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2005年5月12日(木)

法務委員会
「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案」(第3回目の質疑)

  • 犯罪者の再犯防止を防ぎ、社会復帰を果たすうえで重要となる就労支援、雇用保険等について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、外部交通の問題でお聞きをいたします。

 これまで外部交通を始めとした行刑施設の運営は、多くが訓令や通達で行われておりまして、施設長の裁量が非常に大きいという点での弊害等も指摘をされてまいりました。法改正に伴って、こうした訓令や通達というようなものは全面的に見直すのかどうか。それから、こうした訓令、通達が最近までは公表されていなかったわけですけれども、新しくつくられるものについては最初から公表すべきだと思いますけれども、その点、二点、まずお願いします。

政府参考人(横田尤孝君)

 まず最初の訓令、通達の見直しでございますが、これは、法律成立いたしましたときはそれの施行に必要なものでございますので、全面的に見直してまいります。

 それから、公表の問題でございますけれども、この外部交通に関する訓令、通達、現在、矯正行政関係の訓令・通達集は一般の方も購入することができるようになっておりまして、これらが法改正に伴いまして見直しをされた場合におきましても同様の取扱いを続けてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 これまでは所長の裁量に多くゆだねていた外部交通が、新法では八十八条で留意規定というのも置かれておりますけれども、面接とか通信、これが受刑者の権利として確立をこの法によってされたと、こういうふうに聞いてよろしいでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 受刑者の外部交通につきまして、現行法は恩恵的、制限的にのみ認められるものとしております。これに対しまして、この法案におきましては、外部交通について、自由刑が社会からの隔離である以上、ある程度制限されることは当然であるものの、適正な外部交通が受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものであることなどを踏まえまして、受刑者の面会は、その相手方が親族、それから重大な利害に係る用務の処理のため面会が必要な者及び改善更生に資すると認められる者である場合にはこれを許さなければならないこととし、また、受刑者の信書の発受は、これを制限することができる旨の規定がある場合以外はこれを制限してはならないこととするなどしているところでございまして、こうした範囲内では制限できないという意味では、権利として認めることになると思います。

井上哲士君

 受刑者の権利としてかなり広がったわけですね。

 そこでお聞きするんですが、受刑者の中には冤罪を主張して再審を求めていらっしゃる方も少なくありません。そういう皆さんにいわゆる支援団体の皆さんが面会を求めても、これまでは所長の裁量で認めてこられなかったわけですけれども、今ありましたようなこの八十九条の一項の規定又は、一項二号ですね、それから二項などの規定によってこういう冤罪を主張している受刑者の支援団体の皆さんの面会というのも認められることになっていくのかどうか、この点いかがでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 この冤罪を主張する受刑者の支援者と、こういう言ってみれば一くくりのような言い方になりますけれども、そういった方々には様々な方がいらっしゃいまして、結局その法案の定める面会を許す要件に当たるか否かは個別具体的に判断することになると思います。したがいまして、そうした支援者につきまして、法案の定める要件に当たるか否かを一概に、つまり冤罪を主張する受刑者の支援者であるからどうだということはなかなかお答えすることはできないと考えます。

井上哲士君

 条件に合えば可能になっていくんだろうというふうにお聞きをいたしました。

 そこで次に、いわゆる就労支援の問題についてお聞きをいたします。

 再犯を防いで社会復帰を促していくという点で非常に就労支援が重要だというのは、今日の朝からの議論でもいろいろお話がありました。先日の新聞の報道では、仮出所者の雇用に再犯防止のために助成金を出せるように法務省として検討し、厚労省とも一緒に協議しているというような報道もございました。

 就労支援という場合には、法務省だけではできないことも相当多いかと思うんですが、この点で他省との協議も含めてどのような対策を講じようとされているのか、まずお願いします。

政府参考人(麻生光洋君)

 御指摘のとおり、刑務所の出所者等の就労確保の問題は、本人の改善更生を図り、本人の社会復帰を図り、ひいては再犯を防止するために大変重要なことであると認識いたしております。

 そこで、私どもといたしましては、従来から行っておりますけれども、公共職業安定所等と保護観察所や更生保護施設等との協議会を更に強化いたしましたり、あるいは犯罪前歴を承知の上で雇用をしていただく協力雇用主を拡大するなどいたしまして、刑務所出所者等に対するよりきめ細かな就労支援や就労先の一層の確保に努めてまいりたいと考えています。

 また、委員御指摘のありました就労先を効果的に確保していくための方策につきましては、刑務所出所者につきましては、ともすれば社会から排除され就労機会が制約されている、こういう状況がございますので、私どもとしても重要な課題と認識いたしております。今後、関係省庁との連携を強化していく必要があるものと考えております。

井上哲士君

 そこで、厚労省にお聞きをするんですが、この報道でもありました特定求職者雇用開発助成金制度の問題です。私たちもいろんなお話を聞きますけれども、協力雇用主の方は全くのボランティアで、経済的利益は何もなしに出所者の方の就職を受け入れていらっしゃるわけですけれども、なかなか厳しい経済情勢の下で、なかなか雇用主の方もなかなか引き受け切れないというようなこともいろんな、お聞きをしているわけで、この分野に対する支援というのは非常に大事だと思うんですね。

