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2005年6月9日(木)

法務委員会
「会社法案」(第2回目質疑)

  • 経理の適正化のため選任される税理士による会計参与の設置が中小企業の実態に合わせ「任意」としたことに対し、銀行や行政の姿勢によって事実上、強制されるのではないかと指摘。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、会社法案、国民から見て、また中小企業から見てどうなのかという観点で質問をいたします。

 会社法の検討をする上で、国民から見て分かりやすい制度、中小企業からとって使いやすい、そして余計な負担を生じない制度である必要があると思いますが、こういう考え方が今回の会社法案にどのように生かされているのか、まず大臣からお聞きをいたします。

国務大臣(南野知惠子君)

 まず、国民にとって分かりやすいという観点から、会社法案では、これまで商法第二編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等に分散していた会社に関する規定を会社法案という一つの法典にまとめるとともに、片仮名の文語体の表記を平仮名の口語体の表記に改めている。これは大変読みやすくなっておるわけで、読みやすくしようとするところでございまして、分かりやすいと、中小企業の方々にも読みやすいということにもなろうと思っております。

 次に、会社制度の利用者の大半を占める中小企業の視点に立って会社法制を見直すという観点から、会社法案では、株式会社と有限会社の会社類型の統合、設立時の最低資本金規制の撤廃、機関設計の規則・規律の柔軟化、会計参与制度の創設など、多くの改正を行うものとしております。

井上哲士君

 御答弁をいただいたわけですが、本当にそうなっているんだろうかということで幾つかお聞きをしていきたいんですが、まず、有限会社の廃止の問題です。

 特例有限会社としては継続が許されるわけですけれども、有限会社制度は廃止をされます。そこで、現行の有限会社制度がどういうふうに評価されてきたのかと、そのことをまずお聞きをしたいと思います。

政府参考人(寺田逸郎君)

 現在の有限会社制度は、中小規模の公開会社でない会社で、その社員が株式会社の株主と同じように有限責任の利益を享受すると、こういう仕組みでできているものでございます。

 具体的に申し上げますと、取締役会を設置する必要はないということなど、機関設計が比較的簡素にできるということになります。また、社員総会の招集通知の発出期限が原則一週間とされているなど、非常に機動的で迅速な意思決定が可能になっております。また、社員以外の者に対しまして持分を譲渡しようとする場合にはこれは逆に社員総会の承認が必要でありまして、閉鎖性の維持というものが容易にできるという仕組みでございます。そのために、先ほど申したように、非公開会社の中小会社にとって使い勝手がまあ比較的いいとそれなりの御評価をいただいていたところでございます。

 他方、しかしながら、有限会社ということで別の会社類型としているために、株式会社に比べますと評価が金融機関その他において劣るということもこれも現実の姿としては言われていることでございまして、どうしても有限会社を、本来は有限会社のような形態を望んでいても有限会社が避けられているという現実もかねてから指摘されたところでございます。

 また、法制度上は社債の発行が認められていないというようなことも関係者の間では一つ不便な点として指摘がされていたところでございます。

井上哲士君

 一昨日の参考人質疑でも、中小企業関係の参考人からは、制度としては非常にうまく機能してきたと、こういうお話でありました。今も使い勝手の良い制度であるという答弁だったわけですね。うまくいっていないのに残っている制度がたくさんある中で、この使い勝手の良い制度をなぜ廃止をする必要があるんだろうかと。

 今幾つか点がありましたけれども、それ自身はむしろ制度の改善という形で残していくということも考えられると思うんですけれども、なぜこの使い勝手のいい制度を廃止をする必要があるんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは、有限会社そのものを単体で考えた場合には、おっしゃるとおり、これを廃止すべき理由はそれほど多いわけではないわけでございまして、これを残すというのも一つの考え方であったろうと思われます。

 しかしながら、他方で株式会社というものがございまして、この株式会社の非常に中小企業向けのものというような形の利用を望む声がありまして、株式会社の中でもそういう企業形態が取れるようにしてほしいと。

 現実に、日本の多くの株式会社というのは実際の株式会社法制を必ずしも全部遵守してやってこられているわけではないと。にもかかわらず、株式会社の形態を取るというのはそれなりの、先ほど申したような現実の様々な環境における理由があるわけでございます。

