本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2007年4月4日(水)

災害対策特別委員会
「能登半島地震で大きな被害を受けた輪島塗の復興」について

  • 能登半島地震で輪島市の地場・伝統産業の「輪島塗」が大きな被害を受けた問題で、「輪島塗」は国として保存・振興を位置づけてきた伝統産業であり、特別の支援の枠組みを考えるよう要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私からも、このたびの能登半島地震でお亡くなりになられた方への心からの御冥福と被災者の皆さんへのお見舞いをまず申し上げたいと思います。

 私も、あの地震の発生を聞いて、当日、夜になりましたけれども現地輪島市に入りまして、市の対策本部にもお邪魔をし、お見舞いをするとともに、実情も様々聞いてまいりました。それから十日、対策本部や避難所のスタッフ、市の職員、地域住民、ボランティアの皆さんなどなど、関係者の皆さんの懸命な努力の結果、一定の復旧が進んでまいりました。

 避難所における健康の問題、住宅再建の問題など、様々問題あるわけでありますが、新しい課題も見えてきている。今日は、やはり復興の土台となる産業の復興ということをまずお聞きをしたいと思います。

 先ほどの質疑にもありましたが、輪島市といえば輪島塗なわけでありますが、まず、この輪島塗の被害状況についてどのようになっているか、御答弁ください。

政府参考人(内山俊一君)

 お答えいたします。

 四月二日に当省の伝統工芸品産業室長が現地に赴きまして被害状況を確認をいたしましたところ、今回の地震におきまして、輪島塗の事業所におきまして漆の上塗りをする作業所の多くが土壁が崩れるなどの被害、また店舗や倉庫におきましては商品が散乱し、破損するなどの被害を受けてございます。

井上哲士君

 輪島の商工会議所にお聞きしますと、市内に約六百三十ある輪島塗の関連事業所の大半が棚に並べていた木地が落ちるなど何らかの被害を受け、中には六千万円の被害を受けた事業所もあると、こういうふうにお聞きをいたしました。

 輪島市の産業の中での輪島塗の位置付けを見ますと、生産額でいいますと約三分の一ということでありますし、就業人口でいいますと市内の就労人口の約一二%を占めておりまして、この輪島塗の復興なしに市の復興もないと思いますし、全国的に見ましても、全国の木製漆器の中で生産額でいいますと約二五%を占めていると、こういうふうにお聞きをしております。

 同時に、そういう地域産業として非常に大事だということと同時に、国として保存、振興を位置付けてきた伝統産業でもあるわけですね。室町時代から長い時間を掛けて幾世代にわたって受け継がれ、創意を重ね、技を磨いて常に進化を続けてきたのが輪島塗だと思います。七五年に伝統工芸品に指定され、七七年には重要無形文化財に指定をされ、八二年には制作用具など三千八百四点が重要有形文化財に指定をされている大変貴重なものであり、ある意味でいいますと日本の宝だとも言っていいものだと思うんですね。

 こういう国として伝統産業と位置付けて保存、振興してきた輪島塗が大変な被害を受けている、私は放置できない深刻な事態だと思いますけれども、まず大臣の御認識をお聞きしたいと思います。

国務大臣(溝手顕正君)

 能登半島の今回の地震におきまして、輪島塗が大きな被害を受けたということは承知をいたしております。

 防災担当大臣としては、関係省庁、地方公共団体と連携を取りながら、いわゆる総合力を結集してこの輪島塗産業の復興に努力をしてまいりたい、誠心誠意頑張ってまいりたいと考えております。

井上哲士君

 そこで伺うわけですが、先ほども今回の震災で作業所となる土蔵の多くが被害を被ったという答弁がありました。輪島塗の場合は、温度や湿度を一定に保って、ちりやほこりのない中で塗りと乾燥を繰り返すというために、この作業所である土蔵は欠かせないものとなっております。この土蔵が大きな被害を受けているということが、今この作業再開の大きな支障になっております。

 しかも、現地に伺いますと、この土蔵というのは通りに面していることは少ないんですね。大抵家の裏に建てられて、隣接の家とも近接して建てられている。ですから、もう出入口もほとんど家屋を通って中に入ってそこにある、道もない、非常に狭いというところですから、重機も入らないわけですね。ですから、今倒壊したり損壊をした土蔵を解体修理しようと思っても重機も入らない。中には土蔵の周りが四方全部家屋だという土蔵もありまして、この壊れ掛けた土蔵が傾いて隣の住宅が危険になっていても、正に地元の業者も解体をできない、重機も入らないということで非常に困惑をしているということも随分お聞きをしております。

 こういうやはり土蔵の解体修理に当たっては、これは地元任せにせずに、やはり工法の問題でも、それから財政的な問題でも私は国が特別な支援をすることが必要ではないかと思いますけれども、この点、財政的な面、それから様々な工事のやり方の面で国としてどういう支援ができるのか、それぞれまずお答えいただきたいと思います。

政府参考人(榊正剛君)

 基本的に土蔵造りということでございますので、壁若しくは屋根が土塗りということかと思いますので、古い民家と同様の解体ということになろうかと思います。

 重機が入らないということでございますので、まず足場を組んでシート養生をしていただいて、屋根がわらを手作業で解体すると。その後、粉じん防止のために防護シートで囲いまして、まず散水を行いながら解体するといったような、言わば手作業になろうかと思います。