 現状では高齢者とか障害者にとどまっているわけですが、この助成金制度に出所者の方も加えて支援をするべきだと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(高橋満君)

 お答え申し上げます。

 今御指摘のとおり、就職困難者、特に高齢者でありますとか障害者でありますとか等々、こうした就職困難者の雇入れにかかわる助成制度として特定求職者雇用開発助成金制度というものがあるわけでございますが、この助成金制度に刑務所を出所した方々を対象にできないだろうかと、こういう御指摘があることは私どもも承知をいたしております。

 ただ、刑務所を出所されました方々、個々人、様々実は就職が困難な事情というものは区々異なっておるわけでございます。そういう中で、刑務所を出所された方という観点から一律に雇入れの助成の対象にしていくことによって問題が解決できるかどうか、ここはかなり検討を要するだろうというふうに思います。もちろん出所をされた方が例えば高齢者である、あるいは障害者である等々の場合は、当然にこれはこの助成金の対象になってくるわけでございます。

 それから、いま一点、この助成金制度を運用していくに当たりましては、支給対象となります事業主の方に求職者が刑務所を出所をされた方であると、こういうことを始めとした様々な情報を提供していく必要があるわけでございます。そうしました場合、プライバシーの保護という観点からどうなんだろうかと、相当やはり慎重に検討していく必要があるんじゃないかというふうに思っておるわけでございまして、そういう観点から申し上げますと、なかなか難しい困難な点があろうというふうに思っております。

 いずれにしましても、今申し上げましたような様々な問題点、これらも十分踏まえながら、今後関係機関とも連携して多角的な面から研究課題とさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 就職困難な事情は様々だと言われました。様々な事情があるけれども困難という事実には変わりないんですね。ですから、これはやっぱり支援をするべきだと思います。

 それから、プライバシーの問題言われましたけれども、現に今協力雇用主というものを法務省が組織をしているわけで、その人たちはその人が出所者ということを知った上で雇用をされているわけですから、そこに対する支援、何ら現行のでも問題はないわけで、私は十分にこれは可能だと思うんですね。朝の議論でもありましたように、保護司さんにしましてもこの協力雇用主の方にしましても、非常に大事なところを民間ボランティアの皆さんにゆだねているということが大変問題だと思うんですね。

 お聞きしますと、この助成金制度の平成十六年度の予算がほぼ五百億円で実際の執行は二百四十億ぐらいだとお聞きしたんです。半分は使ってないんですね。更生保護の予算全部で百九十二億なんです。これ上回る金額が使われなかったと。別に制度をねじ曲げてまでお金あるんやから使えって言う気はないんですけれども、私は本来の制度の趣旨からいっても、最もやっぱり就職困難な方ですから、この助成金という制度はもっと温かい気持ちで見直していただきたいと思うんですね。

 もう一点、雇用保険の問題もあります。

 基本手当の受給期間が離職後一年以内となっておりますけれども、刑務所へ入るまではちゃんと働いていて保険金も、掛金も納めていたという方が、出所して受給を受けようと思っても一年以上たっておりますと受けることができないという問題もあるわけですね。刑務所に入っている間は、これはもう働こうにも働けなかったわけでありますから、せめてこの期間の分だけは受給期間を延長するようにして、やっぱり新しい出発点に立った方にしっかり就労のための援助をするというふうにするべきだと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

政府参考人(高橋満君)

 お答えいたします。

 雇用保険の基本手当でございますが、言うまでもないわけでございますが、これも、基本手当は失業をされた方々ができるだけ早期に再就職を果たしていただく、そのための求職活動を容易にするものとして、そういう目的で支給をいたしているものでございまして、今御指摘のとおり、雇用保険法第二十条の規定によりまして、基本手当にかかわります受給期間は離職後一年間を原則といたしておるわけでございます。ただし、この一年の期間内に妊娠、出産、育児等、真にやむを得ない事情によりまして引き続き三十日以上職業に就くことができない期間がある場合、これはこれらを勘案して最大四年間まで延長することが可能であるわけでございます。

 こういうような制度的な枠組みになっておるわけでございまして、今のこの受給資格は満たすけれども受給期間が刑務所に入所をしていたことによって原則一年というこの期間が経過をしてしまうということになりますと、基本手当の支給ということはできないということになっております。

 この刑務所に入所をしておるというこの事情というものをやはり考えますと、自らの責任によりまして職業に就くことができない状態になったものだというふうにも考えられるわけでございまして、先ほど申し上げましたやむを得ない事情による受給期間の延長とはやはり事情が異なる。そういう意味では、この期間につきまして延長するということは困難であろうかというふうに思っております。

 私ども、刑務所の出所者の方々につきまして、やはり仕事を通じて生活の安定を図っていくということは大変大事なことでございます。そういう意味では、刑務所等の機関との連携を十分密にしながら、釈放前からの求職登録を行い、また職業相談を行いまして、出所後の職業紹介に努力をする中で就職支援に努めていきたいと、こういうふうに考えている次第でございます。

