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2005年4月19日(火)

法務委員会
「刑法等の一部改正に対する参考人質疑」


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

 まず、吉田参考人にお聞きをいたします。

 被害者保護の支援法が必要だということが提起もされました。先日の対政府の質疑のときも、例えば在留特別許可が今後出されていくのが広がる中で、在留期間が長くなるけれども、じゃ一時保護後の対応はどうするんだということを厚生労働省に聞きましても、柔軟に対応するというお話だけで、やっぱり新しい枠組みをつくっていくという発想がなかったわけですね。

 そこで、私たちも、先日、社民党と一緒にこの保護支援法について提案もしたわけですけれども、いろんな党が出され、また民間からもいろんな提案があるものをすり合わせもして、いいものを是非政府に迫っていきたいと思っているんですが、吉田弁護士のお考えのこの被害者保護支援法、柱と主な内容としてはどのようなことをお考えか、まずお聞かせいただきたいと思います。

参考人(吉田容子君)

 私が考えておりますのは、まず、やはり国がこの問題にきちんと取り組むんだという姿勢を明示するということが必要だと思います。

 それから、先ほどの御質問にもありましたけれども、どこが責任を持っていただけるのかと、国の方で、ということがさっぱり分かりません。省庁連絡会議が推進するという体制であることは承っておりますけれども、要するに、それぞれの所管官庁がそれぞれの所管事項を行うということで、その調整を行うのではないかというふうに承知しておりまして、そうしますと、先ほど武藤さんもおっしゃいましたけれども、どこに何を言ったらいいかさっぱり分からない。ついでに言うと、その谷間で放置されてしまう事態が当然生ずるだろうと。したがって、やはり中心となる、責任を持つ部局を是非つくっていただきたいということがございます。

 それから第三点に、財政上の措置をきちんと明示していただきたいということです。もちろん、国自体の支出ということについても必要ですけれども、先ほどから出ております民間への援助ということについても十分に配慮するような形のものが必要であろうと思います。

 それから、先ほどから出ておりますけれども、センター、これが民間との協力に基づくセンターであった場合でも同じなんですが、やはりセンターの設置というものは必要であろうと。別に箱物を新たに造るかどうかという問題ということで申し上げているつもりはありませんで、センター機能を持つところをきちんとつくっていただきたい。被害者の方がどこに連絡を取ればいいのか。先ほども言いましたけれども、警察よりもむしろ、まあ警察もそうかもしれませんけれども、センターに連絡を取る、あるいは弁護士が相談を受けた場合もそこに連携を取って、あとそこでコーディネートできるような形のセンターの設置というものも必要だろうと思っています。

 それから、先ほど言いました被害者の発見の場合に、先ほど言いましたように、警察に、交番等に駆け込んだ場合ですら場合によっては逮捕される可能性というのはまだ十分残っているわけです。いわんや強制捜査等の過程で被害者ではないだろうかというふうな方が発見された場合も、多くは残念ながら逮捕されてしまう。そうであれば、ますます被害者も潜在化するしかありませんので、被害者の可能性がある場合はそのセンターに連絡を取るなりして、基本的には身柄を収容しないということも必要だろうと思っています。

 それから、在留資格の保護に関しては、今回入管法改正されるわけですけれども、これについて、実際のところ在留特別許可というのがなかなか基準がはっきりしないというふうに弁護士の立場からは思っておりまして、そこをもう少し明確にしていただきたいということになります。

 それから、今回アクションプランができているわけですけれども、国の方も今後いろいろ検証などをして、場合によって改善をするというお話がございましたけれども、この行動計画について、さらに基本計画にランクアップをした上で、しかもそこにNGOが関与する形で検証をして、それから改善をしていくというような制度も必要になってくるだろうというふうに思っています。

 大体そのようなものです。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 今も民間への支援を明確にする必要があるというお話があったわけで、その点で武藤参考人にお聞きするんですが、いただいたこのメモの中で「現在サーラーは米国国務省からの助成金により、医療費やシェルター滞在費の一部をカバーしている」というくだりがありまして、私、初めて知ったんですが、日本の国、政府が何の援助もしていないときに、米国国務省からの助成金があるというのは大変ある意味びっくりしたんですが、これはどういう形で、どういう枠組みで援助がされているのかということをまずお聞かせいただきたいと思います。

参考人(武藤かおり君)

 私も実はその助成金について今まで余り話をしたことがなかったものですから、知らない方がいて当然なんです。

 アメリカに拠点を持つNPOが日本にもオフィスをつくったと、その関係で日本のサービスプロバイダーという被害者支援をしているNGOとパートナーシップを結ぶ。役割分担ですが、そちらの場合はまあ啓蒙とかそちらにいく、うちは啓蒙とか研修とかそういうことをやる時間はありませんので主に被害者支援をしてくれと、それをする場合に、二年で五万ドルという資金が被害者支援に使えるというようなパートナーシップというのを結びました。

 それで、十二月から、昨年の十二月から始めまして、被害者一件に当たり一泊代幾らという値段と、あとは医療費の補助、交通費の補助というようなことがそれで唯一使えております。そういう助成金の申出があったので、ほかにどこか使えるものがないだろうかと探し、探し、探し、探した結果それが使えたということで、こういうことを行っております。

 以上です。

井上哲士君

 いや、そういうことを日本政府こそするべきだと今改めて思っておるんですが。

 先ほど、なかなか六千五百円一泊では不十分だということが言われておりました。DV被害者と同じ枠だと思うんですが、やはり人身売買の被害者の場合にそれ以上のいろんな負担が必要だと思うんですけれども、具体的にはどういうものが必要であって、どういう負担にその施設になっているのか。ここを賄ってほしいという辺り、もう少し詳しくいただきたいと思います。

