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2005年4月21日(木)

参院法務委員会
「刑法等の一部を改正する法律案」(第2回目の質疑・採決)

  • 人身売買の被害者保護のための十分な体制の整備を要求し、政府に総合的な窓口やNGOを含めた連絡会などの連携が必要と強調。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 法案に入る前に、一点、十九日に最高裁が下しました検察の面会配慮義務の問題での判決について、大臣にお聞きをいたします。

 この十九日の判決では、設備などの面で十分に秘密を保った場を確保できないような場合でも、すぐに会う必要があれば検察官は面会ができるように特別な配慮をすべき義務があると、こういう初めての判断を示しました。今年の秋からは公判前整理手続というものも始まってまいりますし、裁判の迅速化という中でこの弁護側の防御権の保障ということは大変重要な課題であるわけで、これは司法制度改革の大きな課題について最高裁の判断が出されたと私は思っております。

 そういう点で、この判決を受けてどういう対応をしていくのか、そして、やはり根本的にはちゃんと接見の施設をすべての地検につくっていくということが必要かと思っておりますが、そのことも含めて、この判決を受けての対応についてお聞かせ願いたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 御指摘の判決は、検察庁に接見のための施設がないという場合であっても、一定の場合は立会人のいる部屋での短時間の接見につき配慮義務がある旨が、これが判示されたものと承知いたしております。

 接見交通権は、身柄を拘束された被疑者が弁護人の援助を受けることができるための重要な権利であり、従来から検察庁においては、捜査の必要との合理的調整を図りつつ、接見交通には十分に配慮してきたと承知しております。

 今後、検察においては、今回の判決の趣旨を踏まえた対応がなされるものと考えております。その接見の面接室というのは今五十庁あります中で二十三庁もうできておりますので、これらについても考慮していくものと考えております。

 以上でございます。

井上哲士君

 これまで十分保障はされてきたという答弁でありましたが、保障はされてなかったというのがこの判決で示されたわけでありますから、今後しっかりとした対応をお願いをしたいと思います。

 そこで、法案に入りますけれども、この間も入管法の人身取引の定義の問題でお聞きしたんですが、もう一点お聞きをしておきます。

 議定書では、手段として「権力の濫用若しくは弱い立場の悪用」というものが含まれておりますけれども、入管法の定義部分を見ますと、この議定書の中身がすぐには読めないわけですけれども、これはどういうふうに反映をされているんでしょうか。

政府参考人(三浦正晴君)

 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、権力の濫用といった言葉は今回の改正法の案の中には入ってございませんが、具体的には入管法の改正案の第二条の第七号に定義規定が置かれているわけでございます。これは刑法の改正案の人身売買罪等の規定を参考にして作られているものでございます。結論といたしましては、人身取引議定書における人身取引の概念をすべてこの案でカバーしているものでございます。

 委員御指摘ございましたように、議定書の中には権力の濫用ですとか脆弱な立場に乗ずることといった規定が、内容がございます。これにつきましては、この議定書の作成、交渉の経緯にかんがみまして、両者を併せて、自己の法的若しくは事実上の地位又は被害者との地位の差を利用して不法に有形力を行使し、又は害悪を告知するなどしながら、従う以外に道のない被害者を意のままにすることであると、こういうふうに解されているものと承知しております。そうしますと、この内容からしますと、刑法の略取罪の手段としての暴行、脅迫の概念に含まれるというふうに解されるものでございます。

 したがいまして、この議定書における権力の濫用ですとか脆弱な立場に乗ずることというのは、この改正入管法の第二条第七号の片仮名のイの規定の略取という部分に含まれるというふうに解しているところでございます。

井上哲士君

 次に、退去強制の、関する二十四条についてお聞きをいたしますが、退去強制からの除外ということで、イとヌについては括弧書きで「人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く。」と、こういう規定が入っております。ところが、ロの部分ですね、「在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に残留する者」にはこういう除外規定は付けられませんでした。

 人身取引の被害者が多くがオーバーステイになっているということは言われているわけでありますが、なぜこの部分については同様に退去強制の対象から外さなかったのか、お答えいただきたいと思います。

政府参考人(三浦正晴君)

 お答え申し上げます。

 委員御指摘のような不法滞在の状態になっている被害者につきまして、その入管法の二十四条の四号のロというところに退去強制事由が設けられている、一つ設けられておりますが、これに該当しないということにより、人身取引の被害者であってオーバーステイ状態の人が退去強制事由に該当しないということにいたしますと、そもそも在留資格が全くない状態の人について送還もできないと、退去強制の対象になりませんので。したがって、退去強制手続が進みませんと在留特別許可を付与することができないというのが今の入管法の全体の規定でございます。そういう異常な状態を発生させてしまうということになります。在留資格はない、送還もできない、在留特別許可も付与できないという状態で事実上本邦に滞在するというような異常な状態が生ずるということになりますので、そういう観点から退去強制事由からは除外をしないということにしておるものであります。

 もっとも、現実には、被害者の方であるということが判明いたしますれば、当然その退去強制事由に該当して、なおかつ最終的には在留特別許可が付与されると、こういうことになると考えております。

