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2005年4月14日(木)

法務委員会
「人身取引防止及び被害者保護について」

  • 「父母が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない規定は違憲」との東京地裁の判決を取り上げ、「子どもの最善の利益の立場から国籍法を見直すべきだ」と質問。
  • 人身売買の被害者保護のために在留特別許可が与えられるが、生活保護の対象にならないため、保護施設を出た後の支援を行うよう質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私も、法案に入る前に、先ほども質問のございました昨日の国籍法に対する違憲判決の問題で大臣にお伺いをいたします。

 父母が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法三条の規定は違憲だと、こういう判決が出たわけですが、実はその前の日にも、父が日本人でフィリピン国籍の子供九人が国籍確認の提訴を集団で行うということも大きく報道をされておりました。あるフィリピンの母親は、日本人男性との間に二人の女の子をもうけたけども、認知制度をよく知らないままに出生後に認知された長女はフィリピン国籍、出生前おなかにいる間に認知された妹は日本国籍と、こういうふうに兄弟で分かれてしまったと、同じ父親なのにこんなことがあっていいのかということを訴えておられまして、大変これは大きな矛盾だと思います。

 昨年の二月の二十六日に、国連の児童の権利委員会の最終見解が日本政府に出されておりますけども、この中でも、「日本人の父と外国人の母の間に生まれた児童は、父親が出産前にその児童を認知しない限り日本の市民権を取得できず、それがしばしば、児童の無国籍化につながったことについて懸念する。」と、「日本で生まれた児童が無国籍にならないよう、条約第七条と適合させるべく国籍法及び関連法及び規則を改正することを勧告する。」というのがこの国連の委員会から出ておるわけでありますが、子供のやはり最善の利益という立場から、私はやはり国籍法なども見直しが必要ではないかと思っておりますけれども、昨日の判決も受けまして、大臣の所見を伺いたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 先ほど千葉議員も御質問になられましたけれども、この案件につきましての今後の対応につきましては、判決を、判決文を十分に検討した上で対処したいというふうに思っております。

 国籍法は我が国の国民の範囲を超える法律であり、国民の範囲をいかに定めるかは国家の根幹にかかわる重要な問題でございます。法務省といたしましても、これまでの時代の趨勢に応じて、国籍法等の改正を含め国籍事務の円滑かつ適正な運用に努めてきたところでありますが、今後とも慎重かつ適切に対処してまいりたいと思っております。

井上哲士君

 女性や子供のことに心を砕いてこられてきた大臣でありますから、是非、子供の立場からこの問題を見直していただきたいと、重ねて要望をいたします。

 さて、法案に入りますけれども、朝からの議論にありますように、日本はこの人身売買の受入れ大国という批判が国際的にされてまいりました。昨年、アメリカの政府の報告書で監視対象国とされた際も、そしてILOの駐日事務所からの指摘があった際も、その都度質問主意書なり、この委員会でも質問をいたしました。

 そういう中で、昨年十二月の七日に政府の人身取引対策行動計画が出されたわけでありますが、この中で、「我が国に人身取引の存在を許容する要因となり得ていた諸制度にも踏み込み、人身取引の防止を図ることとした。」と、こういうくだりがございます。取締りが不十分だということではなくて、この人身取引の存在を容認する諸制度があったという認識は大変重い認識だと私は思うんですけれども、具体的にはこの諸制度というのは何を指しているんでしょうか。

国務大臣(南野知惠子君)

 先生も御存じだと思いますが、従前、興行という形での在留資格で入国していたフィリピンの方がおられました。フィリピン政府が発行する芸能人資格証明書があれば法務省令で定める芸能人としての要件を満たすものとされておりましたけれども、過去の調査などから、その多くが風俗営業店等においてホステスなど不法就労に従事しており、芸能人としての実質がなく、中には人身取引の被害に遭っている方もおられました。

 このような状況を踏まえて、本年二月、外国政府が発行する芸能人資格証明書を所持していれば芸能人として要件を満たす、そのように規定されているのを削除する旨の法務省令の改正を行ったことを指しております。

井上哲士君

 国際的な批判を受けて、今の問題も含めまして禁止法などの対策が取り組まれてきているわけですが、日本の対策がこういう批判がされるまでなぜ立ち後れてきたのか、その原因についてはどうお考えでしょうか。

国務大臣(南野知惠子君)

