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2007年12月27日(木)

外交防衛委員会

  • 「労務買い上げ」の問題を再度質問

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 前回に続きまして、防衛省技術研究本部における労務借り上げの問題について聞きます。

 我が党は、この制度が癒着の温床になっているんではないかということをかねてから指摘をしてまいりました。そして、日当が余りにも高いんではないかということも批判をしてきました。

 その中で、昨年の六月十六日に出されました防衛施設庁入札談合等再発防止に係る抜本的対策という報告書の中でもこの労務借り上げ契約の見直しというものが打ち出されております。その後に加えられた項目も含めまして、前回の質問の際に四点にわたって見直しを行っているという旨の答弁がありました。

 では、その見直しが果たして実効を上げているのかということが問われるわけです。

 前回の質問の際に、この見直しが行われてきた今年度の契約について、十一月末までの実績を出していただきたいと。質問までに出るというお約束だったわけでありますが、質問が終わった直後に出てまいりまして、大変私は遺憾に思っておるんですが。

 そこで、今日は出していただいた今年度の契約実績についてお聞きをしたいと思います。

 まず、この間言われた四つの見直しの一つ目の項目は、契約方式の見直しでありました。公募にするという話だったわけですが、今年度の十一月末までの実績についてお聞きをいたします。契約金額の上位二十社のうち、財団法人防衛技術協会を除く十九社について、競争入札で落札したのはどれだけになっているでしょうか。

防衛大臣官房技術監(佐々木達郎君)

 お答えを申し上げます。

 技術研究本部が実施しております技術支援契約につきましては、先生御指摘のように、平成十九年度当初から一般競争入札あるいは公募手続を経て契約相手方を選定してきております。そのうち、今年の十九年十一月末の時点まででございますが、防衛技術協会を除く契約金額上位十九社の契約につきましては、すべて公募手続を経て契約相手方を選定しているところでございますが、公募の結果、複数社が応募し、指名競争入札を行って契約相手方を選定したものは五件でございます。

井上哲士君

 お手元の資料ありますように、十一月までの契約状況を出しております。防衛技術協会を除く全体の契約件数は三百七件ですから、結局、競争入札による落札というのはわずか一・六%ということでありますから、全く改善になっていないと言わざるを得ない状況なんですね。しかも、入札によって価格の面で効果が上がっているのかどうかということも問われます。[外交防衛委員会提出資料(PDF:約95KB)

 日当を見ますと、これはお手元の資料にありますように、一日当たりのこの労務借り上げに払われる対価でありますが、昨年度の平均が九万八千七百五十九円だったのが、今年度十一月末まで見ますと十万五千八百八十九円とむしろ上がっております。それから、上位三社などを比べましても、今年度の場合、トップがダイセル化学工業十六万七千九十二円、次が日本電気十五万四百四十五円、三番目が日本油脂十四万五千二百四十三円ということで、軒並み昨年からも上がっているという状況になっているんですね。

 元々、昨年五月、これは当委員会でも当時の額賀防衛庁長官が、金額が高いという批判を踏まえて予定価格の算定方法について見直すという答弁もされました。それから、先ほど紹介しました昨年六月の報告書でも、労務借り上げの契約金額が高いという批判を踏まえて見直しを行うと、こういうことになっていたわけですね。そして、先ほどあったような、この間あったような四つのことが行われたと。にもかかわらず、逆に日当は平均でも最高額でもむしろ上がってきているというのは全く逆行だと思うんですけれども、一体なぜこういうことになっているんでしょうか。

防衛大臣官房技術監(佐々木達郎君)

 今先生からの御質問二点あるかと思いますが、十分競争性を担保するようなやり方でやってきたかということと価格の件ということだと思いますので、お答えさせていただきます。

 まず一点目、競争性のある契約方式をちゃんと取ったかということでございますが、技術支援契約の契約手続に当たりましては、平成十八年度に政府全体としてこの件に取り組みまして策定されました公共調達の適正化の方針であります財務大臣の定めました公共調達の適正化についてという指示に従いまして、この契約を履行するに当たって必要な技術をまずホームページ等に具体的に明らかにして参加者を募っております。ここで競争性及び透明性を担保した上で行ってきておりますので、やり方として適正に行われているものとして我々認識しております。また、防衛省との契約実績を参加資格とするようなといった企業の新規性を阻止するような条件を付したりしないよう注意しまして、適正な競争性の確保に努めてきたところでございます。