 そこで、最近では、むしろ中小会社から将来は大きな会社に飛躍するということをあらかじめ念頭に置いた上で会社を設立していくということもございますので、株式会社全体の枠内で今の有限会社と同じようなことができるようにして、で、有限会社のような中小だけをターゲットにするものではなくて、会社の中で様々な工夫をすることによって大きく成長する余地も残し、あるいは現在の有限会社と同じような形態で残るものも残していくのが合理的じゃないかというように法制審議会での御議論があったわけでございまして、そういう意味で、今の有限会社は株式会社にむしろ発展的に取り込まれたというように評価していただけるのではないかと思います。

井上哲士君

 国民の側から見てどうかという問題もこの点でもあるわけですけれども、国民の方から見れば、会社名を見たときに、まあいわゆる有限会社クラスの企業かそうでないかと、そういうことは区別できるという意味もあったと思うんですね。

 現状はそういう有限会社クラスのところであっても株式会社になっているところもあるというようなお話もあるわけですが、いずれにしても、これ制度としては廃止しても、特例有限会社としては相当長期にわたって残っていくということになりますと、一定の混乱が避けられないのではないかということがありますし、定款などを一々見なければこの会社の在り方が分からないよりも、ある程度外形的に名前を見れば判断できると、こういう制度の在り方ということも分かりやすい、国民から見て分かりやすいと思われるわけですが、その点は検討されなかったんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 確かに、私が申し上げたことによって株式会社に制度を統合するということは、いい面ばかりではないわけでございます。おっしゃるとおり、仮に株式会社Aタイプ、Bタイプ、Cタイプというような名付け方ができるとして、それぞれについて日本語でうまく名前ができれば、それは国民にとって分かりやすいわけであります。有限会社法制も、今、正に委員がおっしゃったとおり、仮に有限会社に本来ふさわしいものが全部有限会社になっていれば、それはそういう制度を維持するということの方がむしろ良かったのかもしれないわけでありまして、名は体を表さないということがむしろどちらかというとこの有限会社を株式会社に吸収してしまおうということの背景にはあった、そう踏ん切れたところの一つの原因ではないかと思うわけでございます。

 もちろん私どもも、これが同じ株式会社の中に、債権者にとって様々な仕組みが余りにドラスティックに違う種類としてあり得るということになりますと、これまたちゅうちょしたところでございますが、有限会社も株式会社も基本的には物的会社、つまり有限責任、構成員が有限責任のある会社という意味では変わりありませんので、そういう意味で、それを全部株式会社に吸収するということもそれなりに理解をできることではないかと考えていただければ有り難いところでございます。

井上哲士君

 名は体を表さない現状があるというお話でありました。むしろ、現状をそういう表すような方向に変えるという考えもあったんではないかと思うんですが。

 そこで、今後の公告義務等の問題についてお聞きをいたしますが、現行の有限会社に相当する企業も、株式会社を選択しますと公告義務が課せられると、こういうことになります。従来は、有限会社には公告義務がなくて、株式会社には公告義務があったわけですね。株式会社の場合は不特定多数から資金を調達することが目的としていますから、経営全般を把握することが難しい個別の投資家に経営状態を知らせるためのもので必要だったと思うんですが、有限会社はそういうことがないから必要がなかったと、こういうことでまずよろしいでしょうか。従来は有限会社に公告義務が課せられてなかった理由。

政府参考人(寺田逸郎君)

 おっしゃるとおり、有限会社に従前、公告義務が課されてないわけでありますけれども、これはどちらかといいますと、これによって受ける負担と社会的に得られるメリットというのを比較いたしまして、やはり負担の方が大きいという判断だったかと思います。

井上哲士君

 そのメリット、デメリットという問題は、名前が変わっても一緒だと思うんですね。

 現在、有限会社を選択しているような規模のところが今後株式会社になった場合も、そこの負担というデメリットというのは引き続きあるわけですね。今までの有限会社でいいますと、取引先も顔見知りばっかり、株主も経営者本人だけ、経営面も大規模でありませんので、大体商売を見ていれば信用状況も把握をできるということがあったと思うんですね。だから、大体そういう程度のものが今後は株式会社になっていくというところに新たに公告義務を課す、その必要性はどこにあるんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 有限会社法制が最初にできたときは、この会社の経理についての透明性ということについての社会的なニーズというのはやはりそれほどではないという、そういう理解だったと思われるわけであります。しかしながら、今日においては小さな会社においても非常に、先ほども申しましたけれども、大きな商売をする、現にする、あるいは将来する可能性があるわけでありまして、そういう意味では、むしろ会社の透明性についてのニーズというのは極めて高くなっているんだろうと考えております。

