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2006年6月7日(水)

決算委員会
「障害者自立支援法」について

  • 障害者自立支援法施行後の実態について緊急調査を行い、調査で浮き彫りになった全国の現場の悲惨な実態を突きつけて、原則1割の「応益負担」の廃止や政府による実態調査を求める。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。


資料1:画像をクリックで拡大表示されます。

 二〇〇四年決算は、年金保険料の引上げなど、国民への負担増が行われた下での決算であります。小泉内閣の負担増はこれにとどまりません。(資料提示)私、挙げてみましたけれども、定率減税の半減、廃止から、年金、医療、介護、障害者福祉等々、合わせますと十三兆を超える負担が国民にかぶさってきた。特に社会的弱者に対する負担というのは大変重いものがあります。

 特に、今日は障害者福祉の問題で質問をしたいと思います。

 四月一日から障害者の自立支援法が実施をされました。これまでは所得に応じて負担をしていたのが、原則一割負担という応益負担が導入をされました。これは自立に反するということで関係者の強い反対もあったわけですけれども、四月一日から実施をされた。

 実施を前に、二月の二十八日の予算委員会で、既に負担増を苦にして施設を退所を予定する人が出ていると、この問題を総理にただしました。総理は、実施した上で問題あると分かればしかるべき対応を取ると、こういう答弁をされております。

 実施して二か月が過ぎました。予想を上回るいろんな問題が起きているというのが今の実態で、全国から悲鳴の声が上がっております。大幅な負担増、そして相次ぐ施設からの退所やサービス利用の手控え、そして施設経営を大本から揺るがすような報酬の激減と、いろんな問題が起きている。先ほどの紹介した総理の答弁からいえば、これはまず国として大至急、利用者や施設の実態を調査をして改善をすべきだと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 この法律は、趣旨として、今まで障害福祉サービスについてばらつきがあったと、だから精神障害等はこのサービスの対象とされていなかった、こういう障害別にサービスの格差があったと、これをなくしていこうというのが趣旨なんです。また、在宅と施設の間の負担の格差も見られるからこれもやっぱりなくしていく方がいいのではないかと、より多くのサービスを受けられるよう市町村を中心に一元的にサービスを提供する仕組みをつくりたいと、そういう趣旨でこの法律を四月一日から施行しているわけであります。国の費用負担の義務化あるいは利用者負担の見直し等を行っておりますが、四月一日から実施されてまだ四、五、六と、三か月たっていないわけであります。

 実際、この障害者福祉のサービスの拡大を図るためにこの法律を制定したんでありますが、苦情があるのも事実であります。だから、そういう点も踏まえてよく、この四月一日から施行されたわけでありますので、この政府の趣旨の障害者の福祉サービスというものの向上、拡大につながっているかどうか、これをよく見ていかなきゃいけないと思っております。

 しかし、今の時点でまだ三か月たってない、それでどういう対応が必要かというのは、もう少し時間が必要じゃないでしょうか。やはり、この趣旨のとおりにいっているのかどうかという点も踏まえて、私はもう少し時間が必要じゃないかと思っております。

井上哲士君

 福岡で、この自立支援法の実施を前に、将来の生活を苦に、障害者を介護されていたところで親子の無理心中を図るという痛ましい事件があったわけですね。私は、本当に一刻も猶予ならない問題だと思います。

 今、苦情があるのも事実だとおっしゃいました。二月の段階では制度が理解されてないから問題が起きているんだと、だから制度の理解に努めるんだと言われました。しかし、もう実施したんです。そして、わずか二か月であってもこれだけ問題が起きているわけですから、私は、そんな悠長なことを言っているんじゃなくて、直ちに今ある問題の解決を図るということが必要だと思うんです。

 私たちは、政府がなかなかやらないということがありますので、党の国会議員団として緊急の調査を行いました。身体と知的、精神の通所、入所施設、それからグループホームを中心に全国から二百三十の施設を任意で選んで、二百を超える施設から回答がありました。今日、これについては発表をいたしますけれども、回答用紙には本当に深刻な事態がびっしりと書き込まれております。

