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2005年10月13日(木)

参院外交防衛委員会
「郵便送金業務約定について」

  • 通信販売代金の支払いや留学学費の仕送りなどを中心に利用が増えている郵政公社の国際郵便送金業務について、郵政民営化法案が、完全民営化後の継続を義務付けていないことを追求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 提案された条約と約定は賛成でありますけれども、現在審議中の郵政民営化法案と密接な関係がありますので、その点について質問をいたします。

 まず、外務大臣にお伺いしますけれども、国際化が進む下でこの国際的な送金業務は非常に広がっております。この国際郵便送金業務の持つ役割、その中でこの送金業務約定が持つ意義についてまずお伺いをいたします。

国務大臣(町村信孝君)

 委員御指摘のとおり、グローバル化が進んでいる世界経済の中、また、人の移動であるとか資本の移動が非常に活発になってきております。そういう中で、民間金融機関などを通じて多様な国際送金が行われているわけでございます。日本でも多くの国との間で比較的小口の送金を中心としてこの国際郵便送金が使われているという実態がございまして、先ほど総務省からの答弁もございましたように、過去五年間では取扱額が毎年増加をしているという状況にあるわけでございます。

 そうした国際郵便送金業務を実施する際に適用される規則を決めたこの郵便送金業務に関する約定というものは、この国際郵便送金業務を秩序立てて確実に行うためにはその基礎として非常に重要な役割を果たしていると、かように認識をしているところであります。

井上哲士君

 この国際送金業務が大きな役割を果たしているということでありました。

 では、それに対して、今の審議されている郵政民営化法案が将来にわたってそれをきちっと担保しているのかどうかと、これが問われると思います。外務大臣も眼鏡のベストドレッサー賞を受賞されたそうでありますけれども、本当にそうなのか、この法案がこの役割に果たしてちゃんと担保されているのか、めがね違いということがないようにお願いをしたいと思うんです。

 郵政公社に来ていただいておりますけれども、まずこの国際郵便為替について、この業務約定は約百三十か国が加盟しておりますけれども、郵便為替について、日本から外国への振出し、それから外国から日本への到着について、件数と金額について平成十二年と十六年でそれぞれ御報告をお願いします。

参考人(斎尾親徳君)

 まず、平成十六年度の取扱実績でございますけれども、為替につきましては、日本から外国への送金が四十七万七千件となっておりまして、金額にしますと約五百五十九億円となっております。それから、十二年度の実績でございますけれども、為替につきましては、件数にしまして七十七万件、金額にしまして五百二十七億円となっております。

井上哲士君

 非常に増大をしていっているわけですが、この為替の振出状況について振出先の国名とその件数、上位五か国ぐらいで最近の数をお示しいただきたいと思います。

参考人(斎尾親徳君)

 平成十六年度の取扱実績で上位五か国は、件数では米国、中国、ドイツ、英国、韓国、金額では米国、中国、英国、ドイツ、フランスの順になっております。件数で申し上げますと、米国が二十四万四千件、中国が四万件、ドイツが三万六千件、英国が三万四千件、韓国が二万八千件となっております。

井上哲士君

 同じように、国際郵便振替の方の利用状況でありますけれども、この振出しと到着の合計で平成十二年と平成十六年、いかがでしょうか。

参考人(斎尾親徳君)

 平成十六年度の取扱実績で見てみますと、国際郵便振替でございますが、日本から外国への送金につきましては、件数にしまして九万七千件、金額で約四百九十二億円となっております。それから、外国から日本への送金につきまして、振替でございますけれども、約四千件、金額にしますと約十億円となっております。

 そして、十二年度の実績でございますけれども、日本から外国への送金でございますけれども、これが三万一千件、金額にしますと七十三億円、逆に外国から日本への送金でございますけれども、件数にしまして四千件、金額にしますと七億円となってございます。

井上哲士君

 振出しでいいますと、件数で三倍以上、金額では約七倍というふうに非常に膨れ上がっております。

 先ほど、上位五か国を紹介いただきましたけれども、東南アジアについてはどういう状況になっているでしょうか。

参考人(斎尾親徳君)

 平成十六年度の取扱実績で見ますと、アジア諸国あての送金で多いのは、件数では中国、韓国、タイ、フィリピン、台湾、ベトナム、香港、インドネシア、金額で見ますと、中国、韓国、タイ、ベトナム、香港、台湾、フィリピンとなっております。

 なお、全体に占めるアジア地域あての送金の割合でございますけれども、件数では二五・四%、金額では二二・八%となってございます。

井上哲士君

 これらの送金目的というのはどうなっているでしょうか。

参考人(斎尾親徳君)