 本来なら、有限会社のままでも、このような時期においては公告義務を課するという方向に議論が進むところでありますけれども、それが株式会社になりましたので、むしろ、これまでの株式会社の公告義務というのをそのまますべての有限会社的形態を従前だったら選択しただろうと思われる対象の会社にも課するということも、一定の負担はあるわけではありますけれども、それなりの社会的な意義というのはむしろ増しているということから、そのような義務を課してもやむを得ないんではないかと、こう考えているわけでございます。

井上哲士君

 私たちも、このいろんな商法、会社法の議論をする上で、透明性の確保、向上ということは言ってまいりました。非常に社会的影響力の大きい大企業などがもっとこれを確保していくというのは当然だと思うんですね。しかし、やはり身の丈に合った透明性といいますか、ということもあろうかと思うんです。

 有限会社といいますと、大体、いろいろありますけれども、夫婦と一人ないし数名の従業員がやっているというような典型的なイメージとの関係でいいますと、商売における信用というのは、決算がどうなっているかというよりも、財産の状況を含めて経営者個人をかなり見ているということが多いわけですね。赤字は出ているけれども現状では問題なく経営をしているというようなところが、公告をすることによってかえって信用悪化するというようなことも現実には起こり得るわけですね。この企業会計原則に沿った間違いない貸借対照表公告義務を課すというのは企業実態にはそぐわないんじゃないかと、こういうふうにも思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 私どもも、今の井上委員の企業実態論からいたしますと、なかなか厳しい義務だと、負担感がそれほど小さいものではないということは十分に理解できるところであります。

 しかし、他方、もう少し会社法制の原点に返って考えてみますと、元々、先ほども個人保証の話が出ましたけれども、すべて無限責任で会社をつくることも、先ほどもお話に出た合名会社、合資会社等でできるわけであります。にもかかわらず、あえて物的会社、有限責任の会社を利用した以上は、やはりその有限責任という会社の枠を利用するなりの負担は負っていただきたい、こういうところでございまして、それがいかに小さいものであれ、今日のようにだれがどういう形で商売をしているか分からない、非常に市場というものが広がっておりますので、小さな会社でもいろんなところで商売をするわけであります。そういう広がりのある社会においては、やはり透明性の確保というのは相当に重要な事項であろうと、こう考えて、法制審議会でもそのような御理解をいただいているところでございます。

井上哲士君

 公告方法は、官報か日刊新聞公告ないし電子公告ということになるわけですが、大体どの程度費用掛かると見込んでおられるんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 公告費用は、掲載スペースが決まっているわけじゃございませんのでなかなか標準額というのも申し上げにくいところでございますけれども、官報の場合はおおむね数万円、日刊新聞紙の場合は、これは相当高くて数百万円掛かるわけでございます。ただ、御承知のように、今日では電子公告を利用することができるようになってきておりまして、このホームページ等の利用による公告であれば、これは非常に最近ですと値段が下がってきておりまして、ウエブサイトそのものの維持費用でこれが可能になってくると、このように理解をいたしております。

井上哲士君

 ベンチャー企業の話がさっきからもよく出ているんですが、そういうところばっかりでもありませんので、安くできるといっても、ウエブサイトを持つこと自身、非常に負担感を持つ会社もあると思うんですね。今のやっぱり厳しい経済状況の中で、一円でも負担を減らしたいというのが実態でもあります。

 我々は、情報開示そのものは大いにしなくちゃいけないと、債権者保護の点からもそうですけれども。しかし、最初にも言いましたように、実際の有限会社規模のところの実態からいいますと、会社に計算書類等を備え付けるだけで足りるんじゃないかと。継続的取引がある債権者にとっても、年に一回だけしかない公告よりは取引先にある計算書類を見せてもらうということの方が便利ではないかと思うわけで、あえてやはり公告義務を課す必要があるんだろうかと思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 その個々の実情を見ますと、それはいろんな方法の方が合理的と見える場面はあるわけであります。それを否定するものではございませんが、しかし制度として全体にどうあるべきかということを考えます場合には、やはりこの公告という制度によってだれでも見られるような仕組みがこの物的会社については望ましいというのが一つの今日でのあるべき姿勢だということは、先ほど申したように、法制審議会でのむしろ共通の理解でございました。

