがこのように非常に世間的に認証されたといいますか、明らかになりましたことには大変感謝しております。

 それから、先生おっしゃいますように、特定の点を結ぶ直線というのは、表現としてはどうかなと思うんですが、これを連続した折れ線であるとかいうようなふうにするのも難しかろうと思いますし、曲線というのも難しかろうと思いますが、境界には曲線は付き物でございます。例えば道路境界、例えばこんな決め方をします。半径百六十メートル、内角九十五度とか、その間がその曲線であるという決め方をします。ですから、最近の都市計画道路に面したところは全国どこでも曲線で境界が指示されているところがございます。あるいは、不定曲線といいまして、これが短い期間に、なかなか規則的ではない曲線が連続するところがあります。あるいは高速道路のように、それを、運転者を眠らせないために計算し尽くされた不定曲線というのもありますが、どちらにしても曲線ということは今後、当然境界に用いられることであろうというふうに考えております。

井上哲士君

 もう一点、西本参考人にお聞きします。

 午前中の審議の際に、この負担軽減という点から、この筆界確定の相手方が地方自治体とか国の場合に、基本的にはやはり共同申請者になってこの負担の軽減を図るべきではないかと、これを徹底すべきだということを法務省に申し上げたんですが、まあ濫用のおそれもあるからとか、なかなか歯切れの悪い答弁でありました。実はその質問をしましたのも、去年の愛知にお伺いした際に、こういう、愛知の方で国や地方公共団体が対象になる境界紛争があって、その際に地方自治体などが予算処置がないから応じられないということでうまくいかないケースがあるんだというお話を聞いたんですが、もう少し具体的にどういうような事態が起きているのか、少し御説明いただけるでしょうか。

参考人(西本孔昭君)

 自治体が直接の当事者である場合には、これは申請であるとか様々な方法で当事者としておいでいただくことは可能ですが、例えば直接争いがある区域の一つ外に公共用地が位置します。そういうときに大変重要な参考人なので是非おいでいただきたいというふうにお願いをしても、前例がないとか予算がないとかということで、単に当事者になりたがらないのかもしれませんが、おいでいただけないケースがたくさんございます。

 架空の話がしにくいので、今日、この目玉のパンフレットは先生方のお手元にございますでしょうか、この青い。このパンフレットの中に幾つか用紙がございますが、表にトレーシングペーパーという薄紙で、後ろにカラーの明治時代の地図が付いているところがございます。

 例えば、ここに千六十四と千六十六という土地がございます。それから、千六十七という土地が真ん中辺に、右側、三角でございます。千六十七と千六十六の土地の境界について争っておりますときに、この千六十六と千六十四の間の道路の位置が違うのではないか、あるいは、これが幅三尺と書いてありますが、現地はとても大きいぞと。例えば、それにT形に交差しておる横線の幅は四尺と書いてあるのに、現に三尺と書いてある方が太いわけです。これは幾らでもありまして、明治時代は和筆で、筆で書いておりますから、墨がたくさん付いているものは太い、力入れたら太いわけでありまして、墨がなくなってきたり力が抜けていれば細いわけでありまして、この書いてある三尺とか四尺の情報の方が物を本来言うべきでありますが、それを図面をずっと作り直してまいりますと、上のこの薄紙のようになってまいります。単純にこの白黒だけで書きますとそういう情報が分かりませんし、あるいはこの交差点の辺りから道路は広くなってまいりますと、そのしわ寄せのために千六十六の土地が千六十七へ食い込んでいくという可能性は、これはもう日常あることでございます。

 そこで、千六十六と千六十七の境界をはっきりするために、千六十六と千六十四の間の道路の立会いを管理者である市町村にお願いをしても、千六十七の土地からは申請、立会い申請ができないとかいうようなことになりまして、非常に簡単に解決できるはずのものが即効性がないという結果に陥っているということを愛知会が御報告したかなと思います。

井上哲士君

 大変よく分かりました。

 本当にこの制度が、よく意義が地方自治体などにも徹底をして、こういう場合にも積極的に協力されるようになることが必要だと思っております。

 次に、中村参考人にお聞きをいたします。

 先ほど、今回の法案が当初の要綱よりも言葉としては少しダウンをしたということについて、日弁連と土地家屋調査士会についてそれぞれ御意見をお聞きされておりましたけれども、中村参考人としてはその点はどのようにお考えでしょうか。

