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2006年5月17日(水)

政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会
参院選挙区「4増4減」法案について

  • 投票価値を平等に近づけるという最高裁の要請に可能な限りこたえる立場から、現行制度の枠内で最大の格差是正となる14増14減を主張。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私も、この定数是正協議の各党協議にも参加をさせていただきました。私たちは、平成十六年一月の最高裁の判決を重く受け止めて、抜本是正が必要だと主張をしてまいりました。総定数は削らない、そして全国一区の比例代表制を維持し、その定数を削減をしないと。その中で、投票価値の平等の実現を目指して可能な限りの是正を図ることを主張もしてまいりました。最終報告の取りまとめの段階で具体案が提示をされた中では、比例定数を削減せずに選挙区定数の調整で最大の是正となる十四増十四減案が妥当だということも表明をしてまいりました。

 この十六年一月の最高裁判決は従来以上に踏み込んだ中身で、無為のうちに漫然と現在の状況が維持されるならば次回は違憲判断の余地は十分に存在すると、大変厳しい判決でありました。従来、立法裁量権を広範に認めていた多数意見から相当踏み込んだ判決でありました。これに対して、この四増四減案というのはとにかく較差五倍未満にするという是正であり、やはり小手先の対応だと言わざるを得ないと思います。

 しかも、昨年の十二月の二十七日に行われました国勢調査の速報値によりますと、厳しい判決が下ったこの参議院選挙時の五・〇六倍から五・一八倍へと広がっております。さらに、この速報値の時点での人口増減がそのまま続くという仮定で計算をしてみますと、例えば二〇〇九年にはもう神奈川と鳥取の較差は五倍を超えるということにもなるわけであります。

 そこで、従来になく踏み込んだ厳しい判決であった最高裁判決への受け止めというものがこの四増四減案にはどのように盛り込まれているのか、まずこの点をお聞きいたします。

委員以外の議員(阿部正俊君)

 お答え申し上げます。

 直接のこの検討のきっかけが最高裁の判決にあることは御指摘のとおりでございまして、正に、次回選挙においてもなお無為のうちに漫然と現状の状況が維持されたままであるとするならば違憲の余地なしとしないと、こんなふうなことが主だと思いますけれども、そういう意味で、大変司法の、最高裁からの判決ということで非常に重く受け止めまして検討を院として開始したと、こういうことだと思っております。

 ただ、御論議の過程で非常に時間を掛けて各党から意見を持ち寄り、お述べいただき、御検討いただき、真摯な御議論をいただきましたけれども、検討の下部機関としての専門委員会としても一定の決まった方向がなかなかまとまりませんで、しかもいろんな制約があるわけでございまして、総定数はいじるわけにはいかぬのだろうというようなこととか、あるいは比例の数、比例選出の数と選挙区選挙の数の変更ということも今回の制約として考えざるを得ないんじゃないかとかいうふうなこと、それから、憲法上、選挙制度上前提とされております半数改選の方式とかいうふうな制約の中で、可能な範囲での対応として今回の私どもが四増四減ということを提案をし、論議したわけでございますけれども、最終的には、改革協におきましても意見の一致を見ずにして、与党の責任として、最高裁へのこういったふうなことにこたえるべく四増四減案を提案をしたということでございます。

 どういうふうに盛り込んだかということは、十分なものではないのかなという気は正直いたしますけれども、ただ、少なくとも漫然と無為のうちに過ごしたということはないのではないかと。そういう意味で是非御理解をいただきたいし、そういう意味での立法府としての対応を最大限した案ではないかと、こんなふうな思いで御提案に至った次第でございます。御理解ください。

井上哲士君

 一部に、衆議院の定数配分は人口比例によるべきものだけれども、参議院と衆議院では機能に違いがあるので、人口比例を参議院の場合は相当程度後退することになっても許されると、こういうような議論もあるわけですが、しかし、参議院は衆議院とともに国権の最高機関たる国会を構成し、憲法上も、当然参議院議員も含めて国会議員は全国民を代表する選挙された議員とされているわけであります。

