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2006年6月1日(木)

文教科学委員会
「認定こども園」法案について(参考人質疑)

  • 参考人の下條かやの木園長は、保育所の最低基準の意義について「どの地域でも最低限の保育環境が国の責任として守られる制度と強調し、都道府県が条例で定める認定こども園について地域間格差が生まれると懸念を表明。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。今日は参考人の皆さん、ありがとうございます。

 まず最初に吉田参考人と下條参考人にお伺いをいたします。

 吉田参考人の意見陳述の中で、この流れが一つは構造改革から出てきたもので、明確な理念があったとは思わないがと、こういうふうに言われました。ただ、理念と言えるかどうかは別として、いろんな発言や提言はされておりまして、例えば、現状の保育を、保育に欠ける子を対象として政府から与えられる福祉であって、市場とはほど遠いという認定した上で、福祉的なサービスではなく、ニーズに応じて自由に選択できる環境づくりが必要だというようなことも言われました。

 具体的にこの面について言えば、この総合施設における規制の水準は、それぞれ現行の幼稚園と保育所に関する規制のどちらか緩い方の水準以下にすべきだということを総合規制改革会議も言ったわけですが、こういう考え方についてそれぞれどのようにお考えか、まずお願いしたいと思います。

参考人(吉田正幸君)

 これについては合同検討会議でも議論いたしました。それも、幼稚園、保育園関係委員、有識者を含めて、基本的にはやはり子供の最善の利益がまず先に考えるべきことであって、いわゆる民間の株式会社を含めた民間参入のために安上がりでいいかというと決してそうではないと。やっぱり大事なのは子供のための保育環境あるいは親の支援ということで、規制改革の発想については、基本的には私は全委員がそれについては賛成をしていない、やっぱり子供中心の発想で議論していくべきだというふうに思っております。

参考人(下條忠幸君)

 幼稚園、保育園のより緩やかな方に合わせるべきだと、基準をという議論については、私は、子供の最善の利益と言いつつ、実はこれは、例えば幼稚園が認定こども園に移行しやすいような条件をつくっている。いろんな認定こども園の制度を見ましても、今御指摘の、この間の規制改革の流れを見ましても、それが私は本当に子供の最善の利益を中心にしていっているというふうには思えない。むしろ、言い方が悪いかもしれませんが、例えば、今度の認定こども園について言えば、幼稚園の空き教室あるいは無認可を利用しての安上がりな待機児解消施策に流れていっているんではないかと、私は思います。

井上哲士君

 ありがとうございます。

 簡潔にお答えいただいたので、同じ質問を赤坂参考人と小宮山参考人にもお願いをしたいと思います。

参考人(赤坂榮君)

 やはり子供の最善の利益と考えたときに、何が大事なのかということは決して外してはならない。そういう意味では、きちっとした認定基準というものをやっぱり求めたいなと思っています。

参考人(小宮山潔子君)

 これが規制改革からの要求で始まって、明確な理念があったわけではないというような意見には、私は、あっ、そうなんですかという思いがいたしますね。多くの人は、ついにその理念の下に総合施設のあれが始まったのではないかと、そういう感じは持っております。

 それで、すべての子供に対してちゃんとした保育を保障するというのは当然でありまして、そのことはだれも疑っていないというか、それは当然するべきだと思っている、そういうのはもう確実だと思っております。

井上哲士君

 ありがとうございます。

 下條参考人にお聞きしますけれども、先ほど国の最低基準というものが地方でやっていく上で大変大きいということを言われました。

 いろんなところで保育関係者にお話を聞きますと、今の保育の水準というのはまだまだ引き上げる必要があるけれども、様々関係者の努力、そして地方自治体に対する運動などの積み重ねがあったかと思うんですが、そういう上で、国の基準、最低基準ということが示されてきたということの意味といいましょうか、重みといいましょうか、それについてどのようにお考えでしょうか。

参考人(下條忠幸君)

 先ほど意見陳述の中でも述べさせていただきましたけれども、私のような本当に地方にいますと、その自治体、いわゆる自治体の考え方によって、例えば東京とか名古屋とかは本当に自治体の単費でかなりの補助金が付いている。僕らみたいな地方は本当に運営費、保育園の最低基準に伴う運営費だけで運営していくわけです。だけれども、基本的にその最低基準があるから、日本のどこの子でも、どの地域にいても、都会でも田舎でも、あるいは本当に海辺でも山の中でも、保育所といえばこの最低の基準は満たさないといけないんだという決まりがあることの重要性、これがあるから、これが国の責任においてなされているということの意義は私は非常に大きいと思います。

