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2006年3月28日(火)

文教科学委員会
「義務教育費国庫負担削減の法案」について(質疑・採決)

  • 教材費について、地方自治体で標準額を大幅に下回る額しか措置されず、教育現場に困難をもたらしていることについて調査と指導を要求。また、耐震診断について、予算も確保し、期日を明確にして耐震化を進めるよう要望。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、教材費の問題で質問をいたします。

 今日も何人かの委員から問題点の指摘がありました。私も前回、既に教材費が一般財源化をされ、その下で基準財政需要額に対して七二%しか措置をされていないということも指摘をいたしました。また、その下で、水道代が掛かるために九月のプールをやめたとか、運動会のときに石灰の節約のために線を引くのを極力控えているとか、こういう実態も御紹介をいたしました。

 で、大臣、前回の質疑のときの答弁で、この問題について、私も懸念を持っているとされまして、実態調査を行い適切な指導を行いたいと、こう答弁をされました。これは大変大歓迎でありまして、まあ善は急げと申しますので、具体的にどういう調査をされ、いつからされ、どのような調査をし、そしてどういう指導をされようと考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。

国務大臣(小坂憲次君)

 教材費につきましては、毎年予算措置状況調査を行いまして、小中学校の設置者である市町村における教材費の措置状況を把握しているところでございますけれども、先日申し上げましたように、私としても、例えば、具体的に申し上げれば、学校現場において大きな世界地図があって、それをまだきれいだから使えるじゃないかといっても、実際に内容が、国名等が変わっていて陳腐化しているということがございます。そういった状況では困るわけでございまして、しっかりとした教材が整備できるように、迅速にそういった状況の把握をしてほしいということを事務方に指示をいたしました。

 そういったことから、平成十八年度においては、毎年行っている予算の措置状況調査に加えまして、新たに教材の実態についての現状を把握するための教材の整備状況についての調査を実施するようにいたしたいと思っております。調査の具体的な内容とスケジュールにつきましては現在事務方で検討中でございまして、私としては早急に実施したいと、このように考えております。

井上哲士君

 是非お願いをしたいと思います。

 住民の人はなかなか他の自治体とのこの比較をするということはできませんので、たまたま引っ越してみると、えらい違うやないかということになったりもします。それから、教科書などは無償で提供されますから、これは全国一律だと思っていても、まあ都会と比べてこの辺はある程度仕方がないのかなとあきらめる場合も出てくると思うんですね。実際にはきちっと本来は共通の水準が確保されるように措置をされているということが知られていないということもあろうかと思うんです。

 そういうことを含めて、やはり地域住民によく分かるように明らかにしていただきたいと思うんですけれども、その点、局長、いかがでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 ただいま大臣からも御答弁ございましたけれども、毎年度の調査に加えまして、私ども、教材の実態について調査をし、その結果をしっかりと把握をしていきたいと思っております。例えば、学校に整備されている教材は今どういう状況なのか、学校が必要とする教材はどういうものなのか、その数量はどうかとか、こういったようなことにつきまして調査をし、また市町村間においてどういう状況の違いがあるのか、こういったようなことも明らかにしていきたいと思っております。

 大臣の御指示を受けまして、今具体的な調査内容とスケジュールについて検討しているところでございます。

井上哲士君

 次に、今後の教職員人件費の見通しに関連してお聞きをいたします。

 中教審の答申の中では、平成十六年度の公立義務教育諸学校の教職員人件費は五兆八千九百億円と見込まれるが、今後、教職員の定期昇給や退職手当、共済費の負担の増大等のため、教職員配置基準を現状のまま改善しない場合でも、平成十八年度には六兆円を超え、平成二十六年度には六兆三千二百億円とピークを迎えることが推計をされると、こう言っております。これに公立学校の分、公立高等学校の分を加えますと、平成二十八年度には八兆八千六百億円でピークを迎えると。その結果、平成十六年度から平成三十年度までの負担増の累積は六兆四千三百億円に達することが推測されると、こういうふうに言っております。