井上哲士君

 刑期中にいろんな期間が過ぎてしまうという点でいいますと、運転免許の問題も一緒なんですね。この就職活動をする上で運転免許というのは非常に大事なわけですけれども、刑期中に更新期間が過ぎてしまって、出所後の取得が非常に困難で求職活動にも支障を来すということがある下で、この点では出所後の就労支援という観点から対策を取っておられると承知していますけれども、これはどういう中身でしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 現行の道路交通法令によりますと、法令により身柄を拘束されている者につきまして、運転免許証が失効してから三年が経過した場合には、出所後免許を再取得する際に試験の免除が認められず、適性試験、技能試験及び筆記試験のすべてを受験しなければならなくなっております。

 このような場合、運転免許証の失効により出所後の就労先の確保が困難になるほか、被収容者の中には、所持金も少なく、身元引受関係が不良で家族から経済的援助を得られない者も少なくないことから、このような者が出所後すべての試験を再受験しなければならないとすれば、本人の改善更生及び円滑な社会復帰の妨げとなることが予想されます。

 このため、当局におきましては、行刑施設内で運転免許試験、ただしこれは技能試験及び筆記試験は免除されますので適性試験のみになりますけれども、これを実施することにつきまして警察庁、各都道府県警察と協議いたしました結果、これまで一部の行刑施設において施設内での運転免許試験の実施をしております。

 今後、さらに各都道府県警察と協議を進め、残りの行刑施設でも施設内での運転免許試験の実施を図っていきたいと考えております。

井上哲士君

 自分の責任によって刑務所に入って期間が過ぎてしまっているという点では同じなんですね。しかし、運転免許の場合は警察とも相談をしてそれを可能にしていると。なぜそれができて、雇用保険の場合は自分の責任だからといってこの期間延長というのができないのか、私はちょっと納得いかないんですけれども、厚労省、もう一回いかがでしょうか。

政府参考人(高橋満君)

 雇用保険の基本手当の受給、基本手当にかかわる趣旨、目的、先ほどお答えしたとおりでございまして、失業状態にあるということが大きな要件になってございます。

 この失業状態にあるということをもう少し具体的に申し上げますと、労働の意思、能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない、もう少し具体的に申し上げますと、求職活動を行っておりまして直ちに就職できる状態である場合に支給されると、こういうことでございまして、刑務所出所者、刑務所に入所をしている最中におきましてはなかなかすぐには就職できる状態にはないわけでございますし、先ほど申し上げましたように、その刑務所に入るということの背景、事情が本人の責任によるものであるというようなこと等を考えますと、なかなか制度の趣旨を曲げてまで対象にしていくということにはならないだろうというふうに思っております。

井上哲士君

 いや、制度の趣旨からいっても出すべきだと言っているんですね。この失業、雇用保険というのは、例えば自分の責任で勤めている会社に損害を与えて首になったとしてももらえるんですね。その会社の人たちも保険料を払っているわけですよ。この人本人も保険料を払っているんです。仲間に迷惑掛けたからあいつには雇用保険を出さないということじゃなくて、どんな人であっても失業状態になったらちゃんと支給をして、そして憲法に定められた働く権利というのを擁護していくという、こういう土台になっているわけですね。

 今おっしゃったように、刑務所にある間というのは、幾ら就職活動をしようともできないという状況になっているわけです。逆に、例えば同じ有罪になっても執行猶予が付いて刑務所へ入らなかった人はこの制度は利用できるわけですね。ですから、これは同じ有罪を受けて、新しい人生をスタートしようとしたときに、片方の人はもらえて、そして、刑期を終えて罪を償った人が新しい出発をするときにもらえないというのは、余りにも私は矛盾をしていると思うんですね。別に、もっとこの金額を増やせとか支給日数を増やせと言っているんじゃないんです。働けなかった時間だけは時計を止めるべきだと、そして新しい出発を支援をするべきだという、こういう制度は私は絶対必要だと思うんです。

 是非これはしっかり検討いただきたいし、最後、大臣、やはりこういう受刑者の社会復帰というのは、法務省だけでできることは限られていると思います。この犯罪に強い社会の実現のための行動計画、改めて見ましたけれども、この中、三十六ページありますけれども、一行だけ、薬物事犯者、精神障害者、生活困窮者の処遇に関し、医療機関、福祉機関と連携を強化すると、こうあるだけなんですね。

 今、この就労支援というものの重要性というのは非常に浮き彫りになっている中で、更に他省庁にも働き掛けるなど大臣としてのイニシアチブを発揮していただきたいと思うんですけれども、その点の決意をお伺いして、質問を終わります。

国務大臣(南野知惠子君)

 刑を終えて出ていかれる方、本当にこれからの自分の再人生をスタートされる方でございますし、いろいろな環境を整えてあげなきゃいけないという問題点も発生してくるだろうと思っております。これから先の検討、いろいろとしていきたいというふうに思っております。

 よその省庁にも働き掛けてということでございます。特に、雇用の問題につきましては、それもお話はさせていただこうと思っております。

井上哲士君

 終わります。


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