参考人(中村邦夫君)

 当初、私どもも聞いておりましたのは、もっと相当強力と申しますか、例えば行政処分的な効果まであるものだというふうなこともちょっとお伺いしておりましたが、その後、そうではなくなったということでございました。

 考えてみますと、裁判所の方で裁判を受ける権利というものは、そういった意味では行政処分ですべて終わってしまうということではなくて、やはり裁判所の方まで持ち込まれて初めて結論が出るということは大事なことだろうというふうに私も、私どもも思います。そういった意味で言えば、この制度がその前の段階で、言わば証拠収集の段階になるんだろうと思いますけれども、そういう制度に取りあえずはしたという意味で私どもはよく理解ができるということに思っております。ただ、これはこのままずっとこういう状況でいいのかどうかということはちょっとなかなか今の段階では申し上げることできません。

井上哲士君

 次に、益田参考人にお聞きをいたします。

 意見陳述の中でも、登記官の皆さんの能力について、研修が非常に大事だということが言われておりましたけれども、中身としてはどういう点の研修を今後強化をする必要があるとお考えでしょうか。

参考人(益田哲生君)

 法律の知識というよりは、先ほども申し上げましたように、従来は書面審査で形式的審理というものを中心にしてきたわけですので、今度は関係者の方から資料を出していただいて、調査委員にも調査をしていただいて、その上で筆界を特定するという、ある種、事実認定をそこでしていくということになりますので、その辺りの能力、これはかなり経験も必要ではないかとは思うんですが、その辺りがやっぱり一番身に付けていただきたいなというふうに思っております。

 この制度は、先生方もお話しになっていますように、困っている人たちに対して迅速に対応できないかということで始まったわけですけれども、もちろん迅速であればそれだけでいいというわけではないわけで、やはり迅速であり、かつ当事者の意見をよく聞いて、きちっと正しい判断をしていくという、抽象的な言い方にはなりますが、そういう能力を身に付けなければいけないと思います。

 したがいまして、じゃ具体的にどういう研修内容になっていくのかということになりますと、先ほど浜四津先生からも御質問がありましたように、今後法務局の方と弁護士会の方とででも詰めていくべき事柄であると、もちろん弁護士会だけじゃなくて土地家屋調査士さんも含めてだと思いますが、そういう中身になっていこうかと思います。

井上哲士君

 じゃもう一回、西本参考人にお伺いをいたします。

 去年やはり行った際に、愛知県土地家屋調査士会資料センターというものの資料をいただきまして、会として様々な土地にかかわる資料を収集をされて、この情報提供で大変役に立っているお話を伺ったわけですけれども、本来的にいいますと、もっと行政機関のところで土地にかかわる情報をもう少し一元的に集めて提供するということが必要なんではないかなという気もこれを聞いて考えたんですけれども、今後このセンター自身の発展方向をどうお考えか、また、この行政とのかかわりについてはまたこういう支援がほしいとかいうことがございましたら、お願いをします。

参考人(西本孔昭君)

 資料センターは、やはりこれからも無駄な争いをなくす、あるいは私、冒頭申し上げました中で、紛争予防にとって最も適切な手だてだろうというふうに今も考えております。それで、発展的にしたいと思っております。あるいは、取り組んでいる会も増加しつつあります。

 それから、行政がそのような取組をしたらいかがかというお話だったかと思いますが、是非お願いをしたいというふうに考えております。しかも、資料の多くは公的な資料がございますが、公的な資金を使って公的な事業をなさったのに、そのデータを公にしないという機関もあるわけです。これは相当お願いをしてデータをいただいているんですが、なおいただけないところもあります。やはり、行政がこういったことにもう少し関心を示していただいて参加していただけば、官民これ共同でやれば大変大きな資料になる。それから、何度もくどいように申しますが、紛争予防になるということは間違いないというふうに確信しておりますので、お願いしたいと思います。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 終わります。

★午後の一般質疑

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 午前中に続いて質問をいたします。

 最初に、司法書士法の改正について質問をします。

 先ほどの参考人質疑の中でも議論があったわけですけれども、今回の改正案の三条一項六号の部分で、認定司法書士が自ら代理人として関与している簡裁事件の判決等については上訴の提起を可能にしております。

