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2005年6月28日(火)

参院法務委員会
「会社法案」(第6回目質疑・採決)

  • 企業不祥事を防止し、社会的責任を果たさせるためにはコーポレートガバナンス(企業統治)の確立と企業経営の透明性の確保が重要と指摘し、不祥事の再発防止策の情報開示も必要とただす。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 この会社法案、政府、参考人合わせて七回目、質問に立つことになりました。この間の質疑を通じまして、取締役の権限を強めて経営の自由度を高めるならば、それにふさわしく取締役の責任を強化をすること、また、証券市場の規律を高めて監視体制を抜本的に強化することが必要だということを質問をしてまいりました。今日はその上で、さらに、情報開示の必要性について質問をいたします。

 まず、大臣にお聞きをいたします。

 西武やコクドの問題、それからカネボウの粉飾決算など、様々な企業不祥事が相次いでおります。こういう不祥事を防止をする上で、企業がその社会的責任を果たしていく上で、コーポレートガバナンスの確立、それから経営の透明性の確立というのは非常に大事であります。また、いったん不祥事を起こした場合に、その再発を防止するという点で、不祥事対策について営業報告書に記載するなど、こういう対策も必要かと思いますが、こういう情報開示の拡大についての大臣の所見、そして、今回の会社法案でどういう手当てがされているのか、まず答弁をお願いします。

国務大臣(南野知惠子君)

 先生にも度々御質問いただき、ありがとうございました。

 企業活動の透明性の確保ということについての御質問でございますが、そのためにも取締役が会社の不祥事に対しまして適切な対応策を取ることは重要なことであると認識いたしております。取締役が会社の不祥事に対しまして適切な対応策を取るということを確保するための手段といたしましては、実際の会社の運営の在り方が大切であるということは、これは言うまでもございません。先生御指摘のとおり、対応策を開示することもまた重要な手段の一つであると考えております。

 会社法案におきましては、このような観点から、事業報告などにおける開示事項を充実させていきたいと考えております。事業報告に記載する具体的事項は法務省令で規定されることになりますが、国会におきます審議やパブリックコメントの結果なども踏まえました上で、例えば内部統制システムの内容などを事業報告を通じて開示させること、これらを考えております。

井上哲士君

 こういう不祥事対策として重要なのが経営者の監督機関たる取締役の構成であります。特に、社外取締役は経営者同士のなれ合いを防ぐために大変重要でありますけれども、これまでの会社法制においては、社外取締役といいましても、親会社、関連企業の役職員が就任することも可能でありまして、独立性に疑問があるということは様々指摘もされてまいりました。例えば、最近、グループの上場会社全体が委員会等設置会社に移行した日立グループの場合は、企業内上場会社十六社で、社外取締役の数の平均が二・八人、そのうち親会社の取締役は二・二人ということになるわけですね。

 今回の法案でもこの点の改善はされてないわけですが、法務省として、真に独立性を持った社外取締役の必要性ということについての認識はいかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 元々、取締役会と株主全体の関係を考えまして、取締役会の中に社外取締役を置くべきだという御主張はかねてからあるわけでありまして、そういうことについて、非常にヨーロッパ、アメリカ諸国の中には強い規制を持っている国もあるわけであります。

 一般論として申し上げれば、確かに取締役の業務の執行の監視役としてある種の客観的視点を有する外部者を置くというのは、それはそれ自体としては望ましいわけでありますし、その意味で独立性が非常に高い取締役、社外取締役を置くというのは非常に望まれるところであるという面があることは、これはおっしゃるとおりであります。

 ただ、逆にしかし、取締役というのは会社全体の運営を決めるという側面もあるわけでありまして、その意味でいうと、やはり経営能力みたいなものも当然のことながら必要でありまして、その企業の業務内容や経営というものにどの程度精通するか、あるいは、一般的にそういうことにどういうぐらい精通するかということを抜きに、単に独立しているということだけで評価をできるものではないという側面も、これは反面としてあるわけであります。

 加えまして、我が国の法制度では、ガバナンスの確保の趣旨として、社外取締役に限らず、半数以上の社外監査役を構成員とする監査役会等の制度もございますので、こういう制度の存在というのも併せて考えなければならないわけであります。

 したがいまして、一般論として、独立性の高い社外取締役の有用論というのは、これは確かに一定の理由があることだろうというふうに考えているわけでございますけれども、それぞれの企業においてどこまで独立性が高く社外的でなければいけないかという、一律に決めるのはなかなか難しいということがございます。

