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2007年3月15日(木)

文教科学委員会
「北アルプス大日岳遭難事故訴訟」と「特別教育支援員配置」、「大規模養護学校の解消」について

  • 北アルプス大日岳遭難事故訴訟について、裁判所の和解勧告に従い、一審判決を受け入れた和解協議を行うよう求める。また、新たに交付税措置されて特別教育支援員配置の予算が特別支援教育にきちんと当てられるよう要請。さらに愛知県の大規模養護学校の大規模化の解消のため、国として取り組むよう求める。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 大臣の所信に対する質疑の前に、北アルプス大日岳遭難事故訴訟についてお聞きをいたします。

 この事故は、二〇〇〇年三月に、当時の文部省の登山研修所が実施をした大学山岳部リーダー冬山研修会で、講師に引率された研修生の方が富山県の大日岳の頂上付近で休息中に乗っていた雪庇、雪の吹きだまりですね、これが崩れて二人の大学生が亡くなったというものであります。

 遺族が国の責任を問うて損害賠償を求めて訴訟を起こされまして、去年の四月に富山地裁で登山ルートと休憩場所の選定に過失があるとして国に一億六千七百万円の支払を命ずる遺族全面勝訴の判決が出ました。国は控訴されましたけれども、つい先日、三月十二日の控訴審での第一回口頭弁論で、名古屋高裁の金沢支部は、国側が新たに申請した証人を不採用として和解を勧告をされました。

 これは、一審では国側が主な論点で主張したことはことごとく取り入れられなかったわけで、しかも証人を不採用としたということは、もうこれはいたずらに引き延ばすことなく遺族に誠意を持って和解をせよと、こういう裁判所の意思だと思うんですね。

 私は遺族の方とも何度かお話を伺いましたけれども、大臣にも様々な要望書などもお届けをされております。そういう声が大臣に届いているだろうかというお声もありますし、私はこういう下で、やはり一審判決を受け入れて、教訓を登山者の安全確保に生かすという立場で速やかな和解を進めていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(伊吹文明君)

 まず、大変お気の毒な状況であり、遺族の心情というのは、こういう事故じゃなくても私たちはやっぱり身内を失えば悲しいものですから、それは十分私も分かっております。

 私の事務所にも、秘書から報告を受けておりますのでは、昨年の暮れと今年と二度来られているんですよ。要望書のようなものを持ってきておられます。ただ、私は文部科学大臣としてこれに対応しなければならないんで、個人の議員事務所にお見えいただくというのは少しやっぱり筋が違うんじゃないかと。そこで、秘書はこれをお預かりをして文部科学省へ持ってきておりますし、私に当然報告しております。ですから、私にはきちっと伝わっているということですね。

 私も、実はお見えになって初めてこの事件があるのを知りました。よく担当者から事件の概要、遭難の概要も伺っております。裁判所の高裁の和解の勧告があったということも承知しておりますので、少し、担当の課長は遺族の方と常に接触しているようですけれども、文部科学省だけではこれはちょっと簡単に判断できないです、国の訴訟というのは法務省が一応前面に出ておりますから。ですから、関係省庁と少し協議をして、そして裁判所の言っておられる論点、あるいは裁判所が和解勧告をされるに至った経緯、これをよく伺って、そして事務的に詰めさせた上で私の判断を示したいと思います。

井上哲士君

 遺族の思いは伝わっているようでありますから、是非私は、一審判決に沿った和解をして、その際には大臣から直接謝罪もいただきたいなということも思っておりますが。

国務大臣(伊吹文明君)

 遺族と接触がおありになるようですから、文部科学省の担当局の何というのか、窓口は常に開けてありますので、私に対する御要望も、できれば文部科学省の方へおいでいただくようにお伝えください。

井上哲士君

 遺族の皆さんは、大切な息子を奪った山を憎むとか、そういうことではなくて、これ、真実を究明する会というところがパンフレットを作っておられますが、こう言われているんですね。「私たちは、わが国の山岳遭難防止対策にとって、文部科学省登山研修所が果してきた研究、研修活動は実に大きいものがあったと考え、今後もいっそう発展させて欲しいと考えます。

 それだけに今回の遭難事故の真の原因を徹底して究明して欲しいと願っています。」「そうしてこそ無念のうちに逝った息子たちも納得できるのではないでしょうか。」と、こういうことを言われております。

