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井上哲士ONLINE
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2006年4月18日(火)

文教科学委員会 (第1回目質疑)
「学校教育法等改正案」について

  • 視察したモデル校である京都市立北総合養護学校が、130人の教職員のうち、直接も授業を持たない管理職や支援部に2割をこえる教員が配置されていることを指摘し、教員定数の配置なしにセンター的機能を進めれば、子どもの教育が手薄になるとして、是正を求める。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 朝から障害児教育の国際的な動向と本法案との関連などの質疑が行われてまいりました。子どもの権利条約では、障害児の特別のケアへの権利と特別なニーズを認め、可能な限り全面的な社会的統合並びに文化的及び精神的発達を含む個人の発達を達成することに貢献する方法で教育、訓練、保健サービス、雇用準備及びレクリエーションの機会を保障するということが定められております。それから、先ほど来議論になっています特別なニーズ教育に関する世界会議で採択されたサラマンカ宣言でのインクルージョンの理念を推進する取組も進めてこられました。

 私、気になるのは、一部の教育行政などにこのインクルージョンという考えを障害児学校や学級の廃止、縮小の根拠とする考えがあることであります。決してこのインクルージョンという考え方は障害児学校や学級といった特別な場を否定をするものではないと思うんですね。

 そこでまず聞くんですけれども、日本におけるこの特別な場、障害児学校等に在籍する状況を世界と比較してどうなっているでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 多くの国では、小中学校のほか、障害のある児童生徒のための特別な学校を設けているわけでございます。

 各国の特別な学校に在籍をしている児童生徒の割合でございますけれども、私どもが把握している限りでは、イギリスは一・五七%でございます。イタリアは〇・〇六%、ドイツは四%、アメリカは〇・六%、日本は〇・五%という状況でございます。これはいわゆる特別な学校ということで申し上げました。

井上哲士君

 国際的に日本のいわゆる特別な学校の在籍児童数が、率が特別に多いというわけではありません。

 一方、軽度発達障害を持ったりした子供たちが通常学級に在籍をしているという場合に、法的な位置付けもなく必要な支援が受けてこられなかったと、この点を今度の法案では位置付けていくということなんだろうと思うんです。やはり、特別な場の教育ということと一人一人のニーズに合った教育ということを対立させるんではなくて、子供の基本的人権を根幹に据えて、障害によって発生する様々な困難や必要に最も適切な対応をする体制をどうつくるかということが求められていると思うんですが、そこで大臣にお聞きするんですが、そういう点で今回の法案はどういう考え方に基づいているんでしょうか。

国務大臣(小坂憲次君)

 今回の改正案につきましては、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズを的確に把握をして、そして適切な教育を弾力的に提供していくことを目指すものであります。

 児童生徒の就学校の決定につきましては、今後とも一人一人の教育的ニーズを踏まえた適切な教育を行うことを基本にいたしまして、保護者や専門家の意見を聞いて、そして総合的な観点から判断をすると、このようにしているわけでありまして、総合的な判断の結果によっては特別支援学校などの特別な場において一人一人のニーズに応じた手厚い教育を行うこととする場合も当然あるんでありまして、そういった意味で、御指摘のように両者の教育は相対立するものではないと、このように考えるわけでございます。

井上哲士君

 その特別な場の教育状況が今どうなのかということなんですが、この間、午前中の質疑にもありましたように、盲・聾・養護学校を合わせますと、在籍の児童数はかなり増えておりますし、障害の重度・重複化ということも進んでおります。その中でいろんな教育条件の問題が出ております。

 例えば東京の例を言いますと、これは二〇〇四年五月一日現在の調べですが、知的及び肢体不自由学校の学級総数が千五百六、そのうち普通教室の数が九百七十九ですから、その差は五百二十七になるわけですね。特別教室を転用しているのが二百六十三ということになりますが、これでも足りないということですから、かなりの部分で一つの教室をカーテンで仕切って使っているなどの状態があるという状況があります。

 特殊学級、通級指導などもまだまだ充実が必要だと思うんですが、しかしながら、二〇〇三年に出されました「今後の特別支援教育の在り方について」の最終報告ではこう書いています。「障害のある児童生徒の教育の基盤整備については、全ての子どもの学習機会を保障するとの視点から、量的な面において概ねナショナルミニマムは達成されているとみることができる。」と、こうしております。