 いわゆる二〇〇七年問題とか言われておりますけれども、これからこういう退職手当、共済費というものの急増が指摘をされているわけでありますが、これは既に一般財源化をされております。ですから、地方自治体にいたしますと、急速にこの点での人件費の確保が困難になるという事態が明らかだと思うんですね。これに二分の一から三分の一ということになりますと、いよいよこの必要最低限の標準法に基づく教職員の数も確保できないんじゃないかと、こういう懸念が出てくるわけですが、こういう退職手当、共済費などの急増ということなどは、今回のこの法案の中で、経過の中でどういうふうに考えられているんでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 昨年の中央教育審議会の議論の中で、東京大学の苅谷教授の方から、公立義務教育諸学校の教職員人件費の将来推計というものが報告をされまして、中教審ではそれに基づいていろんな議論が行われたところでございます。

 今先生からお話しございましたように、教職員の給与費は平成十九年度にピークになりまして、また退職手当は平成二十八年度にピークになることが予想されております。人件費全体では、平成二十六年度がピークになるということが見込まれておりまして、当面、給与等を合わせました教職員の人件費は増加をするということが予想されております。こういった状況を踏まえますと、教職員の人件費を長期にわたり安定して確保していくということが不可欠でございます。

 そのために、まず国の負担率は三分の一ということになるわけでございますが、国と地方により給与費の全額を保障する義務教育費国庫負担制度を堅持をしていくということがまず何よりも必要かと存じます。また、地方の一般財源で措置をされております退職手当等において確実に財源が確保されるように地方を促していくということも必要でございます。

 今後とも、私ども、こういった将来推計等も踏まえながら、義務教育の水準の維持向上のために、各都道府県における予算状況等について把握をしつつ、必要に応じて予算措置等について必要な指導、助言を行ってまいりたいと考えているところでございます。

井上哲士君

 同じような答弁がいつも返ってくるわけでありますが、やはり中教審に出された資料で、日本の教育を考える十人委員会の方が地方自治体のアンケートについて出されております。

 自治体の教育予算についてはどのようにお感じかと、これに対して全国の教育長が、不足しているが六一・〇%、かなり不足しているが二五・九%となっております。そして、では、どのような方法が最も確実に財源を確保できると考えますかという質問には、全国の市区町村長さんが、国庫負担金、これが八二・五%と、こういうお答えなわけですね。現状でも九割近い市区町村が不足をしているという状況があり、そこに今後、退職金等の急増ということがあった場合にやはり相当の自治体の圧迫感があると思うんです。

 今日も朝からいろいろ与党の皆さんからもお声がありますけれども、例えば、そういう財政的な理由から教育的な観点や住民との合意よりも優先をさして学校の統廃合が行われるとか、こんなことの危険性も私は非常に感じるわけでありますけれども、こういう点はいかがお考えでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 基本的に義務教育費国庫負担制度を堅持をすると、負担率は変えるわけでございますが、このことによりまして全国どの地域にいても教育の機会均等、水準の維持向上が図られる、このことがまず何よりも私ども基本だと思っております。

 学校の統廃合の問題につきましては、それぞれの地域の実情に応じまして設置者において判断をするわけでございますが、文部科学省といたしましては、学校規模に応じました教育的な効果、あるいは統合によります子供たちの通学の問題あるいは負担の問題、さらにはその地域における小学校、中学校の果たしてきた役割、こういったものをやはり総合的に判断をして考えていくことが大事だと思っておりまして、財政的な理由だけによりまして統廃合が進んでいくということはないようにきちんと教職員の定数につきましては標準法に基づいて確保をしていくということが大事であり、またそう努めてまいりたいと思っております。