 登山研修所というのは登山を学ぶ唯一の国の機関でありますが、この事故以来、冬山の研修は行われていないということですね。

 今の遺族の願いもありますし、登山界からもこれはやっぱり冬山研修は再開をしてほしいというお声も随分お聞きしております。この点でも是非冬山研修をこの教訓を踏まえて再開をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(樋口修資君)

 お答え申し上げます。

 御遺族の方々等から要望されておられます冬山登山研修の再開につきましては、本件事故の事案の終結しました暁には、私どもといたしましても、速やかにこの事故の再発防止策をしっかりと講じた上で、冬山登山研修の再開に向けて取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

井上哲士君

 正に登山界も望んでいらっしゃいますから、ですから、そのためにも是非速やかな一審判決に沿った和解を繰り返しお願いをしたいと思います。

 次に、この四月から実施をされます特別支援教育の問題についてお聞きをいたします。

 昨年の法改正で、軽度発達障害の対応を従来の障害児教育も含めて特別支援教育として学校教育全体で取り組むことと法文上明記をいたしました。法案審議のときも繰り返し議論になったのは、この取組を進めるためには、やはり人の配置というのはどうしても必要だということでありました。

 まず、現状で小中学校での介助員や学習支援員の配置というのはどうなっているのかお聞きしたいと思います。

政府参考人(銭谷眞美君)

 全国の公立の小学校、中学校におきまして、障害のある児童生徒の支援のために配置をされている介助員あるいは学習支援員の数でございますけれども、合計をいたしまして約一万三千六百人でございます。これは平成十七年五月一日現在の数でございます。

井上哲士君

 都道府県別に見ますと、小中学校の数に対して神奈川は一四四・九%、滋賀は〇・九%ということで、かなりばらつきがあります。もちろん、教員の加配という形で対応されているところもありますので、この数自体を直ちに云々するつもりは今ないんですが、しかし、現状ではやっぱりとても人が足りないという状況があります。既に普通学級に様々、アスペルガーの子供などを受け入れている、本当に格闘されているんですね。

 京都市の教員の皆さんから少し聞いた事例を御紹介しますと、例えば昨年、五年生のアスペルガーの子供が校舎から飛び降り掛ける事件があり、年度途中から加配講師に来てもらって大変助かったと。しかし、その子は引き続き状態が悪くて、加配講師が付きっきりの状態だと。講師がいない時間には必ずだれか男の教員が付くようにしていると、こういうお話もありました。それから、これはほかの学校ですが、やはり五年生でアスペルガーの子供、ADHDの子供がいて、先日も校舎から飛び降り掛ける事件があった。突然テレビゲームの画面がフラッシュバックすることが多くて、パソコンにはまり込んでしまい、やめさせると暴れ出すと。今は状態が悪く欠席しているが、その子と仲の良かった子供がかかわることに負担を感じて転校してしまった。こういうことも聞きまして、今も様々な努力がされております。

 四月からはこれいよいよ位置付けられるわけでありますから、一層の手当てが必要だと思うんですね。現場の声は、やはり教員を増やしてほしい、専門性を持った人を配置をしてほしいということでありますけれども、文科省としては特別教育支援員の配置で対応されようとしておりますけれども、その内容と人数はどういうことになっているでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 特別支援教育支援員でございますけれども、この支援員の業務内容としては、いわゆる介助員の方が行っておられる業務及び学習支援員と呼ばれる方が行っている業務、これらを併せて幅広く想定をいたしております。

 介助といたしましては、移動の動作、衣服の着脱動作、食事動作、用便の動作、階段昇降動作、バス添乗などの介助業務を行うといったような業務がございますし、また、学習活動上のサポートということで、学習の支援あるいはADHDの児童生徒等に対する安全確保といったような障害のある児童生徒に必要な支援、こういうものを幅広く想定をし、また、その支援によりまして業務の比重の置き方というのもいろいろ出てくるのかなと思っております。

 この特別支援教育支援員の配置に必要な経費の地方財政措置を行うことといたしまして、平成十九年度には支援員二万一千人相当、約二百五十億円程度を予定を地方財政措置でいたしております。

井上哲士君

 元々配置されているボランティアの謝礼金程度だというようなことではないと確認してよろしいですか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 支援員二万一千人で二百五十億円でございますので、これを割り戻しますと、年間一人当たり約百二十万程度という積算にはなっております。

