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井上哲士ONLINE
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2006年11月8日(水)

経済・産業・雇用に関する調査会
「雇用をめぐる現状と課題(厚生労働省)と経済成長戦略大綱(経済産業省)」について

  • ワーキングプアと偽装請負の問題で、偽装請負が、単に労働安全管理の問題だけではなく、低賃金で保険も年金もない劣悪な条件の温床となっていることについて質問。

井上哲士君

 共産党の井上哲士です。時間も限られていますので、雇用の問題に絞ってお聞きをいたします。

 最近、いわゆるワーキングプアという問題が大変社会問題になっております。どんなにまじめに働いても十分な賃金が受け取れない、生活保護水準以下の賃金しか受け取れないということがマスコミ報道なども通じて大変問題になっているわけですが、この問題を私ども予算委員会などで質問した際に、安倍総理は、いわゆるワーキングプアと言われる人たちを前提にコストあるいは生産の現状が確立されているのであればそれは大変な問題であろうと思いますと、こういう答弁をされました。現実は、正に前提にコストや生産の現状が確立されているということで問題になっているわけですね。

 そこで、総理もこれは大変な問題だという認識をされた以上、一定の制度的な、また法制的な対応も必要でありましょうし、経済界等にも強力な要請も必要かと思うんですが、どういう取組を厚生労働省として、この議論を踏まえて考えていらっしゃるのか、これが第一点です。

 それから、先ほど松議員からもありました偽装請負の問題ですが、このワーキングプアと言われる事態の一つの大きな温床にこれがあると思います。

 それで、先ほどの説明のペーパーを見ておりますと、この偽装請負がなぜ問題かという弊害としては、安全衛生等の事業者責任の所在があいまいなことになり、労働災害の発生などが起きると、こういうことが言われております。口頭では安上がりということも言われたわけですけれども。

 私、ちょっとこれだけではこの弊害のとらえ方が弱いのではないかなという思いがしているんですね。安全衛生の問題は第一あるわけですが、例えば、一年以上雇用した場合にも正規としての申入れをする必要がないというようなこともありますし、それから、単に安上がりというだけではなくて、正に保険なども全くないような働かされ方をしている、そういうことがある。そういう点で、企業としては大変、物のように扱えて使い勝手がいいという、ここが企業がやっぱりやっている問題があると思うんですね。

 ここまでこの偽装請負が持っている弊害というものをとらえなければ十分な対策が私はできないんじゃないかと思うんですが、どういう弊害と認識をされているのかもう少し突っ込んでお聞きをしたいと思います。

 それから三点目は、今回、国会でこれが随分問題になる中で、経団連など、御手洗会長自身が、むしろ請負法制に無理があり過ぎるんだと、是非見直すべきだというような発言をしたということも、大変これも問題になっているわけですが。

 よく総理が教育問題で規範意識ということを言われるんですが、違反をしておいて法律が悪いということを財界の幹部が言われるようではどうかなと思うんですが、こういうような財界からの要請などではなくて、やっぱり、むしろきちっとこういう事態が起きないような規制こそ必要だと思っているんですが、こういう発言を受けて厚生労働省はどういうことを考えていらっしゃるのか。

 以上三点、お願いします。

会長(広中和歌子君)

 それでは、最初の御質問に対して、金子政策統括官。

政府参考人(金子順一君)

 私の方からは、冒頭、一問目に質問のございましたワーキングプアのことにつきまして総論的なお答えを申し上げたいと思います。

 今議員からワーキングプアということでお話がございました。まあ必ずしも使われ方、はっきりした定義があるわけではございませんが、私ども、幾つかの統計調査のようなものでその実態をどう見るかということでアプローチがあるかと思っております。