井上哲士君

 地方自治体の財政力の格差が結果として子供たちにしわ寄せが行かないように強く求めておきたいと思います。

 次に、公立学校の施設整備費についてお聞きをいたします。

 先ほども御紹介ありましたけれども、昨年の三月に出されました「耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について」という報告がありますが、この中で、特に耐震化の問題は非常に地域差が大きいということから、「一時的に多大な財政支出が伴い、設置者の財政負担の大きい公立小中学校施設の整備については、地域間の財政力格差がそのまま学校の安全性の格差につながらないよう、国が必要な財源を安定的に保障し、適切に学校施設の安全性の確保を図っていく必要がある。」と、こう述べているわけですが、この考え方は今回の制度の中ではどういうふうに生かされているんでしょうか。

政府参考人(大島寛君)

 お答えを申し上げます。

 今先生御指摘がありましたように、昨年の三月の有識者会議におきまして、国が必要な財源を安定的に確保すると、こういうことが提言されているわけであります。

 まさしくそういった趣旨から、昨年の三位一体の改革におきましては、公立文教施設整備費について地方六団体から廃止、税源移譲が求められていたところでございますけれども、昨年十一月の政府・与党合意等を踏まえ、公立学校の施設整備に目的を特定した財源を保障しつつ、地方の自主性それから裁量度を高める観点から交付金化をすることとしたところでございまして、これらの点は有識者会議においても提言されているところでありまして、今回の改正はこの提言をも踏まえたものであるというふうに考えております。

井上哲士君

 さらに、この報告書は、地方の主体的判断ということを前提にした上で、全面的建て替えから改修への転換を促すよう財政の仕組みを改革する必要があるとしておりますけれども、この点は今回の法案ではどう反映しているんでしょうか。

政府参考人(大島寛君)

 今回の改正に当たりまして、国が定めることとなります施設整備基本方針におきましては、改築から改修への転換を求めることを予定しているところでございまして、また、従来、負担金として措置されていた改築事業を改修等の事業と併せて交付金化することとしているわけであります。

 この交付金の交付に際しましては、地方公共団体は、施設整備計画を作成し、計画期間を明示した上で耐震化等の目標を設定することになるため、その達成に向けて早急かつ効率的に耐震化を図ることが必要となり、改築から改修への転換が促進されるものと考えているところでございます。

井上哲士君

 今出ました国の施設整備基本方針、それから地方自治体が作る施設整備計画ですけれども、それぞれの関係と具体的中身ということはどうなるでしょうか。

政府参考人(大島寛君)

 まず、施設整備の基本方針でございますけれども、文部科学大臣が作成する施設整備基本方針は、公立学校等の施設整備を地方公共団体が実施するに当たっての指針を国として示すものでございます。その具体的な内容といたしましては、公立学校等の施設整備を取り巻く状況を示した上で、まずは、一つは、地方公共団体において整備計画期間における耐震化の目標を設定するなど緊急に耐震性の確保を図ること、それから、バリアフリー化や防犯対策などの教育環境の向上を図ること、こういったことなどを、公立学校等の施設整備の目標に関する基本的な事項等を定める予定でございます。

 それから次に、施設整備基本計画でございますが、これも施設整備基本方針と同様に文部科学大臣が作成するわけでございますが、施設整備基本方針に基づいて交付金の交付に関する事項について定めるものでございまして、具体的な内容といたしましては、地方公共団体が作成する施設整備計画に記載すべき事項、例えば整備目標や対象事業といったことなどを定める予定でございます。

井上哲士君

 耐震化の整備目標はそれぞれ書かれるようですが、これは期日は明記をされるのか。耐震診断については国交省の補助も使って今年中に終えるということは何度もお聞きするわけですが、それを踏まえて、じゃ、耐震化はいつまでにやるのか、これが見えてこないんですが、これは明記されるんでしょうか。

政府参考人(大島寛君)

 施設整備基本方針等の詳細については現在検討中でございますけれども、まず、耐震化を進めるためには前提としての耐震性能を確認することが必要であることから、まずは地方公共団体に対して耐震診断の早期実施を強く要請しているところでございます。