井上哲士君

 〇八年度には三万人に拡充をしてすべての小中学校に一人が配置できるようにするということと聞いておりますが、必ずしもこういう形で現場で具体化をされていないんではないかと。先ほどちょっと京都市のことを申し上げましたが、教育委員会などはボランティアの謝金程度の金額しか来ないということで、国の言うところの支援員として具体化をされてないように私は伺っておるんです。

 文部科学省としては通知も出されているわけですけれども、やはり新しい制度として始まり、そのためにこういう支援員配置のための交付税措置がされているわけですから、しっかりこの特別支援教育の充実のためにきちんと使われるということは是非徹底をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 今回の地方財政措置は、あくまで地方交付税の積算上の話でございますので、地方交付税は地方公共団体の一般財源でございますから、その使途はあくまで交付先である地方公共団体の判断にゆだねられるわけでございます。

 ただ、文部省としては、特別支援教育支援員の配置を進めようとする地方公共団体の予算措置の一助となりますように、昨年十二月に既に特別支援教育支援員に係る地方財政措置の予定について、今お話ございましたように通知をしているところでございます。

 また、今後配置を進めようとしております地方公共団体に対しまして、その参考となりますように具体の算定基準ですとか配置に係る先行事例の紹介など必要な情報提供を行うことなどによりまして、地方公共団体における配置の促進を支援をしてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 これは正に特別支援教育の充実のために交付されるわけでありますから、そのためにやっぱり使われるという点でしっかり徹底をしていただきたいということを改めて申し上げておきます。

 あわせて、盲・聾・養護学校もこの四月から特別支援学校になります。地域の障害児教育のセンター的機能を果たすことも求められているわけでありますが、お手元にあります資料にありますように、公立学校建物の整備率でいいますと、小学校が九五・八%、中学校が一〇六・二%、高等学校が八五・三%、特殊教育諸学校が六六・一%、幼稚園が九三・八%と、やはり障害児学校の整備というものが非常に遅れているということを示していると思うんですね。

 さらに、公立の養護学校の一校当たりの在籍数はどうなっているのか、全国平均と都道府県ごとに見て最大のところと最少のところ、知的障害と肢体不自由に分けてお答えいただけますでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 知的障害の養護学校の一校当たりの規模ということでございましたですね。最大のところは、これは愛知県だったと思いますけれども、県の平均が二百六十五人ということでございます。それから、最小のところは大分県でございまして、これは七十六人と。全国平均は百三十九人でございます。

 それから、肢体不自由の養護学校でございますけれども、都道府県別で最大のところは岡山県でございまして、百六十三人でございます。それから、最小のところは高知県でございまして、二十五人でございます。全国平均は九十五人という在学者の状況でございます。

井上哲士君

 資料の二枚目に一覧を付けておきましたけれども、都道府県ごとにかなりの違いがあるわけですね。そして、一枚目の下にありますように、愛知に非常にマンモス校が集中をしております。知的障害でいいますと、全国の多い十校のうち六校が愛知県に集中をし、一番多いところは四百名以上というところが三つあるわけですね。

 私、この間、この愛知県のマンモス養護学校を見てまいりまして、肢体不自由を対象にした港養護学校と知的障害を対象にした半田養護学校を見てまいりました。いずれも有数のマンモス養護学校ですね。

 児童生徒数が港養護学校で二百二十一名、そして半田で四百十七名であります。教職員も、だから相当数の数あるわけですね。半田の養護学校などは、職員室が百四十五人、机が一杯で、職員会議をやるときもハンドマイクを使わなくちゃいけないと、こういう状況があります。部屋が足りなくなっていますから、図書室で会議をやったり、そこにもピアノが置いてあるという状況がありましたし、特別室を、作業室とかいろんなものをどんどんどんどん普通教室に転用していると、こういう状況もあるわけですね。体育館も、これ小中高一貫ですので、一つしかありません。雨の日になると、もう体育も廊下でやらざるを得ないとか、こういう状況も様々聞いてまいりました。

 それから、結局学校の数が少なくてマンモス化をしているわけですから、スクールバスの距離も非常に長く掛かるということになります。この港の養護学校の場合は、港区の端っこの方から乗車する生徒は一時間半以上も通学時間が掛かっていると、こういう状況があります。

 文部科学省として、こういう大規模校の現状というのをどのように把握をして、様々教育上の問題点があると思うんですが、その解消のために努力をされてきたのか伺いたいと思います。

政府参考人(銭谷眞美君)