 この点は、簡裁での代理業務を、代理権を付与した前回改正の際に、我が党は、十四日しか期限がない中で判決を受けて上訴すべきかどうかの正確な判断を持つのは代理人である司法書士だ、むしろ最後の御奉公として上訴すべきかどうかの判断をする義務もあるんじゃないかと、こういうことを申し上げたわけです。ところが、当時の法務省の答弁は、司法書士の方々に控訴の提起権を与えるとそれが控訴審においても代理権を有していると誤解されるおそれがあると、こういうことで首を横に振られたわけですね。

 施行後まだわずかな期間なわけですけれども、今回この上訴提起の代理権を与えるに至ったその理由をまずお聞かせください。

政府参考人(寺田逸郎君)

 この問題はかつて、今、井上委員がおっしゃったとおり、この司法書士法の改正の際に法務委員会でもかなり御批判をいただいたわけでございます。

 法律の建前の上からいいますと、控訴を提起するということは控訴審の手続の一部でございますので、司法書士に、仮にも認定を受けたといたしましても、そのような手続に関与させるのはいかがかということがこの問題の背景にあり、それに基づきまして、私ども、かつては現行法のとおりそのことを認定書士の権限外の行為という仕切りをして法案を提出し、その後それが法律となって現在に至っているわけでございます。

 しかし、その後、もう少し実際的に考えてみますと、井上委員の御指摘のとおり、控訴提起をする際に、様々な控訴理由をお書きになるということは別といたしまして、控訴することそのものについてまでそのように厳しいことを要求するのもいかがかという議論がありまして、そのような控訴を提起する時間的な制約もある以上、責任を持って控訴提起することまで、だけならこれを決めてもそれほど弊害は大きくないんじゃないかという考慮から、今回改めて全体の仕組みを見直しまして、その上で、この控訴の提起それ自体については認定司法書士の権限とするということでよいのではないかという考えに至ったわけでございます。

井上哲士君

 不合理があれば直ちに正すということは大変結構なことだとは思っておるんです。

 その上で確認しておきたいのは、今もありましたけれども、この改正案で行うことができるのは上訴の提起の代理業務だけで、当然ながら、上訴審の代理人として行う行為までは含まれていないというふうに理解をしてよいかというのが一点目。

 それからもう一つは、判決に対する控訴についても、いわゆる民事訴訟法の第二百八十六条二項に掲げる事項を記載をした控訴状を提出をすることだけをいうんだと、そして起訴状に攻撃防御の方法などを記載する行為までは含まないんだと、この二点については確認してもよろしいでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 ただいま委員の御指摘になられたとおりでございます。

 今回の改正によりまして認められる司法書士の権限の範囲というのは、あくまで控訴をすること自体でございますので、この二百八十六条の二項の控訴状に記載されるべき事項が正式な意味での権限ということになるわけでございます。

井上哲士君

 分かりました。

 次に、新しい筆界特定制度を進めていく上での予算や体制の問題を中心にお聞きしますけれども、まず、いわゆる登記所備付地図の整備の推進についてお聞きをいたします。

 平成十五年の都市再生本部の決定で、国において、全国の都市部における登記所備付地図の整備事業を強力に推進するとなりました。これに基づいて法務省自らが行う地図作成作業については、都市部の地図混乱地域であり、特に緊急性及び優先度の高い地域を実施するというのが衆議院でも答弁をされておりますけれども、この地図混乱地域というのは全国でどれだけあって、そのうち今後十年間で法務省としてはどこまでこの地図を整備をされようとしているんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 そこで言われております地図混乱地域、これは地図によりまして現地を特定することが全くできないような状況にある、そういう地域でございますが、平成十四年度で調査した結果によりますと、全国で約七百五十地区、八百二十平方キロメートルございます。これは以前にも申し上げたとおり、必ずしも都会ではございませんが、都会もかなりこれに含まれております。

 今後十年間でどのぐらい地図作成作業を行うかということでございますが、平成十五年六月の先ほどお示しになられました方針で、法務局自らが作成をすべきこととされているという点にかんがみまして、法務局の行う作業は十年間で約百平方キロメートルというように見積もっております。