 殊に、現段階、我が国における現段階をどういう段階であるかと見るかといいますと、この議論が始まりましてからまだ多少歴史が浅いというところも否定できません。社外取締役そのものが平成十三年の立法によって設けられたもので、平成十四年の五月に施行されたばかりでありまして、そういう意味から、もう少しこの社外取締役の現在の在り方というものの実際の運用状況、あるいは企業の方々の受け取られ方というものを十分に見極めた上で、更にどういう在り方が適当かということを検討していく、こういうプロセスになるんではなかろうかと私どもは考えているわけでございます。

井上哲士君

 確かに、一律に現段階で基準を決めるのがどうなのかというのは議論はあるでしょう。しかし問題は、株主が選任権を行使するに当たって、総会に提案をされている社外取締役の独立性というものをきちんと判断できるだけの情報が開示をされているのかということだと思うんですね。例えば、この社外取締役候補が当該会社とどういう取引関係にあるのかということについても、多くの総会では僅少とか、この程度の情報しか提供されないわけで、この社外取締役の独立性、客観性を判断をするだけの情報が欠いているということがいろいろ指摘をされているわけですね。

 こういう社外取締役の独立性に関する情報の開示を広げていくということの重要性についてはどういう認識でしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは、今申し上げたとおり、法律で一律に決める条件というのはなかなか難しいところがございますので、やはりそれぞれの会社でそれぞれの会社に見合った社外性あるいは独立性というものを判断なされるということが重要であります。その意味では、今議員がおっしゃったようなこの社外取締役の選任に当たっての開示、情報開示というのが大変に重要だろうという考えでおります。

 会社法案の三百一条で、参考書類に係る省令において社外取締役に関する開示事項を定めるということを予定をいたしておりますが、ここには独立性に関する事項を含めて開示させるという方向で今検討をしているところでございます。

 具体的に申し上げますと、社外取締役としての独立性のポイントといたしまして、親会社、関連会社、主要な取引先の業務執行者かどうか、あるいは取締役業務以外の業務の委託関係がどのようなものであるか、あるいは過去のその会社における活動状況、あるいはほかの会社における活動状況、社外取締役としてどの程度経験があるかというようなことを含めまして、十分に分かるということはそれぞれの会社で御判断になる部分もございますけれども、一定の水準というのはこれでもって保っていただきたいということで省令を決めるというつもりでおります。もちろん、これは最終的にはパブリックコメントにかける事項でございます。

井上哲士君

 あのエンロン事件を契機にアメリカでも社外取締役の独立性が議論になりまして、その実態が問われるようになっております。今、省令でということもありましたけれども、例えば、先ほど言いました、社外取締役候補が所属する会社と当該会社の取引なども、具体的には割合なども示すなども含めて、踏み込んだ情報開示が必要だと思います。

 もう一つ情報開示で重要なのが大企業の取締役の個別報酬の問題ですが、現状がどうなっているのか、それから諸外国の実態、イギリスやアメリカどうなっているか、併せてお答えいただきたいと思います。

政府参考人(寺田逸郎君)

 取締役の報酬についての現在の規定ぶりでございますが、現在の商法では、取締役の報酬開示について、それぞれ取締役別の報酬を開示するということを義務付けてはおりません。営業報告書による取締役の報酬開示も責任限定に関する定款の定めや契約を締結する場合のみでございまして、これらは商法施行規則の中で決まっているわけでございますけれども、結局のところは総額が分かるということになるわけでございます。ただし、ストックオプションによる報酬プランというのは個別の開示ということになっております。

 また、実務が実際どうなっているかでございますけれども、個別に開示している例は極めてまれだということに私どもは承知をいたしております。企業の関係者にお伺いいたしますと、やはりプライバシーの保護とかほかの会社との比較を避けたいというような考慮があるようでございます。新聞報道によりましても、全員を開示するのは全く、一社もないという状況に現在はなっているところでございます。

 ところで、外国でございますが、アメリカでありますとかイギリスはこの点についてもう少し開示を進めるという立場を取っておられまして、アメリカにおいては、SECのレギュレーションにおいて、役員の報酬につきましては、直近の事業年度中に最高執行役員、CEOであった者、報酬額の十万ドルを超える上位の四名などについて個別の報酬開示の義務付けをいたしております。

 また、イギリスにおきましても、八五年の会社法の附則において、取締役の受領した報酬の総額、ストックオプションの金額、それから長期インセンティブ計画の下で受領した金額の合計額が二十万ポンド、約三千万円でございますが、これを超える最も高額な報酬を受けた取締役については個別の開示をしておりますし、上場規則においてもう少し進んだ開示を求めているところもございます。