 今回提出しました契約実績におきましては、公募から指名競争入札に移行した件数が五件ということで少ない状況にありますが、その理由につきまして、年度の途中でもあり詳しく分析できていない現状でございますが、今後引き続き十九年度の契約実績を分析して、競争性及び透明性が十分に担保されているかどうかというふうな観点から改善されるように努めてまいりたいと思います。

 なお、経費につきましてですが、十九年十一月末までの技術支援契約の契約実績につきまして、先ほどの上位十九社について、一人当たりの平均金額、二十社につきましては、先生御指摘の、お示しのとおりでございますが、十九年度の契約実績において平均契約金額が上昇した理由につきましては、年度の途中でもありますし詳しい分析が行われておりませんが、現時点で考えられる要因として、企業業績の回復により単価自体が上昇したものがございます。また、各年度ごとに実施する研究開発事業がその年度年度で異なりますので、それに応じて試験の内容も異なり、技術支援契約の内容も異なってきているということが考えられます。

 これがその平均的な契約金額の変化に影響した可能性があるというふうなことも考えられておりますが、いずれにいたしましても、労務借り上げ契約につきましては、昨年度見直しを行い、十九年度からすべて競争性のある契約に移行したところでありますが、今後引き続きこういった十九年度の契約実績を分析しまして、適切な形で技術支援契約を結ぶように努めてまいりたいと思います。

井上哲士君

 競争的な契約について、確かに形は整えられたんだと思うんです。しかし、結果としてやはり一・六%しか競争による指名ということになっていないという状況があるわけでありまして、じゃ、この間の様々な防衛省のいろんな不祥事のたびに組織はいじる、形はいじるけれども中身が整っていないということがここでも起きているんだと思うんですね。そして、業績ということも言われましたけれども、決して労働者の賃金がこの間、大きく上がっているかというとそうではないわけでありまして、こうした状況は私は説明になっていないと思うんですね。

 最後、これは大臣にお聞きをいたします。

 先日の答弁で、公正性、透明性を高めるべく今まで尽力をしてきたというふうに言われました。ただ、今も申し上げましたように見直しをしたといっても実態はちっとも変わっていないという状況があるんです。

 昨年の六月に出されました抜本対策の報告書の中で、労務借り上げの部分では、当庁が予定価格計算のために行っている原価計算は、各企業が実施している原価計算の方法を基礎としている、しかし今後多様な契約形態に対応したより客観的かつ合理的な原価計算が実施できる態勢を整備する方向で検討を行っていると、こういうふうに言っております。つまり、現状は各企業が実施しているその方法を基礎としているわけですから、事実上やっぱり企業側の言い値になっているということが私はこういう高値ということになっていると思うんです。

 あの調達本部事件の後の改善検討のための会議が行われたときの議事録を見ますと、例えば、参考で来られた日本防衛装備工業会、防衛調達の公正性、透明性に力点が置かれ過ぎているというような発言もあるわけでありまして、やはり国民から見て客観的かつ合理的な抜本的改善というところまで踏み込むべきだと思いますけれども、そのお考えはあるでしょうか、お聞きして質問を終わりたいと思います。

防衛大臣(石破茂君)

 御指摘は基本的にそのとおりだろうと思っております。要は、企業のそういうやり方を基礎としながら、それは基礎にしなきゃいけませんが、本当にそのやり方正しいんですかということは調本事件のときからずっと指摘をされておるところであります。

 ただ、防衛産業の場合にはいろいろな特殊性はありますが、しかし防衛省としてそれを見て、その原価計算は本当に正しいですかということを見る目はもう一度点検をし直してみなければいかぬだろうと思っております。なかなか、物が物でございますので、競争という原理がどこまで働くかということはございますが、本当にその原価計算が国民の税金を使うにふさわしいものであるかどうか、これは調達の在り方一般に言えることだと思っております。そういう見る目をきちんと養うべく努力はいたします。


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