井上哲士君

 そうしますと、この百平方キロメートルを法務省として整備をする上で都道府県ごとに十年間でどれだけ整備をするのかと、こういう計画はあるんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは、十年間で百平方キロメートルということになりますと、単純計算で、全国的に見ますと毎年十平方キロメートルということになるわけでございますけれども、これについてはやはり緊急性の高い地域から行っていくということで、現在いろいろな形でその緊急性というものを検討はいたしておりますが、最終的には、毎年毎年、例えば道路の計画がどうなるか、あるいは下水道の計画がどうなるかというようなこともございますので、十年間丸々現時点で決めてしまうということではございませんで、それらの状況の変化にも応じまして毎年の分を決めていきたいと、このように考えております。

井上哲士君

 確かにいろんな状況変化があります、現状は生き物ですから。十年間、この年はここをやるというふうに余りコンクリートしたものはできないかもしれませんけれども、しかし少なくとも各都道府県ごとに、緊急性及び優先度の高い地域というのはおおむねこのぐらいだと、今後十年間にここまで各都道府県やるんだと、こういうものは当然あってしかるべきだと思うんですけれども、今のお話でいいますと、全体として年間約十平方キロやるだけで、各都道府県として十年間でどの程度やるのかという計画はないと、こういう理解でよろしいですか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 まだ計画という形でそれをお示しできるようなものはございません。しかし、先ほど申しましたように、全体的な状況の把握というのは、これはこれまでもいろんな形で地元の御要望等もあるところもございますので、それは承知しているわけでございます。

 したがいまして、全く恣意的に行うというのでなくて、ある程度計画性を持って行いたいというふうには考えております。ただ、現段階ではそれを十年先までぴしっと決めたものはあるわけではございません。

井上哲士君

 普通は、百平方キロメートル必要だといいますと、各都道府県ごとにここはやらなくちゃいけないというものがあって、それが積み重なって百平方キロになると思うんですが、そうすると、そういう積み重ねではなくて、最初に百平方キロありと、こういう計画なんですか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 一応の目安が百平方キロということでございまして、もちろんそれを多少はみ出たり下回ったりすることはあり得るわけでございますが、しかし予算獲得の際に念頭にありますのは、大体、毎年十平方キロで百平方キロを十年で達成するということでございます。しかし、毎年毎年多少の出入りはもちろんあるわけでございますので、それはその際にまた考えていかなきゃならないところでございます。

井上哲士君

 どうも計画性、それから目標、方針というのが見えてこないんですね。

 お手元に都道府県別の実態の資料をお配りをいたしました。

 例えば、地図混乱地域、これは必ずしも都会だけとは限らないというお話でしたけれども、八百二十平方キロメートルございますが、一番左の数は地籍調査進捗率、これはほぼ地図整備状況に重なっているかと思うんですけれども、最も全国で後れているのが大阪、二%でありますけれども、地図混乱地域は七・二平方キロにすぎません。それから、京都も非常に地図整備が六%と後れておりますが、地図混乱地域が〇・七%。それから例えば岩手は、地図整備は八六%、非常に進んでいるんですけれども、地図混乱地域でいいますと、大阪の倍近い一二・八ということになっておりまして、どうもこの八百二十平方キロメートルというのが実態をつかんだ数字なのかということがまず疑問にあります。

 その上で、来年度の実施予定面積、まあ今年度ですかを見ますと、私はこの間のお話を聞いておりますと、大都市部を中心にかなり強力にやられるんだろうと思っておりますと、例えば今挙げました大阪は〇・三平方キロメートルでありますし、東京は〇・二平方キロ、京都の場合は計画なしと、こうなっているわけですね。一方、例えば鹿児島は〇・七平方キロメートル、北海道〇・六平方キロメートルが今年度の予定面積になっております。北海道の地図混乱地域というのは百七・五平方キロメートルで一番多いわけですけども、鹿児島っていうのは三・七平方キロメートルでして、地図混乱地域、まあ全国的にも非常に少ないわけですね。

 ですから、先ほどの答弁ともかかわって、実際にこの必要性の高い、優先度の高いとこをきちっと計画を持ってやっていらっしゃるとはどうもこの数字を見ていると私には見えてこないんですけども、この点どうでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは様々な考慮が実はございます。

 これについて、現実に作業を行っていただきますのは、これもまた土地家屋調査士の先生方の御協力をいただいての上でございます。そういうことから考えますと、現地でどこまでこういうような作業を進められるかという体制の問題が一つ現実問題としてはございます。

