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井上哲士ONLINE
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2006年12月14日(木)

教育基本法に関する特別委員会(午後)
「教育基本法案」について(採決まで)

  • 世論調査で「今国会成立にこだわるべきでない」が圧倒的多数だったことを指摘し、「質疑はまだまだ不十分だ」と批判。また、タウンミーティングの「やらせ質問」の調査報告書で「世論誘導だった」と認めていることを示し、「政府に教育基本法を改正する資格はない」と改悪法案に強く反対する。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 午前中の質疑で総理は、国民の多数が慎重審議を求めているということに対して、中教審で議論してきたとか衆議院で百時間などなど、いろいろ言われました。ところが、その中の答弁、何度も今日繰り返されましたけれども、タウンミーティングという言葉も教育フォーラムで意見を聞いたという言葉も総理からはありませんでした。私は非常におかしいと思うんですね。

 衆議院の議論のときに、小坂大臣が何度言ったかと。全国各地で教育改革フォーラムあるいは教育改革タウンミーティングを開催して国民の意見を聞いてきたと、だから出したと、何度も何度も言ったんですが、総理が今日言われなかったというのは、正にこの教育改革フォーラムやタウンミーティングは国民の声を聴いたものでなかったと、こういうことをお認めになったと、こういうことでよろしいですか。

国務大臣(伊吹文明君)

 これは、総理の心の中は正に心の問題でございますから私はよく分かりませんが、分かりませんが、総理がここではっきり申し上げたことは、民意の一番の最大のポイントは全国民が参加する選挙だということなんですよ。そして……(発言する者あり)違いませんよ、それは。それ、それが違うといったら憲法を否定することになりますよ。そして……(発言する者あり)

委員長(中曽根弘文君)

 御静粛に願います。答弁中です。御静粛に願います。

国務大臣(伊吹文明君)

 しかも、総理が御答弁を申し上げていたように、自由民主党もそして連立を組んでいる公明党も、教育基本法の改正を行うと、そしてその内容の概要をある程度付けたマニフェスト、選挙公報を出して、そして選挙をやったんですよ。ですから、タウンミーティングというのはそれを補完する、間接民主主義を補完する一つの仕組みですから、そのことに触れなかったから何か民意を聞いていないようなことをおっしゃるけど、そんなことは全然ありませんよ。

井上哲士君

 小坂大臣はそんなことは、補助的なんて言っていませんよ。何度もかんどもこの教育改革フォーラムとタウンミーティングで国民の声を聴いたから出したんだと、何遍も言っているんですよ。それを今になってそれは補助的だなんて、それは正に国民だましだと私は言わざるを得ないんです。

 このタウンミーティングの調査委員会の報告書では、「特に、国民の間で議論が分かれている場合などテーマによっては政府の方針を浸透させるための「世論誘導」ではないかとの疑念を払拭できない。」としておりますが、大臣、この報告書を受けて世論誘導だと、こういうことをお認めになりますか。

国務大臣(伊吹文明君)

 世論誘導というのは私はいささかどうかと思いますが、例えばタウンミーティングにどれだけの方が参加されたのか、そしてそのタウンミーティングがどれだけの方の世論に影響したのかということは、よくそれは調べないといけません。しかし、不適切な世論の形成の一部を担ったということは、それはもう官房長官も認めているわけで、不適切だということはここで申し上げているんじゃないんですか。

井上哲士君

 だから、世論誘導の疑念があるという指摘を受け止めていると、こういうことでよろしいんですか。

国務大臣(伊吹文明君)

 世論誘導というのは、世論というすべてをタウンミーティングで動かせると思われますか。一番大切なことはそうじゃないでしょう。(発言する者あり)

委員長(中曽根弘文君)

 御静粛に願います。質問中です。御静粛に願います。

井上哲士君

 これは、内閣府が出した調査報告書にこういう指摘があるから、この立場に立つのかということを私は聞いているんですよ。

 私は、昨日も教育改革フォーラムの問題を聞きましたけれども、あれだけのいろんな問題がありながら、独自に調査もしようとしないと。そして、先ほど来の議論の中でも一番の核心の問題も明らかにしないわけですから、全く私は反省をしてないと。こういうお役所に教育の基本法などを変える提案をする資格がないということが改めて明らかになったと思います。

 その上で、これも朝から問題になっています自民党の新憲法草案とのすり合わせという問題でお聞きをしたいと思います。非常に重大問題だと思うんです。

 大臣はチェックするのは当然だと、こういうふうに答弁をされましたけれども、文部科学省が出すあらゆる法案について、一々自民党のこの新憲法草案とすり合わせをしているんですか。

国務大臣(伊吹文明君)

 もう何度も何度もここで御答弁申し上げておりますが、まず今出している基本法というのは、現行日本国憲法の下で出しているということは確かなんですよ。しかし、立法をする場合にはあらゆるものとのチェックをしているというのは、これは立法政策に携わった方なら当たり前のことなんですよ。

 具体的に申し上げましょう、それじゃ。

 例えば、日本国憲法十四条では、国民は法の下に平等とあります。そして、この当該法案の関係しているところの四条と自民党の新憲法草案の十四条と、きちっとこれが合っているかということをチェックしているわけです。二十六条においては日本国憲法と自民党の新憲法草案は同じなんですよ。何も変わっておりませんよ。二十三条もすべて学問の自由ということを前提として書かれているんですよ。そういうことはチェックしなけりゃできないじゃないですか。

井上哲士君

 私が聞いたのは、教育基本法以外の文部科学省が提案する法案は一々こういうふうに新憲法草案とすり合わせをしているんです、当たり前だと言われたから、それを聞いているんです。

国務大臣(伊吹文明君)

