本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2005年4月6日(水)

参院経済・産業・雇用に関する調査会
「多様化する雇用への対応」について


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。今日は、三人の参考人の方、貴重な御意見をありがとうございます。

 多様化する雇用への対応という場合に、多様な働き方を保障し応援をするという側面よりも、どうも、企業の側の使い勝手のいい働かせ方をする点にどうも傾いているんじゃないかという思いをいつも持っております。

 そこで、まず篠原参考人にお伺いいたしますけれども、御社でいろんなスキルアップであるとか、それから保険の問題とか大変努力をされていること、よく分かったんですが、ただ、業界全体で見ますといろんな問題があるかと思います。

 つい先日、東京地裁が派遣労働者の死を過労自殺と認めた判決が下りまして、この場合、派遣元も、それから受けた方の会社両方に賠償の対象が拡大をしたということで大変注目をされた判決だったと思うんですが、ある新聞は、正社員であれ請負であれ、働く人は物ではない、利用することだけを考えるのはおかしいと、こういう社説も書いておりました。ある派遣会社は、無料お試しキャンペーンというのをやっておるのを見て、本当、物扱いでいいのかなということを思ったことがあるんですが、こういうマイナス面、現に起きている問題についてはどのようにお考えで、業界としてはどういうふうな方向で解決をすべきかとお考えかということをまずお聞かせいただきたいと思います。

 それから、山田参考人にお伺いいたします。

 同一価値労働・同一賃金ということの提起がございました。私どもいろんな国会で議論をする中で、パート労働法の改正というような形でやはり均等待遇についての法的強制力持たすべきだということも提案をしているわけですが、政府の方は、これはあくまでも労使間で決めることだということでなかなか進まないわけですが、実際には、特にパートの方は非常に組織率も低いという中で、労使合意ではなかなかいかないんじゃないかと思っているんですが、こういう法的強制力を持たした規制という点についてどうお考えかということが一つ。

 それからもう一点、これも山田参考人なんですが、この非正規の増加というのはトレンドで変わらないだろうと、こういうお話がございました。この問題をずっとこの調査会でも議論をしているんですが、日本の物づくりの強さということを考えたときに、やはり現場でのコミュニケーションであるとか、それから企業自身が教育をしていく、そういう力ということを持っておかないと、中長期的にはそういう強さが弱まっていくんじゃないかということもいろんな議論としてあるわけですね。そういうちょっと長い目で見た場合に、やはり一定の方向を切り替える必要もあるんではないかという気もしているんですが、これについてのお考えをお聞かせください。

 以上です。

会長(広中和歌子君)

 まず、篠原参考人、お願いいたします。

参考人(篠原欣子君)

 一番最初のその過労死ですか、働き過ぎたとか残業し過ぎたとかという結果でお亡くなりになったとかという、その件があったかと思うんですが、それはもう本当にあってはならないゆゆしき問題で、本当に残念だなと。遺憾に思っているというんですか、何か本当にあってはならないことだと思っております。本当にあってはならないことなんで、それは本当に業界全体としてもそういうことは絶対あってはならないということをもう本当に非常に強く我々は感じております。

 あと、仕事ですね、派遣の人に働くことを強要は余り本当はできないんですけれども、そういうふうに強要をして長時間働かせるということは多分余りないんじゃないかと思いますよ。逆に、正社員の方がやはり会社に対する帰属意識であるとか愛着心で、ついつい過労になるまで仕事をしてしまったというケースが時々あるかとも思うんですけれども、それに比べて派遣の方は、やはり時間から時間ということの契約で行っているケースが非常に多いので、まあこれは、そういうことがあったということはたまたま本当に残念ですけれども、ほとんどの場合はそういうことは余りないのかなというのは私は思っております。

 以上です。

会長(広中和歌子君)

 どうもありがとうございます。

 それでは、山田参考人、お願いいたします。

参考人(山田久君)

 一点目の同一価値労働・同一賃金に関して法的に強制力を持つべきかということだと思いますけれども、この点を考えるには、私が先ほど最初のプレゼンテーションの中でしゃべらせていただきましたように、実は今の労働法制そのものがやや時代から乖離してしまっている部分があるんじゃないのかなという論点が一つあると思うんですね。

  〔会長退席、理事辻泰弘君着席〕

 そういう意味で、単純に今の現状に対して均等化していくということをやってしまうと、恐らく、これは大竹先生も御指摘されているとおり、企業の雇用需要が大きく減ってしまってむしろ失業を起こしてしまうという、失業の上昇を起こしてしまうという副作用を生じさせてしまうんじゃないかなと思います。

 そういう意味で、最後に申し上げたような、いろんな労働者保護の枠組みを変えていくと同時に、その均等化をやっていくべきなんじゃないのかなと。その均等化というのも、そういう意味でいうと、現時点でその法的強制力を持って、直ちに法律にそれをするというよりは、むしろ均等待遇の配慮義務というふうな形で、将来に向かったあるべき全体の労働保護の在り方に向けて均等していくというふうな考え方の方がいいんじゃないのかなというふうに考えてございます。

 それから、二点目の物づくりの現場を中心とした正社員の持っているむしろその良さというんですか、そこの見直しという、実際これは起こっていますね。例えば、非正規社員のシェアというのはじりじり全体では上がっているんですけれども、正社員だけ取りますと、最近、むしろ正社員の比率が少し戻ってきています。

 そういう意味では、おのずと産業によって合理的な、これは経済合理性から見ても妥当な水準というのがあるはずで、ある部分、これは製造業のような特に技術の伝承が重要な分野に関しましてはやや急速にやり過ぎた、そこの反省があって揺り戻しが生じているんじゃないのかなということだと思うんですね。だから、ここはある部分、過去十年というのは非常に大きな、日本経済がその環境の変化に直面して、対応がもうどうしてもできなくなって、いや応なしにその雇用環境を大きく悪化させたというところがあったわけですけれども、ここに来てその環境が変わってきている。

 そういう意味では、もう気付いている経営者に関しましてはそういうことをやり始めているということだと思いますから、この辺り、もっと、もう一回、確かに非正規化という流れはあるんだけれども、これは単純にあらゆるところがそういうことが起こっているわけじゃなくて、やっぱりその業務の性格とか業種の性格、あるいは仕事そのものの性格ということをそれぞれの経営者あるいは労働組合がもう一回見直して、お互いに最適なやっぱりやり方ということを勘案していくべきなんじゃないか。そうすると、おのずと正社員の比率も回復してくる部分は当然あるんじゃないのかなというふうに考えております。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.