 ただいま先生お話しのように、特に知的障害の養護学校で大規模校が最近増えてきているという実情は認識をしているところでございます。一校当たりの人数で見ますと、平成七年が平均百四人ぐらいだったものが、その十年後、平成十七年は百二十八人ということで、やっぱり一校当たりの規模も大きくなっております。

 その背景としては、高等部にかなり子供たちが来るようになったといったようなこととかいろんな事情はあろうかと思いますけれども、各都道府県におきまして、そういう学校の状況について、児童生徒の数とか地域の実態を考慮していろいろと御工夫をいただいているということは認識をいたしております。

 例えば、お話のございました愛知県におきましても、できる限り適切な教育的な支援を一人一人のニーズに応じて行うという観点から、例えば県立高等学校の余裕教室の活用とか、あるいは養護学校の新設等々、いろいろなことを考えながら過大化の解消について努めているということを承知をいたしているところでございます。

井上哲士君

 例えば愛知でいいますと、今度一つできる関係でこの安城養護学校というのは数は減るんですが、今二番目である半田はこの四月からは七十五学級、四百三十二人に増える予定だと、こういうふうに聞いておりまして、およそ追い付いていないという状況もあるわけですね。

 そして、結局、非常に大規模校化することによって、先ほど申し上げたように特別教室の転用などが起きている。障害を持つ子供にとって非常にやっぱり特別教室というのは重要だと思うんですね。音楽とかいろんな体を動かす授業とか、そういうもののための部屋をきちっと確保しておくということは普通学校にも増して大変大事だと思うんです。そういうところが犠牲になっている。

 それから、この半田の場合は、女子職員用の更衣室を生徒用パソコン教室に転用した結果、女子職員用の更衣室はかつての掃除道具置場になっているんですね。窓もなくて非常にじめじめしている。養護学校での教員の皆さんは必ず着替えすることが必要なわけですが、こういうしわ寄せも来ているわけです。

 それで、やはり四百名を超えて、職員会議もハンドマイクというようなこと、全体のやっぱり教育状況から見ますと、私はやっぱり一定の適正規模というものを示して、そして国として整備計画なども持って、また、例えば財政誘導なども含めて、これ、なくすための努力が要るんではないかと思うんです。小中学校の場合は大体十二クラスから十八クラスという適正規模というものも示されているわけですから、私は養護学校についても当然子供たちの行き届いた教育の環境整備という点で一定の規模を示して計画的に解消していくべきかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 養護学校につきましては、在籍する児童生徒の障害の状態とか地域、学校の実情によりまして実態が様々でございます。現在、そういう観点から規模についての特に基準というのはないわけでございます。

 ただ、個々の学校につきまして、子供の数に応じた学級編制、それに伴う教職員の配置、また子供の数に応じました施設の補助、整備といったことについては、私ども、標準、基準を作りまして、所要の財政措置をしているところでございます。

 今後、子供の数の見通しとか、あるいは個々の学校の生徒の状況、地域の実態、こういったものを判断をして、設置者におかれて十分に養護学校の配置については計画をし、また措置を講じていってほしいというふうに今は思っているところでございます。

井上哲士君

 設置者にやってほしいという希望を述べられたわけですが、私は、障害を持つ子供がどの県に住んでいようがどの町に住んでいようが、やっぱり行き届いた教育を受けられる、その権利持っているわけですから、これがやっぱりみんなに届くように、国として例えばそういう地域間格差の実態調査をするとか、一定の計画も策定をするとか、また予算も確保して整備を進めるとか、こういう積極的な策を取っていくべきだと思います。

 その点、最後、大臣に御所見を聞きまして、終わりたいと思います。

国務大臣(伊吹文明君)

 今ずっとやり取り聞いておりました。

 まず、地方公共団体の実態は調べさせましょう、これはですね。ヒアリングをきちっとさせることが必要だと思います。

 それから、公立文教の補助金だとか義務教育の国庫負担金だとかというものは持っておりますけれども、基本的に、先ほど来やり取りがあったように、交付税の中に入っているということは、なかなかこれはやっぱり率直に言ってやりにくいですよね。補助金を地方へ渡して、税目を渡して、それが地方分権でと言ったためにほとんどこちらに手段がなくなっているというのが現状ですから、できるだけ誠意を持ってお願いするということしか仕方がないですから、地方によく話してみたいと思います。

井上哲士君

 終わります。


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