 その点で、この平等価値の投票原則というのは参議院においても貫かれるべきだと考えますけれども、その点での見解はいかがでしょうか。与党にお願いします。

委員以外の議員(阿部正俊君)

 先ほど申し上げましたように、選挙を通じた民主主義の実現ということを考えますと、投票価値の平等性といいましょうか、の追求というのは当然のこととして考えなきゃいけないことでございますけれども、ただ、我が国は二院制を取っている国でございます。したがって、衆議院での機能というものとそれから参議院での機能というのはおのずから何がしかの違いがありましょうし、かつまた選挙法につきましても特色を持ったものになると、それぞれ違ったものになってくるということもむしろ必要なのではないかなという気さえいたしますけれども。

 余り型にはまった言い方はしませんけれども、そういう意味で、これから先かなり踏み込んだ検討がなされるにいたしましても、そうしたことについての両院の機能あるいは歴史的な経緯等々、先ほど外国の例が総務省から紹介されましたけれども、上院と下院の二院制を取っているところでは大分選挙制度の方法なり数の上での在り方とか違いますので、その辺はどうか司法においても御理解をいただきたいし、かつまたそんなふうな意見も、言わば判決を通じた対話というのはおかしいですけれども、私どもとしても確認し合いながら最善のものを追求していく努力を今後も続けていくべきだと、こんなふうに考えております。

井上哲士君

 一定の機能の違いがあっても、やはり全国民を代表する選挙された議員の選挙として、投票価値の平等が参議院選挙でも当然貫かれるべきだと思います。

 それで、専門委員会の議論の中では確かに先ほどありましたように様々な議論がありましたが、それを通じて、総定数及び比例定数については削減をしないというのは大方の各会派の合意になったと思います。そうであれば、その枠内で比例を削らずに最大是正できるのが十四増十四減ということも示されたわけで、私たちはこれを採用すべきだということも表明をしたわけですが、これに踏み込む必要があったんではないでしょうか。いかがでしょうか。

委員以外の議員(魚住裕一郎君)

 今回の四増四減による定数是正は、投票価値の平等の要請にこたえるというだけではなくして、過去の改正との整合性、また今後の人口の動態、あるいは参議院の組織、在り方に影響を及ぼし得るような諸改革の動向も考慮して総合的に検討した結果、次の十九年の通常選挙に向けて当面の措置として妥当なものとして判断をしたものでございます。

 おっしゃるように、総定数をいじらない、あるいは比例と選挙区の枠組みも維持した上で平等原則を最大限に考慮して是正を行うとすれば、十四増十四減案が最も較差を縮小され得るものとして評価し、また私どもも提案したところでございますが、他方で、国勢調査の速報値で五・一八倍という状況、また最高裁の大法廷判決も考慮するならば、まずは次期通常選挙に間に合わせるべく定数是正を行っていくのが国会の責務であると。また、そういう考え方で選挙制度の抜本的な改革の検討が引き続き行われることを前提に、今回与党として、当面の是正策として四増四減案を取りまとめたものでございます。

井上哲士君

 両案の提案者にそれぞれお聞きするんですが、両案とも比例代表制の定数については維持をされております。専門委員会でも、二院制の中で参議院が果たすべき役割との関係での選挙制度の在り方についても様々な議論もしたわけでありますが、全国区や全国一区の比例代表制度が果たしてきた役割について、二院制の中での参議院の役割との関係で、それぞれについて御見解をいただきたいと思います。

委員以外の議員(阿部正俊君)

 具体的に、専門委員会の検討の過程の中で、共産党さんの御主張として、一つの意見でございますが、全部全国比例代表制にしたらどうかというふうなことにすれば較差ということはなくなるんじゃないかという御提案もあったことも確かでございますが、私どもとしてはやはり、結論的には今回の四増四減案で対応していくしか、当面の道でございますが、将来的にも比例だけでというのはいかがなものだろうかなと、こんなふうに率直に思います。