井上哲士君

 そうしますと、この公告と一体になる会計の問題についてお聞きをしますけれども、企業会計が公正、適正に行われることは当然でありますし、それは企業自身のためであるんだということは参考人質疑でも強調されたところでありました。

 一方で、この計算書類の公告義務によって、会計原則が一層均一であることが求められてきます。中小企業の場合は、十分な売上げがない場合であっても銀行取引とか公共事業への参入ということで黒字を出さないといけないということが起きます。その際に、例えば経営者の給料を含む役員報酬を減らして配当で調整するとか、それから減価償却費を多めではなくてむしろ少なめに計上するということもかなり通常行われていることですね。これは税法上は何の問題もない会計処理です。それを、経営者の給料が例えばゼロはおかしい、法定耐用年数より長く使用するので減価償却を少なめに計上したらそれは適正でないと、こういうことでしゃくし定規にやられますと、これが公告義務と合わせて中小企業に押し付けられるということになりますといろんな混乱が起きると思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 この会社法案そのものでは、今の問題にされました株式会社の会計の原則でございますけれども、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うということで規定が置かれているわけでございます。四百三十一条でございます。

 会計基準や現行商法の財産評価規定は、ある種の会計事象に対して行うべき会計処理を唯一のものとするものではなくて、公正妥当と認められる今申し上げた範囲で複数の選択肢が認められていると、このように私どもも考えているところでございまして、会社法案においても今の規律が変更されるものではないので、現行法と同様に、それぞれの会社において、複数の会計処理のうちそれぞれの会社にふさわしいもの、適切と考えるものを採用すると、こういうことが可能になっております。それぞれ十分にお考えの上に採用していただきたいと考えております。

井上哲士君

 そうしますと、確認しますけれども、例えば現行では商法会計原則とか企業会計原則とか税会計原則とか、少しずつ違うものがありますけれども、今回、真正でない計算書類の作成、公表というのは会社法上は過料の対象になっていくわけで、このいずれの原則であっても違法の評価を受けないということで確認してよろしいですね。

政府参考人(寺田逸郎君)

 結論から言うと、そのとおりでございます。

 現行の商法での公正な会計慣行として主として認められているのは、企業会計審議会の企業会計原則、あるいは財団法人の財務会計基準機構が定める会計基準、これらが当たりますけれども、決してこれらに限られるわけではございませんで、委員もお話しになられました税法の定める処理方法なども、もちろんこれが公正なものでないといけないということは当然のことではございますけれども、会計慣行に含まれるということで私どもは理解をいたしております。

井上哲士君

 そうしますと、今、中小企業庁が進めている中小企業の会計というのはどういう位置付けになっていくんでしょうかね。今後、公開を目的としている企業などにこれが言わば強制されるということにはならないということでよろしいでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは私どもの方からコメントするのが適当かどうか分かりませんが、何回も繰り返しになりますけれども、計算規定については唯一の会計処理を強制しているわけではございません。商法の立場というのは、複数の選択肢を示した上で公正妥当な会計処理を認めているわけでございます。

 しかしながら、今おっしゃったような中小企業の会計に関する指針について中小企業庁が検討を進められておられまして、余りいろいろな整合性がない会計処理というのは望ましくないというお立場から、企業会計基準において認められている中小企業の特性を考慮した選択的な取扱い、実務において参考とされている税務会計をも参考としながら、しかしながら、よりどころとすべき会計基準を明らかにされようとされているわけでありますから、それは一つの有力なスタンダードにはなろうと思いますけれども、そのスタンダードの中にも様々な考慮要素というものが既に含まれているというふうに私どもは理解をいたしております。

井上哲士君

 繰り返しになりますけれども、やはりこの中小企業の実態に合った柔軟なやり方ということを求めたいと思うんです。

 その上で、会計参与の問題についてお聞きをするんですが、まずちょっと法務省、確認しますが、今回会計参与を任意設置ということにしましたけれども、これは企業実態に合わせるということだと思うんですが、なぜ任意設置としたのか、まずお伺いします。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは中小企業の中で会計事務の取扱いというのをより専門家に任せた方がより正確になる、あるいはより社会からの信用を得やすくなるというニーズがあり、それに対応するものとしてつくるわけでございます。もちろん、今のままでも取締役等会計事務処理をする責任者がおいでになるわけでありますから、それがそれで十分できると、この中にももちろん専門家も場合によってはおられるわけでありましょう。そういう企業においてはこれは必要がないわけであります。そういう御判断でつくられるものでございますから、これを強制することは避けて任意設置としております。