 私は、こういう認識だと今の現実とは随分違うと思うんですね。まだまだこの通常学級での特別な支援はもちろん、障害児学校、障害児学級、それぞれの拡充が求められていると思うんですが、現状についての大臣の認識をお聞きしたいと思います。

国務大臣(小坂憲次君)

 盲・聾・養護学校は障害の程度の比較的重い児童生徒の障害の状態に応じた適切な教育を実施する観点から、専門性を有する教員を手厚く配置するとともに、障害の特性に応じた施設整備を行っているところでございます。

 学級編制の標準にいたしましても、小中学校では四十人を上限としておるわけでございますが、盲・聾・養護学校は六人を上限、重複障害の場合には三人というふうにしておりますし、また盲・聾・養護学校においては手厚い配置、その施設整備が可能となっておるわけでございます。

 本務教員一人当たりの児童生徒数で見ますと、小学校が十七・三、中学校が十四・六、これに対して盲・聾・養護学校、これにおきましては一・六というふうになっております。

 基準面積は、小学校が四十人で百八十七平米、知的障害養護学校の小学部では六人で二百平米という形でございまして、また、更に言うならば、児童生徒一人当たりの学校教育費という観点から見ますと、小学校におきましては九十万九千円、まあ百のけた切り捨てるとですね、千の台で言えば。また、中学校では百二万八千。全部言いますと、小学校が九十万九千八百九十二円ですね。中学校が百二万八千八百二円。これに対して盲・聾・養護学校は九百十二万九千百六十五円ということでございまして、非常にそういう意味で手厚く対応しているところでございます。

 また、一方、盲・聾・養護学校の絶対数が少ないこともありまして、対象障害種によっては児童生徒が遠距離の通学を行っている例もあるものと認識をいたしております。今回の法律改正におきましては、一つの特別支援学校が多様な障害種別を教育の対象とすることが可能となることから、障害のある児童生徒等がより身近な特別支援学校に就学することが可能となるなどの利便性の向上が期待できると、このように考えております。

 文部科学省といたしましては、今後とも障害のある児童生徒のための条件整備の充実に努めてまいりたい、このように考えております。

井上哲士君

 一般の子供たちに比べて非常にやはり困難が多いわけですから、手厚い支援が行われるのはこれは当然のことだと思うんですね。

 問題は、先ほど言いましたように、一人一人の正にニーズに合わせて、それにふさわしい状況になっているかということが問われるんだと思うんです。今、遠距離通学の例もあるなど、まだまだ改善すべき点があるということはお認めになったんだと思うんですね。

 先ほど二〇〇三年の最終報告を引用しましたけれども、その前に出た二〇〇一年の「二十一世紀の特殊教育の在り方について」の最終報告の中では、盲・聾・養護学校について、自立相談とか教育相談活動に必要な教職員の充実が求められている、このような教職員の定数の改善を図る必要があると、こういうふうに言っておりましたし、通級による指導については、対象児童生徒に対し適切な教育ができるように教員の配置に努めることと、こうあるわけです。

 ですから、二〇〇一年の時点ではこういった教員配置の点でも相当の改善の必要があるということを認めていたわけですし、少なくとも障害児教育に新たな課題を位置付ける以上は、こういった人的配置、教職員の定数改善が必要だということだと思うんです。

 ところが、今回は既存の人的、物的資源の配分についての見直しということで対応している。そのことが結果としてはナショナルミニマムを引き下げて、これまでの障害児教育の質が下がるんじゃないかといういろんな危惧が出てきているわけです。

 そこで、具体的に特別支援学校についてお聞きしますが、先ほど特別支援学校になることによってより身近なところに通うことができるんだと、こういう御答弁がありました。障害の重度・重複化に応じて障害種別を超えた学校をつくることを評価をする声があります。同時に、これで教育の水準が下がるんじゃないかという懸念もあるわけですね。