 人身取引につきましては、我が国は平成十四年に人身取引議定書に署名いたしました上、平成十五年十二月に犯罪対策閣僚会議が策定しました犯罪に強い社会の実現のための行動計画に議定書締結に必要な法整備の検討を進めることを盛り込み、さらに平成十六年四月には内閣に人身取引対策関係省庁連絡会議を設置いたしまして、総合的、包括的な行動計画を取りまとめるなどの取組を行ってまいりました。今回の改正法案は、こうした政府としての継続的な取組の中で、法務省として所要の検討を経て立案したものでございます。

 国際的に見て、提出が遅きに失したものとは考えてはおりませんけれども、今後とも国際社会と協調して人身取引の停止、防止、撲滅に向けた積極的な取組に努めていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 国際的に後れたとは思っていないと、こういう答弁でありましたが、しかし、私はもっと早いうちに対策が取れていたと思うんです。

 先ほど、いわゆる興行ビザの問題について答弁がありました。これまで、フィリピンからの興行ビザによる入国者数の推移についてまず答弁してください。

政府参考人(三浦正晴君)

 お答え申し上げます。

 約十年前程度からでよろしゅうございましょうか。

井上哲士君

 はい。

政府参考人(三浦正晴君)

 フィリピン人の興行の在留資格による新規入国者数でございますが、平成六年は一年間で五万三千七百四人でございます。平成七年に減っておりまして、二万四千二十二人、それから平成八年に一万八千九百五人ということで順次減ってきておりますが、平成九年にまた増えておりまして、平成九年は三万一千五百八十五人となっております。その後ずっと増え続けておりまして、平成十六年には八万二千七百四十一人が新規入国をしております。

井上哲士君

 平成八年に一万八千九百五人に激減をして、そして昨年になりますと、実に八年間で四倍以上に膨れ上がっているわけですね。なぜこの平成八年、七年、八年に激減をし、その後短期間で四倍にも膨れ上がったのか、その理由は何なんでしょうか。

政府参考人(三浦正晴君)

 委員御指摘のこの増減の原因につきまして、正確に分析ができるかどうかちょっと自信ないわけでございますし、分析したものはないわけでございますが、当時の記録等を見てみますと、実はフィリピン政府が平成七年の一月からARBという制度を設けております。

 このARBと申しますのは、フィリピン政府がフィリピンの国民、芸能人に発行する芸能人証明書のことでございますが、元々、フィリピン政府がこのARBの制度を設けるようになった契機というのは、自国民が芸能人ということで外国に出ていっていろいろ人身取引の被害等に遭うということがあって、それを政府が懸念したというふうに私聞いておりますが、それで、この政府発行の証明書を持っている人に限り外国に行って芸能活動ができるというふうに出国規制を掛けるための制度であったというふうに承知しております。

 これが一つは、この時点以降、フィリピンの方が日本に来る数が減った一つの原因なのかなというふうに思われます。当時は従来の制度からこのARBの制度への移行期間ということでありまして、ARBの発給が順調に行われなかったというふうにされておりまして、その結果申請者数が減少したということではなかろうかと推測されるわけでございます。

 また、その当時、我が国の入管局におきましても、一斉に外国の芸能人として入ってきている人たちが実際にはどのような職に就いているのかということで全国的な実態調査を行っておりまして、適正化を図っていた時期でもあります。そういうことも減少に影響しているのかと思っております。

 また、次に、再び増加をし始めているという、平成八年以降から九年にかけて増加を始めているわけでございますけれども、これは平成八年に我が国で興行の在留資格で入国する人の入国の基準について省令を改正いたしまして、それまでは外国において二年間芸能人としての実績を積んだという証明がない限り我が国はエンターテイナーとしての入国を認めていなかったわけでございますが、この平成八年の改正におきまして、外国の政府が発給した芸能人証明書を持っていれば、所持していれば、二年間の実績要件がなくとも日本にエンターテイナーとして入国できるという基準省令の改正をしたことがございます。これがその後、フィリピンの方が我が国に入国する数が増えた一つの原因なのかというふうに考えております。

井上哲士君

 八年間で四倍という数はやっぱり異常だと思うんですね。今言われましたように、当時実態調査が行われたと聞いていますが、その後行われなくなっておるようです、ごく最近まで。