 しかしながら、その対象企業は、私どもは主として、大企業においてはもっと別のいろいろなやり方があろうかと考えておりますので対象になりにくいだろうと思っておりますけれども、法律上は何らの制約を加えておりません。しかし、中小企業において採用されるということが多く期待されるんだろうと思っております。

 そういうことで、会計参与というのは、今後、何といいますか、着実に根付いていくということを私どもは期待をしているわけでございます。

井上哲士君

 これを置くところが、適切なところが任意に設置をしていくということは結構なことだと思いますし、参考人の質疑の中でもそれが様々な融資などで有利に働いていくと、言わば御褒美としてくっ付いてくるというようなお話もありました。

 それで、これ埼玉県がやっているスーパーサポート資金というのがあるんですけれども、これなどは今、日本税理士会連合会がやっている中小会社会計基準適用に関するチェック・リストを添付する者については通常五年の融資期間が七年以内になると、こういうプラスをしている、こういうことがあるわけですね。

 ただ、これにとどまらず、そういう例えば会計参与を置くということがむしろスタンダードになってしまって、置かないことによって不利な扱いをされるということが今の金融情勢なんかで見ますと、そういうおそれがあるんじゃないかと思うんですね。融資を切り替えるときにその条件として会計参与を置くということが例えば金融機関から求められたり、ないしは公共事業への参入の際にそれが求められている形で、実際上、任意と言いながら強制をされるんじゃないかという懸念の声なども私ども聞くわけですね。非常に規模によってはこういうものの設置が過大な負担になるような中小企業もあろうかと思うんですね。

 こういうふうに金融機関などを通じて実質的に強制されるようなことがあってはならないと思うんですが、この点、金融庁、来ていただいていますけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(鈴木勝康君)

 委員御指摘のように、金融機関の一般の融資といいますのは、その融資先の財務状況ですとか資金の使途ですとか返済財源等を的確に把握します。そしてさらに、当該融資先の技術力ですとか販売力とか成長性等もかんがみまして、こういった情報を基に適切な審査を行うわけでございます。そして、融資の実行を決めるものと認識しております。

 したがいまして、先ほど御指摘いただきました会計参与については任意ということになっていることでもありまして、御指摘の会計参与の設置の有無のみをもって直ちに融資の実行を決めることにはならないものと考えております。

 ただ、他方で、金融庁としましては、金融機関が適切な融資を行うに当たっては借り手企業の財務諸表の正確性が確保されることが重要だと考えております。今般の会計参与制度の導入は借り手企業の財務諸表の質を高めると、その信頼性の向上に資すると、こういうことを認識していることから、金融機関が企業金融の円滑化を図る上で有用なものとは考えていると思います。

 ただ、いずれにいたしましても、金融庁としましても、先ほど申し上げましたように、今後とも中小企業を含む健全な取引先に対する資金供給の一層の円滑化に努めてまいる所存であります。

井上哲士君

 繰り返しになりますけれども、こういう会計参与を置くことによって会計の公正、真正性が高まる、そのことによって融資などが受けやすくなる、そのこと自身はいいことだと思うんです。しかし、そういうのを設置するのが非常にかえってデメリットがあるというようなところにまで強制をされるということに事実上なりますと、これは本来の趣旨とは違うんではないかと思うわけですね。

 その際、今、それ有無のみをもっては見ないという話でありました。しかし、例えばこの間も、いわゆる金融検査マニュアルが大銀行も中小のところも一緒で同じようなことが行われるというようなことがかつて問題になったこともあるわけですね。

 やはり金融機関の検査の際などに、例えば融資先の中で会計参与が導入されているかどうか、その比率が高いか低いかとか、こういうようなことがチェックの中に入ってきますと実際上分かりやすいですから、入っているかどうかというのは、数的指標などで取られますと、やはり機械的なことが起きてくるかと思うんですが、検査についてはこういうことはちゃんと配慮されるんでしょうか。

