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井上哲士ONLINE
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2006年3月1日(水)

参院経済産業雇用に関する調査会
「団塊世代の退職による経済・産業・雇用への影響」について

  • シャープは、産業空洞化への反省からリストラをせず、終身雇用制度をとっていることなどに対し、日本のものづくりの強さという角度からどういう「反省」があったのかと質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は四人の参考人の方、ありがとうございます。私、熊谷参考人と斎藤参考人に御質問をいたします。

 まず、皆さんから質問が集中していますリストラしないというお話なんですが、この調査会が始まった最初のころに、経済産業省の新産業創造戦略のお話を聞いたときに、当時の局長が、派遣では物づくりの強さは出ないと、研究の結果そうだと。そして、産業界の方でもようやくそういう認識になってきた。リストラの時代にコストだけで派遣を増やしたというのは、やっぱりこれからの国際競争に生きていく強い製造業をつくるという意味ではマイナスだということでありますと。むしろ、強い競争力を保つためには終身雇用に戻した方がいいと。中核となる人間を育てなくてはいけないと。こういう意識が企業の中にようやく出てきたと、こういう答弁をされまして、ちょっと驚いて聞いたんですが。

 先ほどお話を聞いておりますと、この一ページのところにも「国内生産の空洞化への反省」という書き方をされておられます。ここから出てきているんだと思うんですが、具体的に、この国内生産の空洞化ということが、どのように起き、どういうマイナスがあって、そしていわゆる終身雇用という方向を打ち出されたのか、その辺の経過をお聞きしたいというのが一点です。

 それから、そういう技術を受け継ぐ上でいいますと、そういう匠と言われる人たちをしっかり養成する問題と、受け継ぐべき次の若い世代をしっかりすることが必要だと思うんですね。

 ただ、例えば亀山工場なんかお聞きしますと、大体三千三百人ぐらいのうち六割ぐらいの人は請負などの非正規労働者だということもお聞きしておりまして、そういう技術を受け継ぐという点で、その辺の新しい若い世代のしっかり正規雇用していくという点との関係をどのようにお考えなのかということです。

 それからもう一点、斎藤参考人にお聞きいたしますけれども、数的な意味でいいますと、その団塊世代の退職が労働市場全体に与えるインパクトは非常に限定的だというお話でありました。ただ、団塊世代というのは、いろいろ論じられておりますけれども、消費という意味でも働き方という点でも特別の層としての意味を持っているということはよく論じられると思うんですけれども、そういう質的な意味でどういうインパクトを与えるとお考えになっているか、この点をお聞きしたいと思います。

 以上です。

会長(広中和歌子君)

 まず、熊谷参考人。

参考人(熊谷祥彦君)

 国内の物づくりの反省事項、これ一番大きな反省事項と申しますのは、まず、技術、商品設計をしている部門と、それから物をつくっております現場、これが離れてきたということでございますね。

 商品設計をして、確かに図面の上、あるいはCADの上できちっとした設計をするんですけれども、実際に量産をしますとなかなかそのとおりにいかないと。したがって、設計と製造というこの間のコミュニケーションというのは、もう極めて重要なんです。それは、組立てに至る過程におきましても大変重要でございまして、その部分が、元々この設計者というのは意外と地方の大きなビルにいると、現場はまた現場で別のところにいると。そういうものが海外に移ったということで、余計、設計技術者と物づくりとの間の融合というものが大変離れてしまったと、これを大きく我々としては反省したと、こういう点が一点でございます。

 それから、具体的に派遣、請負の亀山のお話がございましたですけれども、例えば亀山、現時点で、先ほど具体的な数字が、三千三百名でございましたか、そういうお話がございましたが、そのうちの、亀山で就業しております社員がトータルで三千四百名でございます、トータルでですね。そのうち派遣、請負で作業をいただいておりますところが、ちょっとアバウトな数字で恐縮でございますけど、約一千八百名、大体五割から六割の範囲と、こういうことでございますが。

 その内容を見ますと、派遣、請負で実施をいただいております内容の大半は二社の協力会社の請負社員並びに派遣社員でございます。ということはどういうことかと申しますと、従前、この形態というのは、構内外に協力会社に対しまして我々が物を発注していたと、それが、より物流面でございますとかリードタイムの短縮ということで、新しい工場を造って、同じやるならば同じところでやりましょうと、つまり構内になったわけですね。で、構内になってより生産性を高めていこうと、こういう過程でございます。