 これ、一つの例でありますけれども、例えば利用料負担でいいますと、通所の方の場合はもう一律一万円から三万円の負担増に全部なっていると、こういうことが起きております。障害者年金とわずかな工賃収入で厳しい暮らしを送っている方にすれば、本当に耐え難い負担になっているんです。もらう賃金よりも出す利用料の方が高いと、何のためにこれでは来ているんだということになって、働く意欲を失って退所をされるという人も出てきている。私たちの調べでは、その二百を超える施設の中で既に施設の利用を断念した障害者六十五人、検討中含めますと百七十六人の方がこの施行によって退所ないしはそれを検討されていると、こういう実態があるんです。全く自立と反する事態が起きているんです。

 総理、こういう今の実態についてはどう受け止めていらっしゃるでしょうか。総理、総理。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 具体的な点について後ほど川崎厚労大臣からお話があると思いますが、今私が申し上げたとおり、様々な実態を含めて調査する必要があると思っております。それを、この四月一日から施行してありますので、少し時間が掛かるんではないかと申し上げているわけであります。

 苦情ばかりじゃないんですよ。こういう改正を望んでいた方々もいるわけですから、そういう点も含めて、何事も賛否両論あります。どのような法改正するにしても、現状を変えようという場合には賛否両論あるんです。そういう点も含めて、まだ三か月たっていない時点ですぐこうやりますという段階ではないという点も御理解いただけるんじゃないかと思います。

 川崎厚労大臣に。

委員長(中島眞人君)

 川崎厚生労働大臣。

井上哲士君

 いいです、いいです。時間ないですからいいです。

 今、実態を含めて調査する必要については……

委員長(中島眞人君)

 指名を受けてから。

 井上哲士君。

井上哲士君

 今、実態を含めて調査する必要があるということはお認めになりました。そして、私は、これだけ短い期間でも問題が噴出をしている。当時は期待をされた方も含めて、やってみたら大変だという実態があるわけです。国のいろんな負担の上限額などの軽減措置があったとしても、所得制限が厳しいということで実際上は役立っていない例が数多くあるんです。

 地方自治体は既に八都府県と二百四十四市町村が独自の減免措置決めていますけれども、これは逆に言えば国の措置が十分でないということの裏返しだと思うんですね。私は、今起きている問題だけ見ても緊急の措置が必要だと思います。

 月額の負担の上限額の大幅な引下げ、それから各種減免制度の所得要件の緩和、食費軽減措置の緩和と恒久化、少なくともこの三つは直ちにやるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(川崎二郎君)

 まず、総理から御説明ありましたように、障害者自立支援法はいまだサービスを利用していない障害者が多数おられる状況を踏まえて改革をいたしたものでございます。市町村を中心に一元的に提供する仕組みとなっております。

 一方で、国の費用負担、義務化をいたしました。今年の予算におきましても、昨年と比べて四百二十八億円増、四千三百七十五億円、約一一%の増とさせていただいておるところでございます。

 また、利用者負担の見直しに当たっては、障害者等の家計に与える影響を十分に考慮して月ごとの負担上限額を設定する、収入、預貯金の状況に応じて個別に減免するといった形で、国として最大限の配慮をいたしてきたところでございます。

 このような配慮処置を講じることにより、障害者が必要なサービスを年金収入などの範囲内で受けることができると考えております。

 一方で、四月からスタートいたしました。三月までの段階におきましては、この新しい制度をしっかり周知するようにと、厚生労働委員会等でも共産党の委員の方からもいろいろ御議論をいただいてきたところでございます。四月からスタートをいたして、どのような状態になっているか、自治体関係者からのヒアリングを通じながら今チェックをいたしている段階でございます。私も、地元の三重県の状況につきまして先日、三重県から説明を受けたところでございます。