政府参考人(厚木進君)

 ただいま会計参与制度と金融検査との関係について御質問がございましたので、答弁させていただきます。

 金融検査におきましては、金融機関の自己査定の正確性を検証するに際しまして、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等によりその返済能力を検討するとともに、債務者に対する貸出し条件及びその履行状況を確認し、業種の特性を踏まえるなど、総合的な判断をさせていただいているところでございます。

 特に、先生の方から御質問がございました中小零細企業向けの貸出金等につきましては、当該企業の技術力、経営者の資質や、これを踏まえた成長性など、あらゆる判断材料の把握に努めまして、それらを総合的に勘案して債務者区分の判定を行うこととしております。例えば、金融検査マニュアル別冊、中小企業融資編、これは昨年の二月に改訂さしていただきましたけれども、その中で、経営者の資質や、これを踏まえた成長性を判断するに際しまして、財務諸表など計算書類の質の向上への取組状況を様々な判断要素の一つとして挙げさしていただいております。

 したがいまして、会計参与を設置することにより財務諸表など計算書類の質の向上が図られていると認められる場合には、当該債務者の債務者区分の判定に当たって様々な総合勘案する要素の一つとなるというふうには考えられます。

 しかしながら、財務諸表等計算書類の質の向上の手段としては、先生おっしゃいますように様々な手段が考えられますので、会計参与の設置の有無だけがその判断要素になるとは考えておりません。また、そういう財務諸表等計算書類の質の向上への取組というのは様々総合勘案する要素の一つでございまして、そのことのみをもって判断するというわけではございません。

 いずれにいたしましても、我々金融庁といたしましては、検査におきましては、今後ともこうした金融検査マニュアル及びその別冊、中小企業融資編に即しましてあらゆる判断材料の把握に努めまして、中小零細企業の経営実態の的確な把握に努めたいというふうに考えております。

井上哲士君

 是非、中小企業の実態に合った運用をお願いをしたいと思います。

 最後に、社債問題についてお聞きをいたします。

 これまで有限会社には認められなかった社債の発行が会社法案では認められるわけでありますけれども、その理由は何でしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 現行の有限会社については、元々非常に非公開的な性格の会社でございますので社債を発行することは認められていなかったわけでございます。ただ、今日のように、会社の類型で必ずしも会社の実態が一義的に判断ができないような状況になってまいりますと、小さい会社、非公開的な会社だからといって必ずしも社債のような大量の債券のニーズがないということは言えない状況になってきております。必然的にそうでなければいけないという規制をする必要はないんではないかというところから、今回、その点の見直しをしたものでございます。

井上哲士君

 監査役も置かないような、現行でいえば有限会社規模のところも、それから合同会社のように内部規律に関する規制が事実上ないようなところも含めて社債発行が認められるということになるわけですが、さらに一円企業ということになりますから、そういうところも含めて社債発行が認められると。

 そうなりますと、この間いろんなこれに関するトラブルとか被害が起きているわけで、そういうことを助長する温床となると、こういうおそれがあると思うんですが、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 法律的にいいますと、この社債を発行することができるかどうかということは、基本的には、もうその債券でお金の貸し借りをすることはできるということはこれはどこの会社もできるわけでございますので、こういう大量、類型的な社債の発行をすることによって、買い主、つまり社債権者というものが本当に保護されるかどうかということをやはり考えなきゃならないわけでございます。

 それで、一般の債権者としての保護の面と、その集団的な性格を有する社債権者固有の保護の面と両面あるわけでございますけれども、一般的な債権者保護の面に関しましていえば、会社法案においても、内部機関の設計がどうであっても、基本的には配当財源の規制があり、あるいは先ほども申し上げたような計算書類の公告義務が共通に課されているというようなことで、その点についての特に問題は生ずることはありませんし、また集団的な性格を有する社債権者としての保護の面について言いましても、社債権者集会の規定を共通に整備するというほか、社債の発行形態に応じて社債管理者の設置の義務付けを行うということによりまして権利者としての保護は図れるのではないかなというように考えているわけでございます。

 したがいまして、内部の組織形態がどうであれ、社債を発行することができないということはやや規制としてはきつ過ぎるということで、今回このような仕組みを導入することになったわけでございます。

井上哲士君

 時間ですので、終わります。


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