 通販などによります物品購入代金の支払の割合が最も多くて三八・九%、次いで生活費が二八・三%、学費が一二・四%となっておりまして、これらの三つ合わせますと送金目的全体の約八割となっております。

井上哲士君

 国際化の中でこの郵便送金は非常に大きな役割を果たしておりますけれども、今挙げられた送金目的を見ましても、ますますこの役割は大きくなると思います。国際送金は銀行もやっておりますけれども、非常にこれに比べて郵便送金というのが優れた面があります。

 振替用の請求書を今手に持っておりますけれども、送金の種類は、海外の受取人の住所あて、それから郵便振替口座あて、銀行口座あてと三種類の送金先が選択をできますが、銀行の送金というのは、これは海外の受取人は銀行口座しか指定をできないということになっておりまして、大変この郵便局の国際送金は柔軟なシステムになっております。

 もう一つ大変優れているのは手数料の安さでありまして、非常に安くなっています。現行の手数料設定でどうなっているか、主なものを少し紹介をしていただけますか。

参考人(斎尾親徳君)

 まず、国際郵便為替につきましてでございますけれども、送金金額に応じまして料金が逓増する料金体系となっておりまして、例えば送金金額が十万円以下の場合には千円、そして五十万円を超えますと、五十万を超え百万以下の場合ですと二千五百円、以降、送金金額五十万円ごとに五百円の料金が加算されることになっております。

 また、国際郵便振替につきましては、送金金額に関係なく一律の料金体系となっておりまして、通常振替は四百円、電信振替が千四百円となっております。

井上哲士君

 手元に資料も配付をいたしましたけれども、とりわけこの振替の場合は送金金額に関係なく一律四百円、大変安くなっているわけですが、一方、都市銀行の国際送金の手数料はどうなっているでしょうか。

参考人(斎尾親徳君)

 民間金融機関のサービスは郵便局のサービスと必ずしも同一ではありませんので単純には比較はできないと思いますけれども、民間金融機関の外国送金の手数料は、これは公社で調査、把握している限りということで申し上げますと、例えば四千円から六千五百円程度になっていると聞いております。

井上哲士君

 私も都市銀行の本店に幾つか電話をして確認をしてみましたけれども、例えば、みずほ銀行の場合は送金金額にかかわりなく窓口の取扱いで一律に一件当たり五千五百円以上ということでありました。東京三菱銀行も、これ送金金額にかかわりなく窓口取扱いで一律に一件当たり五千円以上ということですから、郵便送金と比べますと随分割高になっているわけですね。

 しかも、郵便送金の場合は簡易郵便局以外の局で取り扱っていますので、全国二万以上で、局で取り扱っていると。どんな地方からでも送ることができるわけでありまして、この郵便送金、国際郵便送金がなくなるということになりますと、高い手数料で、しかも地方の人はその手段がなくなると、こういう状況になってくるわけであります。

 そこで、内閣府から副大臣来ていただいておりますけれども、この大変大きな役割を果たしている国際郵便送金がこの民営化、郵政民営化に当たってどういう取扱いになっていくんでしょうか。

副大臣(西川公也君)

 今回の法案では、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律附則第九条及び第十三条において規定しておりますけれども、郵便貯金銀行が、民営化後当分の間、国際郵便振替・為替の業務を行うよう所要の経過規定を置いております。したがいまして、公社が現在行っております国際郵便為替・振替業務は民営化後当分の間、当該業務を承継する郵便貯金銀行が取り扱うと、こういうことにしております。

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委員長(林芳正君)

 この際、委員の異動について御報告いたします。

 本日、犬塚直史君が委員を辞任され、その補欠として那谷屋正義君が選任されました。

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井上哲士君

 完全民営化までの間は、この郵貯銀行がこれを承継をするという御答弁だったと思うんですが、その郵貯銀行が発足をする時点で、今、私、この郵便送金の優れた点として手数料が安い、取扱局が二万局ある、それから送金先も三種類あると、こういうことを申し上げましたけれども、こういうサービスが基本的に同じ水準で承継されると、こう確認してよろしいですか。

副大臣(西川公也君)

 そのような考えでこの法案を、お尋ねのような趣旨で法案を策定しております。

  〔委員長退席、理事浅野勝人君着席〕

井上哲士君

 発足時には現行水準のサービスが承継をされるということでありますが、しかし、先ほど言いましたように、都市銀行とこの郵貯銀、今の郵便局の送金手数料には相当大きな格差があるわけですね。そうすると、新しく発足した郵貯銀行が、発足時では現行サービスを引き継いでも、その後この手数料を引き上げたりするということがないと断言できますでしょうか。

副大臣(西川公也君)

 手数料の問題でありますけれども、これは経営者がどうなるかと、その人たちの経営判断の中で行われていくものだと思っておりますけれども、適切な料金水準となるよう配慮していくと、こういう考え方になるかと思います。