 それで、これについて、つい先日まで現職の東京入管局長だった坂中氏が最近いろんなところで発言もされておりますけれども、今日の事態について、政府が問題を放置したほか、業界や政治家などの圧力で入管行政が弱腰になったことが原因と、こう言われて、興行資格での入国は事実上外国人ホステスの調達手段で、時には劣悪な条件下の労働や売春まで強いるものになり果てている、これを長年政府が放置をしてきたと。そう述べた上で、自ら入国在留課長だった九五年に興行資格のチェックを強化したが、その後、立入調査の際に国会議員から電話があるなどの圧力が強まり、対応が腰砕けになったと。その上で、結果として国際社会から人身売買王国と批判される事態を招いたと、こういう指摘をついこの三月末まで現職の東京の入管局長だった方が言われているということは大変重い発言だと私は思うんですけれども、この間、こういう正に異常な入国の増え方をしたという背景にこういう業界とか政治家の圧力があったということは事実でしょうか。

政府参考人(三浦正晴君)

 そういう事実があったとは承知しておりません。

 入管行政におきましていろんな方から御意見、御指摘をいただくことはございますが、それによって行政が影響を受けたということはないと承知しております。

井上哲士君

 まあ、あったとは言えないとは思いますが、しかし、この本当に異常な増え方というのはなかなか説明が付かない問題なんですね。

 そこで、大臣にちょっとお聞きをいたしますけれども、実は今回の改正がいろいろ議論になる中で、私どものところにもいろんな団体からのものが届くようになっておりまして、全国外国人芸能人事業者連絡協議会というところから最近ニュースが郵送されるようになっておりますけれども、この中では、今何もしなければ九六年の一斉摘発を上回る極めて深刻な事態に発展しかねませんという危機感が書かれた上で、様々な取組が報道もされております。この機関誌によりますと、昨年の六月の九日に招へい事業者全国連合会の設立総会というのが自民党の本部大ホールで開かれたと、こういう写真も出て、これが私どものところにも郵送をされてきております。

 私は、やっぱり再び業界や政治家が一体になった圧力でこの人身売買根絶の取組が弱まるようなことは絶対あってはならないと思っているんですが、その点、大臣の御決意を伺いたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 その自民党であったという件については私は存じ上げておりませんが、依頼もありませんし、私も出席しておりません。

 そういう観点から、政府が人身取引を対策を行っていく上では、そういう党、党というような縦割りではいけないというふうに思っておりますし、関係省庁が緊密に協力しながら、先生御指摘のとおり対策を立てていきたいと。そして、人身取引は罪であると決めた以上、この法律をしっかりと通していきながら守っていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 再びこの腰砕けになるようなことがないように、もちろん我々は、日本に来られる様々な方々について、すべてが不法だとかそういうことを言うつもりはございませんけれども、やはり不法行為が結果としていろんな圧力で容認されるというようなことはあってはならないわけで、改めて求めておきたいと思います。

 その上で、具体的な法案の問題でありますけれども、まず、人身取引という言葉と人身売買という言葉が法案の中では使われているわけですが、それぞれの違いと関係というのはどういうことになるんでしょうか。

政府参考人(大林宏君)

 人身取引議定書三条の(a)では、犯罪化が必要とされる人身取引の定義につきまして、「搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること」、それから、「又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、」し、「蔵匿し、又は収受すること」とされております。その際、「搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。」と、このようにされております。

 今回の改正で新設する人身売買罪は、今の議定書定義の後段の、他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて人を獲得する行為及び引き渡す行為を処罰するものでございまして、議定書の人身取引の一部を成すものと、そういう関係にあるものと考えております。

井上哲士君

 人身取引の中に人身売買という概念が含まれるんだと、こういう説明なんですね。

 そこで、私は、よく分からないのは、この定義、目的の問題なんですね。

 改正法案の二百二十六条の二、「人身売買」では、「営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的」と、こうなっております。結婚が入っているんですね。ところが、これを含む、入管、入管法の方ですけれども、人身取引の定義は、「営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的」と、こうなっているんです。ですから、取引の方が売買を含んでいるのに売買の中にある結婚という目的が全体の概念にはないというのはどうも矛盾をしていると思うんですけれども、なぜこういうことになっているんでしょうか。

政府参考人(三浦正晴君)

 お答え申し上げます。

 人身取引議定書によりますと、人身取引の要件の一つといたしまして搾取の目的があるということが必要であると、こうされているところでありますが、搾取には、他人を売春させて搾取すること若しくはその他の形態の性的搾取、強制的な労働、臓器摘出などが当たるというふうにされておるわけでございます。結婚の目的というものが議定書の中には含まれておらないわけでございます。入管法でこのたび新しく人身取引の定義規定を設ける際にも、この議定書に基づきまして、結婚というものを、目的を含めなかったものでございます。