井上哲士君

 そうなりますと、在特がきちっと出るかが問題なわけですが、先ほども原則被害者の場合は出すということがありましたし、よほどのことがなければ出すという意味だということも入管局長からございましたけれども、これは大臣の裁量でありますから、改めて、先ほどあったようなごく特別な例がない限り出すんだということを御確認したいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 人身取引は、先生御存じのとおり、女性又は児童がその弱い立場のゆえに被害者となることが多うございます。被害者の人格や尊厳を侵害し、その心身の両面に重大な影響を及ぼすものであります。

 今回の入管法の改正案では、人身取引の被害者の置かれている事情を考慮し、人身取引により他人の支配下に置かれたために不法滞在状態に陥った方などについては、我が国に滞在できるよう特別に在留を許可することができることを法律上明記することとしております。したがいまして、このような特別の事情のある方については、人身取引と関連なく重大な犯罪を犯した場合など例外的な場合を除きまして、原則として在留を特別に許可することとなると考えております。

井上哲士君

 在留特別許可が出る場合も大変手続に時間が掛かるということが先日の参考人質疑でも出されました。ある例では四回も入管に通って一か月掛かったというケースも紹介をされておりまして、人を配置したり通訳を配置したり、また交通費の問題とか大変負担になっているということもありましたし、この手続のために残されているという感覚を被害者の方が持つ場合もあるということがあります。

 今回、早期に帰国をしたい希望者についても合法的地位を与えて帰すという趣旨からいいますと、相当短い期間でこの在特を出すということが法の趣旨からいっても必要だと思うんですが、手続上どういう改善がされるんでしょうか。

政府参考人(三浦正晴君)

 お答え申し上げます。

 被害者の方が早期に帰国を希望をされるような場合につきましては、可及的速やかに手続を進めるというのが当然のことでありまして、我々も配慮をしておるところでございますけれども、御承知のとおり、在留特別許可までの間にはいろんな手続がございまして、事案の内容によって、一つは被害者であるということの確認に若干時間を要するようなケースもございますし、また出国できる状況になっているか。例えば、帰国費用の手当てができているかどうか。旅券などを持っていない方もかなりおりますので、本国の在日の大使館等から旅券が出されているかというようなことを確認するということで、ある程度の時間が掛かるのはやむを得ないかなと思っております。ただ、委員御指摘ございましたように、手続に一か月掛かったという例も確かにございまして、当局としてはなるべく処理が早期にできるようにということで努力はしておるわけでございます。ケース・バイ・ケースでございます。なお、今後はなお努力をしていかなければいけないと思っております。

 具体的には、段階的な手続が幾つかございますが、こういうものを例えば一度の機会に何段階かの手続を済ましてしまうというようなことも考えていきたいと思います。現実には、事前にある程度被害者であるというような情報が関係機関から入ってきていたような方については、入管で手続を開始してから五日程度で最終的に在留特別許可を付与した例もございますので、こういうものを参考にいたしまして、今後鋭意早期の処理に努めていきたいというふうに思っているところでございます。

井上哲士君

 被害者保護の立場での迅速な手続をお願いをいたします。

 次に、被害者保護の問題なんですが、今日も民間シェルターへの支援の問題が随分出されました。委託費が出されるようになったことは改善なんですが、参考人質疑でも、やはり人身売買の被害者を受け入れますと、通訳の問題もありますし、DVの被害者とは一緒にできないこともあって部屋の確保ということもあります。それから、非常に外国との電話代も掛かるというような、普通のDV被害者にない費用が随分施設の負担になっていると。ですから、委託費だけではなくてこの運営そのものへの助成ということを考える必要があると思うんですが、この点、厚労省、いかがでしょうか。

政府参考人(伍藤忠春君)

 私どもは、今までの婦人保護事業、特に最近DV被害者等について一時保護委託ができるような仕組みを講じておりますので、今回もそれと同様の措置を講ずるということにしたわけでありますが、こういった今までの国内の婦人保護事業の枠内で対応すると、こういうことでありますと、一時保護委託ということを充実をしていくということが、なかなか、そこまでが限界かなというようなことで、そのほかにダイレクトに何らかの補助制度を考えるというのは私どもの今のこの社会保障制度の枠内の体系ではなかなか難しいのかなというようなことで考えております。

井上哲士君

 限界などと言わずに知恵を出していただきたいと思うんですが、都道府県が例えば独自にそういう支援などを行った場合というのは、これは特別交付税の対象になるというふうに考えてよいのでしょうか。

政府参考人(瀧野欣彌君)

 特別交付税についてのお尋ねでございます。

 現在、DVの関係で保護の活動を行います民間団体に対しましては、地方公共団体が補助金を出す場合に特別交付税で措置を講じているところでございます。その場合に、当該民間団体が運営するシェルターで人身売買被害者を保護するケースもあるというふうにも聞いておるところでございますが、そういったシェルターがDV法に基づいたものとして地方公共団体の方が全体として補助している場合には、我々特別交付税の算定におきましては、特別に区別することなく全体を特別交付税の算定の対象としている、そういう状況でございます。