 一応、どのような工事が行われるかというところにつきまして、例えば石川県とか富山県には構造物解体協会というのがございまして、そちらの方の協会で相談を受け付けておりますので、そういうところを通じまして必要な情報提供ができればというふうに考えているところでございます。

政府参考人(内山俊一君)

 豪雨や大規模地震によりまして被害を受けた伝統的工芸品産業の活性化に当たりましては、被災した地域や産地の皆様の要望をよく聞かせていただき適切に対応する、これが重要であると考えております。

 今回の地震により被害を受けた伝統的工芸品産業につきましても、私ども経済産業省といたしましては、地元石川県などとも緊密に連携をしながら、被災地の要望をよく聞かせていただき、最大限産地の支援に取り組んでまいる所存でございます。

井上哲士君

 一般論での御答弁なんですが、先ほど融資のことなどもありました。しかし、もっと踏み込んだ支援が私は必要だと思うんですね。

 二〇〇四年七月の福井豪雨のときに、主な地場産業で伝統工芸でもある越前漆器などに着目をして、福井県が伝統的工芸品産地活性化緊急支援事業というのをやっておりますけれども、これは今までにない制度でありました。非常に喜ばれたわけでありますが、これは内容を御承知されているでしょうか。

政府参考人(内山俊一君)

 委員御指摘の福井県の伝統的工芸品産業への対応につきましては、今委員が御指摘されましたような伝統的工芸品産地活性化緊急支援補助金制度を創設したものと承知をしております。

井上哲士君

 中身も答弁いただきたかったんですが、これは都道府県としては初めて行った措置だったわけですね。被災事業所の生産設備の修繕や買換えに要する経費の一部を最高三百万円まで産地組合を通じて補助をする、こういうことでありました。

 福井県はなぜこういう制度をつくったのかと、こういうふうに提案説明をされておりますが、今回の災害が引き金となっての廃業等により、伝統的工芸品という福井が誇る産業、文化や産地の地域コミュニティーの存続が危ぶまれるところであり、地域が一丸となった再生への取組を緊急に支援することが求められているんだと。つまり、伝統産業というのは、正に地域の誇りであると同時に、文化や産地の地域コミュニティーの中心なんだと、そこに着目をして新しいこういう制度をつくっているわけですね。

 私は、国が伝統産業としてこういう輪島塗についても位置付けてこれまでも様々な振興の支援をし、保存のためにも支援をしてきたわけですから、市や県任せにすることなく、国が率先して支援をしていく。それでこそ地元自治体や産地の皆さんのやる気も起こさせて復興の前進になると思うんですね。

 こういう今回の土蔵のように被災事業所の生産設備の修繕や買換え、これに対する直接的な支援ということを国としても考えるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(内山俊一君)

 委員の御指摘、直接的な生産設備への補助についてどうかということでございますけれども、いずれにいたしましても、現在、被害状況を確認をしつつ、地元の石川県などとも連携を取りながらよく被災産地の御要望を聞かせていただいて、できるだけ国としての支援に努めていきたいというふうに考えております。

 その中では、例えば輪島塗の需要の拡大、これを支援するための輪島塗特別展示会の開催、こういったものも検討するなど地域の御要望を十分踏まえて支援に努めていきたいというふうに考えております。

井上哲士君

 この福井の制度は、例えば越前漆器に対する生産設備復旧支援事業、二百六十社のうち六十二件使われておるんですね。比率でいいますと二四%、非常に高い事業所が活用をしております。それから、この福井の災害の後に中越地震もあったわけでありますが、このときも新潟県が伝統的工芸品生産設備等復旧支援の事業ということで、いわゆる小千谷つむぎに対するこうした同様の被災した中小企業に対する支援を行っております。

 ですから、先ほど地元自治体の要望を聞いてということを言われていましたけれども、こういうやはり地域において伝統産業を守るということは特別の意味を持っている。だから、必要だからこういうふうに活用もされているし、新潟県でもつくられたわけですね。

 今までの国の支援の枠組みでいいますと、住宅の復旧には様々な形で、先ほど大臣からもいろんな知恵を出してきたということがあったわけです。

 今、この間の福井にしても中越にしても、そして今回の輪島にしても、本当に地域のコミュニティーの核であり、しかも国が伝統産業として支援をしてきたという枠組みがあるわけですね、日本の宝だと。これは私は、特別のやはり支援の枠組みということを考えることが必要だと思うんです。そういう伝統産業、国が支援をしてきた伝統産業というところに着目をした、更に踏み込んだ国としての支援ということを考えられないのか、いろんな知恵が出せないのかと思いますけれども、もう一度答弁をいただきたいと思います。

政府参考人(内山俊一君)

 委員の御指摘のように、輪島塗は日本の誇る伝統的工芸品でございます。したがいまして、その産地の今後一刻も早い復旧を図る観点から、私どもといたしましても、地域の御要望、これからその産地におきましていろいろと被害の実情についても精査をされるというふうに聞いておりますので、そういった実情を踏まえた御要望を十分考えて支援等に万全を期していきたい、こういうふうに考えております。

井上哲士君

 融資ということもありましたけれども、今この輪島塗自身が全体として生産量が減ってきているというお話もありました。新しい設備投資などができるかということは、いろんなやっぱりちゅうちょがあると思うんです。

 まず、今この壊れているものを正すという点でまず支援をするということが、私は今緊急に求められておると思いますし、そういう点で様々な国としての知恵も力も出していただきたいと重ねてお願いをいたしまして、質問を終わります。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.