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2007年6月19日(火)

文教科学委員会(午前)
教育3法案について(対総理)

  • 教員免許更新制度と教員養成系大学の運営費交付金の問題について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、教員の免許更新制と大学の運営費交付金の問題についてお聞きします。

 教育にとって子供と向き合う教員の役割というのは決定的に重要であります。社会や子供たちの変化に対応しながら、常に自ら向上させるということが必要であります。しかし、今回盛り込まれた教員の免許更新制が果たしてそれに役立つんだろうか、教員の身分を不安定にするという点でも、現場から切り離した研修を行うという点でも、子供と向き合うことの妨げにかえってなるんじゃないかと、こういう疑問の声が多く上がっております。

 さらに、果たしてこの更新講習をしっかりと行う体制が取れるんだろうか。毎年十万に上る教員に対して三十時間の講習を義務付けます。小中学校の現職教員は約六万人でありますが、この講習というのは教員養成大学がかなりの部分を担うことになります。教員養成系大学には非常に過酷な条件が押し付けられることになるわけですね。

 私は、ある地方の大学の関係者からお話を聞きました。有力な教員養成系の大学でありますけれども、文部科学省が言うような土日の夜の開設というのは非常に困難だ、平日も難しい、結局夏休みの集中的な講習しかないと言われておりましたけれども、それも他に様々な講習等があって非常に受入れは限界がある、しかも、それやっているともう研究が全くできなくなると、こういうお話もありました。

 総理は、こういう実態については、まずどういう認識をされているでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 この講習の具体的な体制については文部科学大臣からお答えをいたしますが、この免許更新制を導入する以上は、全国の教員の皆様が円滑に受講できるよう開設大学についての情報提供など国として受講の支援に努めていかなければいけないと、このように思っております。

井上哲士君

 情報提供は当然でありますけれども、今言ったような大学の現状がある中で、果たしてきちんとそういうことができる体制が取れるのかどうか、そこの認識をお聞きをしているんです。

国務大臣(伊吹文明君)

 これは先生、委員会で何度も問答しましたように、毎年約十万人の方がお受けになるわけですから、免許更新のために、教員養成大学が今八百五十五ありますから、一大学当たり毎年百二十人ということになりますね。四十人だと三クラス編制ですから、これは決して私は無理な数字ではないと思います。

 ただ、お受けになる方の負担あるいは教員養成大学の御負担については、それは私どもが予算その他でしかるべく配慮をしなければならないと思います。

井上哲士君

 八百五十五というのは、短大も含めてすべての数なんですね。現職の小中学校の教員に講座を開設できる学校は限られておりまして、それはやっぱり机上の空論だと言わざるを得ないんですね。

 例えば鳥取の場合は、県内に小学校の課程認定受けているのは鳥取大学しかないんです。ここが国の方針で教育学部を四年前に廃止をしました。課程認定だけは残していますけれども、教育学部じゃなくなりましたから、九十人ぐらいいた教員が今二十五人になっているわけですね。しかし、鳥取の場合はかなりの部分をここが受け入れる必要がある。これはなかなか困難だということを関係者も言われておりましたけれども、今の十年研修の受入れも相当困難なんだということを言われておりました。

 こういうところも含めて十分に可能だと、こういうことをおっしゃるんでしょうか。

政府参考人(銭谷眞美君)

 課程認定を受けている大学は、先ほど申し上げましたように八百五十五あるわけでございます。それらは地域別には偏在があるというのも、これは事実でございます。

 例えば、小学校について申し上げますと、小学校の教員養成課程を有する大学は、すべての都道府県で、全体で百八十二大学ございます。中学校につきましては、すべての都道府県で、全体で六百三十三大学ございます。高等学校につきましては、これもすべての都道府県に存在し、全体で五百五十五大学ございます。ただ、大学が多い都道府県、それから少ない都道府県、これがあるのも事実でございます。例えば東京のように大変大学の多い県もあれば、先生お話しのような少ない県もございます。

 したがって、実際の免許更新講習に当たりましては、こういった大学に御協力をお願いをすると同時に、通信教育、あるいはインターネット、こういったメディアを活用したり、あるいは夏休み、冬休み等の長期休業期間中に集中的な講座の開設をするなど、いろいろと更新講習の開設には私ども工夫が要ると思っております。

 ただ、量的には、先ほど来申し上げておりますように、受入れ可能な数であると認識をいたしております。

井上哲士君

 数のつじつまは合うかもしれません。政府が無理押しすれば、枠はできるかもしれません。しかし、本当に最新の知識や技能を身に付けて教壇に誇りを持って立てると言われるような講習ができるんだろうかと、私は大変疑問なんですね。

 しかも、現状でも困難でありますけれども、今政府はこの教員養成系大学の教育研究基盤を一層困難にするような方向を打ち出されております。

 お手元に資料を配付しておりますけれども、財務省は、国立大学の運営費交付金の配分について、教育研究成果に基づく配分をする、こういうことを言い、その一つのシミュレーションを出しております。これ見ていただいたら分かりますように、五〇%以上交付額が減少する法人が五七%もあります。そして、この黄色い部分が教員養成系大学ですね。軒並み下位に並び、九〇%、八〇%という削減になっているわけですね。

>>配布資料(PDF:約265KB)