 じゃ、なぜその二社に私どもが委託をしているのか、発注をしているのかということになるんですけれども、それはもう正にその分野の専門家でございます。一社は、ブラウン管テレビの組立てをシャープ共々長らく過去からずうっと継続をしてそれを実施いただいておりました、正に組立ての専門協力会社でございまして、私どもより以上にその分野については専門的知識をお持ちなさっていると。で、外で今まで御協力をいただいていたものを、同じ工場を造るんであれば同じところでより協力をしてやる方がいいんではないかと、こういうことが一つでございます。

 もう一つ、あとの一社につきましては、これも液晶のパネルの生産を過去からずうっとやっておりました液晶パネルの後半工程、ちょっと専門的用語でございますけど、パネルを作りました上に周辺の回路を取り付ける工程でございます。この工程の専門業者は、過去から、創業、液晶事業立ち上げのときから専門的に本来は社外でなさっておりました協力会社でございまして、その専門性を私どもは高く買って、その協力会社に、同じ敷地内でそちら様の設備でひとつ協力をしてくれませんかと。そういうものが先ほど申しました約五割から六割の中の大半を占めていると、こういう状況でございます。

 これは、シャープがその分野まですべてにわたって私どもの社員でやるというのは、これはなかなかできません。それぞれ専門の分野というのがございまして、コラボレーションをきちっとやっていくというのが過去からの流れでございまして、その延長線上に亀山もあると。ただ、そういう専門業者が過去携わっていない、例えばパネルそのものの生産というものはすべて正社員で実施をしていると、ここのところに地元も含めました採用計画をきちっと立ててやる、技能の伝承をそういうところにやっていっていると、こういう状況にございます。

 あと、どういう質問でございましたですか。

井上哲士君

 はい、それで。

会長(広中和歌子君)

 ありがとうございました。

 では、斎藤参考人。

参考人(斎藤太郎君)

 団塊の世代というのは特別の層ということで、私もそういう意識もあります。ですから、正直言って、今こうだという形で予想しておりますけれども、実際例えば二〇〇七年以降になってみると実は全然違う行動を団塊の世代の方々は取っているということもなくはないかと思っております。

 一つ、ですから、ここで御指摘したように、団塊の世代は一気に退職してしまうわけではないということをお話しさせていただきましたけれども、もしかすると、この団塊の世代の人たちが年齢というのにあんまり関係なく、かかわりなく働き続けるというのの先導役になるという可能性は出てきたのかなと。幸いにも、かなり景気回復が長期化してまいりまして、このタイミング、二〇〇六年四月からというこの高年齢者雇用安定法の改正のタイミングは非常に団塊の世代の人たちにとってもラッキーではないかという今の状況ですから、労働市場のこれまで固定的に考えてた年齢という概念を一気に打ち破ってしまうという可能性もあるのかなというふうに感じております。

 もう一つ重要な視点は、ここでは全く触れなかったんですけれども、やはり消費行動というのが非常に大きなインパクトを持つ可能性が出てくるということかと思います。当然消費は経済の中の過半を占めるわけですから、しかも比較的まあ裕福、裕福というか金融資産を持っている高齢者がどのような消費行動を取るかということは非常に今後の経済を大きく左右するということかと思います。

 一つ考えられるものは、その消費の中身が今後大きく変わっていくということが一つ想定されるかと思います。消費のサービス化ということで、サービス消費のウエートがどんどん高まっているということはこれまでもあるわけですけれども、団塊の世代の人たちが退職した後というのは、基本的に余暇時間というのが増えますから、サービス消費というのが非常に更に増えるという可能性が高いというふうに思っております。

 さらに、そのサービス消費の中でも、これまで高齢者というのは比較的、例えば旅行でも国内旅行、まあ体力的な問題で国内旅行に限られるとか、サービスを提供する企業側も、どっちかというと、そういう固定観念で高齢者の消費の枠をはめてたようなところがあるかと思うんですけれども、むしろこれからは体力のある高齢者が増えていきますから、海外旅行がどんどん、むしろ高齢者がどんどん海外旅行に出ていくとか、そのサービス消費の中身というのがどんどん変わっていくという可能性はあるんじゃないかというふうに考えております。


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