 先ほどの答弁との関係でいいますと、例えば秋田ですけれども、これは秋田市内にある盲学校、聾学校、二つの養護学校、そしてもう一つの養護学校の一部を統合して総合エリア構想というのが出されておりますが、報道によりますと、統合後の児童生徒数は二百三十四人、学級数は八十二だと。そうすると、教職員数は二百四十九人で、各校を単独設置する場合よりも百一人少なくなると、こういうことなんですね。ですから、三分の一の教職員の数が減るということにこの場合なりますし、四つを一つに統合するわけですから、相当の児童はむしろ遠距離通学になってしまうということがあるわけです。

 地方の財政状況によって、結果として統廃合によってこういう教員の削減であるとか遠距離通学が余儀なくされるんじゃないかと、こういう不安の声があるわけですが、この点の懸念にはどうこたえられるんでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 今回の法改正におきましては、児童生徒の障害の重複化に適切に対応することができるように障害種別を超えた特別支援学校制度を創設をし、設置者の判断によりまして地域のニーズに応じた学校を設置することが可能になるわけでございます。

 既に、盲・聾・養護学校の配置や機能の見直しに着手をしていただいている自治体もあると承知をいたしておりますけれども、今回の制度改正は、あくまでも今申し上げました地域のニーズを踏まえた柔軟な取組を行えるようにすることを目的とするものでございまして、学校の統廃合の促進を目的としたものではございません。

 なお、各都道府県の今後の特別支援学校の設置について把握をしている限りでは、児童生徒数の自然減への対応を除きまして、特別支援学校の創設を契機として統廃合を掲げる方針については承知をしていないところでございます。再編ということはあろうかと思いますけれども、統廃合によって学校数をずっと減らしていくとか、そういうことは承知をしていないところでございます。

 むしろ、私どもといたしましては、特別支援学校ができる限り地域の中で、身近な場で教育を受けられる場になっていくという視点も重要であるというふうに認識をいたしておりまして、柔軟な特別支援学校の編制によりまして地域のニーズにこたえる教育が展開されるように指導してまいりたいと思っているところでございます。

井上哲士君

 統廃合とか、そしてそれによって遠距離通学が強いられるようなことは法の趣旨と違うんだということだと思います。

 さらに、先ほどの答弁で、特別支援学校になっても標準法に基づいて現行の教育水準を維持をすると、こういうことが出ておりました。ただ、複数の障害を持つ障害種別に対応した特別支援学校になりますと、障害種別の違う子供による学級が仮につくられた場合に、学級数としては減るわけですね。そうしますと、標準法に基づく教職員定数も減っていくということになります。こうなりますと教育条件は大きく後退するわけで、この点の学級編制というのは一体どうなるんでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 特別支援学校の学級の編制につきましては障害種別に行うこととして関係省令に規定をすることを予定をいたしております。その学級編制を踏まえまして、標準法によりまして、一学級の児童生徒の基準は六人、重複学級は三人、これを標準といたしまして学級編制がなされるということになろうかと思っております。

 これによりまして、特別支援学校につきましては従来と同様の教職員定数が算定することになりまして、それぞれの障害種別の専門性に応じた教育が円滑に行い得るものと考えているところでございます。

井上哲士君

 それによって教職員が従来よりも減ることがないと、こう確認をしてよろしいですか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 障害種別に学級編制を行いまして、その学級編制の標準というのが従来の一学級の児童生徒数は六人、重複は三人ということでございますから、もちろん児童生徒数の増減というのはこれはあると思いますけれども、考え方としては従来と同様の教職員定数を算定をするということになっております。

井上哲士君

 実際どうなるのか、もう少し今後詰めていきたいと思います。

 この特別支援学校にセンター的機能を持たせるというわけですが、この間、いわゆるモデル校と言われたとこにも幾つか行って、また関係者からもお話を聞きました。例えば、巡回一つ取っても、担当地域の学校への訪問を基本にしているとこもあれば、来てもらうというのを基本にしていて、そんなん回るのはできませんというとこもお話も聞きました。

 このセンター的機能というのは具体的にどういうことが求められているのか。そして、従来の学習指導要領から法文化されたわけですが、それでも「努める」という言葉が残ったわけですが、ここの趣旨はどういうことなんでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 センター的機能につきましては、今お話ございましたように、現行の盲・聾・養護学校の学習指導要領におきましても、障害のある児童若しくは生徒又は保護者に対して教育相談を行うなど、地域における特殊教育に関する相談のセンターとしての役割を果たすよう努めることとされておりまして、既に多くの学校で取り組まれてきているわけでございます。