 ただ、その最低基準が十分かというと、先ほども述べましたように、最低基準を今は引き上げることによって、もっと保育施策、子育て施策を充実していくべきだという観点に立つべきだと私は思います。それだけ最低基準というのは大きいものだというふうに私は認識しています。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 次に、調理室の問題で赤坂参考人と下條参考人にお聞きをするんですが、今後出てくる基準でいいますと、ゼロ―二歳のところは基本的必置、そして三歳以降は一定の条件の下での搬入も可というような方向を国が示すような答弁が出ているわけですが、三歳以上においても、アレルギー対応なんか考えたときに、やはり搬入でなく調理室でやるということの意味というのは私は大変大きいと思うんですけれども、それぞれそれについて、三歳以上における調理室の意味付けということについてお考えをお聞きしたいと思います。

参考人(赤坂榮君)

 調理室の件でございますが、本園でも食育という視点からもこのことを実は大事にしております。アレルギーの除去食等も含めても、園の中に調理室があるということは大変良いことだと思っています。ただ、いろいろな事情でそのことが移行期において難しい状況になったときに、ではどんな形での外からの搬入なのかという辺りはきちっと考えていかなければいけないなと思っています。

 以上でございます。

参考人(下條忠幸君)

 先ほど例を挙げました子供、うちのアレルギーを持っている子供が、うちは二歳児までですので、今年度、三歳児の公立の保育園に移りました。私どもは、その子の場合、本当に、先ほど言いましたようにちょっと間違って食べたらぜんそくを起こす、下手をしたら救急車呼ばないといけないというような状況になる可能性もあるわけでして、そこの調理員あるいは園長、その担任となる保育士と非常に綿密な打合せをいたしました。

 食の問題というのは、私が思うに、本当にその子供の命にかかわるやはり問題であるわけです。それと、やっぱり食育というのが今文科省でも大きく言われていると思いますが、子供たちはゼロから五歳までの間、未満児にかかわらず、三歳以上児にかかわらず、保育園の中の、あっ、いいにおいがするな、おなかすいたなという家庭的な雰囲気の中でそういった食育というのはやっぱり育っていくものだというふうに私は思います。そういったいわゆるアレルギーみたいな、アレルギーに対する対応という意味だけではなく、子供たちの食育、本当に食を育てるという意味で考えたときに、目の前で作ったものを食べる、やはりその大事さというのは私はすごく思いますので、三歳以上児であっても調理室というのは必ず、もし認定こども園というのが制度としてスタートするとしたら、これは絶対に置いていただきたいと私は思います。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 次に吉田参考人にお聞きしますが、認定こども園の課題の中で、セーフティーネットということを言われました。その中で、レジュメでいいますと、保育料の設定についての市町村の改善命令、それから保育料の滞納についての市町村による費用の肩代わり、もう一つ、入園の逆選択については市町村の一定の関与ということを言われておりますけれども、この点もう少し、この三つ目の問題について詳しくお話しいただけますでしょうか。

参考人(吉田正幸君)

 法案にも多少書かれておりますけれども、例えば、かなり所得が少ない御家庭だとか、子供が障害があるとか、そういうことを理由に入園を、少なくとも保育所機能部分で入園を拒否するということは基本的にできないというふうになっております。恐らく今後これは国の指針が出て、都道府県がそれを参酌して、条例によって各県が認定基準を作るんだろうと思うんですが、その部分、そこが一番私は実は大事だと思っていまして、法律というのはそんな事細かく一々を書くわけではないので、やっぱり最終的には、今回の仕組みでいくと都道府県の認定基準が非常に大事になる、その認定基準の中にきちっとセーフティーネットが盛り込まれるような何らかのやっぱり働き掛けをする必要があるんじゃないかと。特に入園については、園にとって何か都合の悪い家庭の子供が排除されては当然私はいかぬと思います。

 ただ、それほど大きく心配していないのは、先ほどの契約制ともかかわりますが、私立幼稚園は実は直接契約でございまして、じゃ、むやみやたらに逆選択を拒否をしたりお金をダンピングしたりしているかというと、必ずしもそうではない。むしろ公立幼稚園以上に障害児を受け入れている私立幼稚園もございますし、やっぱりまじめにやっている。直接契約イコールすべて悪いのかというとそうではない。ただ、やっぱり万が一のリスクがあるので、それはセーフティーネットをきちっと公的につくって担保すべきで、あとはやっぱり教育・保育分野の方というのは、私の見る限り相当まじめに、財産までなげうってやっている方が多いわけですから、その思いを生かせるようなバックアップをしていただきたいと、こう思います。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 次に、ちょっと職員体制にかかわって赤坂参考人にお聞きをするんですが、いただいた資料ですと、今、三歳児十五名、四歳児三十三名、五歳児三十三名ということなんですが、このうち、要するに中長時間の保育を受けていらっしゃるのはそれぞれ何人になるんでしょうか。

参考人(赤坂榮君)