 というのは、別な意味からしますと、我が党の中の委員の人たちなんかからは、参議院については、むしろ人口比例というよりも都道府県の代表といいましょうか、というふうな物の考え方を取るべきじゃないのかと、それが二院制としての参議院の在り方と機能として合うものではないかという意見も相当あるということは確かでございますし、その辺は、したがって全国比例が果たした役割というよりも、都道府県代表と、それから代表的な性格を持った選挙区選挙の議員と、それから全国比例で当選した人たちとのバランスを持ったのが参議院の基本的な性格なのかなと。発足以来、大体三対二の割合で参ったと思いますけれども、両方の、全国比例と都道府県代表選出地区があって参議院としての機能が維持されていると、こんなふうな理解をするのが現在の制度の在り方としては妥当なのではないだろうかと。一方的に全国比例がいいんだということにはなかなかまいらぬのではないかと、こんなふうに認識しております。

 以上でございます。

委員以外の議員(小川敏夫君)

 お答えします。

 参議院の比例区選挙はやはり衆議院と異なった選挙区制度を持つということ、そして衆議院とは異なって、参議院の比例区が職能代表を選出する、あるいは選挙区ではなかなか議席を持てない少数政党にも議席獲得のチャンスを大きく与えるというような仕組みによりまして少数意見を反映するというような制度でございまして、十分その存在意義はあると、必要であるというふうに考えております。

井上哲士君

 先ほどの御答弁で、我が党として全部選挙区やめて比例区一本にしろというような主張はしたことはございませんで、選挙区と、おっしゃったような選挙区選出の議員と、そして比例代表の議員がバランスよくあるということは非常に大事だということを私たちも思っております。

 その上で、最後、民主党案についてお聞きするんですが、投票価値の平等という点で、こういう合区案ということを提案をされました。

 それで、やはりその県の有権者の皆さんの合意というようなことも大変必要かと思うんですが、特定の県だけが県選出の議員を持たないということで逆に不平等感を感じる、平等を損なうということもあろうかと思います。それから、今回たまたま最大較差の鳥取と島根が隣だったということで合区がうまくいくわけですが、そうでないことも起こり得るわけで、その辺の基本的考え方とルールも含めて必要かと思うんですけれども、その点お答えをいただきたいと思います。

委員以外の議員(小川敏夫君)

 お答えします。

 まず、その県選出の代表を持たないということではなくて、鳥取、島根の選挙区から選出された方は鳥取県と島根県の両県を代表するということになりますので、代表する議員を持たないという意味ではないかというふうに考えております。

 それから、鳥取と島根の合区ですが、これ、たまたま鳥取と島根が隣り合わせていたから合区という考え方ではなくて、やはり較差の原因となっております鳥取県、これをどこかと合区する必要があるんではないかと。合区するとしても飛び地というわけにいきませんから隣接県と合区することを考えると。そして、鳥取県が隣接する県、兵庫県、岡山県、島根県と、この三県を考えた場合に、やはり島根県と合区するのが、人口が比較的近いというような様々な状況から考慮しますとふさわしいんではないかということでございまして、たまたま鳥取と島根が隣り合わせたから合区という考え方ではないということは御理解いただきたいと思います。

井上哲士君

 投票価値の平等を目指して一層の抜本是正のために更に各党との協議を進めていきたいと思っております。

 以上、終わります。

井上哲士君

 私は、日本共産党を代表して、自民、公明両党提出の公職選挙法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 二〇〇四年一月の最高裁判決では、漫然と現在の状況が維持されるならば次回は違憲判断と指摘をされております。

 今回提出された参議院選挙区定数の四増四減案の法改正は、当面の較差を五倍以内に抑えるだけのもので、この判決を真摯に受け止め、投票価値を平等に近づけるという要請に十分こたえているとは言えません。まして、二〇〇五年度の国勢調査速報値を見ても、早晩、較差五倍を超える可能性が強まっていることを示しており、今回の法改正は対症療法と言わざるを得ません。

 我が党は、参議院改革協議会の選挙制度専門協議会の中でも可能な限り一票の較差を是正することを求め、比例定数を減らさず、現行制度の下、最も較差是正を図れる十四増十四減案が妥当であることを表明をしてきました。ところが、同協議会は、各党合意に至らずということで、与党及び民主党からそれぞれの改正案が提出をされました。

 我が党は、投票価値の平等要請に可能な限りこたえる立場を表明をし、反対の討論を終わります。


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