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井上哲士ONLINE
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2005年5月18日(水)

経済・産業・雇用に関する調査会
「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」

  • 中間報告とりまとめのための意見表明。フリーターやニートなど、若者の雇用問題について、政府は若者の雇用に対する社会的責任を企業に積極的に果たさせる必要があると主張。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 日本経済の景気は回復の局面に入った、既に堅調に回復しているとも言われておりますが、国民の暮らしや地方にその実態も実感もないというのが現状だと思います。回復したのは多国籍企業などいわゆる大企業の収益と設備投資が中心であり、多くの中小企業は依然として厳しい経営環境にあります。

 また、職場では、賃金水準の相対的に高い正規労働者に代えて派遣労働など安価な労働者が導入され、国民の家計収入は連続して低下をし、国民生活や地方経済には上向きになる気配がない。青年の雇用問題などが社会問題化をしているのが実態であります。

 そこで、この間の参考人からの意見聴取や質疑応答を踏まえまして、雇用の問題を中心に意見を述べます。

 第一は、リストラや不安定雇用の促進が日本経済の基盤と日本の物づくりの優位性を掘り崩していることを直視をし、日本経済の未来を見据えた抜本的な転換を図ることが必要だと考えます。多くの企業が、バブル崩壊後の深刻な不況の中で、コスト削減、特に人件費を抑制して利益を確保する大リストラに向かい、高失業率や不安定雇用の拡大を生み出してきました。このことは、目先の利益には結び付いたかもしれませんが、家計収入の低下や将来不安を引き起こすとともに、企業収益が上がっても家計収入に結び付かない経済構造をつくり、消費の低迷による景気悪化となり、それを理由にした人減らしという悪循環も生んでまいりました。同時に、こうした不安定雇用が日本経済の将来をも脅かしております。

 政府参考人からも、派遣では物づくりの強さは出ない、リストラの時代にコストだけで派遣を増やしたということは、やっぱりこれからの国際競争に生きていく強い製造業をつくるという意味ではマイナスだと述べられました。また、日本経団連からも参考人が来られましたけれども、その報告の中で、リストラでの人員削減や有期雇用従業員の増加によって、技術の伝承もままならず、現場力すなわち現場の人材力が低下しているとも述べております。経済界が日本経済全体の問題として雇用に対する社会的責任をどう果たすのか、真剣に検討し、転換することが求められております。

 政府も、雇用の流動化、労働市場の活性化などとして不安定雇用を拡大する政策を雇用政策として進めてきました。裁量労働制の導入など長時間労働を合法化する方向での規制緩和、派遣労働の原則自由化、製造業への解禁、臨時雇用の拡大などが進められてまいりました。こういう雇用政策から安定した雇用を拡大する雇用政策への転換、労働者が安心して働くことができるルールの確立こそ今求められていると思います。

 二つ目は、青年の雇用対策について。

 その責任を若者が自立していないことに求め、若者対策にとどめるのではなくて、雇用する側や教育環境を含めた社会の在り方の問題としての対策に転換することが必要だと考えます。

 フリーターやニートの急増にどう対応するかは、多くの参考人から意見が述べられた大変重要な課題です。政府から若者の雇用対策についての報告も受けましたが、その中心は雇用される側の若者対策であり、雇用する側への対策が必要だと思います。日本経団連も、二〇〇五年の経営労働政策委員会報告で、若年層の雇用問題が深刻化した最も大きな原因の一つは、若年層に対する求人の不足である、多くの企業が雇用調整を行ったことが若年層の雇用問題を深刻化させた可能性は否定できないと自ら明らかにしています。

 若者の雇用の深刻化は、将来不安や社会保障の空洞化、少子化の原因など、社会全体の問題であります。同時に、技術や仕事が伝承されていかないなど、日本経済の未来にとっても重大な問題であります。その点で、若者の雇用の面での社会的責任を企業に積極的に果たさせる必要がありますし、政府も、サービス残業の規制による雇用の拡大や、福祉や教育など社会的に必要な分野での雇用の確保など取り組む必要があります。

 また、求人の拡大と同時に、働く環境の改善も重要です。

 ある参考人は、ニートが増えた原因として、病気だから、けがだからと言う人が物すごく増えていることに驚いていると指摘をされました。正社員になっても、合理化、効率化の名の下に企業内教育の予算が大幅に減らされ、十分な人材育成がされないまま即戦力として働かされ、一方、派遣や請負など無権利、違法状態が当たり前のような劣悪な環境で働いている若者も少なくありません。厳しく、やりがいも将来の展望もない中で、体と心の健康をむしばまれる青年も少なくないことを見るならば、このような、人を物扱いする働き方こそやめさせる必要があるのではないでしょうか。

 次に、より若者の実態に合わせた対策の必要性であります。

 雇用支援では、ジョブカフェ、ハローワーク、また自治体の若者支援など、かなり取り組まれていますが、ニートの若者たちにとってはその場に行くこと自体が相当難しく、対応も時間が掛かります。ニートの支援には若者と同じ目線に立って、時に共同生活をしながら、若者たちが自立するのに時間を掛けてじっくり付き合って支援しなければならず、支援するスタッフや財政の問題など、その果たしている役割の大きさを考えれば、こうしたNPO等に関しては実態に即した支援を一層強化する必要があると思います。

 さらに、参考人の意見の中には、相対的に低い階層出身の子供たちが高卒労働市場の逼迫の直撃を受け、さらに経済的理由や家庭的背景から学力と進学機会を奪われるという二重の機会喪失の末に高卒無業者となっているという指摘がありました。よって、家庭的な背景ゆえに学力を低下をさせたり、あるいは特定の進路選択を強いられてしまうようなこういう層の子供たちに対して、手厚く教育的な支援をする必要があるのではないでしょうか。また、就職支援の点でも、職業的成熟と職業的能力という二つの側面から質を高める支援をする必要があると考えます。

 以上、終わります。(拍手)

井上哲士君

 名前も出ましたので、一言だけ申し上げます。

 日本が本当に世界で最も平等な社会と評価をできたのかというのは、かなり私は異論を持っておりますけれども、そういうことをおっしゃる方がいたというのは確かに聞いたことがございます。それ自体を今議論をする気ないんですが、今のお話との関係でいいますと、たしか去年でしたっけ、「希望格差社会」とかなんとかいう本が結構売れたと思うんですけれども、この間の参考人質疑の中でも、ニートの若者の言葉なんかで、どうせ僕なんかとか、こういう言葉を非常によく聞かれた。だから、チャンスのスタートラインに立つ前に希望自身を持てなくなっているという若者の姿というのも随分出されたと思いますし、私もいろいろ聞くことがあるんですね。

 ですから、結果、それからそのチャンス、その以前の問題にこういうことを感じている若者がやっぱり少なくなく出てきているというその事実と、そしてなぜそうなっているかという辺りも今後大いに研究をしていくべき課題ではないかなということを問題提起だけしておきたいと思います。


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