 なお、刑法には、今委員御指摘のとおり、人身買受け罪等におきましては結婚目的も含まれておるわけでございますが、これは私の方から申し上げるのが適当かどうかでございますが、従来から刑法には結婚目的の略取誘拐行為が処罰の対象とされているという、こういうことがあったこととも関連いたしまして、今回の人身取引議定書上の義務とはまた別に、より広い人身の自由の保護という一般の観点から規定されたのではないかというふうに承知しておるものでございます。

井上哲士君

 ですから、より広い概念である取引の中には結婚がなくて狭い概念である売買の中には結婚があるというのは今の説明でもなかなか私は納得いかないんですが、問題は、刑法では罰せられる結婚目的の行為の被害者が入管法では被害者として救済されないというようなことが起こってはならないと思うんですけれども、その点は大丈夫ですか。

政府参考人(三浦正晴君)

 お答え申し上げます。

 先ほども御説明いたしましたように、正面から結婚という目的が規定されてはいないわけでございますけれども、具体例考えますと、例えば買手の方が結婚の目的で人身の買受けを行うようなケースを想定いたしますと、必ず売手の側から見た場合に人身の売渡しが行われると、こういう関係になるんだろうと思うわけであります。そうしますと、売手、お金をもらってそういう行為を行うということになりますと、これは営利目的が認められることになりますので、その売買の対象とされた人につきましては営利目的の人身の売渡しの被害者と、こういう立場になると解されるわけでございますし、また結婚の目的で略取誘拐をするような場合を想定いたしましても、例えば性行為を強要する目的があればわいせつ目的、入管法の新たな定義規定の中のわいせつ目的という認定ができるだろうと思われますので、その対象となった人については人身取引の被害者という認定ができるだろうというふうに思っておりまして、結婚目的というものが明文で書いてないということによりましても、結婚目的で人身取引をされた被害者につきましては、他の目的、新たな入管法での定義規定の他の目的による人身取引の被害者として認められるのが通常であろうと思われますので、実際上問題が生ずることはまずないであろうと考えておるものでございます。

井上哲士君

 いわゆる結婚目的の被害者も救済をきちんとされるという答弁でありました。

 次に、被害者保護の問題をお聞きをいたしますが、被害者の方がいろんな脅しなどをされている中で、いつでも相談できるし、またどこに相談すればいいか分かるような広報というのは非常に大事だと思うんですけれども、警察庁来ていただいていますが、その広報の内容や、そして配布の方法などはどういう工夫を考えておられるんでしょうか。

政府参考人(伊藤哲朗君)

 警察では、人身取引の被害者が保護を求めた場合、まず二十四時間でいつでも受け付けておりますのが一一〇番でございまして、そこに電話をすればいつでも対応できるという形になっておりますし、また交番や警察署も二十四時間いつでも開いているという状況でございますので、そこに駆け込んだ場合においても直ちに対応するというふうに努めているところでございます。

 そうしたことを人身取引の被害者の方に知っていただくということで、先ほども少しお話し申し上げましたけれども、一つはリーフレットを現在大量に作って、これをいろんなところに配布していこうということを考えております。配布の仕方としては、まず例えば入管当局の方にもお願いして、入国の際にこういったものをみんなに配るということで、入る際には大体外国人のそういった可能性があるような方々には手に取ってもらうということで、何だろうと思って手にするけれども、それはそのうち役に立ってくるかもしれないということもありますし、あるいは各国の大使館であるとかNGOであるとか関係機関等々にいろんな形でお配りをして、その中で一番可能性の、有効なやり方というものをそれぞれ考えていただきながら、そうした被害者の手に届くような形で工夫をしていただこうというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 一一〇番は都道府県警につながるんだと思うんですが、なかなか県によっては対応できる言語に限りがあるんではないかなと思うんですね。ですから、例えば、かなりの言語の通訳者が常時待機しているような全国一本のホットラインのようなものをつくり、しかも一一〇番に抵抗ある方もいらっしゃいますから独自のホットラインの番号などもして、より利用しやすくすることも考える必要があると思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(伊藤哲朗君)

 一一〇番というのは二十四時間全国どこでもという形でございまして、もちろん受け付けるのは都道府県警察でございますからそれぞればらばらではございますけれども、かなりの言語についても対応できるようになっております。