 一つは、全国の消費実態調査というのを総務省がやっておりまして、これの勤労者世帯といったようなものを見て、収入状況を見てみますと、例えば年間収入が三百万円未満というような世帯割合というのは、平成六年で八・九%という数字でございました。これが平成十六年、十年後でございますが、一一・七%ということで、この数字が上昇しているということがございます。ただ、なかなかこれ、事態をどう見るかというのはなかなか難しゅうございまして、この間、平均の世帯人員が三・二四人から二・八二人へというふうな形で減少しております。したがって、一般的に世帯人員が減少いたしまするとその必要生計費は低下すると考えられるわけでございまして、年間の総収入三百万円未満層は増えているけれども同時に世帯人員も減っているということで、まあ必ずしもこの限りにおいて何か明確なことが言える状況ではないのかなと思っております。

 また、個人の所得ということで見てみますと、例えば年間所得百五十万円未満の人たち、これは就業構造基本統計調査で雇用者所得個人単位というのがございますが、これが平成四年、大分前の数字ですが、二〇・五%でございました。調査が飛びます最新時点の平成十四年は二四・〇%ということで、個人単位で見ても、これは上昇しているということでございます。ただ、これらの中にはパートで就労しております主婦層の方ですとか、定年後に嘱託で再就職をしている高齢者層といった方も含まれているんだろうと思っております。

 ですから、困窮ということでどう見るかというのもなかなかはっきりしないわけでございますが、ただ少なくとも第一点申し上げられますのは、特に非正規雇用が若年者層でも非常に増えていると。そういったことを背景に、若い人たちの低所得者層の割合が高まっている。これ、今の数字で申し上げますと、一七・九%から二二・六%という数字がございます。こうした動きにつきましては、将来の格差拡大や少子化への影響ということで深刻な問題をはらんでいるというふうに考えております。

 そうしたことで、冒頭、松野政務官の方からも御説明申し上げましたような、非正規対策につきまして、正社員化の促進でございますとか、あるいはパート労働法の見直しでございますとか、そういった対策に現在総合的に取り組んでいこうということで検討を進めているところでございます。

 偽装請負の関係につきましては別途また説明をさせていただきます。

政府参考人(鳥生隆君)

 偽装請負関係の質問でございます。

 請負の関係で、安全衛生等の弊害ということだけをとらえているんではないかということでございますが、確かに請負の場合は、勤続年数別の労働者の割合を見ますと、五年未満の者が物の製造を行う請負労働者の中で八三・五%を占めているということでございまして、勤続年数が一般の労働者と比べてかなり短いと。そういう中で、能力開発の機会が得られなかったり、あるいは賃金管理についても問題があるようなこともございまして、あるいはキャリアアップの見通しが立たないといった、そういった様々な問題があるんではないかと。

 そういうことで、偽装請負自体の違法な行為を是正するということは当然のことでございますが、その中でも、それに加えて雇用管理の改善といったことがやはり必要ではないかということでございまして、十八年度から、そういった雇用管理の改善のためのガイドラインを策定をするために、今研究会を開催して来年六月をめどにまとめるべく検討しているところでございまして、そういった点も含めまして、これから請負事業の適正化あるいは雇用管理の改善の推進に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 それからもう一点でございますが、先ほど御手洗会長の発言についての御質問でございます。

 この発言につきましては、私ども、御手洗経団連会長が指揮命令と仕事を教えるということの関係に触れた発言をしているというふうに承知しておりますが、一言で仕事を教えると言いましても、その意味内容が多様であるということでございまして、指揮命令に該当するということであれば適正な請負とは言えないということでございますが、御手洗経団連会長は、他方で、法律を遵守するのは当然という発言もされておりまして、仕事を教えるといった場合に、当初生産を開始するときに機械の使い方を説明するといったこととか、あるいは災害が起きるといった緊急の事態のときにそれを回避するための指示を行うといったことを指揮命令ということでとらえるべきではないと。

 そういった様々なケースがございますが、そういった点について関係者に正しい理解が深まるように私どもとしては努力したいと思っております。


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