 今回の法改正におきましては、こうした取組の状況も踏まえまして、特別支援学校の担うべき役割としてセンター的機能を法律上明確に位置付けるということとしたところでございます。

 センター的機能として想定をされる機能は多岐にわたるものでございまして、当該特別支援学校の特質や地域の実情に応じましてその機能を担うべきものと考えております。各地域あるいは学校の分布、学校の担当しております障害種等々様々な観点から、それぞれの学校がそれぞれのセンター的機能を発揮をし、県内全体でセンター的機能が活用できるような支援体制が構築されるように私ども取組を促してまいりたいと思っております。

井上哲士君

 現状をいろいろ聞きましても、やはり必要な体制がなければ、どうも「絵にかいたもち」、名前だけになりかねないという危惧を非常に持つわけであります。

 養護学校は今でもなかなか人手が足りないという悲鳴の声をお聞きをいたします。ところが、今回、このセンター的機能に対応する教職員の定数は配置をされておりません。

 例えば、モデル校でもある京都市の北養護学校、私、お邪魔してきたんですが、ここではいわゆる総合養護学校という形で知的と肢体の一体の学校になっていますけれども、百三十人なんですね、全体の教職員が。そのうち、校長一人、教頭二人、事務長一人、副教頭が三人ということで、ここは七人なんです。そして、支援部というところが実に二十四人ということになるわけですね。これ足しただけでも三十人になりまして、全体の二割を超す数になるんです。ですから、いわゆる子供の授業を直接持たない部門が非常に膨れ上がっているという状況があります。

 その一方で、小学校の授業を持つとこは、三十二人のうち十人が講師なんですね。講師の方も非常に頑張っていらっしゃるわけでありますけれども、やっぱり専門性、そしてその継承という点からいいますと一体どうなるんだろうかということがあるわけです。

 ですから、こういう形で広がっていきますと、子供を指導するという体制の面でも、それから専門性の育成とその継承という点でも非常に後退するんじゃないかという危惧を私はこの京都の実態を見て思ったわけですが、こういう点についてはいかがお考えでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 もちろん特別支援学校でございますから、在籍をする生徒に対する教育ということは大変その学校にとって大事なことでございますので、そこは十分に取り組んでいただかなければならないし、体制も整えていただきたいと思っております。

 また、センター的機能につきましては、先ほど申し上げましたように、既に多くの学校において取り組まれているところを法律上明記をし、一つの県の中において、それぞれ得意分野あるいは得意な方法等によりまして、幅広く就学あるいは障害の困難の克服等いろいろな相談に応じていただくということでございます。

 これについては、第七次の定数改善計画におきまして、教育相談の充実ということから所要の定数措置をずっとしてきたわけでございます。また、聾学校において、小中学校の児童生徒に対する通級による指導のための定数措置も講じてきたところでございます。

 今般、この新たなセンター的機能を法令上明確化するということに関連をいたしまして、第八次の定数改善計画の中にセンター的機能への対応を含む定員措置を計画をしていたわけでございますけれども、御案内の総人件費改革を進めるという政府の方針の中でやむを得ず見送ったところでございます。

 文部科学省といたしましては、センター的機能に着目した定数措置の問題を含めまして今後の教職員配置の在り方につきましては、平成十九年度以降の予算編成過程においてよく検討してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 結果として学校の中で子供の授業を持たない教員が相当数に上るという事態については適切とお考えなんでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 学校におきましてはやはり子供の教育、指導ということが中心でございますので、教職員というのは基本的には授業を持って指導に当たるのが本来であろうと思いますけれども、それぞれの学校によりまして、様々な教員の協力体制あるいは指導体制の工夫によりまして、授業を担当する教員と、一方、管理的な業務あるいは教育相談に当たる教員と、そこは学校において適切に判断をして対応すべきものだと考えております。

井上哲士君

 やはり子供への教育というものが、直接の教育というものがおろそかにならないということが必要だと思います。

 時間ですので、終わります。


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