 総理、これは大変な結果でありまして、正に教員養成系大学がつぶれることになるじゃないかと。一方で教育が最重点課題、教員の資質が重要だと言いながら、それを育てるこの養成系大学をつぶすような、こんな方向が打ち出される、これ全く私は支離滅裂だと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 この運営費の交付金の配分については、大学というのは担っている役割はまず何といっても教育、そして研究、また社会貢献という役割があると。こうした重要な役割を担っているわけであって、このうち、教員養成を含めて我が国の将来を担う人材養成は極めて重要であると、そう認識をしています。

 運営費交付金の配分については、平成二十二年度以降の中期目標・計画に向けまして、新たな配分の在り方の具体的検討に着手をしていくこととしています。その際、国立大学法人評価の結果を活用しながら、教育研究面、大学改革等への取組の視点に基づく評価に立って適切な配分を実現するように検討を進めていきたいと、そういう考えでございます。

井上哲士君

 今のような考え方を財務省も言い、いわゆるめり張りが付いた教育予算ということを言って、その中でこの試算が出てきたわけですね。教育再生会議の第二次報告でも、大学に対して競争的資金の拡充と効率的な配分ということを言われております。

 それで、これ試算とはいえ、どれだけの衝撃を関係者に与えているのか。先日、中教審の教員養成部会の会長の梶田叡一さんが当委員会の参考人に来られましたけれども、梶田さんが学長を務める兵庫教育大学は一番最後ですね、削減率九〇%ですよ。地元紙にはまるで大学がなくなるんではないかというような報道がされ、本当に理不尽だということを言われておりました。これはより良い教育、教員養成を努力されている大学関係者に冷水を浴びせ掛けるようなものなんですね。

 しかも重要なのは、その教員養成課程を希望する学生、この大幅減少にも拍車を掛けるということです。これも、先日参考人に来られた尾木さんが言われておりましたけれども、教員養成大学の志望倍率が二〇〇五年度が四・九倍、二〇〇六年は四・四倍に下がっている、これだけ運営費交付金が削られて大学がどうなるか分からない、しかも教員になっても十年任期で身分が不安定、これでは教員に良い人材を得ることは困難ではないか、こういう参考人の指摘もあったわけですね。

 ですから、こういう試算が財務省から出ていること自体が私は新たな教育の困難を生む原因になっていると思うんですね。そういう認識は総理あるでしょうか。

国務大臣(伊吹文明君)

 まあ、財務省も困ったものだけれども、運営交付金の交付の権限は文部科学大臣にありますから、私はこんなものを別に認めたわけじゃありません。財政制度審議会で一つの試算として出しているわけであって、科研費の配分割合によって運営交付金を算定するなどということは現実問題としてはあり得ないことですよ、それは。

 むしろ問題は、今日閣議決定される骨太の方針では、経常的経費である運営交付金を確実にまず確保するということを言っているわけですね。その後、その確実に確保した運営交付金を教育の分野にどのように配分していくかについては、これは、戦略的に国家目標というものはある程度それは考えて配分することがあるということは先ほど総理がおっしゃったとおりですが、科研費のその配分割合によって教育の運営交付金、教育の基本になる運営交付金を配分するなどという、まあ試算を出す方も出す方だけれども、それをいかにも決まったように質問されるのもちょっと困ったことだと思いますよ。

井上哲士君

 私、文科省がいったん試算を出したときに質問をしたら、あり得ない前提だと言われたんですね。ところが、それをまた財務省が出して、それが大きく報道されているんですよ。そして、先ほど言いましたように、これが多くの教員、教育関係者に大変な衝撃を与えているんですね。だから私は聞いているんですよ。これは出した方が悪いんですよ。

 今、文科省としてはこういう現実問題としてあり得ないというお話がありました。しかし、現に出された試算が大きな影響を与えているんです。

 じゃ、総理、聞きますけれども、財務省に対してこういうような試算というのは撤回しなさいと、こういうことを総理、指示してくださいよ。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 これは、財務省は財務省の視点で一つの見方、シミュレーションとして出しているわけであって、そしてそれは、最終的には私の内閣でありますから、どういう運営交付金を付けるかというのを結果を見ていただければ分かるわけでありますが、その交付金を最終的に判断するのは、先ほど文部科学大臣が言ったように文部科学大臣であります。しかし、その過程においていろんな見地からいろんなシミュレーションが出てくるのはこれは私は問題ないと、このように思っておりますが、最終的には、もちろんこれは教育の重要な予算の配分でありますから、当然文部科学大臣が判断をするわけでありますし、私も責任を持って判断をするということになっていくわけであります。

井上哲士君

 文部大臣は、こういう試算が出ること自体が困ったことだという認識示されたんですよ。総理はそういうことさえも出されないんですかね。

 私は、この間の運営費交付金の毎年一%削減でも非常に深刻な影響を教員養成系大学は受けております。先日、日本教育大学協会の鷲山会長が新聞に投書されておりましたけれども、結局人を削らなくちゃいけない、こうした状況が続けば教育や研究は壊滅的な打撃を受け、教育力の高い教師の養成や教員の研修機能なども低下すると、こういう深刻な警告を発せられているわけですね。にもかかわらずこういうことが、何かどこか関係ないところから出たように言いますけど、政府の一部から出てきているんですから、あなたの内閣の。これを起こしている私は深刻な問題ということを見ていただく必要があると思います。

 こんな試算は絶対実行してはならないし、むしろ教員養成大学の予算をもっともっと支援をすることが必要だ、そのことを強く求めまして、質問を終わります。


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