 一方で、もう委員御承知のように、四月施行分の事務に加えて、十月に新たに障害程度区分の判定等の事務をしていかなきゃならぬということが、今各県が作業を進めている中でございます。そういった意味で、最終的に各県の意見をまとめて、どのような形でやっていくかということについてはもう少しお時間を賜りたいと思っております。

井上哲士君

 今のような説明は法案審議のときにもうさんざん聞きました。現行サービス後退させないとか、限りなく応能負担に近いとか言ったわけですね。

 私の地元の京都新聞が四月十八日に、「自立支援法「看板に偽り」早く正せ」と、こういう社説を掲げました。「障害者の自立を支援するはずの法が、まったく逆に運用され始めている。」「厚生労働省は昨年秋の自立支援法成立の際、現行サービスを後退させない努力を約束している。その約束に立ち返って、早急に自らの姿勢を改めるべきだ。」と、こういうふうに言っているんです。

 国会であれだけ議論をした、そのことと違うことが現に起きているわけですから、私は、そんな十月とか言わずに直ちにやるべきだと思います。

 しかも、施設や事業所が非常にこの報酬の大幅減で混乱をもたらしております。四月から報酬の減と一緒に、月額制からいわゆる日額制に支払方法が変わっております。しかし、障害者は体調が悪くなって急に休む方もいらっしゃいます。それが収入減になる。同時に、施設側の方は来てもらわないと収入になりませんから、今までは土日はグループホームに行っていた人も施設に来てくださいという形になって、実際、本当に自立に役立つんだろうかという事態が起きております。


資料2:画像をクリックで拡大表示されます。

 これも、私どもいただいた回答でいいますと、例えばある施設でいいますと、三月と四月比べますと月額で二百十三万減収になっていると、一四%減ですね。多いところでは二割、三割の減ということがあります。そして、そのことによって正に廃園も現実的な課題になってきたと、こういう悲痛な声も寄せられました。

 そして、そのためにどうしているか。障害者のための施設を守るというぎりぎりの状況で、やむなく職員を犠牲にするということも起き始めているんですね。ここの園では、回答としては、賃金の切下げ、人員削減、職員のパート化ということを言われました。夏季の一時金をカットするという計画を持っている園もありました。

 私、本当にこれ深刻だと思うんですね。福祉というのは人なんです。今でも福祉の職員の方は、低い賃金とか大変厳しい条件の中でやっておられる。そこにもっと労働条件が下がるということになりますと、サービスの低下にもなりますし、若い福祉の職員の皆さんを確保することがますます難しくなる。正に私は、日本の福祉の将来を憂うべき事態にしてしまう状況だと思うんですね。その点からいっても、こういうやり方、日額制自身も見直すし、元々根底にある応益負担ということをやはり今直ちに見直すことが必要だと思います。

 総理、もう一度伺います。やはり日本の福祉の将来考えても、今早くこれは見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君)

 これは施行前からもそのような御議論をいただいているわけで、予算の中で、政府としては、各予算ほとんど減らしている中でこの障害者福祉については一〇%以上伸ばしているんですよね。そういう中でサービスを拡大していこうと。しかも、収入のない人に対して減免措置とか様々な配慮をしているわけです。

 そういう点をよく御理解いただきながら、この法の適切な運用を図っていかなきゃならない。そういう中での問題点が、今、施行して二か月ちょっとたった、今後、各県、市町村等の御意見を聞きながら、問題点があった場合はその問題をどう正していくかという見直しについては政府としても真剣に対応しなきゃならない。

 しかし、まだ三か月もたってないんですから、しかもこれだけ予算を増やした、福祉サービスの拡大、提供している、そういう中でありますから、制度を変えるという上においては、賛否両論ありますので、反対の意見も含めて、賛成の意見も含めて、よく状況を見て対応していきたいと思います。

委員長(中島眞人君)

 時間が。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、やはり大本にある応益負担というものをやっぱり根本的に見直すべきだ、そのことを改めて求めまして、質問を終わります。


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