 時間を選べるのは四、五歳児でございます。現在、実は二か月前には変更が可能ということで人数の動きがございますが、今、五歳児で約十二、三名が二時に帰っております。残りが、二十名ほどが残るわけですけれども、また四時に十名、そして夕方六時半までの、三々五々というんですか、帰る子供が十名というような状況です。四歳児におきましても同じような割合で、でも、短時間から中時間に、四時というのの選択が増えているかなと思っております。

井上哲士君

 そうすると、今微妙な数なんですが。幼稚園が三十五人で一学級、そしてそれに一人配置をするということを言っていますですよね。今、それぞれ三歳児、四歳児、五歳児に幼稚園と保育とそれぞれ一人ずつ担任を付けていらっしゃるというのは、どういう制度上の人の配置でこれができているんでしょうか。

参考人(赤坂榮君)

 これは、多分保育所も長時間という中で複数担任になっていると思います。本園では、その複数担任の一名が三、四、五歳児に関しては幼稚園教諭を入れている。そして、勤務に関しましてはローテーション勤務で、幼稚園教諭も早く来る日、あるいは土曜日に出勤すると金曜日もお休みと。ですから、仕組み的には大変保育園の仕組みが入っているというのが現状でございます。

井上哲士君

 昨日も少しこういう質問でやっておったんですけれども、例えば幼稚園型のこども園の場合は、三歳児例えば三十五人いて、そのうち二十人が長時間という場合には、三十五人の幼稚園には一人の教員配置、そして長い部分も一人ですから、結局一人でトータル全部見なくちゃいけないということになりますと、これまで三十五人を一人、幼稚園部分だけやっていた人でいいますと、昼からの二十人分も見るということで大変勤務としては厳しくなりますし、保育の質の低下にもつながるんじゃないかという気がしているんですけれども、そういうこども園になることによっての人的配置の強化の必要性ということについてはいかがお考えでしょうか。

参考人(赤坂榮君)

 これは大いにあると思います。

委員長(中島啓雄君)

 赤坂参考人、指名を得てから御発言をお願いします。

参考人(赤坂榮君)

 失礼いたしました。

 これは大いにあることだと思います。結局、人が人を育てていくということを考えますと、職員には研修の時間、あるいは一日の保育を振り返る時間があり、そして相互に連携したり情報を共有する時間も必要ですので、このことは本当にこの認定こども園が成り立つ中で最大のキーワードだと考えています。

 失礼しました。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 最後に、小宮山参考人と赤坂参考人にそれぞれお聞きするんですが、小宮山参考人は全国三十ぐらいのモデル園を歩かれてつぶさに見てこられたというお話がありました。非常にメリットのお話もされておったわけですけれども、一方、やはり保育と幼稚園という今までそれぞれ違う文化が一緒になる中で様々な戸惑いとか課題もあろうかと思うんですね。その点、どういうことがお感じか、それぞれからお願いをしたいと思います。

参考人(小宮山潔子君)

 現在より少し前の段階で、最後の報告書を出す前ですので、その段階においてはまだこの詳細も中間まとめなどで漏れ伝わっているという状況でしたから、大変不安なところが多かったですね。それで、やる気、やりますというところはもうどうなろうと独自の方法でやりますと言うわけですね。ですから、本当にこの法案に期待しているわけです。やる気があって手を挙げているところがやりやすいシステムにしていただきたい、それが私のずっと願っていることです。その内容は、先ほど申し上げたかと思うんですが、簡素なシステム、複雑でない、財政的な問題、ほぼそういうことだと思います。

参考人(赤坂榮君)

 この一体化施設の中で良いなと思っているのは、保護者も子供も、それから保育者もなんですけれども、今までとてもシンプルだった幼児教育施設の中で、自分と違う状況の子供、あるいは自分と違う状況の家庭の大人同士、あるいは保育者は保育士と幼稚園教諭という、そういう今まで同じくくりの中でいた人が暮らしていたのとは比べ物にならないほどお互いを認めたり、あるいは自分の意見を言ったり、相手の立場になったりということで、より、ある意味では人間関係の深まりの中に保育が進められていると思います。

 そういう意味では、幼稚園というシンプルな幼児教育施設であった園が一体化施設になったときにいろんな問題も起きてきます。でも、その問題が一つ一つ子供の良い環境づくりにどうしたらよいかというきっかけになっているのが今のおおやた幼保園の現状かなと思います。これは、保護者が父母の会の活動をどうするか、地域とどうかかわるか、あるいは保育士と幼稚園教諭がどう折り合いを付けて子供に最善だろうという保育方法を考えていくか、これら一つ一つその向かう気持ちというか、意識をどう持っていくかというその熱気のようなものがもしかしたら幼児教育の充実につながっているのではないかなというのが今の私の実感でございます。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 終わります。


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