参考人(武藤かおり君)

 私どものスタッフは、平均三か国語をしゃべるように人員を配置しております。六か国語通用するシェルターとして、その被害者に合った言語がしゃべれるスタッフをローテーションを組んで常駐させるということをやっておりまして、その結果、人件費が掛かってしまう。しかし、そのメリットは、常にその言語を使う被害者が入ってくれば、もうその日から常にケースワークができるという利点があります。そのために様々な言語をしゃべるスタッフを置いておりますので、人件費がどうしても掛かってしまいます。ただし、その人件費はその方の能力に合ったものを支払っているかというと、そうではないのですが、そのような人員を配置していますので人件費がというか、人数が、延べ人数が多いわけですね、稼働する人数が。それが一つあります。

 あと、被害者の方が母国に、母国の家族が元気かどうか、若しくは危害が加わっていないだろうかということで、しょっちゅう国際電話を実は掛けたいというようなお願い等があります。そのような電話代のカバーというのも私たちが行っております。

 国が無料低額診療施設を使って医療を、人身売買の被害者が医療が必要な場合、そこに行ったらいいのではないかというふうに提案してくれているのですが、私たちは先ほど言いました助成金がありますのでまだその制度は使っておりません。なおかつ、私たちのシェルターの近くにその医療施設はございません。電車で三十分以上行かないと行けませんので、夜に例えば必要になったとしても、それは行けません。今それをしなくてもいいようなお金のカバーができるのでまだ行っていませんが、それしかない場合どうしたらいいかというふうに考えております。

 また、ビザ、通訳、そして入管への出頭等の往復、そしてそれに対する随行者、若しくは入管できちんと通訳のできるスタッフというのも必要になってまいります。すべて私たちのスタッフだけでこれをやっております。というわけで、やはりそういう交通費、随行人の人件費というのも私たちの大きな支出になっております。

 以上です。

井上哲士君

 本当に御苦労がよく分かりました。

 中山参考人にお伺いするんですが、出身国対策、それからそれは出さないという問題、それから大本にあるいろんな教育や貧困の問題ということもありましょうし、帰った被害者への対策ということもあると思うんです。先ほど、いわゆるいろんな民間のネットワークのことはお話もあったと思うんですけれども、政府としてこの出身国対策をしていくという点でどういうことが必要とお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

参考人(中山暁雄君)

 お答えします。

 つまり、日本として、日本政府としてどういう対応が必要かという質問だというふうに思いますけれども、やはりこれは、日本は援助というものを、ODAという予算を持っておりますので、やはりそれを有効に活用していくということが非常に重要であるというふうに思います。

 例えば、出身国における取組ですけれども、当然貧困という問題もありますし、それからやはり教育レベルの問題というものもあります。ですから、例えば学校教育の中で人身取引の被害というものについてもっと教育を行うであるとか、あるいはコミュニティーレベルにおける意識向上、啓発を行うとか、様々な取組というのが可能性があります。

 この場合やはり重要なのは、その当事国の援助を行っている政府機関、それからNGOの担当者と直接やはり意見交換を行って、その方々からアイデアを出してもらうと。こういう、もう既にフィリピンやタイやインドネシア、いろんな地域でNGO、草の根レベルでの人身取引に対する対策というのは行われておりますので、そういったアイデアをNGOとかそういう草の根レベルの方々から出していただいて、それを日本の援助の中に組み込んでいくようなことが必要なんだというふうに思います。その中で国際機関として行えることもあるかなというふうに思います。

 それから、やはりもう一つは、地域協力の推進ということが非常に重要であると思います。

 これは、オーストラリアとインドネシアがイニシアチブを取って三年前から始めているバリ・プロセスというふうに呼ばれている、不法入国それから人身取引、そして組織犯罪というものに対応する地域協力のメカニズムというものがあります。

 この地域協力の中で幾つかのワーキンググループというものが設置されまして、例えば法執行の問題であるとか、あるいは偽造旅券の鑑識の問題であるとか、入国管理行政の問題であるとか、そういった幾つかの分野ごとのワーキンググループというものができております。こういったワーキンググループの中でやはり日本が貢献できる分野がたくさんあると思いますので、その地域協力というものに日本として貢献していくということが非常に重要であるというふうに思います。

井上哲士君

 若干だけ時間がありまして、最後もう一点、吉田弁護士に。

 現実には早期に帰国を望む被害者も多いかと思うんですが、一方、教育、職業訓練などはある程度期間も要るということがあると思うんですが、この辺、国際協力のことも含めてどうお考えか、お願いします。

参考人(吉田容子君)

 本当に役に立つ教育であるとか、あるいは労働、職業訓練ですね、そういったものについて、日本で例えば三か月、六か月で果たしてどのくらい可能なんだろうかというような気持ちは一方でございます。

 しかしながら、他方で、例えば損害賠償等、損害賠償やらあるいは加害者への処罰への協力などで三か月ないし六か月程度の在留ということが考えられるわけですから、そういうときにまずスタートとしての基本的な教育であるとか職業訓練等ということを導入するということについては私は必要だと思います。ただ、日本だけですべてが完結するとはとても私思いませんので、やはり出身国の政府あるいはNGOにおけるそのような施策との連携という形で行うのが一番いいのではないかというふうに思っています。

井上哲士君

 ありがとうございました。


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