 なお、フランスとかドイツにおきましては、それぞれの商法典ないしは法律において規制を置いているところでございますが、フランスにおいては、取締役の構成員に対する報酬額と子会社の報酬額を個別に株主総会に提出する報告書に記載することの義務付けが行われておりますし、ドイツにおいては、これに対しまして報酬開示というのは義務付けていないという、こういうことになっているようでございます。

井上哲士君

 今回の会社法案で株主が取締役を評価できますのは、選任、解任、報酬の決定ということに限られるわけです。特に、選任に当たっての個別報酬という問題は非常に重要な情報の一つであるわけですね。全体としての、最初に申し上げましたけれども、経営の自由度などを高めていくという点からいいますと、取締役の責任の強化、またコーポレートガバナンスという観点から、一定規模以上の会社などについてはこういう個別報酬の開示も何らかの義務付けをするべきではないかと考えますけれども、この点最後お聞きをいたします。

政府参考人(寺田逸郎君)

 先ほども申しましたとおり、この点を含めて情報開示というのは非常に重要な問題であるという意識は持っているところでございます。

 ただ、この報酬の問題につきましては、先ほど実務界の反応ということで申し上げましたとおり、それぞれの取締役のプライバシーの問題あるいはほかの会社との比較の問題等がありまして、なかなか実務界からは消極的な姿勢も一定程度示されているところでございまして、現時点ではなかなかこのメリット、デメリットを総合勘案してもう少し進むべきだということを一律に言えるというのはなかなか難しいところでございます。

 もちろん、一定規模の会社、一定規模以上の会社について様々な規制が考えられますし、あるいはまた上場、非上場という仕切りにおいても考えられることがあり得なくはないだろうというふうにも思っておりますけれども、これはまたそれぞれその個別の問題もあろうと思いますので、いろいろと検討はしてまいりたいと考えております。

 なお、会社法案の下においては、四百三十五条の二項に基づく省令におきまして、報酬開示を強化するという観点から、事業報告によって直接開示することを義務付けた上で、社外取締役等の報酬についての分離開示あるいは任意の個別報酬開示にも対応した規定を整備してまいりたいと、こういうふうには思っております。

井上哲士君

 終わります。

井上哲士君

 日本共産党を代表して、会社法案に反対の討論を行います。

 反対の第一は、本法案が取締役会の経営の自由度を高める一方で、その責任を軽減し、会社経営に対する監視機能を弱体化するものだからであります。

 会社法案では、資本配当規制など様々の規制を一層緩和するとともに、取締役会の決議のみで行える簡易再編行為の要件を緩和し、配当の決定権を株主総会から取締役会に移すなど、経営の自由度を大幅に高めています。ところが、これまで無過失責任だった取締役等の責任を過失責任とするなど、経営者責任、監視機能は弱体化しています。

 経営者の責任強化、経営の透明性拡大など、牽制手段の強化なしに経営の自由を一方的に拡大することは、違法配当、粉飾決算など不正行為の温床になりかねません。JR西日本の事故、コクド・西武鉄道問題など、企業犯罪が頻発する今日において、経営者の責任強化と透明性を高め、労働者、国民による監視、監督の強化こそ求められているのであります。

 第二は、本法案が企業再編を大幅に自由化しますが、企業グループとして責任を負う法整備のないまま企業再編の自由だけを拡大すれば、債権者、労働者などの保護が不十分になるからです。

 欧米では、企業グループは一体で活動する以上、企業グループで責任を取るということが当然ですが、日本ではそれがないため、企業再編によって経営の失敗を労働者、債権者、地域に押し付けるということが横行しており、本法案によって拍車が掛かることは明らかです。

 今日では一体として活動する企業グループには実態に即して責任を取らせる企業結合法制の整備が不可欠ですが、会社法案では完全に見送られました。

 第三は、有限会社制度の廃止が中小企業に新たな負担をもたらすだけでなく、中小企業経営者や国民の間に混乱を招くおそれがあるからです。

 有限会社制度の廃止は、計算書類の報告義務などの中小企業に新たな負担をもたらすことになります。中小非公開会社と大規模公開会社という実態が相当違う企業を別々の会社形態で規制してきたのは当然です。会社法案における株式会社のように、自由度があり過ぎて中小企業が会社運営上で違法か否かの線引きの判断に悩む制度は、中小企業を対象とする会社制度としてふさわしくありません。また、一般国民にとって、名前を見ればどんな会社か分かるということは経済生活を行う上で重要と考えます。

 なお、会社法案八百二十一条について法務省の解釈と条文に乖離があるのは事実ですが、擬似外国会社による会社法の脱法行為を防ぐこと自身は必要であり、八百二十一条を削除する民主党修正案には賛成はできません。

 以上申し上げまして、討論といたします。


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