井上哲士君

 そうすると、先ほども申し上げましたように都市銀行などは五千円、高いところは六千五百円ということがございます。郵便の場合は半分、一番安い場合は四百円と非常に簡易なものがあると。銀行は実際、民間としてそういう費用が必要だということでやっておるわけでありますから、こういう民間銀行の高い方に合わされていくということになるんじゃないでしょうか。

副大臣(西川公也君)

 ただいまも申し上げましたけれども、お客様に提供するサービスの内容、利用状況、経営状況、コスト等を踏まえた上で次の経営に当たる皆さんが適切に考えてくれると、こういうふうに私どもは受け止めております。

井上哲士君

 民間企業、銀行は、非常にこれはコスト掛かるんですね。ATMなどできないんです。大変複雑なこういうものを書かなくちゃいけない、だからコストが掛かるということで非常に高い利用料を設定をしているというのが今の現状なんです。今の御答弁でいいますと、結局、コスト等を勘案をして経営判断ということになりますと、大変安価な今の手数料が引き上がってくるということにしかならないということを私は指摘をしておきたいと思うんです。

  〔理事浅野勝人君退席、委員長着席〕

 その上で、完全民営化になったらどうなるのかということでありますけれども、完全民営化をされますと、この国際郵便送金をやる根拠規定がなくなるということになります。一方で、この約定に基づく義務というものはあるわけですね。ここの矛盾はどのように解決をされるんでしょうか。

副大臣(西川公也君)

 完全民営化後のお話を、お尋ねをいただきましたけれども、完全民営化後は当然一般商法会社である郵便貯金銀行と、こういうことになるわけでありまして、まあ義務付けというわけにはいかないと、こういうことになりますけれども、今までの経過措置がありまして、経過措置の規定がございますが、整備法附則第二条により、郵便貯金銀行の完全民営化以降は確かに御指摘のように今までの取決めを失効するわけでありますけれども、当分の間、私どもは、みなし免許を付与するときにそれを規定しておりますのでそれが継続されていくだろうと、こう考えておりまして、郵便局ネットワークを通じたこの種のサービスの提供の状況等を踏まえましてこれからも適切に対応してもらうようにやっていきたいなと、こう思っております。

 完全民営化後におきましてこれらの要素を、本当に離れていくのかどうかと、こういうことを見通すことは極めて困難な状況にありますので、今回の法案では民営化後をどうするかと、これにつきましては特段の規定は定めておりません。郵便貯金銀行の完全民営化までの間の経過を見ながら今後の対応を決めていきたいと、こう考えています。

井上哲士君

 今、郵便為替法では例えば、郵便為替の業務はこの法律の定めるところにより日本郵政公社が行うと、こうなっておりまして、この郵政公社を郵貯銀行と読み替えるということでありますけれども、完全民営化後はこの法律の規定がなくなるわけでありますから、何らかの法律的な手当てをしなければこれの業務の受皿ができないと思うんですが、そういうことでよろしいでしょうか。

副大臣(西川公也君)

 完全民営化した後は今申し上げましたように一般の商法の会社になりますから、政府としてこういう義務付けをやれと、こう規定するのは私どもは適当でないと、こう考えておりまして、完全民営化までの十年ということを想定をしておりますけれども、その期間に義務付けをしておりますので、それらが継承されていくだろうという考え方が一つあります。

 さらに、十年後に外国への送金がどういう手段でそれらが主流になるかというのは非常に分かりにくい、見通せないと、こういうことでありまして、この完全民営化までの十年間の間に何らかの検討をしながら、将来にわたっての送り方をどうするかと、こういうことも決めていきたいなと、こう考えています。

井上哲士君

 本当、驚くべき私答弁だと思うんですね。年間六十五万からの利用があるこの国際郵便送金について、完全民営化後は一体その受皿があるのかどうか、これが全く定められておりませんし、そして、十年後に、やはりこの業務は必要だと、私はもっともっと必要になると思うんですけれども、それをやろうと思ったら、根拠規定は何もなくなるわけですから、新たな法律の手当てをしなくちゃいけないんです。ところが、そのことは全くこの法案には書かれておりませんで、私、その点では大きな穴が空いた欠陥法案だと言いたいと思うんですね。

 サービスが良くなる良くなると言いながら、この点でのサービスは下がるということはもう明らかでありますし、完全民営化後の手当てが全く法案にされてないという点では欠陥でもあり、看板違い、私は廃案しかないと思いますし、この問題は衆参議論をしてきて一度も議論になってこなかった問題なんです。それがまだまだこういう問題があると。何か明日にも採決というようなお話があるようでありますけれども、とてもそんな状況でないということも最後申し上げまして、質問を終わります。


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