 具体的に申しますと、例えば東京が一番そういった意味では充実しているかと思いますけれども、約六十か国から七十か国語の言語に対応できるということで、他の府県につきましてもそれに準じた形で努力しておりますので、また、もちろん県警や警視庁の方にそういった言語を話せる人がいるというわけではなくても、いわゆる第三者通話というやり方で、いわゆる言語ができる人にお願いをして、その方を、通話をしながら警察官とやり取りをするという仕組みもつくっておりますので、そういった形で対応していきたいと思っております。

井上哲士君

 次に、この被害者保護の政府の行動計画では最も中心になるのは婦人相談所ということになるんだと思うんですが、そこ自身の人的体制の強化の重要性というのは先ほど来指摘をされてきたことなんですが、それ、そこでの一時保護以降の問題をどうするのかということをお聞きをしたいんですが、まず、被害者に在留特別許可を与える場合に在留資格としては何を与えるのか。それから、在留期間としてはどの程度を考えているのか。帰国したい場合には短期ということもあるでしょうけれども、刑事手続に協力する場合とかリハビリの場合とかあろうかと思うんですが、どの程度の在留期間を考えているんでしょうか。

政府参考人(三浦正晴君)

 お答え申し上げます。

 在留特別許可する場合の在留資格でございますが、特定活動という資格がございます。これを付与することになるのであろうと考えております。

 期間につきまして、なかなかその個々の事案によって必要な期間が異なると思いますのでケースによるのであろうというふうに思いますが、例えば被害者の方が、我が国への在留を希望しましてかつ帰国したら生命・身体に危険があるというような状況でございますとか、我が国への在留を希望してかつ被害者の心身の状態とか保護の必要性等が高いとか、そういった事情を考慮しますと我が国への長期の在留を認めるのが相当と考えられるというようなケースにつきましては、特定活動で六か月とか、場合によってはもうちょっと短くていいというのであれば三か月、特定活動の三か月といったような資格を付与することを考えておりますが、もちろん、その期間が終了してなお必要性があるということであれば期間の更新も当然可能でございます。

 また、被害者の方がなるべく早く帰りたいというような御希望を持っているケースもあるわけでございますが、そういった場合には、やはり不法滞在の状態で出国ではなくて、合法な滞在の状態になってから出国していただくということで、出国準備のために在留特別許可を与えるということで一か月程度の特定活動という、帰国準備のために合法的に滞在できるというようなケースを、資格を付与するというようなことがあり得るのではないかと思っております。

井上哲士君

 婦人相談所での一時保護というのは大体二週間が基本で、最大四週間というふうにお聞きをしているんですね。

 ところが、今答弁ありましたように、今回の入管法の改正でそれ以上、六か月とか、場合によってはその更新もあるという、相当長期の在留もあり得るということになるわけです。

 ところが、この政府の行動計画を見ていますと、その一時保護期間以降の対策というのがどうも見えてこないんですね。住居、生活、医療、それぞれの対策が必要だと思うんですが、従来のこの一時保護期間を超えた場合の対策というのは、厚生労働省、どうお考えなんでしょうか。例えば、一時保護の柔軟な適用とか、それから生活保護の適用、医療が掛かれるようにするとか、必要かと思うんですが、この点いかがお考えでしょうか。

政府参考人(伍藤忠春君)

 概念といたしまして、今まで婦人保護所の一時保護というのは二週間程度、長くて一か月というようなことを一応の目安にはしておりましたが、これまでもかなり弾力的に運用してきておる実情がございます。

 今までの人身保護被害者のそれぞれのケースを見ますと、平均、先ほど申し上げましたが、大体七日間程度であるということでありますし、人身取引被害者で婦人相談所で一番長く今まで保護したのは二十七日というケースでございます。

 それから、人身取引被害ということではありませんが、DV被害者ということでこれまでも一時保護という形を適用して、最も長く適用したケースでは半年程度のケースもございますので、これはこれからの実情もよく見ながら、そこの一時保護所の機能を十分活用して弾力的に運用していくということが適当ではないかというふうに私どもは考えております。

井上哲士君

 確かに去年までの平均は七日間程度だったんだと思うんです。最長二十七日と言われましたけれども、それはこれまではいわゆる在特というのがそう出ないという状況があったわけですけれども、明らかに制度が変わるわけですね。三か月、六か月という長期に在留される方が出てくるわけです。そういう人たちも婦人相談所にずっと入っていますと、もう本当たちまちパンクをしてしまうことは必至なわけですね。その際どうするんですかね。婦人相談所の定員を超えてしまって出ざるを得ないと、そういう人たちの住居、生活支援、生活保護は受けられるんでしょうか。いかがでしょうか。