 施設整備基本方針等において国として具体的な耐震化率の目標やその達成年を定めるかどうかについては、様々な状況を今踏まえつつ今後検討してまいりたいと、かように存じます。

井上哲士君

 今後の検討ということは、国として一定の目標を定めることもあると、こういうことでよろしいでしょうか。

政府参考人(大島寛君)

 現在検討を進めているところでございます。

井上哲士君

 是非、一刻も早くと言いながら期限がないということで、ずるずるということにならないように明確な期日を決めるべきだと思います。

 そもそも、耐震性がないといわれる建物、学校、教育施設の改修のための経費というのはおおむねどのぐらいを想定をされておるんでしょうか。

政府参考人(大島寛君)

 まず、現在の耐震化に関する耐震診断率の状況が現在五六・三%にすぎないということから、耐震化すべき棟数の全体がまだ把握できていない状況にございます。また、耐震補強の実施方法などにつきましても、個々の学校の状況、それから地方公共団体の判断など様々でございます。そういったことから、耐震化を完了するための必要な総額の見積りについて具体的にお示しすることは困難であろうと考えております。

井上哲士君

 先ほど示した報告書の中で三兆円とか、こういう数も示されておりますけれども、これはどういうことなんでしょうか。

政府参考人(大島寛君)

 先生御指摘ございましたように、先ほどの有識者会議の報告書におきましては、特に倒壊、大破の危険性が極めて高いと考えられる建物の、これ出現率を三分の一と仮定ということでございまして、その上ですべての耐震補強及び質的整備を図るという、負担はそのための改修を実施するという前提で推計をしております。その推計値として事業費三兆円という試算がなされているということでございまして、文部科学省といたしましては、まず耐震診断を実施することが重要との観点から、先ほど何度か答弁もしてございますが、国土交通省所管の補助事業を活用するなど、十八年内を目途に公立小中学校の耐震診断を完了するようまず強く要請して、耐震診断の早期完了を目指しているところでございます。

井上哲士君

 専門家が一定の下に示された推計ですので、根拠のある数なんだと思うんです。先ほど示された予算でいいますと相当の年月が掛かってしまうということになりますので、一刻も早く診断を終えた上で、期日も決め、予算も確保して、本当に子供たちと地域の安全を図る上での耐震化を一刻も早く進めていただきたいと思います。

 以上、終わります。

委員長(中島啓雄君)

 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。

 これより討論に入ります。

 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

井上哲士君

 私は、日本共産党を代表して、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する等の法律案に反対の討論を行います。

 反対の最大の理由は、義務教育費国庫負担制度の負担率を二分の一から三分の一へと引き下げるからであります。

 義務教育費国庫負担制度は、憲法と教育基本法に定められた教育の機会均等、水準維持、無償制の確保という教育条件の整備に対する国の役割を制度面から担保しているものであります。国の負担率を引き下げれば、国の財政上果たすべき責任を一層縮小し、地方にその責任を押し付けるもので、認められません。

 削減分は税源移譲が行われますが、二〇〇六年の所得譲与税による税源移譲では、文部科学省の試算によれば三十九の道府県で財源不足となり、二〇〇七年以降の住民税による税源移譲では地方格差は更に拡大することが審議の中で明らかになりました。不足分は地方交付税で措置されるとしていますが、地方交付税の総額が大きく減額されている今、多くの県で財政上困難な状態にならざるを得ません。既に一般財源化された教材費、旅費では、実際は国の算定よりも少ない金額しか措置されず、学校現場は必要な教材がそろえられない実情があります。

 今後、教職員の人件費は、退職手当の増大など、既に地方の負担とされる部分を中心に拡大することも審議の中で明らかになりました。この上更に負担率の削減を進めれば、現在多くの道府県が独自に取り組んでいる少人数学級の拡充が困難になるばかりか、将来的には、財政事情によっては標準法上必要な教職員数を下回ることも懸念されます。

 義務教育費の国庫負担を現行の二分の一の負担で堅持すべきだと、このことを主張し、反対討論といたします。


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