井上哲士君

 地方がやれば対象にするということでありますが、やはり基本的には国が私は具体的な助成をしていく必要があると思うんですね。例えば、少なくとも今度配布されるパンフレットにはNGOの皆さんのホットラインの電話番号も書かれるわけですね。これも参考人のとき言われていましたけれども、多国籍、いろんな国の言葉での受付をしようと思いますと相当の人件費が新たに必要になってくると。相談を受けるだけではこの委託費にもならないわけでありますから、もう専ら持ち出しということになるわけですね。

 例えば、こういう相談受付窓口業務だけでも国から委託をするというような形での助成ができないものかと思うんですけれども、これ、内閣官房、いかがでしょうか。

政府参考人(鈴木基久君)

 人身取引被害者の方々が困っている際に被害を訴えるための二十四時間のコンタクトポイントでございますが、これは人身取引被害者の保護のために非常に有効な手段であるというふうに考えております。

 そういった意味で、政府の中では、警察でございますが、一一〇番で人身取引被害者からの訴えということで対応しておりまして、一一〇番では二十四時間、六十か国以上の言語で対応は可能だということでございまして、政府としては現段階ではこの一一〇番というのが最も有効なホットラインであるというふうに認識しておりまして、先生から御指摘がございましたリーフレットの中でもこの一一〇番の電話番号も併せて皆さんに広報をさしていただくということにしております。そういう意味で、NGOのホットラインに財政的な支援を行うということは想定はいたしておりません。

 ただ、人身取引被害者を適切に保護、支援するためにはNGOの方々と連携協力を図るということは大変重要なことでございますので、今後どういった形で協力ができるかということについては、引き続き関係省庁とともにNGOの方々と意見交換をしてまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 政府としては一一〇番を位置付けるということですが、被害者の方々には抵抗感もあるわけで、私は、やっぱりNGOのこの窓口というものは大きな柱として位置付けて、是非援助を考えていただきたいと思います。

 もう一点、一時保護について弾力的運用ということが繰り返し言われておるわけですけれども、昨年の八月に厚労省が出されている都道府県への通知を見ますと、「基本的な対応」として「一時保護の実施等の支援を行うこと。」とあるわけですが、人身取引被害者は不法滞在の状態にある者も多いとした上で、「この場合には、あらかじめ人身取引被害者に対し、一時保護はあくまでも一時的な保護であり原則として二週間程度の運用となっていることをよく説明しておくなどして、一時保護の終了が円滑になされるよう心掛けること。」と、こういう通知になっているんですね。

 これだけ見ますと、どうも弾力的な運用が本当にされるんだろうかという心配になってくるわけでありまして、今回在特などが出されるという法改正に伴って、やはりこの趣旨をしっかり徹底をしていくということが必要だと思うんですけれども、この点どうお考えでしょうか。

政府参考人(伍藤忠春君)

 一時保護という概念そのものがそういう短期的なニーズに応じるということで制度化されているものでありますから、その趣旨を通知をしたということでございますが、実績からいっても、今まで短期の滞在保護で終了しているケースが多いわけでありますが、非常に長く掛かるような場合については、これは弾力的に一時保護制度を活用できるというふうに私ども考えておりますし、それから、今回こういう法改正をして新たな人身取引被害者対策という枠組みもできたわけでありますから、こういった趣旨についてはまた自治体にもよく周知をして、このバランスのある運用が図られるように、柔軟な対応が行われるように私ども機会を見ていろいろ周知をしていきたいというふうに考えております。

井上哲士君

 この間、やはり被害者保護についてのきちっとした法体系もつくることが必要だという指摘がなされましたし、私どもも先日、社民党と一緒にそういう提案もいたしました。是非これは検討していただきたいんですが、少なくとも当面、やはり政府としての総合的な窓口をしっかり置くということ、それから、NGOも含めた連絡会を定期的に開催をして、いろんな実行状況などについても即時にやはり改善をしていくということが必要だと思うんですが、どうも私どもが質問をしようと思いましても、随分たらい回しになる。民間の方はもっと大変だと思うんですね。

 少なくとも当面は、内閣官房がしっかりとした窓口として、どこに聞いてくださいとかじゃなくて、やるということも含めまして、定期的な連絡会の開催も含めて、最後に御答弁をいただきたいと思います。

政府参考人(鈴木基久君)

 人身取引の問題につきましては、内閣官房を中心として関係省庁連絡会議で基本的には対応させていただいておるところでございます。人身取引対策行動計画というのも、そういった席上において取りまとめておるところでございます。

 この行動計画に盛り込まれた施策につきましては、各省庁がそれぞれ適切な対策を講じるとともに、関係省庁連絡会議において、NGOとも緊密に連携を図りつつ、情報の共有、必要な調整を行うことが適当であると考えておりまして、引き続き関係省庁連絡会議を中心に適切な対策を講じてまいるよう努めてまいりたいと考えております。

 また、NGOとの連携でございます。これは、行動計画の策定過程においても、またその策定後においても、こういったNGOの方々からの御意見というのは伺ってきたところでございます。引き続き、関係省庁連絡会議の枠組みにおいて、NGOとも緊密に連携を図ってまいりたいというふうに考えております。


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