政府参考人(伍藤忠春君)

 先ほども申し上げましたが、全国平均では一時保護所の今入所率というのは五割程度でございますから、たちまちパンクするというようなことにはまずならないと思いますので、予算的にもかなりのものを確保しておりますので、その中で十分対応できると思っておりますが、いずれにせよ、こういう新たな計画がスタートして、何といいますか、意識の面、あるいは摘発といったようなことが進んだ場合にどうなるかということはよく見ながらそこは考えていきたいと思いますが、当面はまず今の状況では十分対応できるものというふうに私どもは考えております。

井上哲士君

 事態が起きてからでは遅いと思うんですね。一時保護を、仮に婦人相談所の一時保護を出なくちゃいけないという人が出た場合には、何らかのその生活や住居を支援する制度があるのかないのか、それどうですか。

政府参考人(伍藤忠春君)

 基本的には今言ったような一時保護で十分対応できるというふうに考えておりますし、この特別のケースがそうかなりの数、何といいますか、在留許可が認められるということも今の時点ではなかなか想定しにくいんですが、これからいろんな事態には対応できると思いますが、在留特別許可ということで、今まで生活保護の法適用が可能かどうかと、こういうお尋ねでありますが、従来からの取扱いで、入管法の別表第二に規定する在留資格を有する場合には、従来からもこの生活保護法に定める保護の要件を満たす場合には生活保護法を準用して保護を行うことが可能であるということにしておりますので、今後も同じようなケースについては同じ取扱いになるものというふうに考えております。

井上哲士君

 いや、しかし、この在留資格は特定活動ですから、別表第一ということになりますから、生活保護、今までの取扱いでは生活保護の適用にならないんじゃないんですか。

政府参考人(伍藤忠春君)

 別表第一の場合には適用にしておりませんし、今後も適用することはないというふうに考えておりますが、そういうケースにつきましては、基本的には一時保護の制度あるいは一時保護委託というような制度を活用して対応していけるものというふうに私どもは考えております。

井上哲士君

 先ほど法務省答弁ありましたように、特定活動にという在留資格ですから、これまでの取扱いですと生活保護の適用にならないわけですね。ですから、一時保護でできるできると言われますけれども、今回のこの法整備によって相当摘発もするだろうと、相当の効果があるというのが午前中の答弁だったわけですね。相当の効果があって被害者が救済をされたけれども、その受皿が実際上大変小さいままだということでいいますと、これは新たな人権侵害ということが起きる可能性が私は高いと思うんです。

 一時保護を短く切らずにできる限り柔軟に対応していただくのは当然でありますけれども、一時保護後、例えば社会復帰のためのいわゆる自立支援をするようなステップハウス的なものを別途国として整備をするであるとか、それから生活保護の適用の在り方についてもこの人身売買被害者については可能にするであるとか、新しい制度自身を考えませんと、結局、朝からも議論ありましたように、今のある制度をどうやって使うかというだけにとどまっているからこういう問題が出てきていると思うんですね。やはり被害者保護については、国や自治体の責任をしっかり明確にして、そして必要な人員、予算というものをしっかり付けて、この被害者保護を確立をしていくということなしにやると、結局それぞれの省庁が従来の制度の枠組みの中でできることだけやるということでいいますと、これは本当の意味での被害者の保護ができないということになると思います。

 最後に大臣、今お聞きになったような問題が残されているわけでありますから、更に被害者の保護をしっかり確立をしていくという上で、私たちは独自の法律の枠組みも必要だと思っております。そのことも含めまして、被害者の保護をしっかり確立をしていく上で、各省庁との連携も含めてやっていくという点で大臣の決意を最後にお聞きしたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 人身取引対策を推進していきます上におきましても、関係省庁が緊密に連携をすべきことは先生御指摘のとおりであろうと思っております。

 昨年十二月に政府が策定いたしました人身取引対策行動計画におきましても、総合的、包括的な人身取引対策を講じますために、関係省庁が緊密な連携を図るべきことをうたっており、目下その計画に沿いまして関係省庁が協力しながら諸政策を実施しておるところであります。

 法務省といたしましても、これまでより一層各省庁と協力し、人身取引対策に向かっていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 終わります。


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