 また、地方都市では比較的公共事業が進めやすい環境にあるために、そういうところをあえて優先して行わなきゃならないという事情もあります。

 なぜ大阪、東京が少ないのかというふうにお思いかもしれませんが、必ずしも東京、大阪が本当に緊急度が高いということは言えないのが現実でございます。しかしながら、トータルといたしましては、やはり東京や非常に備付地図の進捗率が低い大阪についても重要だという認識は別に持っていないわけではないわけでございまして、そこはトータルの十年間の間には十分に手当てはする。ただ、どこを先行さしてやるかということについては体制の問題、緊急度の問題、様々あるということを御理解いただきたいと思います。

井上哲士君

 体制の問題でこれだけしかできないということが一年、二年の間に起こり得るのは理解しないでもないんです。だからこそ、今後十年間でこれだけがやはり緊急性、優先度が高い地域だということをやはり都道府県ごとにはっきり示して、それをやるだけの体制や予算を取るということが私は本来の在り方だと思うし、そういう立場でやってもらう必要があると思うんですけども、この点、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(南野知惠子君)

 都市部における地図作成作業でございますけれども、限られた予算の中でございます。そういう効果的に実施するためにはどうしても毎年度、緊急性があると今お答え申し上げたとおりでございますが、そういうような緊急性が高く、かつ効果的な地域で実施する必要があるということから我々も認識しているところではございますが、そういう意味では、計画では全国で実施すべき面積をまず示されまして、そして具体的な実施に当たっては各年度ごとに計画で示した面積の範囲内で効果的な地域を選定して実施することが合理的であるというふうに考えておりますので、地図作成のための予算の確保も、これも大切なことだと思っております。

 そういうようなことを積み上げまして、法務省としても努力をさしていただきたいと思っております。

井上哲士君

 その方が合理的とは言われましたけども、私はやっぱり各地域ごとにここがこれだけ本当に重要なんだということをしっかり示してこそ財務当局も説得できると思うわけで、どうも行き当たりばったりという印象がぬぐい切れません。

 もう一つ、さらに今度の新しい制度をどういう体制でやるのかということでありますけども、先ほどもどれぐらいの利用があるのかということで、この間の境界確定訴訟の千件程度というようなことが出てまいりました。しかし、良い制度として利用されればもっと広がるはずですし、そうしなくちゃいけないと思うんですね。

 まず、境界確定訴訟でいいますと、衆議院の参考人質疑でも言われておりましたけども、実際にはその訴訟にカウントされないけども、土地の境界をめぐる訴訟というのはもっとたくさんあるというのが一つです。

 それから、先ほどありましたように、ADRの利用状況を見ますと、例えば大阪でいいますと、実際に相談受付をした件数だけでいいましても二十か月でこれ百七十二件という資料になっていますから、年間約百件。今の境界確定訴訟の新受件数を見ますと大阪百二十件になっていますから、ほぼそれに匹敵する数がADRにも行っているというのがあります。

 それから、国土交通省の地籍調査が年間千五百から千六百平方キロメートルとお聞きしました。これ、筆数でいいますと七十万筆だって言うんですね。新聞報道にいいますと、このうち大体二から三%ぐらいが今、筆界未定になっているということになります。これ、単純に計算をいたしますと、毎年この地籍調査の中で一万四千から二万一千筆ぐらいの筆界未定が起きているということになるわけですね。これは必ずしも全部この制度に来るとは分かりませんけども、しかし地図整備でいいますとできるだけ多く来るべきだと思うんです。例えば、一割来ただけでも今の訴訟の件数よりも多いということになるわけですから、私は相当の数が可能性を持っている制度だと思うんですね。

 やはり、これにふさわしい体制と予算がなければ申請しても使えないという、やはり制度の信頼にもかかわることになってまいります。さっき、予算は、にもかかわらず五百件分だという、非常に乏しいというのがあります。それから、体制で見ますと、昨年度で百六十五人、来年度は二百十三人の減員ということに法務局なっているんですね。これで本当にできるんだろうかということを思っておりまして、改めて大臣に、本当にこの新しい制度が国民の信頼にこたえ得るような予算と体制をしっかり取るという点での御決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 先生たちの御努力も多としながら、平成十七年度においては筆界特定制度の体制及び予算におきまして所要の措置を講じたところでございます。それも御理解いただいておると思いますけれども、今後とも本制度を円滑かつ適正に実施するためには、必要な人員、予算、これが何においても必要でございますので、確保していきたいというふうに思っております。そのような決意でございますことを御報告いたしておきます。

井上哲士君

 終わります。


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