 これは何度も何度も井上先生御自身もそういう言葉を使っておられるでしょう。教育における憲法のようなもので、基本的な理念法案だという重要法案だからチェックをしているんですよ。

井上哲士君

 つまり、ほかはやってないということで確認してよろしいですか。

国務大臣(伊吹文明君)

 すべての法律をやっているかやっていないかは、それは私はチェックはいたしておりません。しかし、当該教育基本法というのは大切な教育の理念法ですから、法の下の平等だとか学問の自由だとか教育を受ける権利だとか、それは現憲法においては当然大丈夫だと。自民党の草案ではどうなっているか、それはチェックするのは立法提出者としては当然でしょう。

井上哲士君

 じゃ、チェックしたときに、自民党の新憲法草案とはそごをしたらどうするんですか。

国務大臣(伊吹文明君)

 将来そごをしても、それは現在の日本国憲法の下でこれを出しているんですから、そごをするということは、もし自民党の案に今出すものがそごをするということになれば、それは憲法が変わるかどうか、それは将来の問題でしょう。だけれども、そごをしているところはありませんよ。皆さんは一方的に、何かこの今出している法案が現行憲法と、日本国憲法が全く違うようなことを言っておられるけれども、先ほど日本国憲法、自民党憲法草案の提出者から不規則発言が次々と出ているのは、そういうことじゃないから出ているんですよ。

井上哲士君

 正に憲法に準ずる法案を、今の憲法とは全く違う自民党の新憲法草案とすり合わせようとしたことが大問題なんですね。

 じゃ、聞きましょう、具体的に。自民党の憲法草案の第十二条の「国民の責務」はこう書いています。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。」と、こうなっているんですね。「公益及び公の秩序」という言葉です。

 十三条の個人の尊重、ここも「国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と、こうなっているんですね。今の憲法十三条にある公共の福祉という概念と公益及び公の秩序という概念は全然違うんです。

 これは、もう憲法学者の中では当たり前の話でありまして、公共の福祉というのは、人権と人権がぶつかり合ったと、そのときにそれを調整する原理なんですよ。それはなぜかといえば、憲法というのは国家権力による人権侵害を許さないと、そういう権力制限規範だからそうなっているんですよ。それをこの自民党案のように公益及び公の秩序にしちゃうと、全く違う意味になるじゃありませんか。正に制限付自由ということになるんです。そういうことになったら、今の政府の教育基本法案にある個人の尊厳というのは、結局この新憲法草案のように正に制限的な尊厳と、こういうことになるんじゃないですか。

国務大臣(伊吹文明君)

 なるんですよと先生がおっしゃって、学者の説はこうですよとおっしゃいますが、それは決め付けじゃないですか。今の、今の憲法……(発言する者あり)それこそ決め付けじゃないですか。今、それじゃ、例えば、公共の福祉の範囲内で権利というものは守られると今の憲法では書いてあるわけでしょう。そして、今度の日本国憲法の記述とそこがこういうふうに違うと言うけれども、日本国憲法草案を書いている人はそんなことを意図していないと、こう言っているわけですから……(発言する者あり)それは、それは学者の、それは先生の判断であり、先生が引用しておられる学者の判断なんですよ。

井上哲士君

 それじゃ、なぜ公益の福祉という、今の憲法にあって広く使われてきた、そして裁判の中でも人権相互の衝突調整機能として使われてきた概念なんですよ。それを何でわざわざ公益及び公の秩序に変える必要があるんですか。

国務大臣(伊吹文明君)

 教育基本法の審議をしておりますから、日本国憲法と自民党の憲法草案との対比の議論をしているわけではありませんが、なぜ変える、変えないというのは、それは立法している者の立法意図でしょう、それは。用語の使い方でしょう。変えちゃいかぬという意見の方もあるし、同じ意味を分かりやすく書き直したという意図の人もいるじゃないですか。それは決め付けちゃ駄目ですよ。

井上哲士君

 いや、わざわざ公共の福祉というのは、先ほども申し上げました、裁判の中でもずっと積み重ねられてきた概念があるわけですよ。それを公益及び公の秩序、これに言い換える。結局、秩序に反するようなやり方は許さないということで、正に、言わば権力からの個人の権利を守る今までの規範とは逆になっちゃうんですよ。これは、多くの憲法学者の中でも当然の議論としてされているんです。

 ですから、私が聞いているのは、この教育基本法の政府案の個人の尊厳という言葉がありますけれども、これは正に自民党のある新憲法草案とすり合わしたと言われるわけですから、これはこういう制限的な尊厳ということなのかということを聞いているんです。

国務大臣(伊吹文明君)

 これも何度も何度もお答えしておりますが、国や社会を愛情と責任と気概を持って自ら支える責務を共有するというくだりがございますと、ここのところを教育基本法の二条で受けておりますと。そして、教育のところについては、教育基本法でございますから、この教育基本法には法令として異例でございますが前文がございますと書いて、その後、この条項にこの基本法は、現行憲法下においてもこれは当然のことですがと私、言っているんですよ。そして、新しい日本国憲法草案が国民の御了承を得られても十分堪え得る内容になっていると。

 だから、先生の御判断は、あるいは先生が憲法学者はこうだとおっしゃるその憲法学者は、自民党の憲法草案と現憲法草案が全く違うと……(発言する者あり)いや、違うと言っている方がおられるということですよ。我々はそうは思っておりません。

井上哲士君

 それは全く問題ですよ。再三言ってきましたけれども、正に個人の尊厳が、自民党の新憲法草案のいわゆる正に公益及び公の秩序に反しないように、こういう制限が付いたようなものになったら、正に自由な営みとしての教育という問題に大変なことになると。

 私は、正にこういうものとすり合わせてきたものが決して許されることではないと、やっぱりこれは廃案しかないということを申し上げまして、終わります。


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